便の回数が多いとき(頻便)について
概要
「頻便(ひんべん)」とは、いつもより便の回数が多くなる状態のことです。1日に何回排便するのがふつうかは人によって大きく違い、1日3回くらいまでなら特に問題ないとされることも多いです。大切なのは「回数そのもの」よりも、いつもと比べてどうか、そして生活に支障が出ていないかどうかです。回数が増える理由は、食事やストレスなど一時的なものから、腸の病気が隠れている場合までさまざまです。
重要な事実
- 排便の回数は個人差が大きく、1日3回程度まではふつうの範囲と考えられることが多いです。
- 回数が増える原因は、食べすぎや飲みすぎ、ストレス、おなかの感染、過敏性腸症候群などいろいろあります。
- 血が混じった便、黒い便、高熱、強い腹痛、水分がとれないときは、早めに医療機関に相談してください。
とてもよくある相談です。外来を受診する人の多い症状のひとつで、多くは数日で落ち着きます。
症状
- 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応がわるい、ぐったりしている
- 大量の血便が出た、血を吐いた、便が黒くタールのようにべったりしている
- おなかの激しい痛みで動けない、おなかが硬く張っている
- 高熱とひどい下痢が同時にあり、ぐったりしている
- 口がひどく渇き、尿がほとんど出ないなど、脱水が強いと思われるとき
- ⚠血が混じった便や黒い便が続く
- ⚠38℃以上の発熱がある
- ⚠水分をとっても吐いてしまい、飲めない
- ⚠半日以上おしっこが出ない(特にお子さんや高齢の方)
- ⚠体重がはっきり減ってきた
- ⚠強いおなかの痛みが続く
一般的な症状
- いつもより排便の回数が多い(1日に何度もトイレに行く)
- 便がやわらかい、水っぽい、形がくずれている
- おなかがゴロゴロする、張った感じがする
- 急に便意が来てがまんしにくい(切迫感)
- 排便してもすっきりしない感じ(残便感)
- おならが増える、おなかが鳴る
- 長引くと、疲れやすさや体重の減少
子供の症状
- 下痢が続く、おむつからもれる
- 嘔吐(おうと)や食欲の低下
- 機嫌が悪い、元気がない、ぐったりしている
- おむつかぶれ、おしりのただれ
- 脱水(だっすい)のサイン:口が渇く、涙が出にくい、おしっこの回数が減る、皮膚が乾く
高齢者の症状
- 下痢が続くと脱水(体の水分が足りなくなること)になりやすい
- ふらつき、立ちくらみ、転びやすさ
- 食欲が落ちて体力が低下する
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 飲んでいる薬の影響で便がゆるくなることがある
原因
主な原因
- 食べすぎ・飲みすぎ、脂っこい食事、アルコールやカフェインのとりすぎ
- 食物繊維を急に増やした、牛乳などの乳製品でおなかがゆるくなる体質
- ウイルスや細菌によるおなかの感染(いわゆる「おなかの風邪」や食あたり)
- ストレスや不安、緊張
- 過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん:検査で異常が見つからないのに、おなかの痛みや便の変化が続く状態)
- 飲んでいる薬の影響(薬が合わないと便がゆるくなることがあります)
- 甲状腺(こうじょうせん)の働きが活発になりすぎる病気
- 炎症性腸疾患(えんしょうせいちょうしっかん:潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸に炎症が続く病気)
- 腸内細菌のバランスの変化、消化不良
- 旅行や引っ越しなど、水や食べ物、生活環境の変化
リスク要因
- 外食が多い、旅行中で水や食べ物がいつもと違う
- ストレスの多い生活が続いている
- 特定の食品(乳製品など)でおなかがゆるくなりやすい
- 薬を飲んでいる、または最近薬が変わった
- 家族に腸の病気の人がいる
- 高齢である、体力や免疫力が落ちている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 血便や黒い便がある
- 高い熱と激しい下痢が一緒にある
- 水分がとれない、尿がほとんど出ない
- おなかの痛みが強く、動けない
- ぐったりして元気がない(特にお子さんや高齢の方)
定期受診を予約すべき場合:
- 回数が増えた状態が2週間以上続く
- トイレが近くて仕事や外出に支障がある
- 体重が減ってきた、疲れやすい
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 便が細くなった気がする、すっきりしない感じが続く
- 家族に大腸の病気の人がいる
診断
まずは問診(お医者さんが症状や生活について聞くこと)が中心です。いつからか、1日に何回か、便の形や色、食事や薬、体重の変化、痛みや熱の有無などを聞かれます。多くの場合はそれで見当がつきますが、必要に応じて検査をして、隠れた病気がないかを確かめます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症や貧血、甲状腺の働きなどを調べます)
- 便の検査(血が混じっていないか、細菌やウイルスがいないか)
- 腹部の超音波(エコー)検査
- 大腸カメラ(大腸内視鏡)検査
- 便の培養検査や寄生虫の検査
- 食物アレルギーや乳糖不耐症(乳糖をうまく消化できない体質)の検査
診察で予想されること
検査は痛みの少ないものがほとんどです。大腸カメラの前には、腸をきれいにするための準備が必要で、その日は食事の制限があります。検査結果の説明を受け、原因に合わせた対処を一緒に考えていきます。わからないことは遠慮なく質問してください。
治療
治療は原因によって変わります。食事やストレスが関係している場合は生活の見直しが中心になります。感染が原因の場合は、水分をとりながら自然に治るのを待つことが多いです。長引く場合や別の病気が疑われる場合は、原因に応じた治療を行います。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとる(少量ずつ何度も。汗をかくときは経口補水液(けいこうほすいえき:水分と塩分を一緒にとれる飲み物)も役立ちます)
- 食べられるものを少量ずつ、何回かに分けてとる
- 脂っこいもの、辛いもの、アルコール、カフェインはしばらく控えめに
- 乳製品でゆるくなりやすい人は、その食品を一時的に減らしてみる
- おなかを冷やさないようにする
- 手洗いを丁寧に行い、食べ物の管理に気をつける
- 排便の回数や便の様子をメモしておくと、受診のときに役立ちます
- 睡眠と休息をしっかりとる
医療治療
原因に合わせて治療の方向性を決めます。感染が原因の場合は、原因の種類に応じた対応をしつつ、水分と栄養を補います。過敏性腸症候群では、生活指導に加えて、おなかの動きを整えたり痛みをやわらげたりするお薬が使われることがあります。炎症性腸疾患などが疑われる場合は、専門の医療機関で詳しい検査と治療を行います。どの治療が合うかは人によって違うため、必ず医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
ふだんの頻便で手術が必要になることはほとんどありません。大腸カメラでポリープが見つかったときは、その場で切除する処置をすることがあります。炎症性腸疾患の合併症など、まれな場合に手術が検討されます。
この病気と共に生きる
回数が多い時期は、トイレの場所を意識したり、外出を控えたりして不安が大きくなりがちです。予定を詰め込みすぎず、トイレに寄れるルートを選ぶなど、少し工夫するだけでも気持ちが楽になります。症状と付き合いながら、できる範囲で日常を続けていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の排便の回数や便の様子を簡単に記録する
- 睡眠をしっかりとり、生活のリズムを整える
- ストレスをためこまず、息抜きの時間をつくる
- 食事は決まった時間に、ゆっくりよくかんで
- 適度な運動を無理のない範囲で続ける
- 喫煙は腸にもよくないため、控えることをおすすめします
食事と運動
食物繊維は体に良いものですが、急にたくさんとるとおなかが張ったりゆるくなったりすることがあります。少しずつ増やしていきましょう。水分はこまめに。発酵食品を取り入れるのも一案です。運動は軽い散歩から始めて、おなかの調子を見ながら続けてみてください。
精神的健康と心の健康
トイレのことが気になって外出がこわい、人に言いにくい、といった不安を感じる方は少なくありません。過敏性腸症候群では、不安や気分の落ち込みとおなかの症状が影響し合うことがあります。つらい気持ちが続くときは、体の症状とあわせて、その気持ちも医師や相談窓口に話してみてください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、できることはあります。手洗いや食べ物の管理で感染性の下痢を減らせます。食事や睡眠、ストレス管理を整えることで、おなかの調子が乱れにくくなります。
ワクチン
一部の感染性胃腸炎には任意接種のワクチンがあります。接種を希望する場合は、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
日本では、大腸がんの検診として便潜血検査(便に血が混じっていないかを調べる検査)が推奨されています。対象年齢や受け方はお住まいの自治体によって異なるため、自治体の案内やかかりつけ医に確認してください。
合併症
治療しない場合
- 脱水(体の水分が足りなくなること)
- 電解質(でんかいしつ:体に必要なミネラルのバランス)の乱れ
- 栄養がとれずに体重が減る、体力が落ちる
- 痔(じ)や肛門の痛み、ただれ
- 外出への不安や生活の質の低下
- 背景にある腸の病気や甲状腺の病気に気づくのが遅れる
長期的な見通し
多くは数日から1〜2週間で落ち着きます。長引く場合も、検査で原因がわかれば適切な対処ができます。心配なときは早めに相談することが、安心への一番の近道です。
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最終更新: 2026年11月3日
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