歯ぐきからの出血(歯肉出血)
概要
歯ぐき(歯肉(しにく))から血が出ることです。歯みがきをしたとき、フロス(歯と歯の間をそうじする糸)を使ったとき、硬いものを食べたときなどに、唾液(だえき)に血が混じったり、歯ブラシに血がついたりします。多くは、歯と歯ぐきの境目にたまった歯垢(しこう=細菌のかたまり)によって歯ぐきが炎症(えんしょう=赤く腫れること)を起こしているサインです。たいていの場合、ていねいな毎日のケアと歯科での処置でよくなります。
重要な事実
- 歯ぐきの出血は、歯肉炎(しにくえん)や歯周病(ししゅうびょう)という、歯ぐきと歯を支える骨の病気の初期サインであることが多いです。
- 痛みがないまま進むことが多く、出血を「いつものこと」と放っておくと、気づかないうちに進んでしまうことがあります。
- 歯みがきをやめると、かえって歯垢が増えて出血が悪化します。やさしく、ていねいに続けることが大切です。
とてもよくある症状です。日本でも、成人の多くの人が何らかの形で歯ぐきの炎症を経験しているといわれています。特別な人だけの症状ではありません。
子どもから高齢者まで、誰にでも起こります。特に、歯みがきがみがき残しになりやすい人、たばこを吸う人、糖尿病のある人、妊娠中や思春期・更年期でホルモンの変化がある人、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる人、歯科受診から長く離れている人に多くみられます。
症状
- 歯ぐきや口の中の出血が長く続き、口の中が血でいっぱいになって息がしにくい
- 顔やあごの腫れが急速に広がり、飲みこみにくい、息苦しい、声が出しにくい
- 高熱と顔の腫れが同時にあり、ぐったりしている、意識がもうろうとしている
- 大量の出血で顔色が悪い、冷汗が出る、ふらついて立てない
- ⚠20〜30分以上おさえても出血が止まらない
- ⚠歯ぐきから膿(うみ)が出ている、強い痛みがある
- ⚠歯が大きくぐらついて、かむと痛い
- ⚠顔やあごが腫れてきた、発熱がある
- ⚠抜歯(ばっし)や歯科治療のあとの出血が止まらない
- ⚠出血が続いて、めまいや動悸(どうき)がある
一般的な症状
- 歯みがきやフロスをしたときに血が出る
- 歯ブラシや洗口液(うがい薬)に血がつく
- 歯ぐきが赤く腫れている、さわると痛い
- 歯ぐきがむずむずする、かゆい感じがする
- 口臭(こうしゅう)が気になる
- 歯ぐきが下がって歯が長く見える
- 歯と歯の間にすき間ができてきた
- 硬いものをかむと血が出る
子供の症状
- 歯みがきのときに泣いたり嫌がったりする(歯ぐきが腫れて痛いことがあります)
- 歯ぐきが赤く腫れる、口臭が強くなる
- 乳歯(にゅうし)が抜ける時期や、新しい歯が生えてくる時期に少し出血することがある(多くは自然に落ち着きます)
- 歯みがきを自分でするようになると、みがき残しが増えて出血しやすくなる
高齢者の症状
- 歯周病が進みやすく、出血とともに歯がぐらつくことがある
- 入れ歯(義歯)が合わずに歯ぐきを傷つけて出血することがある
- 血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合、出血が止まりにくいことがある
- 口の乾燥(ドライマウス)で歯ぐきが傷つきやすくなる
- 手や指の力が弱まり、歯みがきが十分にできず出血しやすくなる
原因
主な原因
- 歯垢(しこう)による歯肉炎:歯と歯ぐきの境目に細菌のかたまりが残り、歯ぐきが赤く腫れて出血します。いちばん多い原因です。
- 歯周病(歯しゅう病):炎症が歯ぐきの下の骨にまで広がった状態です。出血に加えて歯のぐらつきなどが起こります。
- 歯みがきの力が強すぎる、硬い歯ブラシを使っている、フロスの使い方が乱れている(歯ぐきを傷つける)
- 歯石(しせき):歯ぐきの上や下にこびりついた、かたくなった歯垢
- 合わない入れ歯・矯正装置・マウスピースによるこすれ
- たばこ:歯ぐきの血の流れを悪くし、炎症に気づきにくくします
- ホルモンの変化:妊娠中、思春期、更年期などで歯ぐきが腫れやすくなります
- 薬の影響:血液を固まりにくくする薬や、歯ぐきの腫れを起こす種類の薬があります(自己判断で中止せず、必ず医師・歯科医師に相談してください)
- 糖尿病などの全身の病気、免疫力の低下、ビタミンCやビタミンKの不足
- 口呼吸や口の乾燥で歯ぐきが傷つきやすい
- まれですが、血液の病気などが隠れていることもあります
リスク要因
- 喫煙(受動喫煙を含む)
- 糖尿病や、血糖値が高い状態が続いている
- 強いストレス、睡眠不足
- 歯科の定期健診を長く受けていない
- 甘いものをよく食べる、だらだら食べる習慣
- 妊娠中、思春期、更年期などホルモンの変化がある時期
- 歯並びが込み合っていてみがきにくい
- 血液を固まりにくくする薬や、免疫の働きを抑える薬を使っている
- 家族に歯周病の人が多い
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 出血が20〜30分おさえても止まらない
- 顔やあごが腫れてきた、発熱がある、膿が出ている
- 歯が急にぐらついて、かむと強い痛みがある
- 出血が続いて、めまい・動悸・ふらつきがある
- 抜歯や歯科治療のあとの出血が止まらない
定期受診を予約すべき場合:
- 歯みがきのたびに血が出る状態が1〜2週間以上続く
- 歯ぐきの赤み・腫れ・口臭が気になる
- 歯ぐきが下がって歯が長く見える、歯の間にすき間ができてきた
- 歯科の定期健診を1年以上受けていない
- 妊娠を考えている、または妊娠中で歯ぐきの調子が気になる
- 糖尿病などの持病があり、口の中のトラブルが続く
診断
ふつうは歯科(歯医者)で診てもらいます。まず口の中を直接見て、歯ぐきの色・腫れ・出血の場所を確認します。細い器具で歯と歯ぐきの間の溝の深さ(歯周ポケット)を測り、炎症の広がりを調べます。必要に応じてレントゲン写真で歯を支える骨の状態を確認します。出血が止まりにくいなど気になる点があるときは、血液検査で全身の状態を調べることもあります。
行われる可能性のある検査
- 視診(目で見る診察):歯ぐきの色・腫れ・出血の部位を確認
- 歯周ポケットの測定:細いプローブという器具で溝の深さを測る
- レントゲン(エックス線)写真:歯を支える骨の状態を確認
- 歯垢・歯石の付き方のチェック、かみ合わせの確認
- 必要に応じて血液検査(出血が止まりにくい、全身の病気が疑われるとき)
診察で予想されること
診察はふつう10〜20分ほどで、ほとんど痛みはありません。歯周ポケットを測るときに少しちくっとすることがありますが、がまんできる程度のことが多いです。緊張する場合は、事前に「痛みが苦手」と伝えてください。歯科医院によっては、口の中の写真を撮って一緒に確認してくれます。
治療
治療の中心は、歯ぐきの炎症を起こしている原因(歯垢と歯石)を取りのぞき、歯ぐきが健康な状態に戻れるようにすることです。多くの場合は、歯科でのクリーニングと、毎日の正しいケアの組み合わせで改善します。手術が必要になるのは、歯周病が進んでいる場合だけです。
自宅でのセルフケア
- やわらかめの歯ブラシで、歯と歯ぐきの境目に毛先をあてて、小刻みにやさしくみがく
- 1日2回以上、できれば毎食後と寝る前にみがく。時間は2分以上を目安に
- フロス(糸ようじ)や歯間ブラシを1日1回使う。使い始めは少し出血することがありますが、続けると減っていきます
- うがいはやさしく。強くゆすがない
- 出血が気になるときは、みがくのをやめずに、やさしく続ける
- タバコを吸う人は、減らす・やめることを考えてみる
- 口が乾きやすいときは、こまめに水分をとる、口呼吸を意識して鼻呼吸にしてみる
医療治療
歯科では、まず歯垢と歯石を取りのぞくクリーニング(スケーリング)を行います。歯ぐきの下に深い炎症がある場合は、歯ぐきの下をそうじする処置を行うことがあります。あわせて、その人の口に合った歯みがきの方法を教えてもらえます。炎症が強いときや、全身の状態によっては、医師・歯科医師の判断で薬が使われることがあります(薬の名前や量は、必ず担当の医師・歯科医師・薬剤師の説明に従ってください)。糖尿病などの持病がある場合は、かかりつけ医と連携しながら進めることが大切です。
手術が検討される場合
炎症が深くまで広がっていて、クリーニングだけでは改善が難しい場合に、歯ぐきの手術(歯周外科)が検討されることがあります。歯を残せないほど進んでいる場合は抜歯が必要になることもありますが、これは一部の場合です。多くは毎日のケアと定期的なクリーニングで十分にコントロールできます。
この病気と共に生きる
歯ぐきの出血は「治す」というより「つきあいながら整えていく」ものと考えてみてください。出血は体からのサインなので、出たときこそ、みがき方やケアを見直すチャンスです。歯科でのクリーニングは、最初は1〜2か月ごと、落ち着いてきたら3〜6か月ごとなど、状態に合わせて通う間隔を調整していきます。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の歯みがきとフロスを、決まった時間に組みこむ(朝・夜など習慣にする)
- 歯ブラシは1か月を目安に取りかえる
- 禁煙、または本数を減らすことを検討する
- 睡眠とストレス管理を意識する
- 定期的に歯科健診を受ける(かかりつけ歯科医を持つ)
- 入れ歯やマウスピースは、合わなくなったら早めに調整してもらう
食事と運動
食事は、甘いものや飲みものをだらだらとり続けないことが大切です。食べたらみがく、が基本です。よくかんで食べると唾液が出て、口の中がきれいに保たれやすくなります。野菜やたんぱく質をバランスよくとり、水分もこまめにとってください。運動は、血流をよくし、ストレスや睡眠の改善にも役立ちます。糖尿病のある人は、血糖値を整えることが歯ぐきの健康にもつながります。
精神的健康と心の健康
出血が続くと、口臭や見た目が気になって、人と話すのが不安になったり、笑うのをためらったりすることがあります。歯科が苦手で足が向かない、という気持ちも自然なものです。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱えず、かかりつけ医や地域の保健センター、自治体の相談窓口に話してみてください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、ためらわずに119番、または地域の救急・相談窓口に連絡してください。
予防
多くは予防できます。毎日のていねいな歯みがきとフロス、定期的な歯科健診がもっとも効果的です。たばこを減らすこと、血糖値を整えることも役立ちます。
検診プログラム
自治体によって歯周病検診が行われています(対象年齢は地域で異なります)。かかりつけの歯科医院での定期健診も、年1〜2回を目安に受けてみてください。厚生労働省は「8020運動」など歯と口の健康づくりをすすめています。
合併症
治療しない場合
- 歯肉炎から歯周病へと進み、歯を支える骨がとける
- 歯がぐらつく、最後には歯を失うことがある
- 口臭が強くなる
- かむ力が落ちて、食事や栄養に影響することがある
- 糖尿病の悪化、心臓や血管の病気との関連が指摘されている
- まれですが、歯ぐきの感染が広がって顔の腫れや発熱を起こすことがある
長期的な見通し
歯ぐきの出血は、多くの場合、よくなる可能性が十分にあります。歯肉炎の段階なら、毎日のケアと歯科でのクリーニングで元の健康な歯ぐきに戻ることがほとんどです。歯周病が進んでいても、適切なケアを続けることで進行をゆるやかにし、歯を長く保つことができます。出血は体からのメッセージです。早めに歯科に相談して、一緒に整えていきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.