背根神経節(DRG)刺激装置とは
概要
背根神経節(はいこんしんけいせつ、DRG)は、背骨の中を通る神経が脊髄に入る直前にある小さなふくらみで、体の感覚を脳へ伝える神経の細胞が集まっている場所です。DRG刺激装置は、この場所の近くに細い電極を置き、弱い電気の刺激で「痛みの信号」を伝わりにくくする治療用の医療機器です。装置は体外式の試験用から、体内に埋め込むタイプまであり、患者さん自身がリモコンで刺激の強さを調整できます。
重要な事実
- 脊髄刺激療法の一種で、特に脚や足など体の一部に限られた神経の痛みに向いています。
- まず「試験刺激」で効果を確かめ、効果が十分な場合に体内へ埋め込むのが一般的な流れです。
- すべての人に効く治療ではなく、適応があるかどうかは疼痛(とうつう)専門の医師が判断します。
- 日本では実施できる医療機関が限られており、地域によっては受けられないことがあります。
よくある治療ではありません。長く続く神経の痛み(慢性疼痛)の中でも、薬や神経ブロックなどで十分に楽にならない一部の患者さんに検討される、専門的な治療です。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)の後遺症による神経の痛み、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、手術やけがの後の神経の損傷による痛みなど、長期間続く神経の痛みで悩んでいる成人の方が対象になることが多いです。痛みが体全体ではなく、脚や足など決まった場所に強い場合に特に向いています。
症状
- 発熱に加えて、手術した傷が強く腫れる・赤くなる・膿(うみ)が出て、ぐったりしている
- 突然の激しい痛みで動けない、脚の力が急に入らない、歩けない
- 尿や便のコントロールができなくなる、脚の感覚が急になくなる
- 胸の痛み、息苦しさ、意識がもうろうとする
- ⚠傷の周りが赤く腫れてきた、熱っぽい、痛みが増してきた
- ⚠装置の部分に違和感や痛みがあり、触ると熱い
- ⚠刺激が急に効かなくなった、電極がずれたかもしれないと思う
- ⚠ピリピリした刺激が強すぎて我慢できない、リモコンで調整できない
- ⚠電池切れのサインが出た、充電しても動かない
一般的な症状
- 焼けるような痛み、電気が走るような痛み、ピリピリ・チクチクする痛みが続く
- 軽く触れただけでも痛む、服が当たるのがつらい
- 冷たさや温かさを異常に感じる、しびれや感覚の鈍さがある
- 痛みで眠れない、疲れやすい、気分が落ち込みやすい
- 痛みのある部分をかばうため、歩き方や姿勢が変わる
- 薬を飲んでも痛みが十分に減らない状態が長く続く
子供の症状
- この治療は主に成人を対象としており、小児では通常行われません。子どもの痛みについては、小児科や小児の痛みを専門とする医師に相談してください。
高齢者の症状
- 高齢の方は、糖尿病や心臓の病気などの持病、血が固まりにくくなる薬の使用などでリスクが変わるため、手術前の評価が特に大切です。
- 皮膚や組織が弱くなっていることがあり、傷のケアや感染予防に気を配る必要があります。
- 効果の感じ方やリモコンの操作に慣れるまで時間がかかることがあり、ご家族の協力が役立ちます。
原因
主な原因
- この治療の対象になるのは、神経が傷ついたり刺激に敏感になったりして起こる「神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)」と呼ばれる痛みです。
- 帯状疱疹の後に残る神経の痛み
- 手術やけがによる神経の損傷
- 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
- 糖尿病などによる末梢神経の障害
リスク要因
- 痛みが長期間(数か月以上)続いている
- これまでに複数回の手術を受けている
- 痛みが脚や足など、体の一部に限られている
- 薬や神経ブロックなどの治療で十分な効果が得られていない
- 治療そのもののリスクとしては、手術部位の感染、出血、電極の移動、機器の故障などがあります
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 手術した傷が赤く腫れる、膿が出る、38度以上の発熱がある
- 脚の力が急に入らない、感覚が急になくなる、排尿・排便の異常がある
- 刺激が急に強くなりすぎて我慢できない、または全く効かなくなった
定期受診を予約すべき場合:
- 痛みの強さや場所が変わったとき
- 刺激の設定を調整してほしいとき
- 電池の残量が少なくなってきた、充電のしかたを確認したいとき
- 眠れない日が続く、気分の落ち込みがある
- MRIや手術など、他の医療行為を受ける予定ができたとき(必ず事前に相談してください)
診断
まず問診と診察で、痛みの種類・場所・続いている期間、これまでの治療歴をくわしく確認します。そのうえで画像検査や神経の検査を行い、痛みの出どころを推定します。DRG刺激装置が合うかどうかは、こうした検査に加えて「試験刺激(トライアル)」で実際に効果があるかを確かめてから判断します。
行われる可能性のある検査
- 問診と痛みの評価(痛みの強さを点数で記録するなど)
- MRI(磁気共鳴画像)やCTなどの画像検査
- レントゲン検査
- 神経伝導検査など、神経の働きを調べる検査
- 神経ブロック(一時的に痛みの伝わりを止めて反応を見る検査)
- 試験刺激(体外式の装置で数日間試す。期間は施設によって異なります)
診察で予想されること
試験刺激では、背中に細い電極を入れ、体外の装置につないで数日間過ごします。その間に痛みがどのくらい軽くなるか、日常生活でどれだけ楽になるかを記録します。効果が十分と判断されれば、体内に装置を埋め込む手術へ進みます。入院か通院か、期間や費用の目安は施設によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。
治療
慢性の神経の痛みは、ひとつの方法ですべて解決するものではなく、いくつかの治療を組み合わせて進めます。まず薬による治療、神経ブロック注射、リハビリテーション、心理的なサポートなどを行い、それでも十分に楽にならない場合に、神経刺激療法のひとつとしてDRG刺激が検討されます。
自宅でのセルフケア
- 痛み日記をつけ、強さ・時間帯・きっかけを記録して主治医に見せる
- 無理をしない範囲で動き、長時間同じ姿勢を避ける
- 睡眠を大切にし、寝る前の刺激設定を調整する
- ストレスや緊張が痛みを強めることがあるため、自分なりの息抜きを持つ
- 装置の説明カードを持ち歩き、医療機関や歯科を受診したときに必ず見せる
- MRIなど受けられない検査があるため、検査の前に必ず装置のことを伝える
- 運転中や機械を操作している間はリモコンを操作しない
医療治療
治療は段階的に進みます。まず内服薬や貼り薬、神経ブロック注射、理学療法などを組み合わせ、必要に応じて心理的な支援も行います。それでも効果が不十分な場合に、脊髄刺激療法やDRG刺激療法などの神経刺激療法が検討されます。DRG刺激では、試験用の電極で効果を確認したうえで、体内に小さな装置を埋め込みます。刺激の強さやパターンは患者さん自身がリモコンで調整でき、通院での設定見直しも行います。薬の種類や量、治療の進め方は担当医の判断に従ってください。
手術が検討される場合
体内に装置を埋め込む処置は小手術にあたり、感染や出血、電極の移動などのリスクがあります。試験刺激で十分な効果が得られた場合に限って検討され、持病や飲んでいる薬の状況も含めて担当医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
装置が入った後は、痛みに合わせてリモコンで刺激を調整しながら生活します。充電式の場合は定期的な充電が必要です。入浴や運動、旅行などは多くの場合続けられますが、強い衝撃や磁気・電気を扱う場所などには注意が必要なことがあります。日常生活でできること・避けたほうがよいことは、施設によって指示が異なるため、退院前に確認しておきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 適度な運動とストレッチを習慣にする(痛みに合わせて無理なく)
- 禁煙を心がける(血の流れと神経の健康に関わります)
- 十分な睡眠と規則正しい生活
- 体重管理で腰や脚への負担を減らす
- 体を冷やしすぎない、疲れをためない
食事と運動
特別な食事制限が必要なわけではありませんが、バランスのよい食事と適度な運動は、痛みに負けない体づくりに役立ちます。運動は、痛みが強く出ない範囲で、歩行やストレッチなどから始めると続けやすくなります。リハビリの内容は医療機関の指示に従ってください。
精神的健康と心の健康
長く続く痛みは、眠れない日や気分の落ち込み、不安につながることがあります。これは弱さではなく、痛みが続くときによく起こることです。つらい気持ちが続くときは、かかりつけ医や疼痛専門のチームに早めに話してください。地域の保健所や精神保健福祉センターなどの相談窓口も利用できます。自分や身近な人が危険な状態にあると感じたら、ためらわずに119番へ連絡してください。
予防
神経の痛みそのものを完全に防ぐことは難しいですが、原因となる病気を早めに治療することが大切です。たとえば帯状疱疹は、予防するワクチンが存在します。対象年齢や接種の時期については、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
この治療に特に関連する決まった検診はありません。ただし、痛みが長引く場合は早めに医療機関を受診し、原因を調べることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 痛みが長く続くと、睡眠不足や疲れやすさ、気分の落ち込みが起こりやすくなります。
- 痛みに体が敏感になり、痛みの範囲が広がったように感じることがあります。
- 仕事や家事、外出の機会が減り、体力や筋力が低下することがあります。
- 人との交流が減り、孤立感を感じることがあります。
長期的な見通し
DRG刺激は、すべての方に効く治療ではありませんが、合う方にとっては痛みを和らげ、日常生活を過ごしやすくする助けになります。効果の感じ方には個人差があり、設定の調整を重ねながら少しずつ整えていきます。現在の痛みや治療の選択肢については、疼痛を専門とする医師やかかりつけ医に相談しながら、納得のいく方法を一緒に探していきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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