妊娠中の腰痛
概要
妊娠中の腰痛は、おなかが大きくなるにつれて腰や骨盤まわりに痛みや重だるさが出るものです。赤ちゃんが育つにつれて体の重心(バランスの中心)が前へ移り、腰が反り気味になることや、妊娠中に増えるホルモンの影響で靭帯(骨と骨をつなぐ強いひも状の組織)や関節がゆるむことが関係しています。病気というより、体の自然な変化にともなう不調として起こることが多いものです。
重要な事実
- 妊娠した方の半数以上が経験するといわれる、とてもよくある症状です。
- 多くの場合、赤ちゃんへの直接の影響はありません。
- 姿勢の工夫や適度な運動、休息である程度やわらぐことが多く、我慢せずに相談することが大切です。
はい。とてもよくある症状で、妊娠中期から後期にかけて増える傾向があります。ただし妊娠初期から感じる方もいます。
妊娠中の方なら誰にでも起こる可能性があります。特におなかが大きくなる時期、もともと腰痛がある方、長時間立ち仕事や座り仕事をする方、双子など多胎(胎児が二人以上)の妊娠の方に多くみられます。
症状
- 突然の激しい腰痛で動けず、立つこともできない
- 脚の力が急に入らない、脚のしびれが急に強くなった
- 尿や便のコントロールができなくなった
- 発熱をともなう激しい腰痛がある
- おなかの強い張り、出血、破水のような水っぽいおりもの、赤ちゃんの動きが少ないと感じる(この場合は救急車119番、または産婦人科・分娩施設へすぐ連絡してください)
- ⚠痛みで眠れない、歩くのがつらい状態が続く
- ⚠37.5℃以上の発熱が続く
- ⚠尿をするときの痛みや血尿がある
- ⚠脚のしびれや力の入りにくさが続く
- ⚠おなかの張りや少量の出血がある
- ⚠転倒や転落のあとに腰が痛む
一般的な症状
- 腰の鈍い痛みや重だるさ
- 長時間立っているとつらくなる
- 同じ姿勢で座っていると痛みが強くなる
- 朝起きたときや寝返りをうつときに腰がこわばる
- おしりや太ももの後ろ側にかけて痛みやしびれが出る
- 骨盤の前側や股関節まわりが痛む
- 歩くときや階段の上り下りで痛む
子供の症状
- このページは妊娠中の方の腰痛についての内容で、お子さんには該当しません。お子さんの腰痛については、かかりつけの小児科医にご相談ください。
高齢者の症状
- 35歳以上での妊娠では、もともとの腰の状態や骨の変化が影響して痛みが出やすいことがあります。ただし年齢だけで決まるものではなく、多くの方は工夫しながら妊娠生活を過ごされています。
原因
主な原因
- おなかが大きくなり、重心が前へ移って腰が反り気味になること
- 妊娠中に増えるホルモンの影響で、靭帯や関節がやわらかくゆるむこと
- 腹筋と背筋のバランスが変わり、腰に負担がかかること
- 体重の増加や姿勢の変化、睡眠不足による疲労の蓄積
- 赤ちゃんの成長に伴い、骨盤まわりの血流が変わること
リスク要因
- もともと腰痛や椎間板(背骨のあいだのクッション)のトラブルがあった
- 体重が多く増えた
- 立ち仕事や座り仕事が長時間にわたる
- 運動不足で筋力が落ちている
- 双子など多胎の妊娠
- ストレスや睡眠不足が続いている
- 以前の妊娠でも腰痛があった
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱、出血、破水、おなかの強い張りがある
- 脚のしびれや力の入りにくさが強い、排尿や排便の異常がある
- 転倒したあとに痛みが強い
- 痛みで日常生活がほとんどできない
定期受診を予約すべき場合:
- 腰の痛みが数日以上続き、生活に支障が出ている
- 痛み止めや湿布などを使いたいと考えている(自己判断で使う前に必ず相談してください)
- マッサージや整体などを受けたいと考えている
- 仕事や家事をどう工夫すればよいか相談したい
診断
診断は、問診と診察が中心です。妊娠週数、痛みの場所、どんなときに悪くなるか、脚のしびれの有無などを確認します。必要に応じて尿検査や超音波検査などを行い、ほかの原因(尿路の感染症など)がないかを確かめます。妊娠中はレントゲン検査を通常行いません。
行われる可能性のある検査
- 問診(痛みの場所、強さ、出るタイミング、生活習慣の確認)
- 診察(姿勢や歩き方、腰や脚の動きの確認)
- 尿検査(尿路の感染症などの除外のため)
- 超音波検査(必要に応じて)
- 血液検査(発熱などがある場合)
- 整形外科での診察(神経の症状が強い場合など)
診察で予想されること
多くの場合、詳しい検査をせずに、説明と生活の工夫の提案が中心になります。痛みの記録をつけておくと相談がしやすくなります。気になることはメモにまとめて健診のときに聞くとよいでしょう。
治療
治療の中心は、薬に頼らずに痛みをやわらげる工夫です。姿勢や日常生活の見直し、適度な運動、休息、骨盤ベルトの使用などが基本になります。痛みが強い場合は、産婦人科の医師と相談したうえで、妊娠中でも安全と考えられる方法を検討します。薬は自己判断で飲んだり貼ったりせず、必ず医師か薬剤師に相談してください。
自宅でのセルフケア
- 背筋を伸ばしすぎず、楽な姿勢を保つ。長時間同じ姿勢を避ける
- 椅子に座るときは腰に小さなクッションを当て、足の裏が床につくようにする
- 寝るときは横向きで、両膝のあいだにクッションをはさむと腰の負担が減る
- 骨盤ベルト(マタニティベルト)を上手に使う。使い方は助産師に相談すると安心
- こわばりが強いときは、ぬるめの温かいタオルや入浴で温める(熱すぎないように注意)
- 無理のない範囲で短時間の散歩やストレッチを行う
- 重いものを持ち上げない。持ち上げるときは腰をかがめず、ひざを曲げる
- 疲れをためないよう、こまめに休む。睡眠をしっかりとる
- かかとの低い、安定した靴を選ぶ
医療治療
必要に応じて、理学療法(リハビリ)や体操指導、装具の使用などが検討されます。痛みが強い場合には、産婦人科の医師の判断で妊娠中に使える痛み止めが処方されることがありますが、使うかどうかは妊娠週数や体の状態によって変わります。整体やマッサージを受ける場合も、妊娠中であることを必ず伝え、事前に産婦人科に相談してください。
手術が検討される場合
妊娠中の腰痛で手術が必要になることは通常ありません。ただし、強い神経の症状がある椎間板ヘルニアなどが疑われる場合は、産婦人科と整形外科が連携して対応を検討します。
この病気と共に生きる
痛みがある日は「がんばりすぎない」ことが大切です。家事は一度に全部やろうとせず、こまめに休みながら進めましょう。買い物は宅配やネットスーパーを上手に使い、重い荷物を運ばないようにすると安心です。仕事では、椅子や机の高さを調整したり、休憩中に軽く歩いたりして、同じ姿勢が続かないように工夫してみてください。
生活習慣のアドバイス
- 早起きして少し余裕のある一日の始め方をすると、体が動かしやすい
- 家の中の動線を整え、頻繁に使うものを手の届く場所に置く
- 長時間のスマホやテレビで姿勢が固まらないよう、区切りをつける
- 家族やパートナーに、重いもの運びや掃除機がけを頼る
- 痛みが強い日は、予定を減らして休む日をつくる
- つらさを一人で抱えず、妊婦健診で必ず伝える
食事と運動
食事は、主食・野菜・たんぱく質をバランスよくとり、塩分や糖分のとりすぎに気をつけましょう。体重が急に増えると腰への負担も大きくなるため、妊婦健診で指導された範囲内の体重管理を心がけてください。運動は、ウォーキング、マタニティヨガ、水中ウォーキングなど、体への負担が少ないものがおすすめです。始める前に必ず産婦人科の医師に確認し、痛みが出たら中止してください。おなかが張る、出血する、気分が悪くなるなどのときは運動をやめて相談してください。
精神的健康と心の健康
痛みが続くと、眠れない、イライラする、気分が落ち込むなど、心も疲れやすくなります。「妊娠中なのにこんなに弱いなんて」と自分を責める必要はまったくありません。痛みは体からのSOSで、気持ちの落ち込みは誰にでも起こることです。つらい気持ちが続くときや、涙が止まらない、何も楽しめないと感じるときは、早めに産婦人科の医師や助産師、地域の保健センターの保健師に相談してください。気持ちがとても追い詰められている、自分や赤ちゃんを傷つけてしまいそうだと感じたときは、すぐに119番、または産婦人科・分娩施設に連絡してください。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、軽くすることはできます。妊娠前から適度に体を動かして筋力をつけておくこと、妊娠中の体重増加を無理なく管理すること、姿勢や生活の工夫を早めに始めることが役立ちます。
検診プログラム
妊娠中の腰痛に特別な検査はありませんが、妊婦健診のたびに痛みを伝えることで、早めの工夫や対応につながります。
合併症
治療しない場合
- 痛みが長引き、慢性化することがある
- 眠れない、疲れがとれないなど、生活の質が下がる
- 動くのがおっくうになり、体力が落ちる
- 仕事や家事が思うようにできず、ストレスが増える
- まれに脚のしびれや力の入りにくさなど神経の症状が出ることがある
長期的な見通し
妊娠中の腰痛の多くは、出産後に少しずつ落ち着いていきます。痛みが続くと不安になるかもしれませんが、工夫をしながら過ごすことで楽になる方はたくさんいます。気になることは妊婦健診で何度でも相談してください。あなたと赤ちゃんにとって、無理のないペースで過ごすことが一番大切です。
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最終更新: 2026年11月3日
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