尿に血が混じるとき(血尿)について
概要
血尿(けつにょう)とは、おしっこ(尿)の中に赤血球がまざっている状態のことです。尿の色がピンク色、赤色、茶色っぽく見えることもあれば、見た目はまったく普通なのに、健康診断などの尿検査で初めて見つかることもあります。血尿はそれ自体が「病気の名前」ではなく、体のどこかで起きていることのサインです。原因は、膀胱(ぼうこう)や尿道の感染症のようにすぐ治せるものから、腎臓(じんぞう)の病気や結石、まれにがんなど、いろいろな可能性があります。だからこそ、自己判断せずに一度医療機関で調べてもらうことが大切です。
重要な事実
- 血尿は「病気そのもの」ではなく、原因を知るための大切なサインです。痛みがない血尿でも、検査を受ける価値があります。
- 女性では月経中の血が混じって赤く見えることがあり、これだけでは血尿と決められません。検査で確かめることが必要です。
- 原因の多くは治療できるもので、きちんと調べれば安心につながります。心配しすぎず、でも先延ばしにしないことがポイントです。
血尿はめずらしいものではありません。健康診断の尿検査で「潜血(せんけつ)プラス」と言われた経験のある方は少なくありません。見た目でわかる血尿も、検査でだけわかる血尿も、どちらもよく見られる症状です。
子どもから高齢者まで、どの年代でも起こります。女性は尿路感染症(膀胱炎など)が起こりやすいため血尿が現れやすく、男性は年齢が上がると前立腺(ぜんりつせん)の影響で出やすくなります。50歳以上の方、長くたばこを吸ってきた方は、調べたほうがよい血尿の頻度が高くなります。
症状
- 大量の血尿が続き、ふらつく・立っていられない・顔色が真っ白
- 血尿に高熱、意識がもうろうとする、会話がかみ合わない
- 呼吸が苦しい、脈がとても速い、冷汗が出る(重症の感染症などの可能性)
- 尿がまったく出ず、下腹部が張って激しく痛む(尿閉=にょうへい)
- 腰背部の激痛で動けず、発熱や嘔吐(おうと)をともなう
- ⚠38度以上の発熱と、尿の痛みや腰の痛みがある(腎盂腎炎=じんうじんえんの可能性)
- ⚠血のかたまりが何度も出て、尿が出にくい
- ⚠排尿時の痛みが強く、日常生活に支障がある
- ⚠血尿が2日以上続く、または何度も繰り返す
- ⚠妊娠中に血尿が出た
- ⚠血液をサラサラにする薬を飲んでいて、血尿やあざが増えた
一般的な症状
- 尿がピンク色・赤色・茶色・コーラのような色に見える
- 尿に血のかたまり(ゼリー状の塊)が混じる
- おしっこをするときに痛む、しみる
- トイレが近い、何度も行きたくなる(頻尿)
- 残尿感がある、すっきり出しきれない感じがする
- 腰や背中、下腹部の痛み(片側のことが多い)
- 発熱や寒気をともなうことがある
- 見た目は普通で、健康診断の尿検査でだけ指摘される(無症候性血尿)
子供の症状
- 発熱とともに尿の色が変わる(尿路感染症が多い)
- おしっこをするときに痛がる、泣く、トイレをいやがる
- まぶたや足がむくむ、朝の顔がはれぼったい(腎臓の病気のサインのことがある)
- 尿の量が減ったように見える
- 元気がない、食欲がない
- 激しい運動のあとだけ尿が赤くなる(多くは一時的ですが、続くなら受診を)
高齢者の症状
- 痛みのない血尿が出る(高齢者では特に調べる必要があります)
- トイレの回数が増える、夜中に何度も起きる
- 尿の出が悪い、勢いが弱い(前立腺の影響など)
- 血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合、出血しやすくなることがある
- だるさや食欲低下など、尿以外の症状が目立つことがある
- 認知症がある方は、血尿を自分で気づけないことがあるため、まわりの方の観察が助けになります
原因
主な原因
- 尿路感染症(膀胱炎など)— 細菌が尿の通り道に入って炎症を起こすもの。女性に多い
- 尿路結石(にょうろけっせき)— 石が尿管を傷つけたり詰まらせたりする。腰の激痛をともなうことが多い
- 腎臓の病気(糸球体腎炎=しきゅうたいじんえん、IgA腎症など)— 尿を作るフィルターが炎症を起こす
- 前立腺の病気(前立腺肥大症、前立腺の炎症)— 男性に多い
- 膀胱・腎臓・尿管・前立腺のがん — 痛みのない血尿が特徴のことがある
- けがや激しい運動、カテーテルの刺激による一時的な出血
- 薬の影響(血液をサラサラにする薬など)— 自己判断で中止せず、医師・薬剤師に相談を
- 月経中の血が尿に混じる、便秘や痔(じ)の出血と間違えるなど、尿以外からの出血
- 原因が見つからないこともある(検査をしてもはっきりしないケースは少なくありません)
リスク要因
- 喫煙(膀胱がんの大きなリスク要因です)
- 50歳以上、特に男性
- 尿路結石を経験したことがある、家族に結石の人がいる
- 尿路感染症を繰り返している
- 前立腺肥大症がある
- 染料・ゴム・塗料など特定の化学物質を扱う仕事に長く従事してきた
- 骨盤の放射線治療や、特定の薬(抗がん剤など)の治療歴がある
- 水分をあまりとらない、尿を長時間我慢する習慣がある
- 血液をサラサラにする薬を飲んでいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 血尿と高熱(38度以上)、寒気、腰の痛みが一緒にある
- 血のかたまりが出て尿が出にくい、または尿がまったく出ない
- 強い排尿痛や下腹部痛で、仕事や家事ができない
- 妊娠中に血尿が出た
- 血尿が続き、ふらつきや強いだるさがある
定期受診を予約すべき場合:
- 尿が赤っぽい、ピンクっぽいと感じた(一度だけでも)
- 健康診断や職場健診の尿検査で「潜血プラス」と言われた
- 痛みはないが、尿の色がいつもと違う日が続く
- 繰り返す blood—ではなく、繰り返す血尿がある
- 家族に腎臓病や膀胱がんの人がいて心配がある
診断
まず問診で、いつから血尿があるか、痛みや発熱があるか、飲んでいる薬、喫煙歴などを伺います。そのうえで尿検査を行い、本当に血が混じっているか、感染のサインがあるか、たんぱくが漏れていないかを調べます。必要に応じて画像検査を組み合わせて、原因を絞り込んでいきます。痛みのない血尿では、見落とさないように画像検査まで行うことが多いです。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(試験紙法)— 血が混じっているかを手軽に調べる
- 尿沈渣(にょうちんさ)検査 — 顕微鏡で赤血球の形や数を確認する
- 尿培養検査 — 細菌がいるか、どの種類かを調べる
- 血液検査 — 腎臓のはたらき(クレアチニンなど)、炎症、貧血を確認する
- 腹部・腎臓の超音波(エコー)検査 — 結石や腫れ、前立腺の大きさを見る
- CT検査 — 結石の位置や、腎臓・尿管の形を詳しく調べる
- 膀胱鏡(ぼうこうきょう)検査 — 細いカメラで膀胱の中を直接見る。痛みのない血尿でよく行われます
- 尿細胞診(にょうさいぼうしん)— 尿の中の細胞を調べ、がんの可能性を探る
診察で予想されること
検査は日帰りでできるものがほとんどです。超音波検査は痛みがなく、数分で終わります。膀胱鏡は尿道から細いカメラを入れるため、少ししみる感じがありますが、短時間で終わり、麻酔を使うこともあります。結果が出るまで数日から1〜2週間かかることがあり、その間は不安な気持ちになるかもしれません。分からないことは遠慮なく医師や看護師に聞いてください。
治療
血尿の治療は「血尿そのものを止める」のではなく、「原因に合わせて治す」のが基本です。感染症なら細菌への治療、結石なら石を出す・砕く治療、腎臓の病気なら炎症を抑える治療、がんや前立腺の病気ならそれぞれに合った治療を行います。原因が見つからない場合でも、定期的に尿検査で見守ることで安心につなげます。治療方針は、年齢や持病、生活の状況をふまえて医師と相談しながら決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとり、尿を濃くしないようにする
- 尿を長時間我慢しない
- 排尿の回数や尿の色、痛みなどを簡単にメモしておくと診察の役に立ちます
- 市販の鎮痛薬やサプリメントの使いすぎに注意し、迷ったら薬剤師や医師に相談する
- 喫煙している場合は、禁煙外来などのサポートを利用する
- 月経中はタンポンなどで血の混入を避けると、尿の色を判断しやすくなります
- 医師から指示された検査や通院は、症状が落ち着いても自己判断でやめない
医療治療
原因によって治療の方向性は大きく変わります。感染症が原因なら、細菌を減らすための薬を医師が必要に応じて処方します(薬の種類や量は医師が決めます)。結石が原因なら、痛みをやわらげながら自然に出るのを待つ方法や、体外から石を砕く治療、内視鏡で取り出す治療などが検討されます。腎臓の炎症が原因の場合は、体の免疫(自分の体を守る仕組み)の働きを調整する治療が行われることがあります。がや前立腺の病気が関係する場合は、泌尿器科の専門医と相談して治療方針を決めます。血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、自己判断で中止せず、必ず処方した医師に相談してください。
手術が検討される場合
手術が検討されるのは、主に次のような場合です。尿管をふさいでしまう大きな結石、薬で改善しにくい前立腺肥大症、膀胱や腎臓に見つかった腫瘍、尿道や膀胱の形の問題などです。手術が必要と言われても、多くの場合はすぐに決めなければならないものではなく、体の状態や生活の希望をふまえて相談できます。セカンドオピニオン(別の医師の意見)を求めることもできます。
この病気と共に生きる
血尿は、検査を進めている間も気になってしまう症状です。トイレに行くたびに尿の色を確認して不安になるかもしれません。そんなときは「色を記録して、次の診察で伝える」というふうに、不安を「情報」に変えてみましょう。原因が分かって治療方針が決まれば、気持ちはずっと落ち着きやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を目指す(膀胱がんのリスクを下げるためにも大切です)
- 水分をこまめにとる習慣をつくる
- 疲れや睡眠不足をためない
- 便秘を防ぐ(いきむと尿の出に影響することがあります)
- 排尿を我慢する時間を長くしない
- 尿の色や回数、痛みを簡単なメモに残す
食事と運動
特別な食事制限が必要かどうかは、原因によって変わります。腎臓の病気が関係する場合は、塩分を控えめにし、医師や管理栄養士の指示に従うことが大切です。結石が関係する場合は、水分を多めにとることが助けになります。運動は、体調に合わせて無理のない範囲で続けて大丈夫です。ただし、激しい運動のあとに尿が赤くなる方は、そのことを医師に伝えてください。
精神的健康と心の健康
血尿は「がんかもしれない」という不安が頭をよぎりやすい症状です。検査結果を待つ間は落ち着かないのは自然なことです。眠れない、食欲がない、不安で何も手につかないといった状態が続くときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医や地域の保健センター、こころの相談窓口に話してみてください。家族や友人に「今こういうことで心配している」と伝えるだけでも、気持ちが軽くなることがあります。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の相談窓口、緊急時は119番に連絡してください。
予防
血尿を完全に防ぐことはできませんが、リスクを下げることはできます。とくに禁煙は、膀胱がんをはじめ多くの病気のリスクを下げる、いちばん確かな一歩です。水分をしっかりとり、尿を我慢しない、排尿のトラブルを放置しないことも大切です。
ワクチン
現在のところ、血尿そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、尿路感染症の一部は予防できる場合があるため、気になる方はかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
日本では、多くの健康診断や自治体の健診に尿検査が含まれており、そこで血尿が見つかることがあります。現在、国のがん検診として膀胱がんを尿検査で見つけることは推奨されていませんが、健診の尿検査で「潜血プラス」と言われた場合は、放置せず医療機関で相談してください。喫煙歴のある方や50歳以上の方は、健診を毎年受けることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 尿路感染症が悪化して、腎盂腎炎(じんうじんえん)や、まれに全身に細菌がまわる重症の状態になることがある
- 結石が尿管をふさぎ、強い痛みや腎臓のはたらきの低下を招くことがある
- 腎臓の病気が進み、腎臓のはたらきが落ちてしまうことがある
- 膀胱や腎臓の腫瘍が見つかるのが遅れ、治療の選択肢が狭まることがある
- 出血が続くことで貧血になることがある
長期的な見通し
血尿の原因の多くは、感染症や結石など、きちんと治療できるものです。たとえ深刻な原因が見つかったとしても、早期に分かれば治療の選択肢は多く、よい経過が期待できます。大事なのは「痛みがないから大丈夫」と決めつけず、一度ちゃんと調べること。調べた結果、異常がなければ、それも大切な安心材料になります。
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最終更新: 2026年11月3日
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