目が飛び出して見える(眼球突出)
概要
眼球突出(がんきゅうとっしゅつ)とは、目の玉(眼球)がふだんより前に出て、目が飛び出して見える状態のことです。目の玉はふつう、頭の骨でできた「眼窩(がんか)」というお椀のようなへこみの中に収まっています。この中の脂肪や筋肉が増えたり、炎症で腫れたり、出血やできものができたりすると、目の玉が押し出されて前に出てきます。見た目の変化だけでなく、目が乾く、まぶしい、二重に見えるといった不快な症状が出ることもあります。原因は甲状腺(こうじょうせん)の病気に関係するものが多いですが、目の奥の炎症や感染症、けがなど、いくつかの原因があります。
重要な事実
- 目の玉が前に出る原因で多いのは、甲状腺の病気に伴う「甲状腺眼症(こうじょうせんがんしょう)」です。バセドウ病の人に起こりやすいことが知られています。
- 甲状腺眼症は、両目に出ることも片目だけに出ることもあります。症状は数か月かけてゆっくり変化し、良くなったり安定したりする人が多いです。
- 急に目が飛び出してきた、強い痛みがある、見えにくくなった、といった場合は、早めに医療機関を受診してください。目の奥の感染症など、急いで治療が必要な原因が隠れていることがあります。
甲状腺眼症は甲状腺の病気がある人の一部に起こる、比較的よく知られた症状ですが、目の病気全体から見ると眼球突出は珍しい症状です。片目だけ少し出ている、左右で大きさが違うという軽い左右差は、病気ではなく生まれつきの特徴ということも多くあります。
甲状腺眼症は30〜50歳代の女性に多いとされています。ただし男性に起こったときは症状が強くなりやすいといわれます。子どもではまれですが、目の奥の感染症(眼窩(がんか)蜂窩織炎(ほうかしきえん))は子どもにも起こり、急な対応が必要になります。年齢を問わず起こりうる症状です。
症状
- 急に目が飛び出し、同時に激しい目の奥の痛みや頭痛がある
- 目が見えなくなった、視野が急に欠けた
- 高熱とともに、まぶたが赤く大きく腫れ、目を動かすと強く痛む
- 目に強い衝撃を受けたあと、目が飛び出した、視力が落ちた、出血している
- 意識がぼんやりする、ひどい頭痛と吐き気が一緒に起こる
- ⚠数日単位で目がどんどん出てきた
- ⚠ものが二重に見え始めた、視力がぼやける
- ⚠目が閉じきらず、黒目が乾いて傷ついた感じがする、痛みが強い
- ⚠目の充血と痛みが続き、膿(うみ)のような目やにが出る
- ⚠甲状腺の病気で治療中に、目の症状が急に悪くなった
一般的な症状
- 鏡を見たときに目が飛び出して見える、人から「目が大きくなったね」と言われる
- 目がゴロゴロする、乾く、砂が入ったような感じがする
- 涙がよく出る、まぶしく感じる
- まぶたが腫れる、まぶたが上がりすぎて白目がよく見える
- 目の奥が重い、押されるような感じがする
- ものが二重に見える(複視(ふくし))
- まぶたが閉じにくく、夜眠っている間に目が開いてしまう
- 目が赤くなる、充血する
子供の症状
- 子どもの甲状腺眼症はまれですが、起こらないわけではありません
- 目の奥の感染症では、まぶたが赤く腫れる、強く痛がる、熱が出るといった症状が急に出ます。これは急いで受診が必要な状態です
- 目を触られるのを嫌がる、光をまぶしがる、ものが見えにくそうにする様子にも気をつけてください
- 甲状腺の病気は、身長の伸びや体重、落ち着きのなさなど、目の症状以外の変化として気づかれることもあります
高齢者の症状
- 加齢によるまぶたの変化(まぶたが下がる、たるむ)で見た目が変わり、眼球突出と間違われることがあります
- 目の奥の腫瘍(しゅよう)や炎症は、年齢が上がるほど注意が必要な原因のひとつです
- 目が乾きやすく、まぶたが閉じにくいと、角膜(黒目の表面)を傷めやすくなります
- 見え方の変化を「年のせい」と決めつけず、気になったら眼科で相談してください
原因
主な原因
- 甲状腺眼症(バセドウ病などの甲状腺の病気に伴い、目の奥の組織が腫れたり脂肪が増えたりする)
- 目の奥の炎症(眼窩(がんか)炎、眼窩蜂窩織炎(ほうかしきえん)など感染によるもの)
- 目の奥の腫瘍(しゅよう)(良性のものも含まれます)
- 目の奥の出血や血管の異常(血管のつながり方が変わる病気など)
- けがによる目の奥の腫れや出血
- 生まれつきの左右差や、強度の近視で目の玉が大きいために目立つ(病気ではないことも多い)
リスク要因
- 甲状腺の病気(バセドウ病など)がある、または家族にいる
- たばこを吸う(甲状腺眼症が悪くなりやすいことが知られています)
- sinus(副鼻腔(ふくびくう))の感染症を繰り返す、または放置している
- 目や顔のけがの経験がある
- 免疫の働きが変化する治療を受けている、または免疫に関する病気がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 目が急に飛び出してきた、痛みが強い
- 見えにくくなった、ものが二重に見える
- 高熱とまぶたの赤い腫れがある
- 目が閉じられず、黒目が乾いて傷ついているように見える
定期受診を予約すべき場合:
- ここ数か月で、目が少しずつ出てきた気がする
- 目の乾き、ゴロゴロ感、まぶしさが続いている
- まぶたが腫れやすい、目の奥が重い感じが続く
- 甲状腺の病気を指摘されたことがある、または家族にいる
- 見た目の左右差が気になってきた
診断
まず問診で、いつ頃から、どのように変化したか、痛みや見え方の変化があるかを確認します。次に眼科で、目の動き、まぶたの状態、視力、目の奥の様子を診察します。目の玉がどれくらい前に出ているかは「眼球突出計(がんきゅうとっしゅつけい)」という器具で測ります。原因を探るために、甲状腺の働きを調べる血液検査や、目の奥を写すCT・MRI検査を行うことがあります。必要に応じて、甲状腺の専門医(内分泌内科)と目の専門医(眼科)が一緒に診ていく形になります。
行われる可能性のある検査
- 視力・視野の検査、色の見え方の検査
- 細隙灯(さいげきとう)顕微鏡という器具での目の診察(角膜の傷や乾きを確認)
- 眼球突出計による、目の出方の測定
- 目の動きと、ものが二重に見えるかどうかの確認
- 甲状腺の働きを調べる血液検査
- 眼窩(がんか)のCT検査やMRI検査(目の奥の腫れ、腫瘍、感染の広がりを確認)
- 場合によっては組織の一部を採って調べる検査(生検)
診察で予想されること
診察は痛みのないものがほとんどです。CTやMRIでは、じっとしている必要がありますが、数分から十数分で終わります。結果が出るまでに数日かかることもあります。検査の前に、気になることや不安なことは遠慮なく医師に伝えてください。
治療
治療は原因によって大きく変わります。甲状腺眼症の場合、症状の重さと活動性(今炎症が続いているか)を見て方針を決めます。軽い場合は目の乾きをやわらげるケアと経過観察が中心で、炎症が強い場合や視力に影響が出ている場合は、炎症を抑える治療や専門的な治療を検討します。感染症や腫瘍など別の原因がわかった場合は、それぞれに応じた治療が優先されます。
自宅でのセルフケア
- たばこを吸う人は禁煙を。甲状腺眼症が悪化しにくくなることが知られています
- 目が乾くときは、医師や薬剤師に相談して、目をうるおす目薬を選んでもらう
- 外出時は帽子やサングラスでまぶしさと風を防ぐ
- 睡眠中に目が開いてしまう場合は、医師に相談したうえで、就寝時に目を保護する工夫をする
- パソコンやスマートフォンを見るときは、ときどき意識してまばたきをし、画面を長時間見続けない
- 甲状腺の病気がある場合は、指示された通院と検査を続ける
医療治療
医師は、炎症の強さや視力・見え方への影響をみて治療を組み立てます。目の乾きや不快感に対しては、目をうるおす目薬などが使われることがあります。炎症が強い場合や視神経が圧迫されている場合は、炎症を抑える治療や、免疫の働きに関わる治療が検討されます。放射線を用いた治療が選択肢になることもあります。どの治療も、効果と副作用のバランスを考えて医師が判断しますので、気になる点は担当医に確認してください。
手術が検討される場合
見た目や目の機能に大きな影響が続く場合、炎症が落ち着いた段階で手術が検討されることがあります。目の奥の骨を少し広げて目の玉を戻す手術、まぶたの位置を整える手術、ものが二重に見える状態を整える手術などがあります。手術は急いで行うものではなく、状態が安定してから計画されるのが一般的です。
この病気と共に生きる
眼球突出があると、見た目の変化が気になったり、人と会うのが少しおっくうに感じたりすることがあります。目の乾きやまぶしさは、こまめなケアでかなり楽になります。症状は良くなったり安定したりしながら長い時間をかけて落ち着いていくことが多いので、あせらず、自分のペースで付き合っていくのがおすすめです。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける(目の症状にも全身の健康にも良い影響があります)
- 睡眠を十分にとり、無理な疲れをためない
- まぶしさ対策として、帽子やサングラス、カーテンなどを活用する
- 目の乾きを感じたら、早めにケアする習慣をつける
- 鏡を見て落ち込む時間を減らすなど、気持ちの切り替え方を見つける
食事と運動
特別な食事制限が必要になるのは、甲状腺の病気など別の治療がある場合です。その場合は担当医や管理栄養士の指示に従ってください。ふだんは、バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動(散歩など)が体調を整える助けになります。激しい運動で目が乾いたり充血したりするときは、休憩と水分、目のケアを意識しましょう。
精神的健康と心の健康
見た目の変化は、自分では気にしないつもりでも、写真や人の視線が気になって落ち込むことがあります。それは自然な気持ちで、あなたが弱いわけではありません。不安や気分の落ち込みが続くとき、眠れない日が続くときは、一人で抱え込まずに医療機関や相談窓口に話してみてください。つらい気持ちが強いときは、早めに専門家に相談することが大切です。
予防
すべての眼球突出を防ぐことはできませんが、できることがあります。甲状腺眼症は禁煙が重要な予防・悪化防止策とされています。目の奥の感染症は、副鼻腔(ふくびくう)の感染症を放置せず早めに受診することが大切です。目のけがを防ぐための保護具の使用も役立ちます。
検診プログラム
甲状腺の病気と診断されている人は、目の症状がなくても定期的に眼科で診てもらうことが勧められます。また、目の見え方や見た目の変化に気づいたら、自己判断せずに早めに受診してください。症状がない人のための一般的ながん検診などとは別に、気になる症状があるときの受診が基本になります。
合併症
治療しない場合
- 角膜(黒目の表面)が乾いて傷つき、痛みや見えにくさが出ることがあります
- 視神経が圧迫されて、視力や視野が損なわれることがあります(早めの対応が大切です)
- ものが二重に見える状態が続き、日常生活が送りにくくなることがあります
- 目の奥の感染症が広がると、重い状態になることがあります
- 見た目の変化による心理的な負担が続くことがあります
長期的な見通し
多くの場合、症状は軽いまま、あるいは時間をかけて落ち着いていきます。治療が必要な場合も、甲状腺の専門医と眼科が協力して対応することで、見え方や見た目を保ちながら過ごせる方がほとんどです。気になる変化は早めに相談することが、安心につながります。
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最終更新: 2026年11月3日
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