肛門からの出血(血便)について
概要
肛門(おしりの穴)から血が出ることを「直腸出血」や「血便」と呼びます。便に赤い血が混じる、トイレットペーパーに血がつく、便器の水が赤くなる、といった形で気づくことが多いです。多くは痔(じ)など命に関わらない原因で起こりますが、大腸がんや炎症性腸疾患(腸に炎症が続く病気)など、治療が必要な病気が隠れていることもあります。自分で見分けるのは難しいので、一度医療機関で相談することが大切です。
重要な事実
- 肛門からの出血の多くは、痔(いぼ痔・きれ痔)や肛門の皮膚が切れる裂肛(れっこう)など、命に関わらない原因によるものです。
- ただし、大腸がん、大腸ポリープ、炎症性腸疾患、腸の壁の小さなふくらみ(憩室)からの出血など、治療が必要な病気のサインのこともあります。
- 「たぶん痔だろう」と自己判断せず、まずはかかりつけ医や消化器の相談ができる医療機関を受診しましょう。恥ずかしい症状ではありません。
とてもよくある症状です。外来を受診する理由としても多いもので、痔は成人の多くの人が経験すると言われています。
子どもから高齢者まで、どの年齢でも起こります。痔や裂肛は成人に多く、大腸の病気による出血は年齢が上がるほど増えていきます。
症状
- 大量の出血が続いて止まらない、便器が真っ赤になる
- 意識がもうろうとする、失神する、立っていられない
- 顔面が真っ青、冷や汗がひどい、脈が速い、息苦しい
- 血を吐く、コーヒー色のものを吐く
- 子どもが激しく泣き続け、強いおなかの痛みといちごゼリーのような血便がある(腸重積の疑い)
- ⚠血便が2〜3日以上続く、または回数や量が増えている
- ⚠黒くタール状の便が出た
- ⚠強いおなかの痛みや発熱がある
- ⚠めまい、動悸、強い疲れやすさ(貧血のサインのことがあります)
- ⚠下痢と便秘をくり返す状態や、便の形が細くなった状態が2週間以上続く
一般的な症状
- トイレットペーパーに赤い血がつく
- 便の表面に血がつく、便に血が混じる
- 便器の水が赤くなる、出血がポタポタ落ちる
- 肛門の痛み、かゆみ、いぼのようなふくらみ
- 硬い便のときの排便時の痛み
- 便が黒くタールのようにねばる(体の上の方からの出血のことがあります)
- おなかの痛み、下痢、便秘、おなかの張り
子供の症状
- 硬い便で肛門の皮膚が切れる裂肛がもっとも多く見られます。便秘ぎみの子どもに多いです。
- 食物アレルギーなどによる腸の炎症で、少量の血が便に混じることがあります。
- 激しく泣き続ける、強いおなかの痛み、いちごゼリーのような血便があるときは、腸重積(ちょうじゅうせき)という緊急の病気の可能性があり、すぐに受診が必要です。
高齢者の症状
- 腸の壁の小さなふくらみ(憩室)からの出血が増えます。突然、痛みなく大量に出血することもあります。
- 大腸がんや大腸ポリープが見つかる割合が上がるため、出血があれば検査を受けることが大切です。
- 血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方は、出血が止まりにくいことがあります。内服薬は自己判断で中止せず、必ず医師に伝えてください。
- 出血が続くと貧血が進みやすく、ふらつき、動悸(どうき)、息切れが出ることがあります。
原因
主な原因
- 痔(いぼ痔・きれ痔)と裂肛(肛門の皮膚が切れること)— もっとも多い原因です
- 大腸憩室出血(腸の壁の小さなふくらみから出血する)
- 大腸ポリープ、大腸がん
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病など、腸に炎症が続く病気)
- 感染性腸炎(細菌やウイルスによる下痢)
- 虚血性腸炎(腸に流れる血液が一時的に足りなくなる状態)
- 上部消化管(胃・食道)からの出血(黒い便として出ることが多い)
リスク要因
- 便秘がち、水分や食物繊維が少ない食事
- 長時間座り続ける生活、強いいきみ
- 飲酒、喫煙
- 痛み止めの一部や、血液を固まりにくくする薬の使用(自己判断で中止しないでください)
- 年齢が上がること、家族に大腸がんの人がいること
- 炎症性腸疾患の既往、肥満、運動不足
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 出血量が多い、または止まらないとき
- 黒いタール状の便、血を吐く、コーヒー色の吐物があるとき
- 強いおなかの痛み、発熱、ぐったりしているとき
- ふらつき、動悸、息切れなど貧血を思わせる症状があるとき
定期受診を予約すべき場合:
- 少量の血がときどきつく、痔と言われたことがある
- 40歳以上で初めて血便が出た
- 家族に大腸がんの人がいる
- 体重が減っている、便が細くなった、おなかの張りが続く
診断
まず問診で、いつから、血の色は赤いか黒いか、量はどれくらいか、便に混じるのか、痛みがあるかなどを伺います。そのうえで肛門の診察を行い、必要に応じて大腸内視鏡(カメラ)などで出血の場所と原因を調べます。
行われる可能性のある検査
- 問診と視診、直腸指診(肛門に指を入れて触れる診察)
- 血液検査(貧血や炎症の有無を調べる)
- 便の検査(目に見えない血が混じっていないか、感染の有無など)
- 大腸内視鏡検査(肛門からカメラを入れて大腸全体を見る)
- S状結腸鏡検査(大腸の下の部分だけを見る、負担の少ない検査)
- 腹部CT検査
- 場合により上部消化管内視鏡検査(胃・食道の出血を調べる)
診察で予想されること
大腸内視鏡の前には、腸をきれいにするための下剤を飲み、トイレに何度か行きます。検査そのものはふつう10〜30分ほどで、鎮静剤を使って楽に受けることもできます。恥ずかしさや不安があれば、遠慮なく医師や看護師に伝えてください。
治療
治療は原因によって大きく変わります。多くは命に関わらない原因で、生活の工夫や簡単な治療で良くなります。まず原因をはっきりさせることが第一歩です。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとり、便が硬くなりすぎないようにする
- 食物繊維を少しずつ増やす(野菜、果物、海藻、きのこ、全粒穀物など)
- 便意を我慢しない。トイレに長く座らない、強くいきまない
- お尻はやさしく拭く。乾いた紙でこすらず、ぬるま湯で洗うか、柔らかい素材を使う
- 長時間の座りっぱなしを避け、ときどき立ち上がる
- 出血が多い日は、激しい運動や飲酒、長風呂を控えめにする
医療治療
原因に応じて、痔の炎症や痛みをやわらげる外用薬や坐薬、便を柔らかくする薬、内視鏡で出血点を止める処置、炎症性腸疾患に対する治療などが行われます。薬は医師・薬剤師の指示に従って使ってください。市販薬を長く使う前に、一度相談しましょう。
手術が検討される場合
内視鏡で止血できない出血、大きなポリープ、くり返して困る痔、大腸がんなどが見つかった場合には、手術が検討されます。
この病気と共に生きる
出血があった日時、血の色、量、便の硬さや回数をメモしておくと、診察のときに役立ちます。出血が多い日は無理をせず、体を休めましょう。
生活習慣のアドバイス
- 排便のリズムを整える(朝の時間に余裕を持つ、朝食をしっかりとる)
- 適度な運動を習慣にする
- 禁煙、節酒を心がける
- 長時間の座りっぱなしを避ける
- 体重を適正に保つ
食事と運動
水分と食物繊維をしっかりとることが基本です。急に増やすとおなかが張ることがあるので、少しずつ増やしましょう。ウォーキングなどの軽い運動は腸の動きを助け、便秘の予防にもなります。
精神的健康と心の健康
血を見ると「病気かもしれない」と不安になるのは自然なことです。多くは心配ない原因ですが、不安で眠れない、何度も考えこんでしまうというときは、一人で抱え込まずに医療者や身近な人に話してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、便秘を防ぎ、生活を整えることで、痔や裂肛による出血の多くは減らせます。大腸がんは、検診で早く見つけることがとても大切です。
検診プログラム
日本では、大腸がん検診として便潜血検査(便に目に見えない血が混じっていないかを調べる検査)が行われています。対象年齢や受け方はお住まいの自治体のご案内でご確認ください。血便がある場合は、検診を待たずに医療機関を受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 出血が続くことによる貧血(めまい、動悸、疲れやすさ、息切れ)
- 大量出血による血圧低下やショック
- 原因となっている病気(大腸がん、炎症性腸疾患など)の発見が遅れること
長期的な見通し
肛門からの出血の多くは、命に関わらない原因で、適切に対応すれば良くなります。気になる症状を早めに相談することが、いちばんの近道です。心配しすぎずに、まず一歩を踏み出してみてください。
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最終更新: 2026年11月3日
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