10代の不安(思春期の不安症)
概要
不安は、危険や心配ごとに備えるための、誰にでもある自然な気持ちです。テストの前や発表の前どきどきするのは普通のことです。ところが、その不安がとても強くなったり、長い間ずっと続いたりして、学校に行くことや友だちとの付き合い、毎日の生活がつらくなる状態を「不安症(不安障害)」と呼びます。10代の不安症は、本人の性格や努力の問題ではなく、脳と体の反応のバランスが関係する、治療できる健康の問題です。
重要な事実
- 不安症は「心の弱さ」ではなく、体と脳の反応の病気で、適切なサポートで良くなることが多いものです。
- 10代の不安症はとてもよく見られ、特別なことではありません。同じように感じている仲間はたくさんいます。
- 早めに大人(家族・学校の先生・かかりつけ医など)に話すことが、回復への一番の近道になります。
はい、とてもよくあることです。世界の調査では、10代のおよそ10〜20%が、何らかの不安の問題を経験すると報告されています。日本でも珍しいことではなく、中学生・高校生の多くが「不安が強い時期がある」と答えています。つまり、あなたやあなたの子どもだけが特別なわけではありません。
思春期(おおむね10〜19歳)は、体も脳も大きく変化する時期で、不安が強くなりやすい時期です。女子に多いといわれますが、男子でも同じように起こります。心配しやすい性格、家族に不安症の人がいる場合、いじめや友だち関係の悩み、転校や受験などの環境の変化、家庭のストレスなどがあると、不安が強くなりやすくなります。
症状
- 「死にたい」「消えたい」と話す、またはそのようなメモや投稿がある
- 自分を傷つける行動(リストカットなど)をしている、またはしようとしている
- 危険な場所にのぼる、飛び出すなど、命に関わる行動がある
- 過呼吸がひどくて動けない、意識がぼんやりしている
- 薬を大量に飲んだ可能性がある、またはその疑いがある
- ⚠パニックのような強い発作がくり返し起こり、日常生活が保てない
- ⚠学校に行けない状態が1〜2週間以上続いている
- ⚠ほとんど食べられない、ほとんど眠れない日が続く
- ⚠強い不安で外出できず、家に閉じこもっている
- ⚠自分を傷つけたい気持ちが頭から離れない
一般的な症状
- 心配が止まらず、同じことを何度も考えてしまう
- 「失敗したらどうしよう」「嫌われたらどうしよう」と強い不安が続く
- 学校や部活、人前がこわくなり、避けるようになる
- 緊張すると動悸(心臓がどきどきする)、息苦しさ、めまい、汗、手の震えがある
- おなかの痛み、頭痛、吐き気など、体の不調として出る
- 寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝起きられない
- 集中できない、疲れやすい、イライラする
- 完璧でないと気がすまない、確認を何度もする
- 人に何度も安心を求める(「大丈夫だよね?」とくり返す)
- 自分を責める、自信がないと感じる
子供の症状
- 低年齢のきょうだいや子どもの場合、分離不安(親と離れるのがこわい)、登園・登校しぶりとして現れることがあります
- 「おなかが痛い」「頭が痛い」など体の不調を訴えることが多い
- かんしゃく(ひどい怒り)や泣きが増える、夜泣きが戻る
- 人前で話さなくなる、固まる
- 安心させるために、親に何度もくっついて確認する
高齢者の症状
- この記事の中心は10代ですが、10代後半から成人期にかけて不安が続くこともあります
- 大人になるにつれて、仕事や人間関係の不安として形を変えることがあります
- 保護者や家族自身も心配や不安を抱えやすく、支える側のケアも大切です
- 大人の場合、飲酒や市販薬の使いすぎなどで不安を和らげようとすることがあり、注意が必要です
原因
主な原因
- 思春期の脳と体の変化:感情や不安を調整する脳の部分が成長の途中で、不安が強く出やすい時期です
- 性格や気質:生まれつき慎重、心配しやすい、敏感といった特徴があると不安が出やすいことがあります
- 体質・遺伝の影響:家族に不安症の人がいると、起こりやすくなることがあります
- 環境のストレス:いじめ、友だちとのトラブル、受験や成績のプレッシャー、転校、家族の変化など
- 生活の乱れ:睡眠不足、カフェインのとりすぎ、SNSの長時間利用
- 不安を避けることで一時的に楽になる経験をくり返し、かえって不安の範囲が広がっていくこと
リスク要因
- 家族に不安症やうつ病の人がいる
- いじめ、虐待、無視などのつらい経験がある
- 引っ越し、転校、受験、家族の別居など大きな変化があった
- 完璧主義で、失敗を極端に恐れる
- 睡眠が足りない、生活リズムが大きく乱れている
- エナジードリンクやコーヒーなどカフェインの多い飲み物をよくとる
- SNSを長時間見て、人と比べてしまうことが多い
- まわりの期待が高く、弱音を言えない環境にいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 自分を傷つけたい気持ちや「死にたい」という気持ちがある(この場合はすぐに119番、または救急・医療機関へ)
- パニックのような発作がくり返し、学校や生活が成り立たない
- ほとんど眠れない、食べられない状態が数日続く
- 自分を傷つける行動がある
- 薬を大量に飲んだ、またはその疑いがある(すぐに119番)
定期受診を予約すべき場合:
- 不安が数週間以上続き、学校や友だち付き合いに支障が出ている
- 頭痛や腹痛など体の不調が続き、検査でも原因がはっきりしない
- 登校しぶりが続いている、部活や習い事を急にやめた
- 睡眠や食欲の変化が続いている
- 本人が「つらい」「助けてほしい」と話している
- 保護者や先生が「以前と様子が違う」と感じている
診断
医療機関では、まず話をよく聞くことから始まります。本人からだけでなく、できれば家族からも、いつごろから、どんなときに、どんなふうに困っているかを聞きます。学校での様子や生活リズムも確認します。そのうえで、体の病気(甲状腺の病気、貧血、睡眠の問題など)が隠れていないかを確かめ、不安症かどうか、そしてどのくらい生活に影響しているかを一緒に考えていきます。診断は「あなたはこうだ」と決めつけるものではなく、必要なサポートを選ぶための目安です。
行われる可能性のある検査
- 問診(本人と家族から、症状や経過、生活の様子を聞く)
- 学校生活や友人関係、家庭の状況についての確認
- 体の診察と、必要に応じた血液検査など(甲状腺の病気や貧血など、体の原因がないか確かめるため)
- アンケート形式の質問紙(不安の強さや気分の状態を把握するため)
- 睡眠や生活リズムについての聞き取り
診察で予想されること
初めての受診では、話を聞くことが中心になります。話しにくいことがあれば、メモに書いて持って行ってもかまいません。保護者が同席すると、本人が話しにくいこともあるため、本人だけの時間を設けることがあります。診断がつくまでに何回か通うこともあります。安心して話せるまで、ゆっくりで大丈夫です。
治療
10代の不安症は、適切なサポートで良くなることが多いものです。治療の中心は、話を聞いてもらいながら、不安との付き合い方を少しずつ練習していくことです。必要に応じて、家族や学校と連携しながら進めます。治療は「一人で頑張る」ものではなく、まわりの大人と一緒に進めるものです。
自宅でのセルフケア
- 毎日の生活リズムを整える(決まった時間に起きる、三食をとる、睡眠をしっかりとる)
- ゆっくりした呼吸を意識する(息を4秒吸って、6秒かけて吐く、を数分間)
- 不安が強いときは、その場を少し離れて落ち着く時間をつくる
- 不安なことを紙に書き出し、「今できること」と「今は考えなくていいこと」に分ける
- 信頼できる人に、感じていることを言葉にして話す
- SNSやニュースを見る時間を決めて、寝る前は見ないようにする
- カフェインの多い飲み物(コーヒー、エナジードリンク、濃いお茶)を減らす
- 小さな「できた」を記録する(今日できたことを1つ書く)
医療治療
治療の方法は、症状の強さや生活への影響に合わせて選ばれます。中心になるのは「認知行動療法(考え方と行動のパターンを整えていく話し方の治療)」で、不安に少しずつ慣れていく練習や、リラックスする方法、考えを整理する方法を学びます。家族への支援や、学校との連携も行われます。症状が強く日常生活が難しい場合には、医師の判断で不安をやわらげる薬が使われることもあります。薬を使うかどうか、どのくらい続けるかは、本人・家族・医師が話し合って決めます。薬の名前や量、使い方については、必ず処方した医師・薬剤師の説明に従ってください。この記事では具体的な薬の名前や量はお伝えしません。
手術が検討される場合
不安症の治療に手術は使われません。
この病気と共に生きる
不安はゼロにすることはできませんが、「あっても大丈夫」な状態をつくっていくことが目標です。調子が良い日と悪い日をくり返すのは自然なことです。悪い日があっても、それが「失敗」や「後戻り」ではありません。不安が強くなったときの自分なりの対処法(呼吸、散歩、音楽、信頼できる人に話す)をいくつか持っておくと安心です。学校とは、保健室で休む、別室で受けるなど、無理のない方法を相談しておくとよいでしょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日同じくらいの時間に起きて、同じくらいに寝る
- 朝日を浴びて、昼間に体を動かす
- スマホやゲームの時間を決めて、寝る1時間前は画面から離れる
- カフェインやエナジードリンクを控える
- 不安なことを一人で抱えず、決まった相手に話す習慣をつくる
- 予定を詰め込みすぎず、休む時間を予定に入れる
- 「完璧じゃなくても大丈夫」を合言葉にする
食事と運動
特別な食事療法があるわけではありませんが、三食を規則正しくとることは、気分と体調の安定につながります。血糖値の急な上がり下がりを避けるため、朝食を抜かない、甘い飲み物をとりすぎないことが役立ちます。運動は、ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど、息が少しはずむ程度のものを1日20〜30分、続けられそうな範囲で行うのがおすすめです。運動は不安や気分をやわらげる助けになります。ただし、無理をしすぎないことが一番大切です。
精神的健康と心の健康
不安が長く続くと、自信がなくなったり、自分を責めたり、気分が落ち込んだりすることがあります。学校に行きづらくなったり、友だちと会うのがこわくなったりすることもあります。これは「弱さ」ではなく、不安が生活に影響しているサインです。不安と気分の落ち込みは一緒に起こることがあり、どちらも相談してよい問題です。自分を傷つけたい気持ちや「死にたい」という気持ちが少しでも浮かんだら、一人で抱えず、すぐに信頼できる大人か医療機関、または119番に助けを求めてください。あなたは一人ではありません。
予防
すべてを予防することはできませんが、不安が強くなりにくい環境を整えることはできます。生活リズムを整える、睡眠をしっかりとる、安心して話せる大人をつくる、いじめや強いプレッシャーから守る、SNSとの付き合い方を決める、といったことが助けになります。不安が出てきたときに早めに相談することが、長引かせない一番のポイントです。
検診プログラム
10代の不安を早期に見つけるための、学校での心の健康アンケートや、健診の場での質問紙が使われることがあります。日本では、学校の健康診断や教育相談、自治体の相談事業などで心の状態を確認する機会があります。気になることがあれば、学校の先生やかかりつけ医に相談してみてください。
合併症
治療しない場合
- 不安が広がり、学校や外出、人と会うことが難しくなる
- 気分の落ち込み(うつ)を伴うことがある
- 不登校や、部活・習い事の継続が難しくなる
- 睡眠や食欲の乱れから体調をくずしやすくなる
- 自分を傷つける行動や、飲酒・薬の不適切な使用につながることがある
- 進学や就職の時期に、不安への対処が難しくなることがある
長期的な見通し
10代の不安症は、適切なサポートで良くなるケースがとても多いものです。早めに相談し、本人・家族・学校が一緒に支えることで、多くの人が少しずつ楽になっていきます。時間はかかっても、良くなっていくことは十分にあります。今つらくても、それはずっと続くものではありません。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.