ヘモグロビン値が高いと言われたら(赤血球増多症)
概要
ヘモグロビンは、赤血球の中にあって酸素を体のすみずみまで運ぶ、いわば「酸素の運び屋」です。健康診断の血液検査でこの値が高い、つまり赤血球が多い状態を「赤血球増多症(せきけっきゅうぞうたしょう)」と呼びます。大きく分けると3つのパターンがあります。1つ目は、汗をたくさんかいた、下痢をした、水分をあまりとっていないなどで血液が濃くなって見かけ上高くなるもの(脱水によるもの)。2つ目は、たばこや睡眠時無呼吸、心肺の病気などで体が酸素不足を感じ、その反応として赤血球を多く作ってしまうもの(二次性)。3つ目は、骨髄(こつずい=血液を作る工場)が自分から必要以上に赤血球を作ってしまうもの(真性多血症など)です。多くの場合、命に関わる深刻なものではなく、原因を確かめて対処することが大切です。
重要な事実
- ヘモグロビン値が高い=赤血球が多い状態で、脱水・喫煙・睡眠時無呼吸などがよくある原因です。
- 症状がないことが多く、健康診断や別の検査のついでに見つかることが少なくありません。
- まずは水分をとって再検査をし、原因を一つずつ確かめていくのが標準的な進め方です。
軽い脱水や喫煙が原因の「ちょっと高め」の状態は、健康診断でもよく見かけます。一方、骨髄の病気(真性多血症など)が原因となるものはまれです。多くの方は、原因を確認して生活を整えることで落ち着きます。
成人にも子どもにも起こります。成人では喫煙者、水分が足りない方、いびきや睡眠時無呼吸を指摘された方、心肺や腎臓の病気がある方、高地に住んでいる方に多く見られます。子どもでは脱水や先天性の心臓の病気が関係することがあります。
症状
- 胸の強い痛み、締めつけられる感じが続く(心筋梗塞の可能性)
- 突然の息切れ、呼吸が苦しい、唇や爪が青白い
- 顔が片側だけ動かない、ろれつが回らない、片方の手足に力が入らない(脳卒中のサイン)
- 突然の激しい頭痛、意識がもうろうとする、けいれん
- 片方の脚が急に腫れて痛い、赤くなる(深部静脈血栓の可能性)
- 大量の出血が止まらない
- ⚠息切れや動悸が続き、横になるとつらい
- ⚠いつもと違う強い頭痛が続く
- ⚠手足のしびれや痛みが新しく出てきた
- ⚠歯ぐきや鼻の出血が止まりにくい、あざが増えた
- ⚠発熱と皮膚の赤み・熱感がある
一般的な症状
- ほとんど無症状で、血液検査で初めて気づくことが多い
- 頭が重い、頭痛がする
- めまい、立ちくらみ
- 体がだるい、疲れやすい
- 顔や首、手のひらが赤っぽく見える
- 目のかすみ、耳鳴り
- 入浴後などに皮膚がかゆくなる(真性多血症でよく見られます)
- 血圧が高め、動悸がする
- 手足の先のしびれ感
子供の症状
- 無症状で、学校の健診や入院時の血液検査で見つかることが多い
- 元気がない、機嫌が悪い、哺乳(母乳やミルク)が少ない
- 脱水ぎみ(発熱、下痢、嘔吐のあと)に数値が上がりやすい
- 先天性の心臓の病気がある場合は、唇や爪の色が青っぽく見えることがある
- 頭痛やめまいをうまく言葉で伝えられないことがあるので、様子の変化に気を配りましょう
高齢者の症状
- 疲れやすさや息切れを「年のせい」と思い込みやすい
- めまい、ふらつき、歩行時の不安定さ
- 皮膚のかゆみ(入浴後や夜間に強くなることがある)
- 血液がドロッとしやすいことで、手足の腫れや痛みが出ることがある
- もともとの心臓・肺・腎臓の病気の影響で数値が上がることがある
原因
主な原因
- 脱水(発熱、下痢、嘔吐、水分不足、利尿薬の使用など)で血液が濃くなる
- 喫煙(たばこの煙で酸素が運びにくくなり、体が赤血球を増やそうとする)
- 睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に呼吸が止まり酸素が下がる)
- 心臓や肺の病気(慢性の酸素不足を体が補おうとする)
- 腎臓の病気(赤血球を作るよう指令を出すホルモンが過剰になることがある)
- 高地に住んでいる、または長期にわたる酸素の薄い環境
- 骨髄の病気(真性多血症などの骨髄増殖性腫瘍)
- テストステロンなどのホルモン補充、一部の薬の影響
- 強いストレスや肥満、いびきなど
リスク要因
- 喫煙習慣がある
- ふだんから水分をとる量が少ない、汗をかきやすい仕事
- いびき、日中の強い眠気、睡眠時無呼吸を指摘されたことがある
- 心臓・肺・腎臓の持病がある
- 血縁者に血液の病気(真性多血症など)の人がいる
- 男性、中高年(真性多血症はやや男性に多い)
- 高度な肥満、運動不足
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛み、突然の息切れ、片側の手足の麻痺や言葉の出にくさがある(ためらわず119番へ)
- 脚の片側が腫れて痛い、皮膚が赤く熱を持つ
- 出血が止まりにくい、大きなあざが急に増えた
- 強い頭痛やめまいで日常生活が難しい
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断でヘモグロビン値の再検査をすすめられた
- 顔色が赤い、体がだるい、頭が重いといった状態が続いている
- 入浴後の強いかゆみが続く
- 喫煙やいびきを指摘されていて、数値が高めと言われた
診断
まずは血液検査の数値を確認し、同じ検査をもう一度行うことから始まります。検査の前に水分をしっかりとっていただき、脱水の影響を除いてから判断します。そのうえで、喫煙歴やいびき、持病、服薬などをお聞きし、必要に応じて原因を絞り込むための検査を追加します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板、白血球など)
- 水分をとった状態での再検査
- パルスオキシメーターによる血中の酸素濃度の測定
- 赤血球を作る指示を出すホルモン(エリスロポエチン)の血液検査
- 骨髄の病気を調べる遺伝子検査(JAK2変異など)
- 腹部超音波検査(脾臓の大きさの確認)
- 睡眠時無呼吸を調べる検査(自宅での簡易検査や睡眠検査)
- 心肺機能の検査(心電図、胸部レントゲン、呼吸機能検査など)
- 必要に応じて骨髄穿刺(骨髄の細胞を調べる検査)
診察で予想されること
検査は外来で少しずつ進めることが多く、結果が出るまでに数日から数週間かかることがあります。複数の検査を組み合わせて「脱水」「喫煙」「睡眠時無呼吸」「骨髄の病気」のどれに当てはまるかを考えていきます。確定するまで時間がかかっても、その間に危険が急に進むことは多くありません。わからないことは遠慮なく医師に聞いてください。
治療
治療の中心は「原因に合わせた対処」です。脱水が原因なら水分を整える、喫煙が関係するなら禁煙を考える、睡眠時無呼吸ならその治療を行う、といった具合です。数値がかなり高い場合や血栓(血のかたまり)の心配がある場合は、血液を薄める方法や薬を使うことがあります。
自宅でのセルフケア
- こまめに水分をとる(のどが渇く前に少しずつ)
- 禁煙を考える。難しい場合は禁煙外来や相談窓口を利用する
- いびきや日中の眠気があれば、睡眠時無呼吸の検査を受けてみる
- 適度な運動を習慣にする(激しすぎない範囲で)
- 飲酒はほどほどにし、脱水を避ける
- かかりつけ医での定期検査を欠かさない
- 発熱や下痢のときは特に水分補給を意識する
医療治療
原因となる病気がある場合は、その治療を優先します(睡眠時無呼吸の治療、心肺や腎臓の病気の管理など)。数値が高い状態が続く場合には、血液の一部を抜いて濃度を下げる方法(瀉血)や、血のかたまりができにくくなるようにする薬、骨髄が必要以上に血液を作るのを抑える薬、かゆみをやわらげる薬などを、症状や原因に応じて医師が判断して使うことがあります。薬の種類や量は人によって異なるため、必ず医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
手術が必要になることはふつうありませんが、脾臓がとても大きくなっている場合や、骨髄の病気が別の状態に変化した場合など、ごく一部で外科的な対応が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
数値が高いと言われても、多くの方はふだんと変わらない生活を続けられます。大切なのは、水分をこまめにとること、体調の変化に気づいたら早めに相談すること、そして決められた検査を続けることです。数値は体調や季節によっても動くので、一喜一憂しすぎず、長い目で見ていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 朝起きたらコップ1杯の水を飲む習慣をつける
- 長時間のフライトや車移動のときは、水分と足の運動を意識する
- 禁煙・減煙を前向きに考える
- 睡眠を十分にとり、いびきや無呼吸を指摘されたら相談する
- 入浴後のかゆみが強いときは、ぬるめのお湯で短時間にする
- 暑い季節や運動時は、いつもより多めに水分をとる
食事と運動
特別な食事制限が必要になることはあまりありません。バランスのよい食事を心がけ、塩分をとりすぎないようにすると、血圧や心臓・腎臓への負担を減らせます。水分は食事と一緒に少しずつとりましょう。運動はウォーキングなど無理のない範囲で続けるのがおすすめです。ただし、数値が高い時期や暑い日は脱水になりやすいので、運動前後の水分補給を忘れずに。医師から運動の制限を言われている場合はそれに従ってください。
精神的健康と心の健康
「血液の病気かも」と言われると不安になるのは自然なことです。ネットの情報を見て必要以上に心配してしまう方も少なくありません。検査の結果が出るまでは落ち着かないこともありますが、わからないことは医師や看護師に遠慮なく聞いてください。眠れない、気持ちが落ち込む、不安が続くといったときは、かかりつけ医に相談するか、地域の相談窓口を利用してください。ひとりで抱え込まないことが大切です。
予防
脱水や喫煙、睡眠時無呼吸などが原因の場合、生活習慣を整えることで予防・改善が期待できます。骨髄の病気(真性多血症など)そのものは予防できませんが、定期的な血液検査で早く気づき、適切に管理することが大切です。
検診プログラム
健康診断の血液検査(赤血球数・ヘモグロビン・ヘマトクリット)は、数値の変化に気づく大切な機会です。数値を指摘されたら放置せず、次回の健診を待たずに相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 血液がドロッとし、血のかたまり(血栓)ができやすくなる(心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓、深部静脈血栓など)
- 出血が起きやすく、止まりにくくなることがある
- 脾臓が大きくなる(おなかの張り、早い満腹感)
- 痛風を併発することがある
- 皮膚のかゆみが慢性化する
- 真性多血症の場合、長い経過で骨髄の状態が変化することがある
長期的な見通し
多くは、原因がわかれば生活の調整や治療で落ち着き、ふだんと変わらない生活を続けられます。骨髄の病気が見つかった場合も、定期的な通院と管理によって長く安定した生活を送る方が大勢います。心配が続くときは、その気持ちも含めてかかりつけ医に話してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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