吐血(血を吐く)
概要
吐血(とけつ)とは、胃や食道などの中から出血して、血が口から出てくることです。「血を吐いた」とひとことで言っても、肺や気管から出た血(咯血・かっけつ)や、鼻血・歯ぐきの出血を飲み込んで吐き出した場合もあります。吐血は体からの「いつもと違う」というサインなので、量が少なく見えても医療機関で確認を受けることが大切です。
重要な事実
- 吐いたものが赤い血、あるいはコーヒーのかすのような黒っぽい粒状のものであれば、吐血の可能性があります。
- 吐血があったときは、本人が思っているより出血量が多いことがあります。自分で判断せず、医療機関に相談してください。
- 黒くてどろっとした便(タール便)が出た、ふらつく、冷汗が出るといった症状があれば、早めの受診が必要です。
吐血は救急外来でみられる症状のひとつですが、日常的によく起こるものではありません。多くは胃や食道の粘膜からの出血が原因で、適切に検査を受けることで原因がわかることがほとんどです。
大人では胃潰瘍(いかいよう)や食道の病気が原因になることが多く、特に中高年以上に多くみられます。子どもでは鼻血を飲み込んで吐いてしまうケースや、激しく咳き込んだ後にのどが傷つくケースもあります。赤ちゃんや小さな子どもの場合は、少量でも早めに小児科に相談してください。
症状
- 大量の血を吐いた、または吐血が続いている
- コーヒーのかすのようなものを何度も吐いている
- 意識がもうろうとしている、返事がはっきりしない
- ぐったりしていて立てない、倒れた
- 顔色が真っ白、冷汗がひどい、脈が速くて弱い
- 黒い便が続き、ふらつきや動悸がある
- ⚠少量でも血が混じったものを吐いた
- ⚠黒っぽい便が1回でも出た
- ⚠みぞおちの強い痛みが続いている
- ⚠めまい、立ちくらみ、息切れがある
- ⚠吐血のあと、食欲がなく水分もとりにくい
一般的な症状
- 赤い血、またはコーヒーのかすのような黒っぽいものを吐く
- 吐いたものに血が混じっている
- 黒くてどろっとした便(タール便)が出る
- 吐き気や嘔吐、みぞおちの痛み
- ふらつき、めまい、立ちくらみ
- 動悸(どうき)がする、息が上がる
- 顔色が悪くなる、冷や汗が出る
子供の症状
- 鼻血を飲み込んで吐く(血の量が少なく、元気そうに見えることもあります)
- 激しく泣いたり咳き込んだりした後に、血が混じったものを吐く
- のどや口の中を傷つけて出血している
- ぐったりしている、顔色が白い、水分を受けつけない場合は急いで受診してください
高齢者の症状
- 痛みを感じにくく、出血に気づくのが遅れることがあります
- 少しの出血でも貧血(ふらつき・息切れ)が出やすい
- 血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方は、出血が止まりにくいことがあります
- 持病の薬を自己判断で中止せず、まず医療機関に相談してください
原因
主な原因
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍(胃や腸の粘膜が傷ついて出血する)
- 胃炎やびらん(粘膜の浅い傷)からの出血
- 食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)の破裂(肝臓の病気に伴って起こることがあります)
- マロリーワイス症候群(激しい嘔吐で食道と胃の境目が裂ける)
- 食道炎や食道の粘膜の傷
- 胃がん・食道がんなどによる出血
- 血液を固まりにくくする薬や鎮痛薬の影響
- 鼻血や口の中の出血、肺や気管からの出血を飲み込んで吐いた場合
リスク要因
- ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染
- 鎮痛薬(特に痛み止めの一部)の長期間の使用
- 飲酒量が多い、喫煙の習慣がある
- 肝臓の病気(肝硬変など)を指摘されたことがある
- 血液を固まりにくくする薬を飲んでいる
- 強い嘔吐を繰り返した
- 高齢、または複数の持病がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 血が混じったものを吐いた、黒い便が出た
- ふらつき、動悸、息切れ、冷や汗がある
- みぞおちの強い痛みが続く
- 吐血のあと、水分がとれない、尿が少ない
定期受診を予約すべき場合:
- 以前に胃潰瘍や胃炎を指摘されたことがあり、調子がすぐれない
- 胸やけや胃の不快感が長く続いている
- 黒っぽい便が時々出る気がする
- 貧血を指摘されたことがある
- 鎮痛薬や血液を固まりにくくする薬を長く飲んでいる
診断
まず問診で、いつ・どれくらい・どんな色のものを吐いたか、黒い便がないか、持病や飲んでいる薬、飲酒・喫煙の習慣などを確認します。同時に血圧や脈拍を測り、体の状態が安定しているかをみます。そのうえで、出血の場所と原因を調べるための検査が行われます。
行われる可能性のある検査
- 問診と身体診察(血圧・脈拍・意識の状態の確認)
- 血液検査(貧血の程度や肝臓・腎臓の働きを調べる)
- 便の検査(黒い便や血液が混じっていないか)
- 内視鏡検査(胃カメラ):食道・胃・十二指腸を直接見て、出血の場所と原因を確認します
- 腹部超音波検査やCT検査(必要に応じて)
- 鼻や口の中、のどからの出血がないかの確認
診察で予想されること
内視鏡検査は、のどを軽く麻酔して行うことが多く、通常は数分から十数分で終わります。検査中に出血が見つかれば、その場で止血の処置が行われることもあります。検査の前は飲食を控えるよう指示されることがあるため、吐血があったら何も食べたり飲んだりせずに受診すると安心です。
治療
吐血の治療は、まず体の状態を安定させることから始まります。出血量が多い場合は点滴や輸血が行われ、並行して出血の原因を調べ、止血の処置が進められます。原因によって治療法は大きく変わるため、自己判断で市販薬を使ったり、飲んでいる薬をやめたりしないでください。
自宅でのセルフケア
- 吐血があったら、飲食を控えて医療機関に連絡する
- 横になるときは、吐いたものが気道に入らないよう体を横向きにする
- 一人にせず、家族や周りの人に付き添ってもらう
- 吐いたものの色や量、回数をメモしておくと診察の役に立ちます
- 飲んでいる薬(お薬手帳)を持って受診する
- 受診後は医師の指示に従い、飲酒や刺激の強い食べ物を控える
医療治療
出血が多い場合は、点滴で水分と電解質を補い、必要に応じて輸血が行われます。内視鏡を使って出血している場所を確認し、その場で止血の処置を行うことが一般的です。あわせて、胃酸の分泌を抑える薬や、粘膜を保護する薬などが使われることがあります。原因となっている病気(潰瘍や肝臓の病気など)に対する治療も並行して進められます。
手術が検討される場合
内視鏡での止血が難しい場合や、穿孔(せんこう:胃や腸に穴があくこと)などが疑われる場合には、手術が検討されることがあります。また、出血を繰り返す場合には、状況に応じて別の治療法が選ばれることがあります。
この病気と共に生きる
吐血の治療後は、しばらく食事や生活のリズムに気を配る期間が続きます。医師から指示された通院を続け、出血のサイン(黒い便、ふらつき、みぞおちの痛み)がないかを意識して過ごすことが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 飲酒は控えめにする、または医師の指示に従って休む
- 禁煙を考える(喫煙は胃や食道の病気のリスクを高めます)
- 鎮痛薬や市販薬を自己判断で続けて飲まない。飲む前に薬剤師や医師に相談する
- 睡眠と食事の時間をできるだけ規則的にする
- ストレスをためこまず、息抜きの時間をつくる
- 決められた通院や検査の予定を守る
食事と運動
食事は、刺激の強いもの・脂っこいもの・熱すぎるものや冷たすぎるものを控えめにし、よく噛んでゆっくり食べると安心です。回復してきたら、医師の指示の範囲で軽い散歩など無理のない運動から始めましょう。激しい運動や重いものを持つことは、主治医に確認してからにしてください。
精神的健康と心の健康
血を吐く経験はとても怖く、不安が長く続くことがあります。「また出血したらどうしよう」という気持ちは自然なものです。眠れない、食欲がない、不安が強い状態が続くときは、一人で抱えこまずに主治医やかかりつけの医療者に話してください。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに地域の相談窓口や医療機関、救急窓口に連絡してください。
予防
すべての吐血を防ぐことはできませんが、原因となる胃や食道の病気を早めに見つけて治療することで、リスクを下げられることがあります。飲酒や喫煙を控えめにすること、鎮痛薬を自己判断で長く使わないこと、気になる症状を我慢しないことが大切です。
ワクチン
吐血に直接関係するワクチンはありません。ただし、肝臓の病気の原因になる感染症については、かかりつけ医に相談してみてください。
検診プログラム
胃の内視鏡検査やピロリ菌の検査は、自治体や健診の制度で受けられることがあります。年齢や症状に応じた健診の案内を確認し、該当する場合は受診を検討しましょう。詳しくはお住まいの自治体やかかりつけ医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 出血が続いて貧血が進み、ふらつきや息切れが強くなることがあります
- 出血量が多くなると血圧が下がり、意識がもうろうとする状態(出血性ショック)になることがあります
- 胃や腸に穴があく(穿孔)ことがあります
- 原因となっている病気の発見が遅れることがあります
- 一度止血しても再び出血することがあります
長期的な見通し
吐血はこわい症状ですが、原因を調べて適切な治療を受けることで、多くの方が回復して日常生活に戻っています。早期に受診すること、治療後の通院を続けることが何より大切です。不安なことは主治医に遠慮なく質問してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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