腎臓の痛み(腰の痛みとの見分け方)
概要
腎臓の痛みとは、背中の中ほどから腰・脇腹にかけて感じる痛みで、腎臓や尿の通り道に原因があるものをいいます。腎臓は背中側の、あばら骨の下あたりに左右ひとつずつある、握りこぶしくらいの大きさの臓器です。血液をろ過して尿を作り、体の水分と塩分のバランスを整え、血圧を調整する大切な働きをしています。腎臓そのものは痛みを感じにくい臓器ですが、腎臓をつつむ薄い膜が引きのばされたり、尿の通り道(尿管)が石などで詰まったりすると、強く痛むことがあります。なお、腰が痛いときの多くは筋肉や背骨が原因で、腎臓が原因ではないことも多いです。
重要な事実
- 腎臓は背中側の上の方に左右ひとつずつある、握りこぶし大の臓器です。
- 腎臓の痛みは、尿路結石(尿の通り道にできる石)や尿路感染症(腎盂腎炎など)が原因のことが多いです。
- 腰の痛みの多くは筋肉や背骨によるもので、腎臓が原因とは限りません。
腰や背中の痛みはとてもよくある症状ですが、そのすべてが腎臓の病気というわけではありません。腎臓が原因の痛みの中では、尿路結石と尿路感染症が特に多くみられます。結石は一度できると再発しやすいといわれており、くり返す人も少なくありません。
尿路結石は20〜50代の働き盛りの世代に多く、男性にやや多くみられます。尿路感染症(膀胱炎から腎盂腎炎に進むもの)は女性に多く、妊娠中はとくに注意が必要です。高齢者、水分をとる量が少ない人、糖尿病のある人、尿の通り道の形に生まれつきの特徴がある人もなりやすいとされています。
症状
- がまんできないほどの激しい腰・脇腹の痛みで、動けない・話せない
- 冷や汗、顔色が青白い、手足が冷たい
- 意識がもうろうとしている、反応がにぶい
- 呼吸が苦しい、胸が痛い
- 高熱なのに血圧が下がっているように見える(ぐったりして立てない)
- 尿がまったく出ない
- けいれん、強いふるえが止まらない
- ⚠38度以上の発熱と腰・脇腹の痛みが同時にある
- ⚠尿に血が混じる、またはコーラ色の尿が出た
- ⚠排尿時の強い痛みがある、またはおしっこがほとんど出ない
- ⚠おう吐をくり返して水分がとれない
- ⚠妊娠中に発熱・腰の痛み・排尿の異常がある
- ⚠糖尿病や、免疫の働きを下げる治療を受けている人に発熱がある
一般的な症状
- 背中や脇腹の片側が痛む(波のように強くなったり弱くなったりする)
- 腰のあたりの鈍い痛みや、重い感じ
- 発熱(38度以上)や寒気、ふるえ
- 尿が赤い・ピンク色・コーラ色になる(血尿)
- 尿が濁る、においが強い
- おしっこの回数が増える、出し切れない感じ、排尿時の痛み
- 吐き気やおう吐
- 背中を軽くたたくと響く、体を動かすと痛む
子供の症状
- おなかが痛いと訴える、痛がる場所がはっきりしない
- 不機嫌、元気がない、食欲がない
- 理由がはっきりしない発熱(乳幼児では熱だけのこともあります)
- おしっこのにおいが強い、回数が増える
- 吐いたり下痢をしたりする
- 体重が増えない、成長がゆっくりに感じる
高齢者の症状
- 痛みをあまり強く感じず、発熱やだるさだけで気づかれることがある
- 食欲がない、元気がない
- 意識がぼんやりする、話がかみ合わない(せん妄)
- 脱水になりやすく、尿の量が減る
- 持病の影響で症状がめだちにくい
原因
主な原因
- 尿路結石(尿の通り道に石がつまる)
- 尿路感染症(膀胱炎が進んだ腎盂腎炎など)
- 尿の流れが悪くなる状態(水腎症、尿管が狭い、前立腺がふくらむなど)
- 腎臓の血流が急に悪くなる(腎梗塞)
- 腎臓のう胞(水のふくろ)や腫瘍
- けが(外傷)による腎臓の損傷
- 腎臓以外の原因(腰の筋肉・背骨・神経の痛み)
リスク要因
- 水分をとる量が少ない、汗をたくさんかく
- 塩分や動物性たんぱく質の多い食事
- 結石を経験したことがある、家族に結石の人がいる
- 肥満、糖尿病、高血圧
- 尿の通り道の形に生まれつきの特徴がある、カテーテルを使っている
- 女性(尿道が短く尿路感染症になりやすい)、妊娠中
- 高齢、長いあいだの寝たきり
- 免疫の働きが弱くなる病気や治療を受けている
- 痛み止めの使いすぎ(腎臓に負担がかかることがあります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱と腰の痛みが一緒にある
- 血尿がある、またはコーラ色の尿が出た
- 尿が出ない、またはごく少ない
- 激しい痛みが続き、水分もとれない
- 妊娠中で発熱や腰の痛みがある
定期受診を予約すべき場合:
- 腰の痛みを何度もくり返している
- 痛みは軽いが、数日続いている
- 尿の濁りやにおいが気になる
- 結石を言われたことがあり、また同じような痛みがきた
- 健診で尿や腎機能の異常を指摘された
診断
問診と診察で、痛みの場所や始まり方、発熱や尿の変化を確認します。背中を軽くたたいて響くかどうかを見ることもあります。そのうえで、尿検査や血液検査、超音波(エコー)検査などを行い、腎臓や尿の通り道の状態を調べます。必要に応じてCTなどの画像検査が行われます。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(血尿・たんぱく・細菌・結晶の有無を調べる)
- 血液検査(腎臓の働き、炎症の程度、塩分やカリウムなど)
- 超音波(エコー)検査
- CT検査(結石の位置や大きさ、尿の詰まりを詳しく見る)
- レントゲン検査(単純撮影)
- 場合によりMRI検査や、尿の培養検査
診察で予想されること
検査の多くは短時間で終わり、体への負担は少なめです。CTでは造影剤を使うことがあり、その場合は事前にアレルギーの有無や腎臓の働きを確認します。結果によっては、その日のうちに処置が必要になることもあります。
治療
腎臓の痛みの治療は、原因によって大きく変わります。痛みをやわらげることと、原因そのものを取り除くことの両方を目指します。結石であれば自然に出るのを待つことも多く、感染症であれば原因の菌に対する治療を行います。尿の流れが悪いときは、流れをよくする処置が必要になることがあります。
自宅でのセルフケア
- 水分を少しずつこまめにとる(医師に水の量を制限されている場合はその指示に従う)
- 痛みが強いときは無理に動かず、楽な姿勢で休む
- 発熱時は体を冷やしすぎず、汗をかいたら水分と塩分を補う
- 尿の色・回数・痛みの強さをメモしておく
- 市販の痛み止めを自己判断で長く使わない(腎臓に負担がかかることがあります)
- アルコールやカフェインのとりすぎを控える
医療治療
原因に合わせて、痛みをやわらげる治療と、原因に対する治療を組み合わせます。尿路感染症では、原因の細菌に対する治療(抗菌薬)を行います。結石では痛みをコントロールしながら自然に出るのを待つことが多く、必要に応じて石を砕いたり取り出したりする処置が行われます。尿の流れが悪い場合には、尿の通り道を確保する処置(管を入れるなど)を行うことがあります。具体的な薬や治療法は、検査の結果と体の状態に合わせて医師が選びます。
手術が検討される場合
石が大きい、痛みや詰まりが続く、尿の流れが大きく妨げられている、膿(うみ)がたまっている、腫瘍が疑われる、といった場合には、手術や処置が検討されます。すべての人が手術になるわけではなく、石の大きさや位置、体の状態によって判断されます。
この病気と共に生きる
痛みが落ち着いてきたら、水分をこまめにとる習慣をつけ、尿の色を毎日の目安にするとよいでしょう。淡い黄色の尿が目安です。痛みがぶり返したときのために、症状の記録をつけておくと受診がスムーズになります。
生活習慣のアドバイス
- 水分をこまめにとる(1日に何回かに分けて)
- 塩分を控えめにする
- バランスのよい食事を心がけ、野菜や果物をとる
- 適度な運動を続け、体重を適正に保つ
- 禁煙する
- 尿を長時間がまんしない、脱水を避ける
食事と運動
食事は、塩分を控えめにして、水分をこまめにとることが基本です。結石をくり返す人は、食事の内容を見直すことで再発を減らせることがあります。運動は、激しすぎない範囲で、散歩や軽い体操など続けやすいものを選びましょう。汗をたくさんかいたときは、水分をこまめに補ってください。
精神的健康と心の健康
痛みが続くと、眠れない、イライラする、不安になるなど、心への負担も大きくなります。「また痛くなったらどうしよう」という心配は自然なものです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に話してみてください。つらさが続くときは、かかりつけ医に相談したり、お住まいの自治体の相談窓口を利用したりすることもできます。気持ちが追い詰められていると感じたら、早めに人に助けを求めてください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、水分をこまめにとること、塩分を控えめにすること、適正な体重を保つことなどで、結石や尿路感染症のリスクを下げられる可能性があります。尿を長時間がまんしないことも大切です。
検診プログラム
健診の尿検査は、腎臓や尿の異常を早く見つける助けになります。血尿やたんぱく尿を指摘されたら、症状がなくても医療機関で相談してください。
合併症
治療しない場合
- 感染が広がって全身の状態が悪くなる(敗血症など)
- 尿の流れが悪いままで腎臓の働きが低下する
- 結石が大きくなったり、再発をくり返したりする
- 高血圧や慢性腎臓病につながることがある
- 痛みが続くことで、眠れない・食欲が落ちるなど生活の質が下がる
長期的な見通し
腎臓の痛みの多くは、原因がはっきりして適切に対応すれば、よくなっていくものです。早めに相談することが回復への近道になります。心配なことがあれば、遠慮なく医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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