がんの治療について
概要
がんは、体の細胞が何らかの原因で正常にコントロールされなくなり、際限なく増えていく病気です。細胞の中の「遺伝子」という設計図に傷が積み重なって起こると考えられています。がん治療の目的は、大きく分けて3つあります。がんそのものを取り除いたり小さくしたりすること、がんが広がるのを防ぐこと、そして痛みやつらさを和らげて、その人らしい毎日をできるだけ長く続けられるようにすることです。治療法は、手術・放射線治療・薬物療法(抗がん剤など)・緩和ケアなどがあり、がんの種類や進み具合、年齢や体調、そして本人の希望を合わせて話し合いながら決めていきます。
重要な事実
- がん治療は「手術」「放射線治療」「薬物療法」「緩和ケア」などを組み合わせて行うことが多く、1つだけとは限りません。
- 治療の副作用や生活への影響は、事前に説明を受け、対処法を準備しておくことで軽くできることがあります。
- 治療方針は、担当医とよく相談し、納得したうえで決めることが大切です。迷ったときは、別の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞くこともできます。
日本では、一生のうちに約2人に1人が何らかのがんと診断されるといわれており、とても身近な病気です。決して「特別な人の病気」ではありません。
年齢を重ねるほど多くなりますが、若い世代や子どもにも起こります。生活習慣、喫煙、感染、遺伝的な要因など、いろいろな要素が関係します。誰のせいでもありません。
症状
- 息が苦しくて話せない、呼吸ができない
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない
- けいれんが止まらない
- 大量の出血が止まらない
- 激しい胸の痛み、突然の強い頭痛
- ⚠治療中に38℃以上の発熱がある(感染症のサインのことがあり、急いで連絡が必要です)
- ⚠嘔吐が続いて水分がとれない、尿が出ない
- ⚠ひどい下痢が続く
- ⚠口内炎やのどの痛みで、水も飲めない
- ⚠出血が続く、あざが急に増える
- ⚠痛みが強くなり、市販の痛み止めでは対応できない
一般的な症状
- 初期の段階では、ほとんど症状がないことが多いです
- 体のどこかに、痛くないしこりや腫れを感じる
- 原因がはっきりしない体重減少
- 強い疲れやすさ、だるさが続く
- 長引く咳、声のかすれ、息苦しさ
- 食べ物が飲み込みにくい、胃の不快感が続く
- 便や尿に血が混じる、不正な出血がある
- 治りにくい傷や口内炎
- 治療の副作用として、吐き気、脱毛、手足のしびれ、味覚の変化などが出ることがある
子供の症状
- 発熱が続く、原因不明の熱
- あざができやすい、出血しやすい
- 手足やおなかのしこり、おなかの膨らみ
- 頭痛が続く、朝に吐く
- 急に歩きにくくなった、目が見えにくくなった
- 元気がなく、遊ばなくなった
高齢者の症状
- 症状がはっきりせず、なんとなく元気がない、食欲がないという形で現れることがあります
- 持病の薬の影響や、加齢による変化と区別しにくいことがあります
- 治療は体力や持病を考えて、負担の少ない方法を選ぶことが多くなります
- 治療中は脱水や転倒、感染症に特に注意が必要です
原因
主な原因
- 細胞の中の遺伝子(設計図)に傷が積み重なることで起こると考えられています
- 傷は、加齢によるものだけでなく、喫煙、飲酒、食事、感染、紫外線などの影響で増えることがあります
- 生まれつき特定の遺伝子に変化がある場合、リスクが高まることがあります(多くはありません)
- 多くの場合、はっきりした「ひとつの原因」を特定することはできません
リスク要因
- 喫煙(受動喫煙も含む)
- 飲酒の量が多いこと
- 肥満、運動不足、塩分の多い食事、野菜や果物の不足
- ウイルスや細菌の感染(B型肝炎・C型肝炎ウイルス、HPV、ピロリ菌など)
- 紫外線、放射線、一部の化学物質への長期間の曝露
- 家族歴・遺伝的な要因
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 治療中に38℃以上の発熱がある
- 息苦しさが急に強くなった
- 出血が止まらない、吐き気で水分がとれない
- 痛みが急に強くなった
定期受診を予約すべき場合:
- 2週間以上続く咳、声のかすれ、のどの違和感
- 原因不明の体重減少や強い疲れが続く
- しこりや腫れに気づいた
- 便や尿に血が混じる、不正な出血がある
- 飲み込みにくい、胃の不快感が長く続く
- 治療の副作用で日常生活がつらい
診断
問診と体の診察から始まり、血液検査や画像検査で詳しく調べます。がんかどうかを確定するためには、多くの場合「病理検査」といって、組織の一部を採って顕微鏡で調べる検査が必要です。同時に、がんの種類や広がり(ステージ)を調べて、治療方針を考えます。
行われる可能性のある検査
- 問診・診察(症状の経過や生活歴を聞く)
- 血液検査(腫瘍マーカーを含むことがある)
- 画像検査:レントゲン、超音波(エコー)、CT、MRI、PET検査など
- 内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラなど)
- 生検(組織の一部を採って顕微鏡で調べる病理検査)
- 遺伝子検査(一部のがんで、治療薬の選択に役立つことがあります)
診察で予想されること
検査は一度で終わらず、何日か、ときに数週間かけて行われます。結果を待つ間は不安な時間です。結果が出たら、担当医から病名・進行度・治療の選択肢・それぞれのメリットと負担について説明があります。メモを取る、家族や信頼できる人に同席してもらう、聞きたいことを事前に紙に書いておく、といった準備が役立ちます。
治療
がん治療は、手術・放射線治療・薬物療法(抗がん剤など)・緩和ケアを組み合わせて行うのが一般的です。がんの種類、大きさ、広がり、体の状態、年齢、そして何を大切にしたいかによって、選ぶ治療は変わります。治療は「治すこと」だけでなく、「その人らしく生活できること」も同じくらい大切にされます。
自宅でのセルフケア
- 治療の前に、副作用の種類と対処法を担当医・看護師・薬剤師に確認しておく
- 症状(熱、痛み、吐き気、便の様子、食べた量)を簡単なノートに記録する
- 無理のない範囲で休息をとり、疲れたら休むことを優先する
- 手洗い・うがい・人混みを避けるなど、感染予防を心がける
- 水分をこまめにとる
- ひとりで抱え込まず、家族や友人、医療ソーシャルワーカーに相談する
医療治療
手術は、がんとその周囲を切り取る治療です。放射線治療は、がんに放射線を当てて細胞を傷つける治療で、痛みを和らげる目的で使われることもあります。薬物療法には、細胞の増え方を抑える薬、がんの特有の性質を狙う薬、体の免疫の力を使ってがんと戦う薬、ホルモンの働きを調整する薬などがあり、飲み薬・点滴・注射などの形で行われます。副作用をやわらげるための薬や、吐き気・痛み・だるさに対応するケアも同時に進めます。緩和ケアは、がんであっても治療の最初から、痛みや不安などのつらさを和らげるために行われます。どの治療も、効果と負担のバランスを考えて選ばれます。具体的な薬の名前や量、スケジュールについては、必ず担当医や薬剤師にご確認ください。
手術が検討される場合
手術が検討されるのは、がんが体の一部分にとどまっていて、取り除くことで根治(治癒)が期待できる場合などです。周囲の組織やリンパ節も一緒に調べるために切除することがあります。手術の前に薬物療法や放射線治療を行って、がんを小さくしてから手術をする場合もあります。体力的な負担や持病、生活への影響も含めて、担当医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
治療中は、体調に波があるのがふつうです。予定を詰め込みすぎず、「今日はここまで」と決めて休むことが大切です。治療の予定、薬、症状の記録を1冊のノートやスマホにまとめておくと、診察のときに役立ちます。仕事・家事・育児については、早めに周囲に伝えて助けを借りることで、負担を減らせることがあります。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、疲れたらこまめに休む
- 喫煙をやめる(周囲の煙も避ける)
- 飲酒は控えめにする、または担当医に相談する
- 体調に合わせて、無理のない範囲で体を動かす
- 感染予防のために手洗い・うがいを習慣にする
- 治療中は日焼けを避け、皮膚をやさしく扱う
- 気分転換の時間を意識してつくる
食事と運動
食事は「これを必ず食べなければ」と決めつけず、食べられるものを少しずつ、回数を分けてとるのが現実的です。たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品など)を意識し、味覚が変わったときはだしや香辛料、酸味を上手に使うと食べやすくなります。口内炎があるときは、やわらかく刺激の少ないものを選びましょう。運動は、散歩や軽いストレッチなど、息が少し上がる程度を無理のない範囲で続けると、疲れにくさや気分の安定に役立つことがあります。食事や運動の内容は、体の状態によって変わるため、担当医や管理栄養士に相談してください。
精神的健康と心の健康
がんと診断されると、不安、怒り、悲しみ、先が見えないつらさなど、さまざまな気持ちがわいてくるのは自然なことです。治療中の気分の落ち込みや眠れない日が続くときは、我慢せずに医療者に伝えてください。心理的なサポートや、話を聞いてもらえる場があります。もし自分を傷つけたい気持ちがわいたり、生きていたくないと感じたりしたときは、ひとりで抱えず、すぐに担当医・看護師、または地域の相談窓口や緊急の相談先に連絡してください。日本では119番(救急)で命に関わる緊急時の対応が受けられます。あなたはひとりではありません。
予防
すべてのがんを防ぐことはできませんが、リスクを下げられるものはあります。禁煙、節酒、バランスのよい食事、適正体重の維持、運動習慣、紫外線対策、感染予防が役立つとされています。できることから一つずつ始めれば十分です。
ワクチン
一部のがんはワクチンで予防できます。HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは子宮頸がんなどのリスクを下げ、B型肝炎ウイルスのワクチンは肝臓がんのリスクを下げます。接種の対象や時期については、自治体の案内やかかりつけ医にご相談ください。
検診プログラム
日本では、自治体によるがん検診(胃、大腸、肺、乳、子宮頸など)が行われています。症状がない段階で見つけることで、治療の選択肢が増え、体への負担も少なくなることがあります。対象年齢や受診間隔は自治体によって異なるため、お住まいの地域の案内をご確認ください。気になる症状がある場合は、検診を待たずに医療機関を受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- がんが大きくなり、周りの臓器を圧迫して痛みや機能の低下をきたすことがあります
- リンパ節や血流を通じて、体のほかの場所(転移)に広がることがあります
- 体重減少や体力の低下が進み、日常生活が難しくなることがあります
- 治療の選択肢が限られてくることがあります
長期的な見通し
がんは、早期に見つかれば治癒が期待できるものも多くあります。進行していたとしても、治療によって長く安定した状態を保てる場合や、新しい治療が次々に登場しています。大切なのは、治療の効果だけでなく、その人らしい毎日をどう続けるかという視点です。不安なことは遠慮なく担当医に尋ね、納得しながら進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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