糖尿病の薬について知っておきたいこと
概要
糖尿病は、血液の中の糖(血糖)が高くなりすぎてしまう病気です。食べ物からとった糖を体がうまくエネルギーに変えられなくなったり、糖をエネルギーに変えるホルモン(インスリン)が足りなくなったりして起こります。糖尿病の薬は、血糖をちょうどよい範囲に近づけて、目や腎臓、神経、血管を長い目で見て守るために使います。薬は「治すためだけのもの」ではなく、毎日の体調を安定させるための大切な道具です。
重要な事実
- 薬は、血糖を安定させて合併症を防ぐために続けるものです。飲み始めてすぐに体感がなくても、意味のある治療です。
- 薬には飲み薬や注射薬などいくつかの種類があり、体の状態や生活スタイルに合わせて医師が選びます。
- 自己判断で薬をやめたり量を変えたりすると、血糖が大きく乱れることがあります。気になることは医師や薬剤師に相談しましょう。
とてもよくある病気です。日本でも多くの人が糖尿病の治療を受け、薬を使って血糖をコントロールしています。決して特別なことではありません。
子どもから高齢者まで幅広くみられます。1型は子どもや若い人に多くみられ、2型は大人(特におなか周りに脂肪が多い人)に多いタイプです。妊娠中に一時的に血糖が高くなることもあります。
症状
- 意識がない、呼びかけても反応が鈍い、けいれんがある
- 呼吸が速く深い、息が苦しそうで、口が渇いて水がとれない
- 低血糖が疑われて糖分をとっても改善せず、意識がぼんやりしてくる
- 立てない、会話がかみ合わないなど、いつもと明らかに様子が違う
- ⚠冷や汗、手のふるえ、動悸、強い空腹感が続く(低血糖の疑い)
- ⚠吐き気や嘔吐、下痢が続いて水分がとれない
- ⚠発熱や感染症で食事がとれない(薬の調整が必要なことがあります)
- ⚠血糖値がとても高い状態が続き、だるさやのどの渇きが強い
- ⚠薬を自己判断で中止してしまい、体調がすぐれない
一般的な症状
- のどが渇く、水をよく飲むようになる
- トイレが近い、夜中に何度も起きておしっこに行く
- だるい、疲れやすい、やる気が出ない
- 食べているのに体重が減っていく
- 傷が治りにくい、皮膚がかゆい、肌が乾く
- 視界がぼんやりすることがある
- 薬が効きすぎたとき:冷や汗、手のふるえ、動悸、強い空腹感(低血糖とよびます)
子供の症状
- 急にのどが渇く、おしっこの回数が増える
- 元気がない、疲れやすい、授業に集中しにくい
- 体重が減る、おなかが痛い、気持ちが悪い
- トイレの失敗やおねしょが急に増える
- 1型では、数日で症状が強くなることがあるので早めの受診が大切です
高齢者の症状
- のどの渇きを感じにくく、症状が目立たないことがあります
- 低血糖のサイン(冷や汗、ふらつき)に気づきにくく、気づいたときには重くなっていることがあります
- 食事の量や飲み込み、腎臓のはたらきの変化で薬の効き方が変わりやすいです
- 体重や筋肉量が減りやすいので、食事と運動のバランスに注意が必要です
原因
主な原因
- 血糖を下げるホルモン(インスリン)が足りなくなる
- インスリンがあっても効きにくくなる(体が反応しにくくなる)
- 遺伝的な体質に、生活習慣・体重・年齢などが重なって起こる
- 1型は、体の免疫のしくみがインスリンを作る細胞を攻撃してしまうことで起こる
- 妊娠中のホルモンの変化で、一時的に血糖が高くなることがある
リスク要因
- 家族に糖尿病の人がいる
- おなか周りに脂肪が多い、体重が多い
- 運動不足、夜ふかし、食事の偏りや食べすぎ
- 年齢が上がるにつれてリスクが高まる
- 妊娠糖尿病を経験した、大きめの赤ちゃんを出産したことがある
- 血圧が高い、血中の脂質(コレステロールなど)が高い
- ステロイドなどの薬を長く使っている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 低血糖のような症状(冷や汗、ふるえ、動悸)が繰り返し起きる
- 嘔吐や下痢で水分がとれず、ぐったりしている
- 血糖値が非常に高い状態が続いている
- 薬を飲み忘れた・自己判断でやめてしまい、体調が悪い
- 発熱や感染症で食事がとれない日が続いている
定期受診を予約すべき場合:
- 薬が飲みにくい、副作用かもしれないと感じることがある
- 体重が増えた・減ったなど体の変化が気になる
- 健診で血糖値やHbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均をみる検査)が高いと言われた
- 薬の追加や変更について相談したい
- 妊娠を考えている、または妊娠した
- 食事や運動の習慣を見直したい
診断
糖尿病かどうかは、血液検査で血糖値とHbA1cを調べて判断します。すでに治療中の場合は、薬が効いているか、低血糖が起きていないか、体のほかの部分に負担が出ていないかを、定期的な検査と問診で確認していきます。
行われる可能性のある検査
- 血糖値の検査(空腹時や食後の値をみます)
- HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均をみる検査)
- 尿検査(尿の中の糖やケトン体を調べます)
- 腎臓・肝臓のはたらき、血中の脂質、血圧の検査
- 目(眼底)の検査、足の皮膚や感覚の確認
- 低血糖が起きていないかの問診や、自宅での血糖測定の記録
- まれに、どのタイプの糖尿病かを調べる追加の検査
診察で予想されること
診察では、薬を飲んだかどうか、血糖の記録、食事や運動、体調の変化、低血糖の有無などを聞かれます。注射や飲み薬の使い方、低血糖のときの対処についても、その場で確認できます。聞きたいことはメモしておくと安心です。
治療
糖尿病の治療は、食事・運動・薬の3つを組み合わせて進めます。薬は血糖をよい範囲に保つための支えであり、生活習慣の見直しと一緒に使うことで効果が高まります。治療の目標は人によって違うため、年齢や生活、ほかの病気に合わせて計画を立てます。
自宅でのセルフケア
- 決まった時間に食事をとり、主食を抜きすぎない
- 薬を飲む時間を、毎日の習慣(歯みがき、朝食など)にくっつけて忘れにくくする
- 血糖の記録をつけると、体の変化や薬の効き方が見えやすくなります
- 低血糖にそなえて、少量の糖分を持ち歩く
- 足の皮膚を毎日見て、傷や赤みがないか確認する
- 睡眠と休養を大切にし、体調が悪い日は無理をしない
- 市販薬やサプリを使う前には、薬剤師や医師に相談する
医療治療
薬には、飲み薬と注射薬があります。飲み薬には、体のインスリンのはたらきを助けるもの、糖の吸収をゆるやかにするもの、尿から糖を出しやすくするものなど、いくつかの種類があります。注射薬には、食事の影響をゆるやかにするものや、インスリンというホルモンを補うものがあります。どの薬も、効果と副作用の特徴がそれぞれ違うため、医師が体の状態に合わせて選び、薬剤師が使い方の説明をしてくれます。低血糖を起こしやすい薬もあるので、起きたときの対処をあらかじめ確認しておきましょう。
手術が検討される場合
手術や入院、大きな病気のときは、食事の内容や体の状態が急に変わるため、薬の種類や使い方を一時的に調整することがあります。手術の前には必ず、使っている薬(飲み薬・注射薬・市販薬・サプリメント)を医師と薬剤師に伝えてください。
この病気と共に生きる
薬は、毎日の暮らしの中に無理なく組み込むのがコツです。完璧にこなすことよりも、続けられる形をつくることが大切です。体調や生活が変わったら、そのつど相談して調整していきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 食事の時間をできるだけ決めて、ゆっくりよくかんで食べる
- 一日のどこかで体を動かす習慣をつくる(歩く、階段を使うなど)
- お酒は量と回数を意識し、飲む日は食事と薬のタイミングに注意する
- たばこは血管の負担を大きくするため、禁煙を考える
- 歯みがきと歯科の定期受診を習慣にする
- ストレスがたまる前に、自分なりの息抜きの方法をもつ
食事と運動
食事は、主食・野菜・たんぱく質をバランスよくとることが基本です。極端に減らすより、量と時間を整えるほうが続きます。運動は、息が少し弾む程度の軽いものを毎日少しずつ行うのがおすすめです。ただし、薬の種類によっては運動中や運動後に低血糖が起きることがあるので、主治医に確認しておきましょう。足にしびれや傷があるときは、運動の内容を相談してください。
精神的健康と心の健康
「自分だけが頑張っている」「先のことが不安」と感じることは珍しくありません。毎日の記録や食事の管理に疲れることもあると思います。そんなときは、頑張りすぎず、できていることに目を向けてみてください。気持ちが落ち込んで眠れない、何も楽しめないといった状態が続くときは、かかりつけ医や地域の相談窓口に早めに話してみましょう。気持ちがとてもつらいときは、一人で抱えず、医療機関や相談機関、緊急時は救急に連絡してください。
予防
1型は予防が難しいとされています。2型は、体重を適正に保つ、よく歩く、食事のバランスを整える、睡眠をとるといった生活習慣の見直しでリスクを下げられる可能性があります。すでに糖尿病がある場合でも、治療を続けることで合併症を防ぐことができます。
ワクチン
糖尿病があると感染症が重症化しやすくなることがあります。インフルエンザや肺炎などのワクチンについて、かかりつけ医や自治体の案内を確認し、相談してみましょう。
検診プログラム
特定健康診査(メタボ健診)や職場の健診で、血糖値とHbA1cを測ることができます。自覚症状がなくても、年に一度は健診を受けておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- 目の網膜の血管が傷む(糖尿病網膜症)
- 腎臓のはたらきが落ちる(糖尿病腎症)
- 手足のしびれや感覚の低下(糖尿病神経障害)
- 心筋梗塞や脳卒中などの血管の病気
- 足の傷が治りにくくなる、重症化する
- 歯周病や感染症にかかりやすくなる
- 低血糖が重くなり、意識を失うことがある
長期的な見通し
糖尿病は、うまく付き合っていける病気です。薬と生活習慣を組み合わせて血糖をよい範囲に保つことで、合併症のリスクは大きく下げられます。体調や生活が変わっても、そのつど相談して調整していけば大丈夫です。あせらず、自分のペースで続けていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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