アンエンドファジア(頭の中の声がほとんどないこと)
概要
アンエンドファジアとは、頭の中の「言葉の独り言」がほとんど、あるいはまったく起こらない人の特徴を指す言葉です。この頭の中の独り言を「内言語(ないげんご)」と呼びます。たとえば、考えごとをするとき、本を読むとき、買い物リストを覚えようとするときに、頭の中で声が聞こえる人が多いのですが、そうした声がほとんど聞こえない人もいます。アンエンドファジアは病気ではなく、脳の働き方の個人差のひとつと考えられています。最近になって名前がつけられた、新しい考え方です。
重要な事実
- 内言語(頭の中の声)があるかどうかは人によって大きく違い、まったくない人もいれば、とてもよく聞こえる人もいます。
- アンエンドファジアは病気や障害ではなく、治療が必要なものではありません。
- 研究はまだ始まったばかりで、はっきりした割合や仕組みはこれから分かってくるところです。
どのくらいいるのかは、まだよく分かっていません。研究によって差が大きく、調査の聞き方でも結果が変わります。ただ、内言語が「ほとんどない」「まったくない」と答える人は決して珍しくなく、多くの人の中にいることが分かってきています。
年齢や性別に関係なく見られます。子どもにも大人にも、高齢の方にもあります。性格や知能の高さと結びつくものではないと考えられています。
症状
- 突然、言葉が出なくなった、話そうとしても言葉にならない
- ろれつが回らない、相手の言うことが理解できない
- 顔の片側が動かない、手や足に突然の力が入らない、突然の激しい頭痛
- 意識がもうろうとしている
- ⚠以前はふつうにできていた言葉の作業(会話、計算、読み書き)が、数日のうちに急に難しくなった
- ⚠言葉の出にくさや理解のしにくさが続いている
- ⚠強い不安や落ち込みが続き、日常生活に支障が出ている
一般的な症状
- 考えごとをするときに、頭の中に言葉の声が聞こえない。イメージや感覚、映像などで考えることが多い。
- 本や文章を読んでも、頭の中での音読(心の中の読み上げ)が起こらない。
- 電話番号や買い物リストなどを、頭の中で繰り返し唱えて覚えるのが苦手に感じることがある。
- 頭の中で同じことをぐるぐる考える(反すう)ことが少ない、と感じる人がいる。
- 友人や家族が「頭の中で声がする」と話しているのを聞いて、自分とは違うと驚く。
- 話すとき、書き言葉のように整った文を頭の中で組み立ててから話す感覚がない。
子供の症状
- 音読のときに、心の中での読み上げを使わずに読んでいるように見える。
- 口頭で言われた指示を、頭の中で繰り返して覚えるのが苦手なことがある。
- 静かに考える場面よりも、声に出したり、書いたり、動いたりしながら考えるほうが力を発揮しやすい。
- 本人は特に困っていないことが多く、学校生活に問題があるとは限らない。
高齢者の症状
- 加齢によって起こる変化ではなく、生涯を通じての考え方のくせのようなものと考えられている。
- 「最近、頭の中の声が減った」という場合は、アンエンドファジアとは別の理由(気分の落ち込み、疲れ、体の病気など)が隠れていることがあるので、かかりつけ医に相談すると安心。
- もの忘れが気になるときは、内言語の特徴と決めつけずに、医療機関で確認してもらうことが大切。
原因
主な原因
- 脳が言葉をどのように使うかの個人差。内言語をどのくらい使うかは人によって異なります。
- 幼いころからの言葉との関わり方や、考え方のくせ(イメージで考える、声で考えるなど)の違い。
- はっきりした仕組みはまだ研究の途中で、分かっていないことが多くあります。
リスク要因
- アンエンドファジアは病気ではないため、「危険因子」という考え方は当てはまりません。
- 研究では、内言語の使い方と、言葉を使った記憶の課題の成績との間に関連がみられたという報告がありますが、日常生活での困り具合には個人差が大きいです。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の言葉の出にくさ、理解のしにくさ、ろれつの回りにくさがある(脳卒中の可能性があるため、すぐに119番へ)
- 言葉に関する変化が急に現れ、数日以内に悪くなっている
- 強い不安や落ち込みが続き、生活が回らなくなっている
定期受診を予約すべき場合:
- 自分や子どもの考え方の特徴について知りたい、相談したい
- 会議での発言準備、暗算、暗記など、生活や仕事の中で困りごとが続いている
- 子どもの学習面で気になることがあり、学校の先生からも指摘があった
- 「自分は変なのだろうか」と不安に感じている
診断
アンエンドファジアは、診断名がつくような病気ではありません。研究の場面では、内言語の体験についての質問紙(アンケート)に答えてもらい、その人の特徴を知る方法がとられています。つまり、本人の自己申告が中心です。医療機関では、まず別の理由(耳や言葉の問題、発達の特徴、気分の落ち込み、体の病気など)がないかを確かめます。
行われる可能性のある検査
- 内言語の体験についての質問紙・面談(どのくらい頭の中で声がするか、どんなふうに考えるか)
- 必要に応じて、聴力や言葉の使われ方の確認
- 気になることがある場合の、発達や気分、睡眠などに関する問診
- 気になる症状があれば、その症状に応じた検査
診察で予想されること
診察では、ふだんどうやって考えているかを言葉で説明します。「頭の中の声」は目に見えないため、本人の言葉での説明が中心になります。うまく説明できないときは、具体例(本を読むとき、買い物リストを覚えるとき、考えごとをするとき)を思い出しながら話すと伝えやすくなります。
治療
アンエンドファジアは治療が必要な状態ではありません。大切なのは「治す」ことではなく、自分に合った考え方や覚え方の工夫を見つけることです。困りごとがある場合も、生活の工夫や周囲の理解で大きく改善することが多いです。
自宅でのセルフケア
- メモやスマートフォンのメモ機能を活用し、覚えておきたいことは頭の中だけで抱えず外に出す。
- 大事な文章は声に出して読む、または指でなぞりながら読むなど、体を使った読み方を取り入れる。
- 考えを整理したいときは、図や表、箇条書きにして書き出す。
- 会議や発表の前に、伝えたいことを短いメモにしておく。
- 自分は「声で考えるタイプではない」と知っておくだけでも、無理に頭の中で文章を組み立てようとする負担が減る。
医療治療
アンエンドファジアそのものを対象にした薬や治療はありません。困りごとがある場合は、言語聴覚士、心理士、作業療法士などの専門職と相談しながら、その人に合った覚え方・伝え方の工夫を一緒に探していくことがあります。気分の落ち込みや強い不安がある場合は、その気持ちに寄り添った相談や支援が行われます。
手術が検討される場合
該当しません。アンエンドファジアは手術で治すものではありません。
この病気と共に生きる
内言語がないことで、ふだんの生活に大きな支障が出るとは限りません。むしろ、頭の中の声に振り回されにくいという面もあります。大切なのは、自分が「どうやって考え、どうやって覚えるか」を知り、それに合った道具や方法を選んでいくことです。
生活習慣のアドバイス
- 大切な情報は、頭の中だけで覚えず、メモ・カレンダー・アラームなどを使う習慣をつくる。
- 一人で考える時間と、声に出して話しながら考える時間を、場面に応じて使い分ける。
- 睡眠を十分にとる。寝不足は考えをまとめる力を弱めます。
- 家族や同僚に、自分の考え方の特徴をあらかじめ伝えておくと、誤解が減り話しやすくなる。
食事と運動
特定の食べ物や運動で内言語の使い方が変わるという証拠はありません。ただ、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠は、脳の働き全般を支え、考えをまとめやすくします。無理のない範囲で、続けられる習慣を選ぶことが大切です。
精神的健康と心の健康
「みんなは頭の中で声がするのに、自分は違う」と感じて、不安になったり、自分はおかしいのではと思い込んだりすることがあります。これは特別なことではなく、特徴を知ることで気持ちが軽くなることが多いです。もし気持ちがつらくて眠れない、生活が回らないといった状態が続くときは、一人で抱えず、かかりつけ医や地域の保健サービス、こころの相談窓口に相談してください。緊急の場合は119番に連絡してください。
予防
アンエンドファジアは病気ではなく、脳の働き方の個人差と考えられているため、「予防する」という考え方は当てはまりません。
ワクチン
該当しません。ワクチンで予防できるものではありません。
検診プログラム
健診などで見つける種類のものではありません。気になることがあれば、かかりつけ医や学校の相談窓口に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 治療が必要な状態ではないため、放っておいて悪くなるということは考えにくいです。
- ただし、困りごとを一人で抱え込むと、自信の低下やストレスにつながることがあります。
- 周囲から「やる気がない」「集中していない」と誤解されることがあり、人間関係の負担になる場合があります。
長期的な見通し
内言語がほとんどないことは、生涯を通じたその人の特徴のひとつです。多くの人は、自分なりの工夫をしながら、仕事や学び、人間関係を十分に築いています。研究は始まったばかりで、これから理解がさらに深まっていく分野です。気になることがあれば、かかりつけ医に相談しながら、自分に合った方法を一緒に見つけていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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