精液に血が混じるとき(血精液症)
概要
精液に血が混じって見える状態を「血精液症(けつせいえきしょう)」といいます。精液がピンク色や赤茶色に見えたり、血液が糸のように混じったり、ときには少量の血の塊が出たりします。射精のときに痛みがないことも多く、多くは一時的なもので、数回の射精のうちに自然に消えていきます。命に関わる深刻な病気が原因となることは比較的まれですが、なかには治療が必要な原因が隠れていることもあるため、一度は医療機関で確認することが大切です。
重要な事実
- 精液に血が混じる症状の多くは、数日から数週間のうちに自然に治まります。
- 原因がはっきりしない「原因不明」のケースが最も多いとされています。
- 前立腺や精囊(せいのう:精液の一部を作る袋状の器官)の炎症や感染症など、治療できる原因が見つかることもあります。
- 血尿が同時にある場合や、症状が長く続く場合は、早めに泌尿器科を受診しましょう。
泌尿器科を受診する男性のあいだでは比較的よくみられる症状です。多くは一時的なもので、特別な治療をしなくても治まることが少なくありません。
思春期以降の男性なら誰にでも起こる可能性があります。20〜30代でも起こりますが、40〜50代以降、前立腺の変化が出てくる年代により多くみられます。
症状
- 大量の出血が続き、顔色が悪い・冷や汗が出る・意識がぼんやりする
- 突然の激しい腹痛や腰の痛み、高熱と寒気を伴う
- 失神した、あるいは立っていられないほどのめまいがある
- 尿がまったく出なくなり、おなかが張って強い痛みがある
- ⚠精液だけでなく尿に鮮血が混じる(血尿)
- ⚠発熱、寒気、排尿時の強い痛みがある
- ⚠陰囊(いんのう:睾丸を包む袋)の腫れや強い痛みがある
- ⚠症状が1か月以上続く、または何度も繰り返す
一般的な症状
- 精液がピンク色、赤色、赤茶色、褐色に見える
- 精液に血液が糸を引くように混じる
- 精液に小さな血の塊が混じる
- 痛みなどの不快な症状はほとんどないことが多い
- 射精のときに軽い痛みや違和感を感じることがある
- 排尿時の軽い違和感、骨盤のあたりの鈍い痛みを伴うことがある
子供の症状
- 思春期前の子どもでは通常みられません。思春期前におむつや下着に血がつく場合は、精液ではなく尿からの出血の可能性があるため、小児科や泌尿器科に相談してください。
- 思春期以降の10代では起こることがあります。多くは一時的ですが、一度は医療機関で相談しましょう。
高齢者の症状
- 50歳以上の方では、前立腺肥大症や前立腺・精囊の炎症などとの関連を調べることが多くなります。
- 血尿が同時にある場合は、より丁寧な検査がすすめられます。
- 血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方は、かかりつけ医に必ず伝えてください。
原因
主な原因
- 原因不明(検査をしてもはっきりした原因が見つからないことが最も多い)
- 前立腺炎や精囊炎(精液の通り道の炎症)
- 尿道炎など、性感染症を含む尿路の感染症
- 前立腺生検(前立腺の組織を調べる検査)や尿道カテーテルなどの処置のあと
- 会陰部(股のあたり)の外傷や、激しい運動による刺激
- 前立腺肥大症などの前立腺の変化
- 精囊や前立腺のポリープなど、良性のできもの
- 長期間の禁欲により精囊が張っている状態
- まれに前立腺や精囊の腫瘍などの病気
リスク要因
- 40歳以上である
- 前立腺や尿路の感染症にかかったことがある
- 最近、前立腺の検査やカテーテルの処置を受けた
- 血液を固まりにくくする薬を飲んでいる(自己判断でやめず、主治医に相談してください)
- 喫煙や過度の飲酒の習慣がある
- 高血圧などの生活習慣病がある
- 性感染症のリスクがある行動がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿に鮮血が混じる、または血の塊が出る
- 発熱や寒気、排尿時の強い痛みがある
- 陰囊の腫れや強い痛みがある
- 尿が出にくい、またはまったく出ない
- 症状が1か月以上続く、または繰り返す
定期受診を予約すべき場合:
- 精液に血が混じる状態が初めて起きた
- 数回の射精のあとも色が元に戻らない
- 痛みはないが、心配で不安が続いている
- 50歳以上で初めて症状が出た
診断
まず問診で、症状がいつから始まったか、回数、血の色、痛みや発熱の有無、服用中の薬、これまでの病気などを確認します。そのうえで尿検査や血液検査、超音波(エコー)検査などを行い、前立腺や精囊、尿路に炎症や腫れなどの変化がないかを調べます。多くの場合、これらの検査で大きな問題がないことを確認できれば安心です。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状の経過や服用中の薬、性生活についての質問を含むことがあります)
- 尿検査(感染や血尿の有無を調べます)
- 血液検査(炎症の有無や全身の状態を確認します)
- 超音波(エコー)検査(前立腺や精囊、腎臓・膀胱の形を観察します)
- 直腸診(肛門から指で前立腺の状態を触って確認する検査)
- 必要に応じてMRI検査や前立腺の腫瘍マーカー(PSA)検査
診察で予想されること
検査は外来で行えるものがほとんどで、痛みはほとんどありません。直腸診や精密検査は恥ずかしさや不安を感じるかもしれませんが、医師・看護師は慣れています。希望すれば、立ち会いや説明の方法について相談できます。結果が出るまでの数日は落ち着かないかもしれませんが、その間も日常生活を続けて問題ありません。
治療
血精液症の多くは、特に治療をしなくても数週間のうちに自然に治まります。検査で原因が見つかった場合は、その原因に合わせた治療を行います。治療の必要性や方法は、年齢や症状の続き方、検査結果によって変わります。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとり、排尿を我慢しすぎない
- 症状が出た日時や精液の色、回数を簡単に記録しておくと受診時に役立ちます
- 禁欲期間が長くなりすぎないようにする(適度な射精は精囊のつまりを防ぐと考えられています)
- 喫煙を控え、飲酒はほどほどにする
- 性感染症を防ぐためにコンドームを使用する
- 激しい運動や会陰部への刺激を一時的に控える
- 自己判断で薬を中止したり、市販薬を重ねたりしない
医療治療
原因に応じて治療の方針が決まります。細菌による感染や炎症が見つかった場合は、抗菌薬や炎症を抑える薬が使われることがあります。痛みがある場合は痛みを和らげる薬が検討されます。原因が見つからず症状も軽い場合は、経過を見ながら必要に応じて検査を繰り返すことが多いです。具体的な薬の種類や量は、検査結果や体の状態に合わせて医師が判断しますので、薬についての疑問は医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
手術が必要になることはまれです。前立腺肥大症や精囊・前立腺のポリープなど、画像検査ではっきりした原因が見つかり、症状が続く場合に、内視鏡を使った手術などが検討されることがあります。
この病気と共に生きる
症状が続いているあいだも、仕事や日常生活、性生活を続けて問題ないことがほとんどです。ただし、症状が続く場合は性生活の頻度やタイミングを記録しておくと、受診のときに役立ちます。パートナーに伝えるかどうかは自分で決めてよく、伝える場合は「検査で問題がないか確認しているところ」と話すと伝えやすいかもしれません。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠と生活リズムを保つ
- 喫煙を控える
- 飲酒は適量にとどめる
- 長時間座り続ける場合はときどき立ち上がって体を動かす
- 性感染症の予防にコンドームを使用する
- 服薬中の薬は自己判断でやめず、気になる点は医師・薬剤師に相談する
食事と運動
特別な食事制限は必要ありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動(ウォーキングなど)を心がけることが、全身の健康と前立腺の健康にも役立ちます。水分をしっかりとることも排尿のトラブル予防につながります。
精神的健康と心の健康
「がんではないか」「パートナーにうつるのではないか」と不安になる気持ちは自然なことです。多くは一時的で自然に治まる症状ですが、不安が続くと眠れない、気分が落ち込むことがあります。ひとりで抱え込まず、医師に質問したり、信頼できる人に話したりしてください。もし気持ちのつらさが続き、日常生活に支障が出ている場合は、医療機関やお住まいの自治体の相談窓口に相談しましょう。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわず救急(119)や地域の救急相談、医療機関に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、尿路や前立腺の感染症を予防すること、生活習慣を整えることは、リスクを下げる助けになります。症状が繰り返す場合は、原因を調べることで再発を防げることもあります。
ワクチン
性感染症の一部にはワクチンで予防できるものがあります。対象となる年齢や接種の可否は人によって異なるため、自治体の案内や医療機関でご相談ください。
検診プログラム
血尿や排尿の変化など気になる症状があるときは、年齢にかかわらず早めに受診しましょう。40歳以上では、自治体や職場の健康診断で前立腺の検査が受けられる場合があります。健診の機会を上手に利用してください。
合併症
治療しない場合
- 原因が感染症の場合、治療せずにいると炎症が広がることがあります
- 前立腺肥大症などが原因の場合、排尿のトラブルが進むことがあります
- まれに、腫瘍などの病気が見逃される可能性があるため、症状が続く場合は検査が大切です
- 不安が続くことで、性生活や気分に影響が出ることがあります
長期的な見通し
血精液症の多くは一時的なもので、自然に治まるか、原因に応じた治療で改善します。重い病気が見つかることは比較的まれです。気になる症状があれば早めに相談し、検査を受けておくと安心につながります。過度に心配しすぎず、いつもの生活を続けながら、医療機関と一緒に確認していきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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