排尿痛(排尿時の痛み)
概要
排尿痛とは、おしっこ(尿)を出すときに、しみる・ヒリヒリする・チクチクする・痛いと感じる状態のことです。英語では「ディスユリア」と呼ばれます。多くは尿道(尿が体外に出てくる通り道)や膀胱(尿をためる袋)に軽い炎症が起きているサインで、決してめずらしいものではありません。ほとんどは治療やセルフケアで良くなりますが、ときには腎臓などへ広がる感染症の始まりのこともあるため、長引くときや熱を伴うときは早めに医療機関に相談しましょう。
重要な事実
- 排尿痛は「症状」であり、それ自体が病名ではありません。原因を調べることが大切です。
- 原因でもっとも多いのは、膀胱や尿道の細菌感染(尿路感染症)です。
- 多くの場合、適切な対応で数日から1週間ほどで改善します。ただし再発しやすいこともあります。
- 発熱や腰の痛みを伴うときは、感染が腎臓まで広がっている可能性があるため、早めの受診が必要です。
とてもよくある症状です。特に女性は尿道が短いため、膀胱炎(ぼうこうえん:膀胱に細菌が入って起こる炎症)になりやすく、排尿痛を経験する人が多くいます。男性や子ども、高齢者にも起こります。
赤ちゃんから高齢者まで、どの年代でも起こります。女性では20〜40代の性活動のある時期と、閉経後(腟の乾燥が進む時期)に多くみられます。男性では前立腺(男性だけにある、尿の通り道を取り囲む器官)のトラブルに伴って起こることがあります。赤ちゃんや高齢者は症状をうまく伝えられないことがあるため、まわりの人の観察が大切です。
症状
- 高熱と一緒に、腰や背中を強く痛がる、震えが止まらない(悪寒戦慄:がくがく震える状態)
- 意識がぼんやりしている、呼びかけへの反応がにぶい
- 顔色が悪い、冷汗が出る、血圧が下がったようにみえる、呼吸が苦しい
- 尿がまったく出ない、お腹が張って激痛がある(尿閉:尿がためられたまま出せない状態)
- 血の塊が混じるような尿が続く、出血が止まらない
- ⚠38度以上の発熱がある
- ⚠目で見てわかる血尿がある
- ⚠片側の腰から背中にかけての痛みがある
- ⚠妊娠中、または出産後まもない
- ⚠糖尿病や、免疫の力を下げる治療を受けている
- ⚠症状が2日以上続く、または日ごとに悪くなっている
- ⚠小さな子どもや高齢者で、元気がない・水分がとれない
一般的な症状
- おしっこをするときにしみる、ヒリヒリする、チクチクする
- トイレが近い(頻尿)、急に行きたくなる(尿意切迫)
- おしっこを出し切った感じがしない、すっきりしない
- 尿が濁る、白くにごる
- 尿がいつもと違うにおいがする
- 下腹部(おへその下)の重い感じ、軽い痛み、張り
- 尿に血が混じる(血尿)
- 外陰部や尿道の入り口のかゆみ・違和感
子供の症状
- おしっこをするたびに泣く、トイレを嫌がる
- おむつから出た尿のにおいが強い、色が濃い
- 理由がはっきりしない発熱
- お腹を押さえて痛がる、食欲がない、元気がない
- 昼間のおもらしが増える、夜尿が急に戻る
- 乳幼児では、ぐずる・哺乳量が減る・機嫌が悪いなど、痛みを言葉にできないサイン
高齢者の症状
- 発熱やだるさだけが目立ち、痛みを感じていないようにみえることがある
- 急に元気がなくなる、食欲が落ちる、ぼんやりする(せん妄:一時的に意識が混乱する状態)
- トイレの回数が増える、間に合わずおもらしをする
- 転倒が増える、歩行が不安定になる
- 尿のにおいが強くなる、尿の色が濃くなる
原因
主な原因
- 膀胱炎:膀胱に細菌が入って起こる炎症。排尿痛の原因としてもっとも多いものです。
- 尿道炎:尿道に炎症が起きるもの。性感染症が原因になることもあります。
- 性感染症:クラミジアや淋菌などによる感染で、排尿時の痛みや分泌物が出ることがあります。
- 前立腺炎:男性の前立腺に炎症が起きた状態。発熱や下腹部・会陰部の痛みを伴うことがあります。
- 腟炎・外陰炎:女性で、腟や外陰部の炎症が尿道の入り口を刺激して痛みを感じることがあります。
- 尿路結石:石が尿道を通るときに強い痛みを引き起こします。
- 刺激によるもの:石けん、ボディソープ、入浴剤、おりものシート、コンドーム、潤滑剤、ナプキンなどがしみる場合があります。
- 閉経後の腟の乾燥:女性ホルモンの変化で粘膜が敏感になり、しみることがあります。
- カテーテル(尿を体外に出す管)の長期使用や、膀胱の慢性的な炎症(間質性膀胱炎など)
リスク要因
- 女性であること(尿道が短く、細菌が入りやすい)
- 性活動があること(性行為のあとは特に注意)
- 水分をあまりとらない、排尿を長く我慢する
- 便秘(腸にたまった便が膀胱を圧迫する)
- 妊娠中、閉経後
- 糖尿病などの基礎疾患がある
- 免疫の力を下げる治療を受けている
- 尿の通り道に管を入れている、過去に尿路感染症を繰り返している
- 前立腺の肥大など、尿の流れが悪くなる状態がある
- 香りの強い洗浄剤や刺激の強い製品をデリケートな部分に使う
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱、悪寒、腰の痛みがある(腎盂腎炎:細菌が腎臓まで広がった状態の可能性)
- 目で見てわかる血尿がある
- 尿がほとんど出ない、お腹が張って痛い
- 妊娠中に排尿痛がある
- 糖尿病や免疫低下のある方に排尿痛が出た
- 子どもや高齢者で元気がない、水分がとれない
- 症状が急に強くなった、痛みで眠れない
定期受診を予約すべき場合:
- 排尿時の痛みやしみる感じが2日以上続く
- トイレの回数が増えた、尿が濁る、においが気になる
- 市販の鎮痛薬を使っても改善しない
- 同じような症状を繰り返している(半年に2回以上など)
- パートナーにも症状がある、性感染症が心配される
- 閉経後で、しみる感じや乾燥が続いている
診断
まず問診で、いつから、どんな痛みか、回数や尿の色、発熱の有無、性活動の有無、妊娠の可能性などを確認します。そのうえで尿検査を行い、尿の中の白血球や細菌の有無を調べるのが一般的です。多くの場合、診察と尿検査だけで原因の見当がつきます。必要に応じて、より詳しい検査や専門科への紹介が行われます。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(試験紙で血尿・白血球・細菌の目安を調べる、いちばん基本的な検査)
- 尿培養検査(尿の中の細菌を育てて、どの菌かを調べる検査。結果に数日かかります)
- 血液検査(発熱があるとき、感染の広がりや全身状態を確認)
- 超音波(エコー)検査(腎臓・膀胱・前立腺の形や、尿がたまっていないかを確認)
- 画像検査(結石や尿の通り道の形を調べるため、必要に応じて)
- 婦人科的な診察や性感染症の検査(必要と判断された場合)
診察で予想されること
受診の際は、できれば朝の尿を清潔な容器にとっていくとスムーズです(医療機関で採尿することも多いので、事前に受付で確認してください)。検査結果は尿検査ならその日のうちに、尿培養は数日かかることがあります。診察は短時間で終わることが多く、痛みがあることを伝えれば配慮してもらえます。恥ずかしいと感じる必要はありません。医師は日常的にこうした相談を受けています。
治療
治療は原因によって変わります。細菌による膀胱炎などが多いため、まずは原因をはっきりさせることが大切です。軽い場合は水分をしっかりとって排尿を促すだけで改善することもあります。症状がつらいときは、原因に応じた治療とセルフケアを組み合わせていきます。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとる(1日にコップ6〜8杯程度が目安。ただし心臓や腎臓の病気で水分制限を指示されている方は主治医の指示に従ってください)
- 尿意を感じたら我慢せず、早めにトイレへ行く
- 下腹部を温める(温かいタオルやカイロ。やけどに注意し、直接肌に当てない)
- 石けん・入浴剤・香りの強い製品・スプレーなど、しみる可能性のあるものをデリケートな部分に使わない
- コーヒー・アルコール・炭酸飲料・辛い食べ物など刺激の強いものを一時的に控えてみる
- 性行為のあとは、排尿してから優しく洗う
- 便秘を避ける(食物繊維と水分をとる)
- 痛みがつらいときの市販の鎮痛薬は、かかりつけ医や薬剤師に相談してから使う(妊娠中・持病のある方は特に相談が必要です)
医療治療
原因に応じた治療が行われます。細菌が原因の場合は、医師の判断で抗菌薬(細菌を減らす薬)が使われることがあります。処方された場合は、症状が良くなっても指示された期間を最後まで使うことが再発予防に大切です。性感染症が疑われる場合は、パートナーも一緒に検査・治療を受けることが勧められます。閉経後の腟の乾燥が原因の場合は、かかりつけ医と相談のうえで腟の保湿ケアなどが検討されます。尿路結石や前立腺のトラブルが背景にある場合は、専門科での対応が必要になります。薬の名前や量は、あなたの状況によって変わるため、必ず医師・薬剤師の説明に従ってください。
手術が検討される場合
多くの排尿痛は手術を必要としません。手術が検討されるのは、尿路結石が大きい・痛みが強い・尿の流れを妨げている場合、前立腺の肥大で尿が出にくい場合、尿の通り道に生まれつきの形の異常がある場合など、限られたケースです。必要かどうかは専門科の医師が検査結果をもとに判断します。
この病気と共に生きる
症状があるあいだは、トイレの場所が気になったり、出先で痛みが来ないか不安になったりするものです。水分をとり、我慢せずにトイレに行く習慣をつけると、多くは数日で落ち着いてきます。つらさが続くときは無理をせず、仕事や予定を調整して休むことも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 水分補給を習慣にする(起床時、食事のとき、入浴後など決まったタイミングで)
- トイレを我慢しない、出先でも早めに行く
- デリケートな部分は香りの少ない優しい洗浄剤で、洗いすぎない
- 通気性のよい下着を選び、締めつけの強い衣類を避ける
- 便秘を防ぐ(食物繊維・水分・軽い運動)
- 性行為のあとは排尿と清潔を心がける
- 疲れや睡眠不足をためない(免疫力を保つ)
食事と運動
特別な食事制限は必要ありませんが、バランスのよい食事と十分な水分が基本です。膀胱を刺激しやすいコーヒー・紅茶・アルコール・炭酸・辛い食べ物は、症状が強いあいだだけ控えてみるのも一つの方法です。ビタミンCを含む食品(果物・野菜)を意識するとよいという考えもありますが、サプリメントで大量にとる場合はかかりつけ医に相談してください。運動は軽い散歩やストレッチなど無理のない範囲で続けましょう。便秘予防にもつながります。症状が強いあいだは、汗を大量にかく激しい運動は水分バランスを崩すことがあるため、こまめな水分補給を忘れずに。
精神的健康と心の健康
排尿痛は命に関わることは少ないものの、「また痛くなったらどうしよう」「トイレのことを考えてしまう」といった不安や、外出を控えてしまう気持ちにつながることがあります。繰り返す場合は特に、つらさを一人で抱え込みがちです。不安が続くときや気分が落ち込むときは、かかりつけ医に相談してください。日本では、厚生労働省が相談窓口の情報を公開しており、お住まいの自治体の保健所や精神保健福祉センターでも相談できます。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の相談窓口に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、日常生活の工夫である程度リスクを下げられます。水分をしっかりとって排尿を我慢しないこと、便秘を防ぐこと、デリケートな部分を刺激の強い製品で洗いすぎないことが基本です。性行為のあとに排尿する習慣も役立ちます。繰り返す場合は、背景に別の原因が隠れていることがあるため、医療機関で一度詳しく相談してみましょう。
ワクチン
現在、日本で一般的に受けられる尿路感染症そのものを防ぐワクチンはありません。他の予防接種や健康状態については、かかりつけ医にご相談ください。
検診プログラム
症状がない場合に、排尿痛を目的とした特別なスクリーニング検査はありません。ただし、健康診断の尿検査で血尿やたんぱく尿が見つかることがあり、その場合は再検査や医療機関への相談が勧められます。健診結果で気になる項目があれば、放置せずにかかりつけ医に確認しましょう。
合併症
治療しない場合
- 感染が腎臓に広がる(腎盂腎炎):高熱や腰の痛みを伴い、入院が必要になることがあります
- 感染が血液に広がる(敗血症):まれですが重い状態で、早期の治療が必要です
- 症状が長引いて日常生活がつらくなる、睡眠や仕事に支障が出る
- 繰り返す膀胱炎により、生活の質が下がる
- 尿路結石による尿の流れの停滞や、腎機能への負担
- 性感染症の場合、気づかないままパートナーに感染が広がる、妊娠・出産への影響が出る可能性がある
長期的な見通し
ほとんどの排尿痛は、原因を確かめて適切に対応すれば数日から1週間ほどで良くなります。つらい症状ではありますが、多くは治療と少しの工夫で改善するものです。繰り返す場合や長引く場合でも、背景にある原因を一緒に見つけていくことで、対処法は必ずあります。心配なときは早めに医療機関に相談し、一人で抱え込まないでください。
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最終更新: 2026年11月3日
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