アクアブレーション — 前立腺肥大症に対する水のジェットを使う手術
概要
アクアブレーションは、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)という、前立腺が大きくなることで尿の通り道が狭くなる病気に対する手術の方法のひとつです。尿道から細い器具を入れ、前立腺の内側の組織に高圧の水のジェット(水流)を当てて、余分な組織を削り取ります。超音波の画像と内視鏡の映像で位置を確かめながら、ロボットアームが自動で動いて手術が進みます。電気で組織を焼き切る従来の方法とはしくみが違い、熱によるダメージを抑えられるのが特徴です。手術そのものは医師の管理のもとで行われ、所要時間は前立腺の大きさによって変わります。
重要な事実
- 前立腺肥大症の手術法のひとつで、高圧の水のジェットで前立腺の組織を取り除きます。
- 超音波と内視鏡の映像を見ながら、ロボットアームが自動で動いて手術を行います。
- 熱で焼き切る方法に比べて出血が少なく、尿道に入れた管(カテーテル)を抜くまでの期間や入院期間が短くなる可能性があります。
- 前立腺の大きさや形に適した範囲があり、すべての人に使える方法ではありません。
- 日本では、行える医療機関や保険の適用状況が地域によって異なります。まずはかかりつけ医や泌尿器科の医師にご相談ください。
前立腺肥大症そのものは、中高年の男性にとても多い病気です。一方、アクアブレーションは比較的新しい手術法で、行われている件数は従来の方法より少なめです。施設によって対応状況が違うため、実際に受けられるかどうかは医療機関に確認する必要があります。
主に、前立腺肥大症による排尿の症状が中等度から強く、生活に支障が出ている成人男性が対象になります。年齢だけで決まるものではなく、前立腺の大きさ、症状の強さ、今までの治療の経過、持病の有無などを総合して、医師が適しているかどうかを判断します。
症状
- 尿がまったく出ないうえに、おなかの下が激しく痛む、または発熱や悪寒をともなう
- 高熱と寒気があり、排尿時の強い痛みや腰・背中の痛みもある(腎盂腎炎など重い感染症のおそれ)
- 血の塊が混じるような大量の血尿が続き、ふらつきや動悸がある
- ⚠急に尿が出なくなり、おなかが張ってつらい(尿閉の可能性)
- ⚠尿に血が混じる状態が続く
- ⚠排尿時の痛みや熱感がある
- ⚠下腹部や腰の痛みが強くなってきた
一般的な症状
- 尿の出が細い、勢いが弱い
- 尿が出始めるまでに時間がかかる
- 何度もトイレに行きたくなる(頻尿)
- 夜中に何度も起きてトイレに行く(夜間頻尿)
- 尿を出し切った感じがせず、すっきりしない(残尿感)
- 急に強い尿意が来て我慢しにくい
- おなかに力を入れないと尿が出にくい
- 尿が途切れる、最後にぽたぽたと漏れる
子供の症状
- アクアブレーションは成人男性の前立腺肥大症に対する手術であり、小児には行われません。お子さんの排尿の悩みは別の原因が考えられるため、小児科や泌尿器科にご相談ください。
高齢者の症状
- 加齢にともない前立腺肥大症は増えるため、症状が出やすい年代です。
- 夜間頻尿が増えることで、睡眠不足や転倒のきっかけになることがあります。
- 心臓病や糖尿病などの持病、服用中の薬が排尿に影響していることもあります。
- 手術を考える際は、体力や持病、生活環境も含めて総合的に判断します。
原因
主な原因
- 前立腺肥大症は、前立腺が加齢とともに大きくなることで、尿道が圧迫されて起こります。
- 男性ホルモンの働きが関係していると考えられていますが、詳しいしくみはまだ完全には分かっていません。
- アクアブレーションは病気の原因を取り除くというより、大きくなった前立腺の組織を取り除いて尿の通りを良くする治療です。
リスク要因
- 年齢(50代以降で増え、加齢とともに多くなります)
- 家族に前立腺肥大症の人がいる
- 肥満や、糖尿病などの生活習慣病がある
- 運動不足や、座っている時間が長い生活
- アルコールやカフェインのとりすぎ、水分のとり方の偏り
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿が急に出なくなった、または強くいきんでも出ない
- 排尿時の痛みと発熱がある
- 血尿が出た、または尿が赤い・濁っている
- 下腹部の張りや痛みが強い
定期受診を予約すべき場合:
- 夜間頻尿や頻尿で、睡眠や日常生活に支障が出ている
- 尿の勢いが弱い、出にくいと感じる日が続いている
- 排尿の症状が少しずつ悪くなっている気がする
- 前立腺肥大症の治療中で、症状の変化や手術の相談をしたい
診断
まず問診で、排尿の症状や生活への影響、これまでの治療歴、持病や服用中の薬を確認します。症状の強さを点数で表す質問票に答えてもらうこともあります。そのうえで尿検査や血液検査、前立腺の大きさを調べる超音波検査などを行い、前立腺肥大症かどうか、ほかに原因がないかを調べます。アクアブレーションが適しているかどうかは、前立腺の大きさや形、症状の強さ、体の状態をあわせて医師が判断します。
行われる可能性のある検査
- 問診と症状の質問票(排尿の状態を点数で確認します)
- 尿検査(感染や血尿の有無を調べます)
- 血液検査(腎臓の働きや前立腺に関係する数値を確認します)
- 超音波検査(前立腺の大きさ・形と、排尿後に残る尿の量を調べます)
- 尿流量測定(尿の勢いと出方を機械で記録します)
- 必要に応じて、内視鏡で尿道や前立腺の様子を直接見る検査
診察で予想されること
検査の多くは痛みが少なく、外来で短時間で終わります。超音波検査はおなかの上から当てるだけで、痛みはありません。尿流量測定は、専用のトイレで普段どおり排尿するだけです。内視鏡の検査は少し違和感がありますが、短時間で終わることが一般的です。結果の説明では、症状の強さ、前立腺の大きさ、治療の選択肢を一緒に整理してもらいましょう。分からない言葉はその場で遠慮なくたずねてください。
治療
前立腺肥大症の治療は、症状の強さと生活への影響に応じて選びます。軽いうちは生活の見直しや定期的な経過観察から始め、症状がつらい場合は薬による治療を検討します。薬で十分な効果が得られないときや、尿が出にくい状態が続くときなどは、手術が選択肢になります。手術には、電気やレーザーで組織を削る方法、水のジェットを使うアクアブレーションなど複数の種類があり、前立腺の大きさや持病、生活スタイルに合わせて医師と相談して決めます。
自宅でのセルフケア
- 水分は少しずつこまめにとり、夕方以降の大量の水分は控えめにする
- アルコールやカフェイン(コーヒー・濃いお茶など)のとりすぎを控える
- 尿意を長く我慢しない
- 便秘を防ぐために、食物繊維や適度な運動を心がける
- 寒さで症状が出やすい人は、腰や下半身を冷やさないようにする
- 症状の変化をメモしておき、診察のときに伝えられるようにする
医療治療
薬による治療では、前立腺の筋肉をゆるめて尿の通りを良くするものや、前立腺の大きさの変化に働きかけるものなどが使われます。どの薬が合うかは症状や持病、ほかの薬との組み合わせで変わるため、医師の指示に従ってください。自己判断で中止したり、勝手に量を変えたりしないことが大切です。手術の方法としては、電気やレーザーで組織を削る方法、水のジェットで削るアクアブレーションなどがあり、それぞれに特徴があります。アクアブレーションは、熱による負担を抑えたい場合などに検討されますが、前立腺の大きさなどに適した条件があります。
手術が検討される場合
薬による治療で症状が十分に良くならない、尿が出ない状態をくり返す、膀胱や腎臓に負担がかかっている、といった場合に手術が検討されます。アクアブレーションは、全身麻酔や脊椎麻酔(下半身だけを麻酔する方法)で行い、数日間の入院が一般的です。手術後は尿道に管を入れて尿を出しますが、抜くまでの期間は比較的短いことが多いとされています。出血や入院期間、性機能への影響などについて、事前に医師から詳しい説明を受け、納得したうえで決めましょう。
この病気と共に生きる
手術を受けたあとは、しばらく尿の回数が多くなったり、尿意が急に来たり、尿にうっすら血が混じったりすることがあります。多くは時間とともに落ち着いてきます。水分をしっかりとり、無理のない範囲で日常を過ごしてください。症状が強い日が続くときや、発熱・強い痛み・血の塊が出るときは、早めに医疗機関に連絡しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 手術後しばらくは、重い物を持ち上げる作業や激しい運動を控える(期間は医師の指示に従う)
- 性行為や、湯船につかる入浴は、医師に再開してよいと言われるまで待つ
- 長時間の座りっぱなしや運転は、体調と相談しながら少しずつ再開する
- 便秘を防ぐために水分と食物繊維をとり、排便時に強くいきまない
- 定期的な診察を受け、排尿の状態を確認してもらう
食事と運動
食事は、塩分や脂質のとりすぎに気をつけ、野菜や果物、食物繊維をバランスよくとることを心がけましょう。肥満は排尿の症状に影響することがあるため、体重管理も大切です。運動は、ウォーキングなど無理のないものを継続するのがおすすめです。手術後は、医師から許可が出てから少しずつ再開してください。アルコールやカフェインは、とりすぎると尿の回数が増えることがあるので、量とタイミングに気をつけましょう。
精神的健康と心の健康
排尿の悩みは、外出や人づきあい、睡眠にも影響し、気持ちが沈んだり、不安になったりすることがあります。手术を決めること自体に迷いを感じるのも自然なことです。一人で抱え込まず、家族や医師、看護師に気持ちを話してみてください。つらさが長く続くときは、心の面の相談窓口を利用することも大切です。
予防
前立腺肥大症そのものを確実に防ぐ方法は、今のところ分かっていません。加齢にともなって起こる変化なので、避けられない面もあります。ただ、適度な運動、体重管理、バランスのよい食事、便秘を防ぐことなどは、排尿の症状を悪化させないために役立つと考えられています。
検診プログラム
前立腺の状態を知るために、健康診断や自治体の健診で前立腺に関係する血液検査(PSA検査)が受けられる場合があります。受診の機会や内容は地域によって異なるため、お住まいの自治体の案内や、かかりつけ医に確認してみてください。排尿の症状があるときは、健診を待たずに泌尿器科へ相談するのがおすすめです。
合併症
治療しない場合
- 尿が出なくなる(尿閉)ことがあり、その場合は管を入れて尿を出す処置が必要になります
- 膀胱に尿がたまり続けて、膀胱結石ができることがある
- 尿路感染症をくり返し起こすことがある
- 尿の流れが悪い状態が続くと、腎臓の働きが低下することがある
- 夜間頻尿や頻尿による睡眠不足、生活の質の低下
長期的な見通し
前立腺肥大症は、多くの場合ゆっくり進む病気で、生活の見直しや治療で症状をやわらげることができます。アクアブレーションを含め、手術の選択肢も増えており、症状に合わせた方法を選べる時代になっています。手術後の経過は人によって異なりますが、多くの方は排尿の状態が改善し、生活が楽になったと感じています。気になる症状があれば、早めに医師に相談することが、よりよい状態を保つ近道です。
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最終更新: 2026年11月3日
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