不正出血(破綻性出血)
概要
不正出血(ふせいしゅっけつ)とは、月経(生理)の予定ではない時期に、腟(ちつ)から血が出ることです。その中でも「破綻性出血(はたんせいしゅっけつ)」は、ホルモンのバランスが一時的にくずれることで子宮の内膜が不安定になり、予定外の出血が起きる状態を指します。多くは体の危険なサインではありませんが、原因を確かめるために受診することが大切です。
重要な事実
- 月経と月経の間に起きる出血の多くは、ホルモンのゆらぎや避妊の方法によるものです。
- 少量で数日でおさまることもありますが、量が多い・長く続く・痛みを伴うときは受診の目安です。
- 閉経(へいけい)後の出血や、妊娠の可能性があるときの出血は、早めに医療機関に相談してください。
とてもよくある症状です。月経のある年代の女性の多くが、一度は経験すると言われています。特にホルモンを使った避妊を始めた最初の数か月は起こりやすいです。
症状
- 1時間にナプキンが何枚も必要になるほどの大量の出血、または大きな血のかたまりが続く
- ふらつき、意識が遠のく感じ、冷や汗、動悸(どうき)、息切れがある(出血による貧血やショックのサインの可能性)
- 突然の激しい下腹部の痛みと出血がある
- 妊娠の可能性があるときに、強い片側の下腹部痛と出血がある(早めの救急受診が必要なことがあります)
- ⚠発熱を伴う出血
- ⚠においの強いおりものと出血がある
- ⚠出血が1週間以上続き、量が増えてきている
- ⚠妊娠の可能性があるときの出血
- ⚠閉経後の出血
- ⚠出血に伴う強い痛みや、日常生活に支障が出るほどの疲れ・息切れ
一般的な症状
- 月経と月経の間に、少量の血が出る
- おりものに血が混じる、茶色っぽいおりものが続く
- 出血の量や期間が毎回ちがう
- 下腹部の軽い痛みや張りを伴うことがある
- ホルモン避妊を始めたばかりの数か月間に、だらだらとした出血が続く
子供の症状
- 思春期前の女の子の腟からの出血は、ふだんは見られません。受診が必要なサインです。
- 小児では、腟や外陰部の炎症、けが、異物、皮膚のやぶれなどが原因となることがあります。
- 思春期に入って間もない時期は、ホルモンの調整がまだ不安定なため、月経が不順になりやすいです。
高齢者の症状
- 閉経後の出血は、量が少なくても必ず医療機関に相談してください。
- 閉経後は、腟の粘膜が薄く乾きやすくなることによる出血や、ポリープなどが原因のことがあります。
- 年齢を重ねると、出血量が多いときの貧血が進みやすいので注意が必要です。
原因
主な原因
- ホルモンバランスの乱れ:強いストレス、急な体重の変化、睡眠不足、過度なダイエット、激しい運動など
- ホルモンを使った避妊の影響:飲み薬タイプ、子宮内に入れるタイプ、注射や体内に埋め込むタイプなど。特に使い始めの数か月に起こりやすい
- 避妊の方法の使い忘れや、自己判断での中止
- 排卵の時期に起こる少量の出血(排卵期出血)
- 子宮の入り口や子宮の内側にできるポリープ(粘膜のできもの)
- 子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)や子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)などの良性の病気
- 腟や子宮の入り口の炎症、感染症
- 甲状腺(こうじょうせん)の働きの異常
- 妊娠に関係する出血
- 閉経後に起こる、腟の粘膜が薄くなることによる出血
- まれに、子宮や子宮の入り口のがんが隠れていることがある
リスク要因
- ホルモンを使った避妊をしている(特に始めたばかり、または使い方が不規則なとき)
- 強いストレスが続いている、睡眠が不足している
- 体重が短期間で大きく変わった、極端な食事制限をしている
- たばこを吸っている
- 甲状腺の病気がある
- 子宮筋腫やポリープなどを指摘されたことがある
- 20代後半から40代にかけて(ホルモンの変化が起きやすい年代)
- 閉経を迎えた、または閉経後である
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 大量の出血があり、ふらつきや動悸がある
- 激しい下腹部痛、発熱、悪臭のあるおりものを伴う
- 妊娠の可能性があるときの出血
- 閉経後の出血
- 出血が止まらず、どんどん量が増えている
定期受診を予約すべき場合:
- 不正出血が2〜3回続けて起きている
- 出血が1週間以上だらだらと続いている
- ホルモン避妊を使っていて、3か月以上出血が続いている
- 月経の量が以前より増えた、痛みが強くなった
- 出血のことで不安が続き、生活に支障が出ている
診断
まず、月経の周期、出血の量と続いた期間、使っている避妊の方法、服薬、妊娠の可能性、ストレスや体重の変化などを聞きます。そのうえで、内診や超音波(エコー)検査で子宮や卵巣の状態を確認し、必要に応じて血液検査や細胞診を行います。
行われる可能性のある検査
- 問診(月経の記録、避妊の方法、服薬、生活の変化など)
- 妊娠検査
- 血液検査(貧血、ホルモン、甲状腺の働きなどを調べる)
- 経腟(けいちつ)超音波検査:子宮や卵巣を画像で確認する
- 子宮頸部(しきゅうけいぶ)の細胞診:子宮の入り口の細胞を調べる
- おりものの検査:感染症が疑われるとき
- 子宮内膜(しきゅうないまく)の組織を調べる検査:必要と判断されたとき
診察で予想されること
検査の多くは短時間で、痛みはほとんどありません。内診や超音波検査で少し緊張することはありますが、その場で状態の説明を受けられることも多いです。結果は当日から数日でわかることが多く、必要なら次の検査や治療の相談をします。
治療
治療は原因によって変わります。はっきりした病気が見つからず、出血も少量であれば、記録をつけながら様子を見ることもあります。原因に合わせて、生活の調整、ホルモンの状態を整える方法、感染症の治療、ポリープの切除などを医師と相談して決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 出血の日、量、色、痛みなどをメモしておく(受診のときに役立ちます)
- 生理用品を多めに持ち歩き、こまめに取り替えて清潔を保つ
- 疲れや睡眠不足をためないように休息をとる
- ストレスを一人で抱え込まず、リラックスできる時間をつくる
- たばこを吸う場合は、減らす・やめることを検討する
- 自己判断で避妊の方法を中止したり変更したりせず、医師や薬剤師に相談する
医療治療
原因に応じて、次のような方法がとられます。ホルモンのバランスが関係している場合は、ホルモンの状態を整える方法や、使っている避妊の方法の見直しを相談します。感染症が原因なら、その治療を行います。貧血がある場合は、鉄分の補給などで体の状態を整えます。ポリープなどが原因の場合は、その部分を取り除く処置を検討します。どの方法が合うかは体質や生活によって違うため、医師とよく相談して決めてください。
手術が検討される場合
手術が必要になるのは、ポリープや子宮筋腫などが原因で出血や痛みが続く場合、または子宮の内側の組織を詳しく調べる必要がある場合などです。多くの人には手術は不要で、まずは検査と経過観察から始まります。
この病気と共に生きる
出血の記録をつけておくと、自分のパターンがわかり、受診のときにも役立ちます。外出時は生理用品を多めに用意し、着替えを用意しておくと安心です。予定を立てるときは、出血が多い日は無理をしないようにしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠をしっかりとり、生活のリズムを整える
- ストレスをためこまず、自分に合った発散方法を持つ
- 急なダイエットや extreme な食事制限を避ける
- 禁煙を心がける
- 適正体重を保つ
- 避妊の方法について迷ったら、医師や薬剤師に相談する
食事と運動
出血が続くと鉄分が失われやすいので、赤身の肉や魚、卵、大豆製品、ほうれん草などの緑黄色野菜、海藻などを意識してとりましょう。ビタミンCを一緒にとると鉄分の吸収が助けられます。運動は散歩や軽い体操など、無理のない範囲で続けるのがおすすめです。激しい運動や極端な食事制限は、ホルモンの乱れにつながることがあるので注意してください。
精神的健康と心の健康
予定外の出血は、恥ずかしさ、不安、イライラ、性生活への影響など、心の負担になることがあります。「また出血するのでは」という心配が続くと、気持ちが疲れてしまうこともあります。これは特別なことではなく、相談してよい悩みです。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、一人で抱えず、医療機関や地域の相談窓口に連絡してください。命に関わる危険を感じるときは119番に電話してください。
予防
すべての不正出血を防ぐことはできませんが、生活のリズムを整え、ストレスや体重の急な変化を避け、避妊の方法を正しく使うことで、起こりにくくすることはできます。気になる症状があれば早めに相談することが、いちばんの予防になります。
ワクチン
子宮の入り口のがんの原因になるウイルスに対するワクチン(HPVワクチン)は、公費で受けられる場合があります。接種を考えている場合は、自治体の案内やかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
日本では、20歳以上の女性に子宮頸がん検診が勧められています(一般的に2年に1回)。お住まいの自治体の検診案内を確認し、定期的に受けておくと安心です。出血が続くときは、検診の時期を待たずに受診してください。
合併症
治療しない場合
- 出血が続くことで貧血が進み、疲れやすさ、息切れ、めまいが起きることがある
- 感染症が原因の場合、治療が遅れると炎症が広がることがある
- ポリープや子宮の病気が見逃されることがある
- まれですが、がんであった場合に発見が遅れる可能性がある
- 不安や心配が続き、生活の質が下がることがある
長期的な見通し
不正出血の多くは、原因がわかり、それに合った対応をすることで落ち着きます。重い病気が見つかることは多くありません。気になる症状を記録して早めに相談することが、安心への近道です。
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最終更新: 2026年11月3日
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