精巣(睾丸)の痛み
概要
精巣(せいそう)は、いわゆる「睾丸(こうがん)」のことです。陰嚢(いんのう)という袋の中に左右ひとつずつ入っていて、精子と男性ホルモンをつくる大切な器官です。精巣の痛みとは、この部分に感じる痛みや違和感のことで、軽く押すと痛い程度のものから、歩くのもつらいほど強いものまでさまざまです。痛みの原因は、ぶつけたなどの軽いものから、血流が急に悪くなる「精巣捻転(せいそうねんてん)」のように、すぐに病院で処置が必要なものまで幅広くあります。痛みの強さだけでは危険かどうかを判断できないこともあるため、急に強く痛み出したときは早めに医療機関に相談することが大切です。
重要な事実
- 精巣の痛みは、子どもから大人まで幅広い年齢で起こります。
- 急に強い痛みが出た場合、精巣捻転という緊急の病気が隠れていることがあり、数時間以内の処置が重要になります。
- 痛みの原因は、けが、感染・炎症、捻転、ヘルニア(腸などが飛び出す状態)など多岐にわたります。
- 超音波検査などで比較的早く原因を絞り込めることが多く、多くは適切な治療で改善します。
精巣の痛みは、救急外来や泌尿器科を受診する理由として決してめずらしいものではありません。特に思春期の男の子では、精巣捻転が比較的多くみられます。成人では、感染や炎症、けがによる痛みがよくみられます。
赤ちゃんから高齢者まで、男性ならどの年齢でも起こりえます。とくに12〜18歳ごろの思春期は精巣捻転のリスクが高まると言われています。また、尿道炎などの感染症がある人、スポーツや作業で陰嚢をぶつけやすい人、鼠径ヘルニア(そけいヘルニア)がある人も注意が必要です。
症状
- 突然、耐えられないほどの強い精巣の痛みが起きた(精巣捻転の可能性)
- 痛みとともに意識がもうろうとする、ショック状態のような様子がある
- 陰嚢を強く打ったあと、急に大きく腫れて激しく痛む
- 激しい痛みとともに繰り返す嘔吐や冷や汗があり、水分もとれない
- ⚠陰嚢の腫れや赤みが数時間で強くなってきた
- ⚠発熱を伴う陰嚢の痛みがある
- ⚠排尿時の痛みや膿(うみ)のような分泌物がある
- ⚠精巣が上のほうに引き上げられたように感じる、位置がいつもと違う
- ⚠痛みが数日続く、または少しずつ強くなっている
一般的な症状
- 片方の精巣、または陰嚢全体の痛みや圧痛(押すと痛むこと)
- 陰嚢が腫れる、赤くなる、熱っぽく感じる
- 下腹部やそけい部(足のつけ根)に広がる痛み
- 歩く、座る、服が触れるだけで痛む
- 吐き気や気分が悪くなる、冷や汗が出る
- 発熱や排尿時の痛みを伴うことがある
子供の症状
- 言葉で痛みをうまく伝えられず、不機嫌になる、泣き続ける、歩き方をかばう
- 陰嚢が腫れている、左右の大きさが違う
- おなかの痛みとして訴えることがある
- 吐き気や嘔吐(おうと)を伴うことがある
高齢者の症状
- 痛みを感じにくかったり、別の病気の症状と混ざって気づきにくいことがある
- 鼠径ヘルニア(腸などが飛び出す状態)が原因となっている場合がある
- 前立腺や尿路の病気による痛みが関係していることもある
- 持病の影響で症状が強く出たり、治りが遅くなることがある
原因
主な原因
- 精巣捻転(せいそうねんてん):精巣につながる組織がねじれ、血流が悪くなる緊急の状態
- 精巣上体炎(せいそうじょうたいえん):精巣のすぐ横の管に炎症が起きる状態。細菌やウイルスが原因になる
- 精巣炎:ウイルス感染などで精巣そのものに炎症が起きる
- けが:スポーツや事故で陰嚢をぶつける、圧迫される
- 鼠径ヘルニア:腸などがそけい部から飛び出し、痛みや腫れの原因になる
- 精巣水瘤(すいりゅう)や精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)など、阴嚢内の構造の変化
- 尿管結石:石が尿道の途中で詰まり、下腹部から陰嚢にかけて痛みが広がることがある
- 原因がはっきりしないこともある(長時間座っていた、寒さ、強い緊張など)
リスク要因
- 思春期(12〜18歳ごろ)の男の子
- 精巣捻転の既往(一度なったことがある)や、家族に経験者がいる
- 陰嚢をぶつけやすいスポーツや仕事をしている
- 尿道炎などの性感染症、尿路感染症がある
- 鼠径ヘルニアがある、または以前に手術を受けたことがある
- 長時間同じ姿勢で座る、冷え、疲労が重なっている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の強い精巣の痛み、または陰嚢の急な腫れがある(時間との勝負になることがあります)
- 痛みで歩けない、眠れない、吐き気が強い
- 発熱と陰嚢の赤み・腫れがある
- 排尿の痛みや分泌物がある
- 痛みが24時間以上続いている、または強くなっている
定期受診を予約すべき場合:
- ときどき軽い違和感や痛みがあるが、日常生活に支障はない
- 陰嚢の左右の大きさや形が以前と違うと感じる
- 運動後や長時間座った後に決まって痛くなる
- おなかの下のほうに張りや重さを感じる
診断
まず問診で、いつから痛むのか、突然かゆるやかか、けがの心当たり、発熱や排尿の症状、既往歴などを確認します。そのうえで陰嚢を直接診察し、腫れ・赤み・押したときの痛み・精巣の位置や向きを確かめます。精巣捻転が疑われる場合は、確定のために時間をかけず、超音波検査などですみやかに血流を調べます。
行われる可能性のある検査
- 視診・触診(陰嚢の腫れ、赤み、精巣の位置や向き、押したときの痛みを確認)
- 超音波検査(精巣への血流や、腫れ・水のたまりを調べる)
- 尿検査(感染や炎症の有無を調べる)
- 血液検査(炎症の程度や感染の有無を確認)
- 必要に応じて性感染症の検査、画像検査(CTなど)
- 痛みの原因がわからない場合の経過観察や再診
診察で予想されること
診察では陰嚢を触る検査があるため、恥ずかしさや緊張を感じるかもしれません。医師・看護師は配慮しながら行いますので、不安なことは遠慮なく伝えてください。超音波検査は痛みがなく、数分から十数分で終わることが多いです。精巣捻転が強く疑われる場合は、検査を待たずに治療を優先することがあります。
治療
治療は原因によって変わります。血流が悪くなっている精巣捻転が疑われる場合は、できるだけ早く処置を行うことが最優先です。感染や炎症が原因の場合は、体を休めて炎症を抑える治療が中心になります。けがによる場合は、安静と冷やすなどの対応が基本です。いずれの場合も、自己判断で痛みを我慢し続けず、医師の診察を受けることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 痛みがあるときは無理に動かず、安静にする
- 陰嚢を下から支えるように下着(サポーターなど)を着用し、揺れを減らす
- けがの直後は、清潔なタオルなどで包んだ冷たいもので冷やす(長時間冷やし続けない)
- 痛みや腫れが強くなる様子があれば、冷やすだけで済ませず受診する
- 入浴や運動は、痛みが落ち着くまで控えめにする
- 水分をとり、排尿を我慢しない
医療治療
原因に応じて、炎症を鎮める治療、感染が疑われる場合の治療、痛みをやわらげる対応などが行われます。使う薬の種類や量は医師が状態を見て判断しますので、自分で市販薬を選んだり、人からもらった薬を使ったりしないでください。処方された薬は、指示された使い方を守り、気になる副作用があれば薬剤師や医師に相談しましょう。
手術が検討される場合
精巣捻転が疑われる場合は、血流を回復させるために緊急の手術が必要になることがあります。また、精巣捻転を繰り返す場合に、予防のための手術が検討されることもあります。鼠径ヘルニアや、陰嚢内に水がたまる状態などが原因の場合は、症状に応じて手術が検討されます。手術が必要かどうかは、検査結果と全身の状態をふまえて医師が判断します。
この病気と共に生きる
痛みがある間は、長時間の立ち仕事や激しい運動を控え、こまめに休憩をとりましょう。下着は陰嚢を支えられるものを選ぶと、歩くときの負担が軽くなります。痛みの変化をメモしておくと、受診のときに医師へ伝えやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 長時間同じ姿勢で座り続けず、ときどき立ち上がって体を動かす
- スポーツ時は、必要に応じてサポーターなどで保護する
- 睡眠と休息を十分にとり、疲労をためない
- 陰嚢をぶつけやすい場面では、防具や服装で身を守る
- 排尿を我慢しない、水分をこまめにとる
- 喫煙は血流に影響するため、禁煙を検討する
食事と運動
特別な食事制限が必要になることは多くありません。バランスのよい食事と適度な水分摂取を心がけましょう。運動は、痛みが落ち着いてから無理のない範囲で再開し、違和感があれば中止して医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
デリケートな場所の痛みは、人に話しづらく、不安や恥ずかしさ、ストレスを感じることがあります。パートナーや家族に伝えにくい気持ちがあっても、それは自然なことです。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけ医や地域の相談窓口に話してみてください。気持ちが追い詰められている、自分を傷つけたい気持ちがわいてくるといったときは、すぐに医療機関や地域の緊急相談窓口に連絡してください。
予防
すべての精巣の痛みを防ぐことはできませんが、けがを避ける工夫や、感染症への注意、早めの受診によって重症化のリスクを下げられます。精巣捻転は予防が難しい面もありますが、一度なったことがある場合は再発防止の相談ができます。
ワクチン
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は精巣炎の原因になることがあります。定期予防接種の対象になっている場合は、自治体の案内を確認し、受け忘れがないようにしましょう。ワクチンの種類や時期については、かかりつけ医や自治体の窓口に相談してください。
検診プログラム
精巣の痛みに対する決まった健診はありません。入浴時などに陰嚢の大きさや形、しこりの有無を自分で確認する習慣を持つと、変化に気づきやすくなります。気になる変化があれば、自己判断せず医療機関に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 精巣捻転では、血流が戻らず精巣の機能が失われることがある
- 感染や炎症が広がり、膿(うみ)がたまる状態になることがある
- 強い痛みが続き、睡眠や仕事・学業に支障が出る
- 将来の精子のつくりやホルモン分泌に影響が出る可能性がある
- 不安やストレスが長引き、生活の質が下がることがある
長期的な見通し
多くのは、原因に応じた適切な治療で痛みが軽くなり、日常生活に戻れます。精巣捻転は時間が勝負になるため、早く受診することが結果を左右します。急な痛みを我慢せず、すぐに相談することが、いちばんの近道です。
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最終更新: 2026年11月3日
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