息切れ・呼吸が苦しいとき(呼吸困難)
概要
呼吸困難(こきゅうこんなん)とは、息が苦しい、息が足りない、うまく空気を吸えないと感じる状態のことです。日本語では「息切れ」「息苦しさ」とも呼ばれます。息苦しさは、肺や気道(空気の通り道)、心臓、血液、筋肉など、体のいろいろな部分の働きが関係して起こります。そのため「息が苦しい」という一つの症状だけでは原因は決められず、医師がいくつかの検査を組み合わせて考えていきます。階段をのぼったときの軽い息切れのように、体が一生懸命働いたときの自然な反応のこともありますし、病気が隠れていることもあります。大切なのは、いつもと違う息苦しさや、繰り返す息苦しさがあるときは、我慢せずに医療機関に相談することです。
重要な事実
- 息苦しさの原因は、肺や気道の病気、心臓の病気、貧血、体力の低下、不安など、とても幅広いです。
- 急に始まった強い息苦しさや、胸の痛み・意識の変化をともなう息苦しさは、命に関わることがあるため、すぐに救急(119番)を呼ぶ必要があります。
- 息苦しさの感じ方は人によって違います。子どもや高齢者はうまく言葉で伝えられないことがあるので、まわりの人の観察が大切です。
- 原因がわかれば、その人に合った対処法があります。あきらめずに相談することが大切です。
息切れや息苦しさは、外来を受診する理由としてとても多い症状の一つです。年齢を問わず起こりますが、特に高齢の方ではよくみられます。すべての息切れが重い病気というわけではありませんが、原因を確かめておくことで安心につながります。
息苦しさは、生まれたばかりの赤ちゃんから高齢の方まで、どの年代にも起こります。特に、たばこを吸う方・吸ってきた方、心臓や肺の病気がある方、アレルギーや喘息のある方、体重が多い方、体力が落ちている方、妊娠中の方、贫血(血液が薄くなった状態)のある方では起こりやすくなります。健康な方でも、急な運動や高い場所、暑さ・寒さ、強い不安で息苦しさを感じることがあります。
症状
- 突然はじまった、これまでにない強い息苦しさ
- 胸の痛みや圧迫感をともなう息苦しさ
- 唇や爪が青白い・青紫色になっている
- 短い言葉しか話せない、息継ぎができないほど苦しい
- 意識がもうろうとしている、返事がおかしい、倒れた
- 呼吸が止まった、または呼吸がとても弱い
- 顔やのどのはれ、じんましんをともなう息苦しさ(アナフィラキシーが疑われるとき)
- 喘息の発作がひどく、いつもの薬が効かない、会話ができない
- ⚠数日かけて息切れがはっきり悪くなってきた
- ⚠発熱や黄色・緑色の痰をともなう咳が続く
- ⚠横になると息苦しく、座らないと眠れない
- ⚠足のむくみが急に出てきた、体重が数日で増えた
- ⚠歩ける距離や階段の段数が、この数日で急に減った
- ⚠安静にしていても息苦しさが続いている
一般的な症状
- 階段や坂道でのぼったときに息が上がる、動くと息苦しい
- 安静にしていても息が足りない感じがする
- 横になると息苦しくなり、座ると楽になる
- 夜中や明け方に息苦しさで目が覚める
- 息を吸う・吐くときにゼーゼー、ヒューヒューという音がする
- 長びく咳(せき)や痰(たん)がある
- 動悸(どうき)や胸の不快感をともなう
- 疲れやすい、すぐにへとへとになる
- 唇や爪の色が青白く見えることがある
- 話すときに息継ぎが増える、長い文章を話すのがつらい
子供の症状
- 授乳(おっぱい・ミルク)を途中でやめてしまう、飲み続けられない
- 呼吸が大人より明らかに速い、小さい胸が大きく動く
- 肋骨(ろっこつ)の間やのどもとが、息を吸うたびにへこむ
- 鼻の穴がふくらむように息をする(鼻翼呼吸)
- ゼーゼー、ヒューヒューという音がする、咳が続く
- ぐったりして元気がない、遊ばない、泣き声が弱い
- 顔色が悪い、唇が青っぽい
高齢者の症状
- 「息苦しい」と言わずに、なんとなく元気がない・食欲がない・動かないという形で現れることがある
- 少し歩いただけで立ち止まる、休む回数が増えた
- 足や足首のむくみ、体重の急な増加
- 夜中に何度も起きる、枕を高くしないと眠れない
- 軽い息切れでも、肺炎や心不全など重い病気のサインのことがある
- 息苦しさのため、食事や入浴、トイレを控えてしまう
原因
主な原因
- 気道や肺の病気:喘息(ぜんそく)、慢性閉塞性肺疾患(COPD・たばこなどで肺が傷む病気)、肺炎、気管支炎、間質性肺炎(肺の壁が厚くなる病気)、肺血栓塞栓症(肺の血管が詰まる病気)、気胸(肺に穴があく状態)
- 心臓の病気:心不全(心臓のポンプが弱った状態)、不整脈(脈の乱れ)、狭心症・心筋梗塞(心臓の血管の病気)、弁膜症
- 血液の病気:贫血(酸素を運ぶ力が弱くなる状態)
- 体力・筋肉の低下:運動不足や加齢で、動いたときの息切れが強くなる
- 体重や体型:肥満があると、体を動かすのに多くの酸素が必要になる
- 心の問題:不安やパニック、ストレスで息苦しさを感じることがある(ただし、まず体の病気を除外することが大切です)
- その他:甲状腺(こうじょうせん)の病気、アレルギー、感染症の後遺症、妊娠、暑さ・寒さ・高い場所などの環境要因
リスク要因
- たばこを吸う、または吸ってきた(受動喫煙を含む)
- 心臓や肺の病気がある、過去に治療を受けたことがある
- 喘息やアレルギー、アトピーの体質がある
- 高齢である
- 体重が多い、運動不足である
- 贫血がある
- 長い間同じ姿勢でいた、手術後や旅行中など動かない時間が長かった(血栓のリスク)
- 粉じん・ほこり・化学物質などの職業的な曝露(ばくろ)がある
- 妊娠中である
- 強い不安やストレスを抱えている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に息苦しくなった、または短時間で悪化している
- 胸の痛み、動悸、冷や汗をともなう
- 唇や爪の色が青っぽい
- 発熱が続き、息苦しさが強い
- 足のむくみが急に出た、体重が急に増えた
- 安静にしていても息が苦しく、横になれない
定期受診を予約すべき場合:
- 以前より階段や坂道がつらくなった、息切れしやすくなった
- 咳や痰が2〜3週間以上続いている
- 夜中や明け方に息苦しさで目が覚めることがある
- ゼーゼー・ヒューヒューという音が出ることがある
- 息切れのせいで、買い物や家事、外出を控えるようになった
- たばこを吸っていて、少し動いただけで息が上がるようになった
- 理由がはっきりしない息切れが続いている
診断
診察では、まず「いつから」「どんなときに」「どのくらい続くか」「横になるとどうか」などを医師が丁寧に聞きます。そのうえで、聴診器で胸の音を聞いたり、指先にはさんで酸素の量を測る機械(パルスオキシメーター)を使ったりして、体の状態を確かめます。息苦しさの原因は一つとは限らないため、肺・心臓・血液などの視点から、必要に応じて検査を組み合わせていきます。検査は痛みの少ないものが中心です。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状の出方、生活習慣、たばこ、過去の病気などを確認)
- 身体診察と聴診(胸の音、呼吸の様子、むくみの有無など)
- パルスオキシメーター(指先で血中の酸素の量を測る)
- 胸部レントゲン(X線)検査
- 心電図、必要に応じて心臓の超音波(エコー)検査
- 血液検査(贫血や炎症、心臓の負担などを調べる)
- 呼吸機能検査(息を思い切り吸ったり吐いたりして肺の働きを調べる)
- 胸部CT検査(レントゲンでわからない細かい変化を調べる)
- 痰(たん)の検査、アレルギーの検査
- 必要に応じて、運動した状態での検査や睡眠中の呼吸を調べる検査
診察で予想されること
検査の多くは短時間で終わり、痛みもほとんどありません。呼吸機能検査では、鼻をとめて口だけで息を吸ったり吐いたりするので、少し疲れることがあります。検査の結果が出るまでに数日かかることもあります。診察のときに「どんなときに息苦しくなるか」「どのくらい続くか」をメモしておくと、診断の助けになります。わからないことは遠慮なく医師や看護師にたずねてください。
治療
息苦しさの治療は、原因によってまったく変わります。ですから、まず原因を確かめることが治療の第一歩です。原因に合わせて、生活の工夫と、必要に応じた医療的な治療を組み合わせていきます。治療の目標は、息苦しさを減らして、日常生活を快適に送れるようにすることです。具体的な治療方針は、医師と相談しながら決めていきます。
自宅でのセルフケア
- たばこを吸っている場合は、禁煙を目指す(受動喫煙も避ける)
- 医師から処方された薬は、症状がないときも指示どおりに使う
- 無理をせず、動作の合間に休憩を入れる(歩く・階段・入浴など)
- ゆっくりとした呼吸を意識する(鼻から吸って、口から細く長く吐く)
- 部屋の湿度・温度を整え、ほこりや煙、強い香りを避ける
- かぜや感染症にかからないよう、手洗い・うがいを心がける
- 体重や症状の変化を記録しておくと、受診時に役立つ
- 息苦しさが強い日は、予定を詰めこまず、早めに休む
- かかりつけ医を決めて、定期的に相談できるようにしておく
医療治療
治療は原因によって大きく異なります。肺や気道の病気が原因の場合は、気道の炎症を抑えたり、気道を広げたりする吸入薬などを用いることがあります。心臓の病気が原因の場合は、心臓の負担を減らす治療や、塩分・水分の管理を行うことがあります。贫血が原因の場合は、その原因に応じた対応をします。感染症が原因なら、原因となる病原体に応じた治療を行います。酸素の量が足りない場合には、在宅で酸素を使う治療が検討されることもあります。また、呼吸の仕方を学ぶリハビリテーション(呼吸リハビリ)も、息苦しさをやわらげる助けになります。どの治療が合うかは人によって違うため、医師とよく相談して決めていきます。薬の名前や量については、必ず処方した医師・薬剤師の説明に従ってください。
手術が検討される場合
多くの場合、息苦しさの治療は手術ではありません。ただし、原因によっては手術が選択肢になることがあります(例:心臓の弁や血管の病気、一部の肺の病気、気胸が繰り返す場合など)。手術が必要かどうかは、検査の結果と体の状態をもとに、専門の医師と相談して決めていきます。
この病気と共に生きる
息苦しさとつきあっていくうえで大切なのは、自分のペースを知ることです。動いて苦しくなったら、少し立ち止まって呼吸を整える。それを恥ずかしいことだと思わないでください。買い物の荷物を分けて運ぶ、入浴はぬるめのお湯で短時間にする、といった小さな工夫が、毎日の負担を軽くします。症状が良い日も悪い日もあるのが普通です。悪い日が続くときは、早めに医療機関に相談しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける(必要なら禁煙外来について相談する)
- 適度な運動を、無理のない範囲で続ける(散歩など)
- 十分な睡眠と休息をとる
- 風邪や感染症の予防(手洗い・うがい・人混みを避ける)
- 季節の変化に備えて、冷暖房や衣類で調整する
- ほこり・カビ・ペットの毛・煙など、刺激になるものを避ける
- 症状日記をつけて、体調の変化に気づけるようにする
食事と運動
食事は、バランスよく、塩分をとりすぎないことが基本です。心臓や腎臓の病気がある場合は、塩分や水分の量について医師から具体的な指示が出ることがあるので、その指示に従ってください。体重が急に増えたときは、むくみが隠れていることがあるので受診の目安になります。運動は、息が少し上がる程度を目安に、短時間から始めましょう。歩く前に準備運動をし、苦しくなったら休む。主治医に相談しながら、自分に合った運動量を見つけていくのがおすすめです。呼吸リハビリを受けられる場合は、正しい呼吸の仕方や体の動かし方を学ぶ良い機会になります。
精神的健康と心の健康
息苦しさが続くと、「また苦しくなったらどうしよう」という不安が募り、外出や人とのつきあいを控えてしまうことがあります。不安は息苦しさを強く感じさせることもあり、悪循環になりがちです。これは意志が弱いからではなく、誰にでも起こることです。不安が強いとき、気分が落ち込むとき、眠れないときは、一人で抱えこまずに医師や看護師、心理の専門家に話してください。話すことで気持ちが整理され、対処の方法が見つかることがあります。
予防
すべての息苦しさを防ぐことはできませんが、リスクを減らすことはできます。特に大切なのは、禁煙と受動喫煙の回避です。たばこは肺や心臓の病気の大きな原因になりますが、禁煙すればその後のリスクを下げられます。また、適度な運動、バランスのよい食事、体重管理、睡眠、感染症の予防も、呼吸と心臓の健康を守る助けになります。持病がある方は、処方された薬をきちんと続け、定期的に受診することが、症状の悪化を防ぐことにつながります。
ワクチン
インフルエンザや肺炎などの感染症は、息苦しさを悪化させるきっかけになります。ワクチンについては、年齢や持病の有無によって対象や時期が異なります。自分が受けたほうがよいかどうかは、かかりつけ医や市区町村の案内、厚生労働省の情報を確認して相談してください。
検診プログラム
症状がない段階での健診(健康診断)は、贫血や心臓・肺の変化に気づく手がかりになります。特に喫煙歴のある方は、肺の働きを調べる検査をかかりつけ医に相談してみるとよいでしょう。健診の結果で気になる点があれば、放置せずに受診してください。
合併症
治療しない場合
- 原因となっている病気が進み、息苦しさが強くなることがある
- 日常生活(仕事・家事・外出・睡眠)が制限される
- 心臓や肺の機能が少しずつ低下することがある
- 感染症にかかったときに、重症化しやすくなることがある
- 不安や気分の落ちこみが強くなり、社会生活に影響することがある
長期的な見通し
息苦しさの多くは、原因がわかれば適切な対処ができます。禁煙や生活の工夫、医師と一緒に続ける治療によって、症状がやわらぎ、できることが増える方はたくさんいます。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ安定していくことも多いものです。心配なことは一人で抱えず、早めに相談することが、よりよい毎日への近道になります。
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最終更新: 2026年11月3日
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