大きくなっても続くおねしょ(夜尿症)
概要
夜尿症(やにょうしょう)とは、おしっこを自分でコントロールできる年齢になっても、眠っている間に月に何度もおもらしをしてしまう状態のことです。医学的には、5歳以上で、月に1回以上のおねしょが3か月以上続く場合を「夜尿症」と呼ぶことが多いです。多くの場合、体の病気ではなく「育ちの個人差」で、夜の尿の量が多い・膀胱(おしっこをためる袋)が小さい・眠りが深くて尿のサインで目が覚めにくい、といったことが重なって起こります。
重要な事実
- 夜尿症は「しつけの問題」でも「本人の努力不足」でもありません。体の育ちのスピードの違いが大きく関係します。
- 多くは成長とともに自然に減っていき、思春期までに大部分のお子さんがおねしょをしなくなります。
- 生活の見直しや記録で改善することがあり、必要に応じて医療機関で相談できます。叱らず、ほめる関わりが効果的です。
とてもよくあることです。およその目安として、5歳くらいでは5〜6人に1人、小学中学年では20人に1人くらい、中学生でも100人に1人くらいのお子さんがおねしょをしているといわれています。つまり、クラスに1人はいるくらいの、ありふれた悩みです。
おもに小学校に上がる前後の子どもから思春期の子どもが対象です。男の子にやや多く見られます。家族にも子どものころおねしょが長く続いた人がいると、起こりやすい傾向があります。思春期以降や大人になってから新たに始まった場合は、別の原因が隠れていることがあるため、早めの受診がすすめられます。
症状
- けいれんを起こした、意識がもうろうとしている
- 激しい頭痛や、くり返す嘔吐がある
- 呼吸が苦しそう、顔色が青白い、ぐったりしている
- ⚠熱が出て、おしっこのときの痛みや血が混じる(尿路感染症の疑い)
- ⚠おしっこが出にくい、おなかが張って痛い
- ⚠急におねしょが始まり、同時に歩きにくい・手足に力が入らないなどの変化がある
- ⚠急に始まった夜尿で、のどが渇く・よく水を飲む・やせてきた(糖尿病の疑い)
一般的な症状
- 寝ている間に、月に何度もおもらしをしてしまう
- 朝起きるとパジャマやシーツがぬれていて、本人は気づいていないことが多い
- 昼間はトイレで上手にできていることが多い
- 夜の尿の量が多かったり、一度起きてもまたすぐぬれてしまう
子供の症状
- 昼間も少しおもらしをしてしまうことがある(昼間尿失禁)
- トイレの回数が多い、急におしっこがしたくなる
- うんちが硬い、便秘ぎみ(便秘は夜尿を悪化させることがあります)
- いびきをかく、口で息をする、朝なかなか起きられない
- おねしょのことを恥ずかしがる、お泊まりや行事をいやがる
- 自分を責めたり、元気がなくなったりする
高齢者の症状
- 小学校高学年になっても続いている
- いったんは乾いていたのに、また始まった(二次性夜尿)
- 思春期以降や大人になってから新しく始まった場合は、体の病気が隠れている可能性があるので早めに受診する
- 大人の場合は、睡眠時無呼吸(いびきと呼吸の止まり)、糖尿病、尿路の病気などが関係することがある
原因
主な原因
- 夜の尿の量が多い:夜になると尿を減らすホルモン(体の中で作られる調整物質)の働きが、まだ育ちきっていない
- 膀胱が小さい、または夜に膀胱が自分で縮んでしまう:おしっこをためる力がまだ発達途中
- 眠りが深く、膀胱からの「いっぱいになったよ」というサインで目が覚めにくい
- 遺伝的な体質:家族にも子どものころ長く続いた人がいることがある
- 便秘:腸にたまった便が膀胱を押して、おねしょを悪化させることがある
- 心理的なストレス(引っ越し、学校のこと、弟妹の誕生など):原因というより悪化するきっかけになることが多い
- まれに、睡眠時無呼吸、尿路感染症、糖尿病などの病気が隠れていることがある
リスク要因
- 家族(親やきょうだい)に子どものころの夜尿症があった
- 便秘ぎみである
- 眠りがとても深い、朝なかなか起きられない
- いびきや口呼吸がある(睡眠時無呼吸の可能性)
- 生活リズムが乱れている、夕方以降の水分やカフェインが多い
- 環境の変化や心理的な負担が大きい時期
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- おしっこのときの痛み、血尿、発熱がある(尿路感染症の疑い)
- おしっこがまったく出ない、おなかが張って痛い
- 急に夜尿が始まり、同時にけいれん、頭痛、嘔吐、歩きにくさなどの神経の症状がある
- のどが渇く、水をよく飲む、やせてきた、だるい(糖尿病などの疑い)
定期受診を予約すべき場合:
- 5〜6歳を過ぎても、月に何度もおねしょが続いている
- 小学校に入学しても、お泊まりや旅行が難しいくらい頻回である
- いったん乾いていたのに、またおねしょが始まった
- 便秘が続いている、いびきがひどい
- 本人が恥ずかしい、つらいと話している。家族も対応に困っている
- 昼間のおもらしや、トイレの回数の多さが気になる
診断
まずはお話をうかがうところから始まります。おねしょの回数や時間帯、昼間のトイレの様子、うんちの状態、いびきの有無、家族の経験などを聞きます。そのうえで、体の病気が隠れていないかを確かめるために尿検査などを行います。診断は「病名をつける」ことより、「その子に合った助け方を見つける」ことが目的です。
行われる可能性のある検査
- 問診( 생활の様子、排尿のパターン、家族歴などを聞く)
- 排尿日誌(おしっこ日記):いつ、どのくらい出たか、おねしょがあったかを数日〜2週間ほど記録する
- 尿検査:感染、糖、たんぱくなどがないかを調べる
- 身体診察:おなか、背中、神経の様子などを確認する
- 必要に応じて腹部の超音波(エコー)検査
- 疑わしいときは血糖検査や睡眠の検査など、専門的な検査
診察で予想されること
診察は10〜20分程度のことが多く、痛い検査はほとんどありません。排尿日誌を持っていくと話がスムーズに進みます。診察室では、お子さんが責められることはありません。「怒られる場所ではない」と伝えてあげてください。必要なら小児科や小児泌尿器科などの専門医を紹介してもらえます。
治療
治療の中心は、生活の見直しと「記録して振り返る」ことです。それでも続く場合は、おねしょを知らせるセンサーを使う訓練や、薬による治療を組み合わせることがあります。大切なのは、叱らずに続けられる方法を選ぶことと、お子さんのペースを尊重することです。
自宅でのセルフケア
- 日中は水分をしっかりとり、夕方以降は少し控えめにする(就寝の1〜2時間前は特に少なめに)
- カフェイン(ココア、濃いお茶、エナジードリンクなど)は夕方以降を避ける
- 寝る前に必ずトイレに行く習慣をつける
- 毎朝、できごとを一緒に記録する(乾いた日はシールを貼るなど、見える形にする)
- 便秘を防ぐ:朝ごはんをしっかり、野菜や水分をとり、決まった時間にトイレに行く
- おねしょシートや防水シーツを使い、片づけの負担を減らす
- 乾いた日や、自分からトイレに行けた日をほめる。失敗した日は責めない
医療治療
医療機関では、まず生活指導と記録の振り返りを行います。効果が不十分なときは、おねしょを知らせるセンサー(アラーム)を使う訓練、膀胱におしっこをためる練習、夜の尿の量を減らす働きを助ける薬、膀胱の働きを整える薬などを、お子さんの状態に合わせて組み合わせます。薬を使う場合も、使わない場合も、定期的に効果と副作用を確認しながら進めます。具体的な薬の種類や量は、必ず医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
通常、夜尿症の治療で手術が必要になることはほとんどありません。ただし、検査で尿の通り道の形の異常など別の病気が見つかった場合は、専門医と相談して方針を決めます。
この病気と共に生きる
おねしょは「毎晩続くもの」ではなく「少しずつ減っていくもの」と捉えると、家族の気持ちが楽になります。乾いた朝は一緒に喜び、ぬれた朝は淡々と片づける。この積み重ねが、お子さんの自信を守ります。お泊まり会や旅行も、防水シートや着替えを用意すれば参加できます。事前に先生や引率者に相談しておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 決まった時間に寝起きする(睡眠不足は夜尿を悪化させることがある)
- 寝る前のスマホ・ゲームは控えめにして、落ち着いて眠れる環境をつくる
- 夜中に無理に起こさない(起こす訓練は負担が大きく、効果は限られるといわれています)
- トイレをがまんしすぎない、行きたくなったら行く習慣をつける
- 兄弟姉妹と比べない。きょうだいへの声かけも同じように
食事と運動
食事は特別な制限はありませんが、塩分の多い食事や夜遅い食事は夜の尿を増やすことがあります。朝ごはんをしっかり食べて腸を動かし、便秘を防ぐことが大切です。日中に体を動かしてよく遊ぶことは、よく眠れて生活リズムが整い、よい方向に働きます。夕方以降の水分は「のどが渇いたら少しずつ」で構いません。
精神的健康と心の健康
おねしょが長く続くと、子どもは「自分はだめだ」と感じたり、お泊まりを避けたりすることがあります。家族も起こす・洗濯する負担で疲れてしまうことがあります。これはお子さんの性格の問題ではなく、とてもよくある気持ちの反応です。つらさが強いときは、ひとりで抱えず、学校の先生、保健室の先生、保健センター、小児科の医師などに話してください。気持ちが追い詰められていると感じたら、地域の相談窓口や医療機関にすぐ相談を。緊急の場合は119番に連絡してください。
予防
体の育ちのスピードが関係するため、完全に防ぐことはできません。ただし、規則正しい生活、便秘の予防、夕方以降の水分やカフェインを控えめにすること、寝る前のトイレ習慣は、負担を軽くする助けになります。
ワクチン
夜尿症を防ぐワクチンはありません。
検診プログラム
決まったスクリーニング検査はありませんが、学校健診の尿検査で異常を指摘されたときや、いびき・便秘・のどの渇きなどが気になるときは受診してください。
合併症
治療しない場合
- 本人の自信や自己肯定感が下がることがある
- お泊まりや旅行、行事への参加を避けるようになることがある
- 家族の睡眠不足や片づけの負担が大きくなる
- 便秘や睡眠時無呼吸など、一緒にケアできる問題が見落とされることがある
- まれに、尿路感染症や糖尿病などの病気が隠れたままになる
長期的な見通し
夜尿症は、多くのお子さんが成長とともに自然に改善します。毎年、一定の割合のお子さんがおねしょをしなくなっていくといわれています。改善がゆっくりでも、生活の見直しや医療的な助けを取り入れることで、少しずつ前に進めます。あせらず、お子さんのペースを大切にしてください。
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最終更新: 2026年11月3日
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