膝の裏の痛み
概要
膝の裏の痛みは、膝の後ろ側(ひざを曲げたときにくぼむ部分)に感じる痛みや腫れ、張り感のことです。この部分には骨、筋肉、腱(きん: 筋肉と骨をつなぐひも状の組織)、靭帯(じんたい: 骨と骨をつなぐ強い組織)、血管、神経、そして滑液包(かつえきほう: 摩擦を減らすための小さな水ぶくろ)が集まっています。そのため、痛みの原因は筋肉や腱の使いすぎから、関節の中のクッション(半月板)の傷、血管の病気までさまざまです。多くは命に関わらないものですが、中には早めの受診が必要なものもあります。
重要な事実
- 膝の裏の痛みの原因は、腱や筋肉の問題、関節の軟骨や半月板の問題、滑液包に液体がたまる嚢腫(のうしゅ)、血管や神経の問題など多岐にわたります。
- 多くの場合は安静やリハビリなどの保存的な方法で改善しますが、急な強い腫れやふくらはぎの腫れを伴うときは、早めに医療機関を受診してください。
- 自己判断で湿布や市販薬を使う前に、まずは整形外科などの医師や薬剤師に相談すると安心です。
膝の裏の痛みは、日常的によく見られる症状です。特に中年以降の方や、膝をよく使う運動をする方に多く見られます。ただし、原因によって対応が変わるため、気になる場合は医療機関で確認することが大切です。
年齢を問わず起こりますが、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう: 膝の軟骨がすり減る病気)のある中高年の方、ランニングや球技など膝を曲げ伸ばしする運動をする方、急に運動量を増やした方によく見られます。膝の手術を受けたことがある方にも起こることがあります。
症状
- 突然の激しい膝の裏の痛みと、ふくらはぎ全体の急な腫れ・赤み・熱感があり、息苦しさや胸の痛みも伴う(血管に血のかたまりが詰まる病気の可能性)
- 膝や脚が急に白っぽく冷たくなり、脈が触れにくく、感覚がにぶい(血流が止まっている可能性)
- 膝周囲の急な腫れと発熱、皮膚が赤く熱をもち、痛みで動かせない(感染の可能性)
- 呼吸が苦しい、意識がもうろうとする、顔色が悪い
- ⚠痛みで体重をかけられず、歩けない
- ⚠膝が急に大きく腫れた
- ⚠膝が伸びきらない、曲がらない状態が続く(関節に何かが挟まっている可能性)
- ⚠発熱を伴う膝の痛み
- ⚠転倒やスポーツ中のけがのあと、強い痛みが続く
一般的な症状
- 膝を曲げたときや、しゃがむ・正座をするときに感じる膝の裏の痛みや張り
- 膝の裏にできる、やわらかいふくらみ(押すと痛むことも、痛くないこともあります)
- 立ち上がるときや階段を下りるときの違和感
- 膝を完全に曲げにくい、伸ばしにくい感じ
- 長時間歩いたり立ったりした後の、膝の裏の重だるさ
- 膝の裏からふくらはぎにかけて広がる痛み
子供の症状
- 子どもでは膝の裏だけの痛みは比較的少なく、けがや使いすぎによるものが多いです。
- スポーツのあとに痛みが続く、歩き方がおかしい、足を引きずる場合は受診してください。
- 発熱や赤い腫れを伴うときは、感染症などの可能性があるため早めに受診してください。
高齢者の症状
- 変形性膝関節症に伴う膝の裏の痛みや腫れ
- 膝の裏に液体がたまる嚢腫(のうしゅ)による張り感
- 筋力低下による膝の不安定さや、歩行時の痛み
- 血管の病気(動脈瘤や血栓症など)による痛みや腫れのことがあるため、注意が必要です。
原因
主な原因
- 膝窩嚢腫(しつかのうしゅ/ベーカー嚢腫): 膝の関節から液体がしみ出して、膝の裏にふくらみができる状態です。関節の中の別の病気が背景にあることが多いです。
- 腱や筋肉の使いすぎ: 膝の裏を通る腱の炎症や、ふくらはぎの筋肉の一部が傷つくこと(肉離れ)で起こります。
- 半月板(はんげつばん)の損傷: 膝のクッションの役割をする軟骨が傷つくと、膝の裏側にも痛みが出ることがあります。
- 変形性膝関節症: 膝の軟骨がすり減り、関節に炎症が起きて痛みや腫れが出ます。
- 靭帯の損傷: 膝を支える靭帯が伸びたり切れたりすると、膝の裏に痛みが出ることがあります。
- 血管の病気: 膝の裏を通る血管がふくらむ動脈瘤(どうみゃくりゅう)や、血のかたまりができる血栓症(けっせんしょう)などがあります。
- 神経の圧迫: 膝の裏を通る神経が圧迫されて、しびれや痛みが出ることがあります。
- まれな原因: 感染症や腫瘍などが隠れていることもあります。
リスク要因
- 膝を曲げ伸ばしするスポーツや、急に運動量を増やすこと
- 膝のけがや手術の経験がある
- 変形性膝関節症などの膝の病気がある
- 加齢や筋力の低下
- 長時間の立ち仕事や正座が多い生活
- 体重の増加により膝への負担が大きい
- 長時間動かない状態が続く(血栓症のリスク)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 痛みで足に体重をかけられない、歩けない
- 膝やふくらはぎが急に大きく腫れた、赤くなった、熱をもっている
- 発熱を伴う膝の痛み
- 膝が急に曲がらない、伸びない状態になった
- ふくらはぎの腫れと息苦しさや胸の痛みがある(すぐに救急へ連絡してください)
定期受診を予約すべき場合:
- 膝の裏の痛みや張りが2週間以上続く
- 膝の裏のふくらみがだんだん大きくなっている
- 階段の上り下りや正座がつらくなってきた
- 痛みで睡眠が妨げられる、日常生活に支障がある
- 同じ場所の痛みを繰り返している
診断
まず医師が、どのようなときに痛むのか、いつからか、腫れはあるか、けがの経験はあるかなどを聞き、膝を動かしながら診察します。膝の裏は触診しにくい場所のため、必要に応じて画像検査を行い、原因を絞り込んでいきます。
行われる可能性のある検査
- 診察(膝を曲げ伸ばしして、腫れや圧痛、動きの制限を確認)
- 超音波検査(エコー): 液体のたまりや血管の状態を確認します。
- MRI検査: 半月板、靭帯、腱、筋肉などのやわらかい組織を詳しく調べます。
- レントゲン検査: 骨や関節の状態を確認します。
- 血液検査: 炎症や感染の有無を調べます。
- 必要に応じて、たまった液体を抜いて調べる検査
診察で予想されること
診察と検査を組み合わせて、痛みの原因を探ります。検査の結果が出るまでに数日かかることもあります。原因がはっきりしない場合は、経過を見ながら検査を追加することがあります。診察のときは、痛みが始まったきっかけや、どんな動作で悪化するかをメモしておくと伝えやすくなります。
治療
治療は原因によって変わります。多くの場合は、安静やアイシング、筋力トレーニングなどの保存的な方法から始めます。痛みの原因が関節の中にある場合は、その治療を優先することで膝の裏の症状も改善していきます。
自宅でのセルフケア
- 痛みが強いときは無理に動かさず、安静を心がける
- 氷を布で包んで、痛む部分を冷やす(一度に長時間冷やし続けない)
- 弾性包帯などで軽く圧迫し、脚を心臓より高く上げて休む
- 急な運動量の増加を避け、痛みのない範囲で動く
- 太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛える軽い運動を、痛みに合わせて行う
- 湿布や市販の痛み止めを使う前に、薬剤師や医師に相談する
- 正座や長時間のひざ立ちを減らし、必要なら座布団や椅子を活用する
医療治療
医療機関では、まず原因を確認したうえで、安静・冷却・圧迫・挙上といった基本的な対応に加えて、理学療法(リハビリ)で筋力や動きを改善する指導を行います。痛みや炎症が強い場合は、炎症を抑える目的の薬が処方されることがありますが、薬の種類や量は医師の判断によります。膝に液体がたまっている場合は、安全に配慮して注射針で抜く処置を行うことがあります。背景にある関節の病気や血管の病気があれば、それぞれに応じた治療を行います。
手術が検討される場合
手術が必要になるのは、半月板の損傷が大きい、靭帯の損傷が強い、嚢腫が大きくて生活に支障がある、血管の病気がある、といった限られた場合です。すべての方に手術が必要なわけではなく、保存的な治療で改善する方が多くいます。手術の必要性は、検査結果と生活状況をふまえて医師と相談して決めます。
この病気と共に生きる
痛みがある日は無理をせず、動作を工夫することが大切です。膝を深く曲げる姿勢を減らしたり、階段を使うときは手すりを活用したりすると負担が軽くなります。痛みの変化を記録しておくと、受診のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 適度な休息と活動のバランスをとる
- 長時間同じ姿勢でいることを避け、ときどき脚を動かす
- 靴はクッション性があり、安定したものを選ぶ
- 体重管理を心がけ、膝への負担を減らす
- 痛みが強い日は運動を控え、回復してから少しずつ再開する
- 必要に応じて、椅子や座布団、手すりなど生活道具を活用する
食事と運動
バランスのよい食事を心がけ、体重が増えすぎないようにすることが膝への負担を減らします。運動は、痛みのない範囲で行うことが大切です。ウォーキングや水中歩行、太ももの筋肉を鍛える軽い体操などが勧められることがあります。急に強度を上げず、少しずつ慣らしていきましょう。具体的な運動の内容は、医師や理学療法士に相談すると安心です。
精神的健康と心の健康
痛みが長引くと、イライラしたり、外出を控えたくなったり、気分が落ち込んだりすることがあります。これは特別なことではなく、痛みのある方によく見られる反応です。痛みを一人で抱え込まず、家族や友人、医療機関に話してみてください。気持ちのつらさが続くときは、医療機関やお住まいの地域の相談窓口に相談してください。もし自分や身近な人が危機的な状態にあると感じたら、迷わず救急(119)に連絡してください。
予防
すべての膝の裏の痛みを防ぐことはできませんが、膝への負担を減らす工夫である程度リスクを下げることができます。急に運動量を増やさず、日頃から太ももの筋肉を鍛え、柔軟性を保つことが役立ちます。
検診プログラム
膝の痛みが続く場合は、整形外科で診察と必要な検査を受けることが大切です。膝の病気と診断されている方は、定期的に医師の診察を受け、状態を確認しましょう。国や自治体の健康診断を活用し、生活習慣の見直しもあわせて行うとよいでしょう。厚生労働省や自治体の健康情報も参考にしてください。
合併症
治療しない場合
- 痛みが長引き、日常生活や睡眠に影響することがある
- 膝をかばうことで筋力が低下し、動きが悪くなることがある
- 嚢腫が大きくなって、膝を曲げにくくなることがある
- 背景にある関節の病気が進行することがある
- まれですが、血栓症や感染症が進行すると重い状態になることがある
長期的な見通し
膝の裏の痛みの多くは、原因に合った対応をすることで少しずつ良くなっていきます。痛みが続くときは早めに医療機関に相談し、焦らずに経過を見ていくことが大切です。多くの方が、日常生活の工夫と適切な治療で、これまで通りの生活を取り戻しています。
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最終更新: 2026年11月3日
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