ヘモグロビンが低いと言われたら(貧血の疑い)
概要
ヘモグロビンは、赤血球の中に入っている「酸素の運び屋」です。呼吸で取り入れた酸素を体のすみずみまで運ぶ役割をしています。血液検査でこのヘモグロビンの値が低いときは、体に酸素を届ける力が弱まっている状態で、ふつう「貧血(ひんけつ)」と呼ばれます。ヘモグロビンが低いこと自体は病名ではなく、「体の中で何かが起きているサイン」です。大切なのは、数字だけを見て終わりにせず、なぜ低くなっているのかを調べることです。
重要な事実
- ヘモグロビンは赤血球の中にある、酸素を運ぶたんぱく質です。
- 値が低くなる原因は、鉄が足りない、出血がある、慢性の病気があるなど、いくつもあります。
- 息切れや疲れやすさなど、少しずつ現れることが多く、気づきにくいのが特徴です。
- 原因を調べて適切に対処すれば、多くの場合は少しずつ改善していきます。
はい、めずらしいことではありません。健康診断の血液検査で「ヘモグロビンが低い」と指摘される人は少なくありません。特に月経のある女性、妊娠中の人、成長期の子ども、高齢者ではよく見られます。
月経のある女性、妊娠中の人、成長期の子ども・思春期の人、食事が偏りがちな人、胃や腸の出血がある人、腎臓や甲状腺などの慢性の病気がある人、手術後やけがのあとの人など、幅広い年代で起こります。
症状
- 胸の痛み、締めつけられるような胸の苦しさがある
- 安静にしていても息が苦しい、息ができない
- 意識がぼんやりする、失神した、けいれんした
- 突然の激しい腹痛、血を吐いた、コーヒー色のものを吐いた
- 黒くタールのような便が出た、大量の血便があった
- 顔や唇が青白く、冷や汗をかいてぐったりしている
- ⚠少し動いただけで息切れや動悸が続く
- ⚠立ちくらみで立てない、転倒した
- ⚠便が黒い、血が混じる(少量でも)
- ⚠月経の出血がいつもより多く、その状態が続いている
- ⚠発熱と強いだるさが続いている
- ⚠妊娠中に息切れや動悸がある
一般的な症状
- 疲れやすい、なんとなくだるい
- 階段や坂道で息が切れる、動悸(どうき)がする
- 顔色が悪いと言われる、唇や爪の色が薄い
- めまい、立ちくらみ、頭が重い
- 集中しづらい、物忘れが増えた気がする
- 爪が割れやすい、髪が抜けやすい
- 氷や土などを無性に食べたくなる(異食症:いしょくしょう)
子供の症状
- 元気がなく、遊びをすぐにやめてしまう
- 顔色が白い、唇の色が薄い
- 食欲がない、好き嫌いが増えた
- 体重や身長の増え方がゆっくりに感じる
- 集中できず、学校でぼんやりすることが増える
- 乳幼児では、ミルクや食事の飲み込みが悪い、ぐったりして見える
高齢者の症状
- 息切れや動悸を「年のせい」と思い込みやすい
- ふらついて転びやすくなる、歩くのがおっくうになる
- 食欲が落ちる、体重が減る
- 心臓や腎臓などの持病があると、症状が出やすい
- 物忘れや元気のなさが目立つようになる
原因
主な原因
- 鉄が足りない(食事からの不足、月経や妊娠での必要量増加、吸収の悪さ)
- 胃や腸など体のどこかで出血している(潰瘍、ポリープ、痔など)
- ビタミンB12や葉酸の不足
- 腎臓の病気で、赤血球を作る指令が出にくくなっている
- 慢性の炎症や感染症、がんなどの病気に伴う貧血
- 骨髄(こつずい:血を作る場所)の働きの低下
- 赤血球がこわれやすい体質(遺伝的なもの)
- 薬の影響(一部の薬で起こることがあります)
リスク要因
- 偏った食事、極端なダイエット、菜食中心で鉄が不足しがち
- 月経量が多い、妊娠中、出産後
- 成長期で体の必要量が増えている
- 胃や腸の手術を受けたことがある
- 胃酸を抑える薬を長く使っている
- 腎臓病、甲状腺の病気、慢性の炎症性の病気がある
- 高齢である
- 鎮痛薬(痛み止め)を長く使っている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 安静にしていても息が苦しい、胸が痛い
- 失神した、意識がもうろうとする
- 黒い便、血便、吐血がある
- 出血が多く、ふらついて立てない
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断や病院の検査でヘモグロビンが低いと言われた
- 疲れやすさや息切れが数週間以上続いている
- 顔色が悪いと家族や同僚に言われる
- 月経の量が多いと感じる、レバー状の血の塊が出る
- 食事が偏っている、ダイエットを長く続けている
- 妊娠を考えている、または妊娠中である
診断
まず血液検査で、ヘモグロビンの値だけでなく、赤血球の数や大きさ、体内に蓄えられている鉄の量などを調べます。そのうえで、食事の内容、月経の量、これまでの病気、使っている薬、出血のサイン(黒い便など)について問診し、原因をしぼりこんでいきます。
行われる可能性のある検査
- 血液一般検査(ヘモグロビン、赤血球の数、赤血球の大きさをみる指標など)
- 体内の鉄の蓄えをみる検査(フェリチンなど)
- 便潜血検査(胃や腸からの出血がないか)
- 腎機能・肝機能・甲状腺の働きをみる検査
- ビタミンB12や葉酸の値の検査
- 必要に応じて、胃や腸の内視鏡検査、婦人科の診察、腹部の超音波検査
診察で予想されること
血液検査の結果は多くの場合、当日から数日でわかります。原因がはっきりしないときは、追加の検査をいくつか受けることがあります。説明された内容はメモしておき、次回の診察で質問できるようにしておくと安心です。
治療
治療の中心は「原因に合わせた対応」です。鉄が足りなければ鉄を補い、出血があればその出血もとを治し、食事や生活の見直しも行います。数値だけを上げるのではなく、なぜ低くなったのかを解決することが大切です。治療の進め方は検査結果と体の状態に合わせて医師が判断します。
自宅でのセルフケア
- 鉄分の多い食品(赤身の肉や魚、卵、大豆製品、小松菜やほうれん草など)を毎日少しずつとる
- ビタミンCの多い食品(果物、野菜)と一緒にとると吸収が助けられる
- コーヒー・紅茶・緑茶は食事の直前や直後を避ける(鉄の吸収を妨げることがあります)
- 極端なダイエットや欠食をしない
- 疲れを感じたらこまめに休み、睡眠をしっかりとる
- 処方された薬は指示どおりに使い、自己判断で量を増やさない
- サプリメントを使うときは、医師や薬剤師に相談する
医療治療
原因に応じて、足りない栄養を補う方法、出血の原因を治す治療、持病の管理などが組み合わされます。薬の種類や量、期間は、検査の結果と体の状態に合わせて医師が決めます。市販薬やサプリメントだけで自己判断して済ませず、必ず相談してください。
手術が検討される場合
出血の原因が胃潰瘍やポリープ、婦人科の病気などである場合には、内視鏡で止血したり、手術が必要になることがあります。ただし、多くの場合はまず検査で原因を確かめるところから始まります。
この病気と共に生きる
体調に波があるのがふつうです。予定を詰め込みすぎず、階段や坂道ではゆっくり動く、こまめに水分と休憩をとるなど、無理をしない工夫が役立ちます。しんどい日は「休む」ことを自分に許してあげてください。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、生活のリズムを整える
- 禁煙する、お酒はほどほどにする
- 散歩など軽い運動を無理のない範囲で続ける
- 月経の量や期間を記録しておく(診察の役に立ちます)
- 食事の内容を簡単にメモしておくと、相談しやすい
- 体調の変化を一人で抱えず、家族や周りの人に伝える
食事と運動
食事は、鉄分だけでなく、たんぱく質とビタミンCを一緒にとるのがポイントです。たとえば、赤身の肉や魚と野菜を組み合わせる、食後に果物を少し食べる、といった工夫で十分です。運動は、息が上がりすぎない程度の散歩から始め、具合が悪い日は休む。無理をしないことがいちばんです。
精神的健康と心の健康
疲れやすさが続くと、「自分は何もできない」と気分が落ち込んだり、不安になったりすることがあります。それは体からのSOSであって、あなたの努力が足りないせいではありません。つらさが続くときは、かかりつけ医や相談窓口を頼ってください。気持ちが追い詰められていると感じたら、早めに誰かに話してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、偏りのない食事を心がける、決まった健診を受ける、出血のサイン(黒い便、月経が多いなど)を見逃さない、といったことが役立ちます。気になることがあれば早めに相談することが、いちばんの予防になります。
検診プログラム
健康診断の血液検査で、ヘモグロビンや赤血球の値が確認できます。年1回を目安に受けておくと安心です。妊娠中は決められた回数の血液検査が行われます。
合併症
治療しない場合
- 疲れやすさや息切れが続き、日常生活の質が下がる
- 心臓に負担がかかり、動悸や息苦しさが強くなることがある
- 集中力や記憶力の低下を感じる
- 妊娠中の場合、母体や赤ちゃんに負担がかかることがある
- 原因となっている病気(出血や慢性の病気など)の発見が遅れる
長期的な見通し
ヘモグロビンが低いことの多くは、原因が見つかって適切に対処すれば、少しずつ改善していきます。改善には時間がかかることもありますが、あせらず治療と生活の見直しを続けることが大切です。気になる症状があれば、早めに医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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