不正性器出血(月経以外の腟からの出血)
概要
腟(ちつ)からの出血のうち、ふだんの月経以外のものを「不正性器出血(ふせいせいきしゅっけつ)」と呼びます。月経の量が増えた、期間が長くなった、月経と月経のあいだに出血する、閉経(月経が終わること)のあとに出血する、性交のあとに出血する——こうした変化も含まれます。出血は体からのサインです。多くは命に関わるものではありませんが、原因を確かめることが大切です。
重要な事実
- 月経以外の出血や、量・期間の変化は「体からのサイン」です。原因の多くは良性(命に関わらないもの)ですが、確かめることで安心できます。
- 閉経後(1年以上月経がない状態)の出血は、量が少量でも必ず医療機関に相談してください。
- 妊娠の可能性があるときの出血は、痛みがなくても早めに受診してください。
とてもよくある相談です。女性の多くが一生のうちに一度は経験すると言われています。恥ずかしいことでも、特別なことでもありません。
症状
- 大量の出血が止まらない(1時間以内にナプキンを何枚も替える、大きな血の塊が続く)
- ふらついて立てない、意識が遠のく、目の前が暗くなる
- 顔色が青白い、冷や汗が出る、脈が速い、息苦しい(ショックのサイン)
- 妊娠の可能性があるときの、強い下腹部の痛み+出血(ためらわず119番に電話してください)
- ⚠出血が数日続く、または量が増えてきている
- ⚠発熱、強い下腹部の痛み、においのあるおりものがある
- ⚠妊娠中、または妊娠の可能性があるときの出血
- ⚠閉経後の出血
- ⚠めまい・動悸・息切れなど、貧血を思わせる症状がある
一般的な症状
- 月経ではない日に腟から出血する(少量のだらだらした出血が多い)
- 月経の量が以前より多い、または大きな血の塊が出る
- 月経の期間が7日以上続く
- 月経と月経のあいだに出血する
- 性交渉のあとに出血する
- 閉経後に出血する
- おりものに血が混じる、ピンク色や茶色のおりものが出る
- 下腹部の痛みや張りをともなうことがある
- 出血が続くと、めまい・だるさ・動悸(貧血のサイン)が出ることがある
子供の症状
- 思春期前の女の子の腟からの出血は、月経がまだ始まっていない場合は注意が必要です(けが、感染、異物、ホルモンの影響などが原因になります)
- 月経が始まったばかりの10代は、ホルモンのバランスが不安定で周期が乱れやすい時期です
- 出血が多くてふらつく、顔色が悪い、元気がないときは早めに受診してください
- 恥ずかしさから自分から言い出せないことがあります。責めずに、安心して話せる雰囲気をつくることが大切です
高齢者の症状
- 閉経後の出血は、少量でも必ず受診してください。年齢とともに注意したい原因(子宮内膜や子宮頸部の病気)があります
- 血液を固まりにくくする薬を使っている場合は、出血が止まりにくくなることがあります。服用中の薬は必ず医師に伝えてください
- おりものの変化、下腹部の違和感、体重の変化などもあわせて伝えると診断の助けになります
- 持病や通院中の病気がある場合は、その情報も伝えてください
原因
主な原因
- ホルモンバランスの乱れ(排卵がうまくいかない状態。思春期や更年期に多い)
- 子宮筋腫(子宮にできる良性のこぶ)
- 子宮内膜ポリープや子宮頸部ポリープ(子宮の内側や入り口にできる良性のできもの)
- 子宮内膜症、子宮腺筋症(子宮の内側の組織が別の場所にできる病気)
- 腟や子宮頸部の炎症、感染症
- 避妊リング(IUD)やホルモン剤の影響
- 甲状腺(首にあるホルモンの腺)の病気
- 血液が固まりにくい体質
- 妊娠に関連した出血(流産、子宮外妊娠など)
- 子宮頸がん、子宮体がんなど(頻度は高くありませんが、見逃せない原因です)
- けがや異物
リスク要因
- 思春期・更年期(ホルモンが乱れやすい時期)
- 子宮筋腫やポリープを指摘されたことがある
- 甲状腺の病気、血液の病気がある
- 血液を固まりにくくする薬やホルモン剤を使っている
- 肥満(ホルモンバランスに影響します)
- 強いストレス、極端なダイエット、過度な運動
- 妊娠の可能性がある
- 子宮頸がん検診を長く受けていない
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 大量の出血、または止まらない出血がある
- 妊娠中・妊娠の可能性があるときの出血
- 閉経後の出血
- 発熱や強い下腹部の痛みをともなう
- ふらつき、動悸、息切れなど貧血を思わせる症状がある
- 出血が2週間以上だらだら続いている
定期受診を予約すべき場合:
- 月経の量や周期が以前と変わった
- 月経痛が強くなった、鎮痛薬が効きにくくなった
- 性交後の出血が続いている
- 健康診断や検診で指摘された
- 出血のことで不安が続き、日常生活に支障がある
診断
まず問診で、いつから、どのくらいの量、どんなふうに出血しているかを確認します。そのうえで内診(腟と子宮の入り口を直接みる診察)や超音波検査を行い、必要に応じて追加の検査をします。内診が初めてで不安なときは、遠慮なく「不安です」と伝えてください。配慮してもらえます。
行われる可能性のある検査
- 問診と出血の記録の確認(いつ・量・期間・痛みの有無)
- 妊娠検査(尿や血液で確認)
- 内診(腟と子宮頸部の様子をみる)
- 経腟超音波検査(子宮や卵巣の様子を画像でみる)
- 血液検査(貧血、ホルモン、甲状腺、血液の固まりやすさなど)
- 子宮頸がん検診(細胞診)
- 子宮内膜の組織検査(内膜生検:子宮の内側の組織を少し採取して調べる)
- 必要に応じてMRI・CT、子宮鏡(子宮の中を直接みるカメラの検査)
診察で予想されること
検査の多くは外来で短時間に行えます。内診や組織検査のときは、痛みが少なくなるように工夫されます。結果が出るまで数日から数週間かかることもあります。検査の前に、費用や痛み、当日の注意点を必ず確認しておくと安心です。
治療
治療は原因によって変わります。出血が少量で原因が良性であれば、しばらく様子をみることもあります。まずは貧血の有無を確認し、体調を整えることから始めることが多いです。どの治療を選ぶかは、年齢、妊娠の希望、持病、生活の状況をふまえて医師と一緒に決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 出血の量・日・期間をメモする(ナプキンの交換回数が目安になります)
- 十分な休養と睡眠をとる
- 鉄分を意識した食事を心がける
- 痛みが強い日は無理をせず横になる
- 出血が多いときの入浴は、医師の指示に従う(シャワー程度にするなど)
- 市販薬を使う前に、薬剤師や医師に相談する
- 出血が多い日は激しい運動や長時間の外出を控える
医療治療
原因に合わせて、ホルモンのバランスを整える治療、炎症を抑える治療、貧血の改善、ポリープなどのできものを取る処置などが行われます。具体的な薬の種類や量は、年齢・妊娠の希望・持病に合わせて医師が決めます。自己判断で薬を始めたり、中止したりしないでください。気になることは薬剤師にも気軽に相談できます。
手術が検討される場合
筋腫やポリープが大きい、出血が多くて日常生活に支障がある、貧血が進んでいる、がんが疑われる場合などは手術を検討します。手術の方法は、できものだけを取る、子宮を残す、子宮を摘出するなどいくつかあり、年齢や妊娠の希望をふまえて話し合います。
この病気と共に生きる
出血があると予定が立てにくく、外出が不安になります。バッグに予備の下着やナプキンを入れておく、着替えを用意しておく、出血をアプリや手帳に記録する——こうした小さな工夫で負担は軽くなります。出血の記録は診察のときにも役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がける
- ストレスをためない工夫をする(趣味の時間、深呼吸、軽い運動など)
- 適正な体重を保つ
- 禁煙する(喫煙はホルモンや血管に影響します)
- 極端なダイエットや過度な運動を避ける
- 子宮頸がん検診を定期的に受ける
食事と運動
出血が続くと鉄が失われ、貧血になりやすくなります。赤身の肉、魚、卵、大豆製品、ほうれん草、ひじきなど鉄分の多い食品を意識してとり、ビタミンC(野菜や果物)と一緒にとると吸収が助けられます。コーヒーやお茶は食事の前後を少しずらすと、鉄の吸収の妨げになりにくくなります。出血が多いときは激しい運動を控え、体調が良い日は軽い散歩など無理のない範囲で体を動かしましょう。
精神的健康と心の健康
出血が続くと「何か大変な病気かもしれない」という不安が続きます。また、恥ずかしさから誰にも言えず、一人で抱え込んでしまうこともあります。不安を感じるのは自然な反応です。話すだけで気持ちが楽になることもあります。つらい気持ちが続くときは、医療者に「気持ちの面でも相談したい」と伝えてください。
予防
すべての出血を防ぐことはできませんが、リスクを下げたり、早く見つけたりすることはできます。気になる変化を記録して早めに相談することが、いちばんの予防になります。
ワクチン
HPVワクチン(子宮頸がんの原因となるウイルスを防ぐワクチン)は、日本では小学6年から高校1年相当の女子を対象に公費で受けられます。年齢や接種歴によって対象が変わるため、お住まいの自治体の案内やかかりつけ医に確認してください。
検診プログラム
子宮頸がん検診は、厚生労働省の指針では20歳以上の女性に2年に1回が推奨されています。閉経後も続けることが大切です。気になる出血があるときは、検診の時期を待たずに受診してください。
合併症
治療しない場合
- 貧血が進み、だるさ・息切れ・動悸・集中力の低下が起きる
- 原因となっている病気が進行する(がんなどを見逃してしまう可能性)
- 妊娠に関わる問題が悪化する
- 日常生活の質が下がり、不安や疲労が大きくなる
長期的な見通し
月経以外の出血の原因は、多くが良性で治療できます。きちんと調べることは、安心につながる第一歩です。気になる症状があるときは、早めに医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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