精液に血が混じる(血精液症)
概要
精液(せいえき:射精のときに体外に出る液体)に血が混じる状態を「血精液症(けつせいえきしょう)」といいます。精液がピンク色、赤色、赤茶色、ときにはコーヒー色に見えたり、血の小さなかたまりが混じったりします。多くは痛みがなく、トイレやコンドームで初めて気づくことが多い症状です。たいていは一時的なもので、体の危険なサインではないことがほとんどですが、念のため医療機関で相談していただきたい症状です。
重要な事実
- 精液に血が混じる症状の多くは、検査をしてもはっきりした原因が見つからない「原因不明」で、数回の射精で自然に消えていきます。
- 感染症や前立腺の検査・処置のあと、会陰部(えいんぶ:肛門と陰嚢の間)への刺激などがきっかけになることがあります。
- 一度だけなら慌てる必要はありませんが、繰り返すとき、50歳以上のとき、発熱や痛みを伴うときは泌尿器科(ひにょうきか)の受診がすすめられます。
比較的よくみられる症状です。泌尿器科を受診する男性のなかでも珍しくなく、実際には受診せずに自然に治っている方も多いと考えられています。
性活動のある成人男性に多くみられ、20〜40代と50代以上に多く報告されています。前立腺の生検(組織を採る検査)や尿道カテーテル(管を入れる処置)を受けたあとにも起こりやすくなります。小児ではまれです。
症状
- 大量の血尿が出て、おしっこがほとんど出ない、または下腹部が激しく張っている
- 高熱と寒気、ぐったりした様子、意識がぼんやりしている(重い感染症の可能性)
- 顔色が青白く、冷や汗が出て、立っていられない・気を失いそうになる
- 陰嚢(いんのう:睾丸を包む袋)が急に大きく腫れて、耐えられないほどの痛みがある
- ⚠38度以上の発熱を伴う
- ⚠排尿時の痛みが強く、おしっこが出しにくい
- ⚠血尿が数日以上続く、または血の量が増えている
- ⚠陰嚢や会陰部の痛みが強い、腫れがある
- ⚠血精液症が1か月以上くり返し、回数が増えている
一般的な症状
- 精液がピンク色、赤色、赤茶色、ときにコーヒー色に見える
- 精液に血の小さなかたまりが混じる
- 痛みやかゆみなど、ほとんど何も感じないことが多い
- 射精のときや直後に、軽い違和感やだるさを感じることがある
- 排尿時の軽い痛みや、骨盤まわりの重い感じを伴うことがある
子供の症状
- 小児では非常にまれで、思春期前後にみられた場合は丁寧な診察が必要です
- おむつや下着の血は、精液ではなく血尿(おしっこに血が混じる)のことが多いため、小児科で相談してください
- 思春期のお子さんが自分から言い出しにくいこともあるので、気づいたらやさしく声をかけてあげてください
高齢者の症状
- 50歳以上の方では、前立腺の病気(前立腺肥大や前立腺の腫瘍など)を一度確認しておくことが大切です
- 前立腺の検査歴や前立腺肥大の治療中であれば、その情報を医師に伝えてください
- 高血圧や、血液を固まりにくくする薬を使っている場合は、その旨もあわせて伝えてください
原因
主な原因
- 原因不明(もっとも多い):検査をしてもはっきりした異常が見つからないケース
- 炎症や感染:前立腺炎、精嚢炎(せいのうえん)、尿道炎など
- 前立腺生検や尿道カテーテル、手術などの処置のあと
- 会陰部への強い刺激や軽いけが、長時間の自転車走行など
- 前立腺肥大や前立腺の石灰化(せっかいか)
- 精嚢や前立腺、精巣のポリープや良性のできもの(まれに腫瘍が見つかることもあります)
- 血液が固まりにくくなる体質や、血液を固まりにくくする薬の影響、高血圧
リスク要因
- 40歳以上、とくに50歳以上
- 前立腺生検や尿道カテーテルを受けたことがある
- 尿路感染症(膀胱炎・尿道炎など)にかかったことがある
- 前立腺肥大と診断されている
- 血液を固まりにくくする薬を使っている
- 喫煙、過度の飲酒、血圧が高い状態が続いている
- 会陰部に圧力がかかる習慣(長時間の自転車・バイクなど)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱、寒気、強い痛みがあるときは、その日のうちに医療機関へ連絡してください
- 陰嚢が急に腫れて痛むときは、急いで受診してください(精巣のねじれなどの可能性があります)
- おしっこが出にくい、ほとんど出ない
- 血尿が続く、血の量が増えている
定期受診を予約すべき場合:
- 精液に血が混じったのが一度だけであっても、不安が残るなら泌尿器科で相談を
- 2回以上くり返すとき、または1か月以上続くとき
- 50歳以上の方で初めて気づいたとき
- 排尿の違和感、骨盤まわりの重さなど、ほかの症状もあるとき
- 前立腺の病気を指摘されたことがある方
診断
まず問診で、症状がいつからか、回数、色、痛みや発熱の有無、これまでの病気や薬、前立腺の検査歴などをお聞きします。そのうえで診察と尿検査を行い、必要に応じて画像検査を追加します。多くの場合、外来の数回の受診で診断がつきます。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(陰嚢や前立腺まわりの状態を確認します)
- 尿検査(血尿や感染の有無を調べます)
- 尿の培養検査(細菌がいるか調べます)
- 血液検査(炎症の程度や、必要に応じて前立腺の腫瘍マーカーPSAを測ることがあります)
- 超音波検査(前立腺・精嚢・精巣の状態を画像で確認します)
- 必要に応じてMRI検査や、前立腺の組織を採る検査を行うことがあります
診察で予想されること
検査は外来で行えるものがほとんどで、痛みも軽いものが一般的です。結果が出るまで数日から1〜2週間かかることがあります。結果が出るまでは不安な時間ですが、多くの方に重い病気は見つかりません。検査の内容や順番は医師の判断で決まるので、わからないことはその場で遠慮なく質問してください。
治療
治療は原因によって変わります。原因が見つからない場合や軽い場合は、特別な治療をせずに経過をみることが多く、そのまま自然に消えることも少なくありません。感染や炎症、前立腺の病気などが見つかった場合は、それぞれに合わせた治療を行います。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとり、排尿を我慢しすぎないようにする
- 症状が出た日時と精液の色、回数をメモしておくと受診のときに役立ちます
- 激しい運動や長時間の自転車など、会陰部に圧力がかかる行動は少し控えめにする
- 性行為は無理のない範囲で。痛みや不安が強いときは控えてかまいません
- 自己判断で市販薬を重ねて使う前に、薬剤師や医師に相談する
- 不安が強いときは、一人で抱えずパートナーや医療者に話す
医療治療
感染や炎症が疑われるときは、原因の菌に合わせた抗菌薬などのお薬を使うことがあります。お薬は医師の指示どおりに使い、自己判断で量を変えたり途中でやめたりしないでください。前立腺肥大や血液の固まり方の問題など、背景にある病気があればその治療を優先します。前立腺の組織を採る検査や画像検査が必要な場合は、専門の泌尿器科で行われます。どの治療も、症状と検査結果をみながら医師があなたに合わせて選びます。
手術が検討される場合
手術が必要になるのはごく限られた場合です。前立腺や精嚢に大きな嚢胞(のうほう:液体の袋)や良性のできもの、腫瘍が見つかったとき、前立腺肥大による症状が強いときなどに、専門医と相談して治療法を検討します。血精液症そのもののために手術をすることはほとんどありません。
この病気と共に生きる
症状が続いている間は、 «また血が出るのでは» と気になって性行為のたびに緊張してしまう方が少なくありません。まずは検査で「危険なものではない」と確認できれば、気持ちはずっと楽になります。症状を記録しながら、ふだんどおりの生活を続けてかまいません。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がけ、飲酒はほどほどにする
- 長時間すわったままにせず、ときどき体を動かす
- 自転車やバイクに乗るときは、座面のクッションなどで会陰部の圧力をやわらげる
- 便秘を避ける(強いいきみは骨盤に負担をかけます)
- 睡眠をしっかりとり、疲れをためない
- 血圧が高いと言われている方は、かかりつけ医と一緒に管理する
食事と運動
特別な食事制限は必要ありません。野菜や魚、大豆製品などをバランスよくとり、塩分と脂肪の多い食事を控えめにすると、前立腺や血管の健康にも役立ちます。水分はこまめにとり、おしっこを我慢しないことが大切です。運動は、ウォーキングなど無理のない有酸素運動を続けるのがおすすめです。激しい運動や会陰部に強く当たる運動は、症状が落ち着くまで少し控えめにしてください。
精神的健康と心の健康
「性に関する症状」は人に話しにくく、恥ずかしさや「自分は大丈夫だろうか」という不安、パートナーとの関係への心配が重なりやすい症状です。不安が長く続くと眠れなくなったり、気分が落ち込んだりすることもあります。それは弱さではなく、自然な反応です。話せるときには、信頼できる人や医療者に打ち明けてみてください。気持ちがつらい状態が2週間以上続く、日常生活に支障が出る、自分を傷つけたい気持ちが浮かぶといったときは、ためらわずに医療機関や地域の相談窓口、いのちの電話などの相談サービスを利用してください。あなたは一人ではありません。
予防
血精液症の多くは原因不明で、完全に防ぐ方法はありません。ただし、感染症や前立腺の病気、生活習慣が関係する場合もあるため、できる範囲で次のことを心がけると、泌尿器の健康全体に役立ちます。
ワクチン
血精液症そのものを防ぐワクチンはありません。性感染症の予防にはコンドームの使用が有効で、気になる症状があるときは早めに相談してください。
検診プログラム
50歳以上の方は、前立腺の健康について一度かかりつけ医や泌尿器科に相談してみてください。前立腺がんの検診(PSA検査)については、国としてすべての方に推奨されているわけではなく、受けるかどうかを自分で選ぶものとされています。自治体の案内や厚生労働省の情報を確認し、かかりつけ医と相談しながら決めるとよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 多くの場合は治療をしなくても自然に消え、体に害は残りません
- 感染や炎症が隠れている場合、放っておくと症状が強くなったり長引いたりすることがあります
- ごくまれに、前立腺や精嚢の腫瘍などの病気が見つかることがあり、その場合は早期の治療が大切になります
- 症状が続くことで不安が強まり、性行為への緊張や気分の落ち込みにつながることがあります
長期的な見通し
見通しはとてもよい症状です。血精液症のほとんどは良性で、自然に治まります。一度検査を受けて「心配のいらない状態だ」と確認できれば、多くの方は安心してふだんの生活に戻れます。症状が続く場合でも、原因に応じた治療や経過観察で対応できます。不安な気持ちを一人で抱え込まず、医療機関に相談しながら進んでください。
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最終更新: 2026年11月3日
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