肛門の痛み(おしりの穴の痛み)
概要
肛門の痛みとは、おしりの穴(肛門)やその周りに感じる痛みのことです。ズキズキする、ヒリヒリする、座ると痛い、排便のときに痛いなど、感じ方はさまざまです。原因はとても多く、ほとんどは命に関わるものではありませんが、なかには早めに治療が必要なものもあります。痛みが続くときは、恥ずかしがらずに医療機関に相談してください。
重要な事実
- 肛門の痛みはとてもよくある症状で、多くの場合は命に関わる病気ではありません。
- 原因の多くは、硬い便で肛門の皮膚が切れる「裂肛(れっこう)」や、いわゆる「いぼ痔」などです。
- 発熱や広がる腫れ、膿(うみ)が出る場合は、早めの受診が必要です。
はい、とてもよくある症状です。大人も子どもも経験することがあり、専門外来を受診する人の多い悩みのひとつです。恥ずかしいと感じる必要はありません。
年齢や性別を問わず、どなたでも起こりえます。とくに便秘がちの人、トイレに長く座る人、座っている時間が長い人、妊娠・出産を経験した人によくみられます。
症状
- 突然の激しい痛みで動けない、冷や汗が出る、吐き気がひどい(おなかの急な病気の可能性)
- 大量の出血が続き、ふらつく、意識が遠のく
- 高熱と肛門周りの腫れが同時にあり、ぐったりしている、会話がぼんやりしている
- 肛門から腸のようなものが出て戻らない、色が黒っぽく変わっている
- ⚠38度以上の発熱と、肛門周りの腫れ・赤み・強い痛み
- ⚠肛門の周りに膿(うみ)のようなものが出る、じくじくする
- ⚠痛みが2〜3日以上続き、どんどん強くなる
- ⚠便に血が混じる状態が続く、便が細くなった気がする
- ⚠妊娠中、または免疫の下がる治療を受けている中の肛門の痛み
一般的な症状
- 肛門やその周りの痛み(ズキズキ、ヒリヒリ、締めつけられる感じ)
- 座ったときや自転車に乗ったときに痛む
- 排便のときの痛み、排便のあとにしばらく痛む
- 肛門のかゆみ、腫れ、赤み
- 少量の出血(トイレットペーパーに血がつくなど)
- 肛門の周りにしこりやふくらみを感じる
- おりもののような分泌物や、下着の汚れ
子供の症状
- 子どもでは、硬い便による裂肛(肛門の皮膚の切れ)や、おむつかぶれによる皮膚の炎症がよくみられます
- 便秘が続いていると、排便のたびに痛がることがあります
- おむつが汚れたまま長時間たつと、皮膚が赤くなって痛むことがあります
- 痛がって泣く、おなかも痛がる、元気がない、熱があるときは早めに受診してください
高齢者の症状
- 水分や食物繊維が足りず、硬い便による裂肛を起こしやすいことがあります
- 寝ている時間が長いと、皮膚の炎症や床ずれのようなトラブルが起こることがあります
- 糖尿病などの持病があると、感染が進みやすいことがあります
- 痛みを我慢しがちです。気になるときは早めに相談してください
原因
主な原因
- 裂肛(れっこう):硬い便などで肛門の皮膚が切れて痛む状態
- 痔核(じかく):いわゆる「いぼ痔」。肛門の血管がふくらみ、痛みや出血を起こします
- 肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう):肛門の周りに膿がたまる状態。強い痛みと熱が出ます
- 痔瘻(じろう):膿瘍のあとに膿の通り道が残った状態
- 便秘や硬い便、下痢のくり返しによる刺激
- 長時間の座位や、トイレに長く座ること
- 肛門の筋肉のけいれんによる痛み(排便と関係なく突然痛むことがあります)
- 皮膚の炎症やカビ(真菌)、かぶれ
- 性感染症や、肛門に傷ができるような刺激
- まれに、肛門や直腸の腫瘍など別の病気が隠れていることもあります
リスク要因
- 便秘がち、または硬い便が出ることが多い
- 食物繊維や水分が足りない食事
- トイレで長い時間すわる、スマートフォンを見ながら座る
- 座っている時間が長い仕事や生活
- 妊娠・出産の経験
- 下痢をくり返す、辛い食べ物やお酒の飲みすぎ
- 糖尿病など、感染に弱くなる持病がある
- 肛門の手術を受けたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱と肛門周りの腫れ・赤み・強い痛みがある
- 膿(うみ)や血が多く出る
- 痛みが急に強くなり、座ることも歩くこともつらい
- おなか全体が痛い、吐き気が続く
- 赤ちゃんや小さな子どもが痛がって泣きやまない、元気がない
定期受診を予約すべき場合:
- 痛みが数日以上続く、または何度もくり返す
- 排便のたびに痛む、出血がある
- 肛門の周りにしこりやふくらみがある
- かゆみや分泌物が続いて気になる
- 便が細くなった、便の習慣が変わったと感じる
診断
まず、いつから、どんな痛みか、排便との関係、出血の有無などを聞きます(問診)。そのうえで、肛門の周りを目で見て、必要に応じて肛門の中を器具で観察します。痛みが強いときは、無理をせずに診察の方法を工夫してもらえます。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状の経過や生活習慣の確認)
- 視診(肛門とその周りの皮膚の観察)
- 触診(しこりや腫れ、痛む場所の確認)
- 肛門鏡(こうもんきょう)という細い器具で肛門の中を観察
- 血液検査(炎症や貧血の確認)
- 超音波(エコー)検査(膿がたまっていないかを見る)
- 必要に応じてMRI検査(腫れの広がりを詳しく見る)
- 血便や年齢に応じて、大腸の内視鏡検査を勧められることがあります
診察で予想されること
診察は数分から十数分で終わることが多く、とても恥ずかしく感じるかもしれませんが、医療者にとってはよくある診察です。横向きに寝た姿勢など、負担の少ない体勢で行います。痛いときは遠慮なく伝えてください。
治療
治療は原因によって変わります。多くは、排便を楽にする生活の工夫と、症状をやわらげるお薬でよくなります。膿がたまっている場合などは、小さな処置や手術が必要になることがあります。どの方法が合うかは、診察の結果をもとに医師と相談して決めます。
自宅でのセルフケア
- ぬるま湯でおしりをやさしく洗い、清潔を保つ(坐浴(ざよく)が楽なこともあります)
- 排便はがまんせず、トイレに長く座らない(5分程度を目安に)
- 硬い便を避けるため、水分と食物繊維をしっかりとる
- 拭くときは強くこすらず、ぬれたティッシュや洗浄でやさしく
- 長時間同じ姿勢で座り続けず、ときどき立って休む
- きつい下着や衣物で締めつけない
- 市販のお薬を使う前に、薬剤師や医療機関に相談する
医療治療
医師の判断で、便をやわらかくするお薬、痛みをやわらげるお薬、炎症をしずめる塗り薬などが使われることがあります。膿がたまっている場合は、麻酔をして切り開いて膿を出す処置を行います。くり返す場合や慢性化した場合には、手術が検討されることもあります。具体的な薬の種類や量は、必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
肛門の周りに膿がたまっているとき(切開して膿を出す処置)、痔瘻(じろう)ができているとき、症状をくり返す痔や、慢性化した裂肛で生活に支障があるときなどに、手術が検討されます。手術が必要かどうかは、症状の強さや生活への影響をふまえて医師と相談します。
この病気と共に生きる
痛みがあるときは、長時間の座位を避け、柔らかいクッションを使う、ぬるま湯でおしりを温めるなど、少しの工夫で楽になることがあります。排便のリズムを整えることが、再発を防ぐ近道です。
生活習慣のアドバイス
- 毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつくる
- トイレでは長居をせず、いきみすぎない
- 座りっぱなしを避け、1時間に一度は立って動く
- 適度な運動で腸の動きを助ける
- 入浴やシャワーで清潔を保つ
- 睡眠と休息を十分にとる
食事と運動
食物繊維(野菜、きのこ、海藻、果物、全粒穀物など)と水分をしっかりとると、便が柔らかくなり痛みがやわらぎます。辛い食べ物やお酒のとりすぎは刺激になることがあるので、ほどほどに。ウォーキングなど軽い運動は腸の動きを良くし、便秘の予防に役立ちます。
精神的健康と心の健康
肛門の痛みは、人に話しにくく、恥ずかしさや不安を感じやすい症状です。痛みが続くと集中できず、気分が落ち込むこともあります。一人で抱えこまず、信頼できる人や医療者に話してみてください。つらい気持ちが続くときは、心の相談窓口を利用することも大切です。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、多くは生活の工夫で予防できます。とくに便秘を防ぐことが大切です。水分と食物繊維をとり、適度に動き、トイレに長く座らない習慣をつけましょう。
検診プログラム
血便が続く場合や、年齢に応じて、お住まいの自治体が行う大腸がん検診を受けることが勧められます。検診の対象や受け方は、自治体の案内をご確認ください。
合併症
治療しない場合
- 痛みが長引き、日常生活や睡眠に支障が出る
- 裂肛が慢性化して、治りにくくなることがある
- 膿がたまった状態が広がり、入院や処置が必要になることがある
- 痔瘻(じろう)という膿の通り道が残ってしまうことがある
- 出血が続いて貧血になることがある
- まれに、別の病気が隠れていることに気づくのが遅れる
長期的な見通し
肛門の痛みの多くは、原因に合ったケアで数日から数週間のうちに良くなります。くり返す場合も、生活の工夫と適切な治療でコントロールできることがほとんどです。心配なときは早めに相談することが、安心への一番の近道です。
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最終更新: 2026年11月3日
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