蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)〜ほおと鼻に広がる赤い発疹〜
概要
蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)は、両方のほおから鼻の付け根にかけて、ちょうちょうが羽を広げたような形で赤くなる発疹のことです。医学用語では「マラー疹」とも呼ばれます。これは病気の名前ではなく、「体の中で何かが起きているサイン」です。よく見られる症状で、発疹だけでは診断はできません。日光(紫外線)に当たると赤みが強くなることもあります。
重要な事実
- 両ほおから鼻の付け根にかけて、左右対称に赤くなる
- 鼻の両脇の溝(ほうれい線)は赤くなりにくいのが特徴
- 日光(紫外線)に当たると悪化することがある
- 発疹の背景に、免疫の病気などが隠れていることがある一方、そうでない場合も多い
- 発疹の見た目だけでは診断できないため、気になるときは医療機関で相談を
皮膚の外来では比較的よく見られる症状です。蝶形紅斑があるからといって、必ずしも重い病気というわけではありません。ただし、背景に別の病気が隠れていることもあるため、自己判断はおすすめしません。
症状
- 息が苦しい、息切れが強い、のどがつまる感じがする
- 胸の強い痛み
- 意識がもうろうとする、けいれんが起こる
- 顔や唇、のどが急に腫れあがる(アナフィラキシーの可能性)
- 高い熱とともに、発疹が全身に急速に広がる
- ⚠発疹が急に広がる、水ぶくれができる、強く痛む
- ⚠38℃以上の発熱が続く
- ⚠関節の腫れや痛みが強い
- ⚠尿の色が濃い、尿の量が少ない、むくみがある
- ⚠口や目の粘膜に、ひどい痛みやただれがある
一般的な症状
- 両方のほおから鼻の付け根にかけて、ちょうちょうのような形の赤みが出る
- 赤みは左右ほぼ対称で、鼻の横の溝(ほうれい線)は赤くなりにくい
- 軽いほてりや、かゆみが出ることがある
- 日差しに当たったあとに、赤みが強くなったり広がったりする
- 微熱、だるさ、関節の痛みなど、皮膚以外の症状を一緒に感じることがある
子供の症状
- 日差しに当たったあと、顔の赤みが目立つ
- 機嫌がわるい、食欲がない、微熱が続くなど、はっきりしない不調として現れることがある
- 口の中の粘膜(口内炎)や、手足の発疹が出ることもある
高齢者の症状
- 赤みがはっきりしない、あるいは茶色っぽく見えることがある
- ロザシア(酒さ)や脂漏性皮膚炎など、他の皮膚の病気との区別がむずかしいことがある
- 飲んでいる薬の影響で、似た発疹が出ている可能性も考える必要がある
原因
主な原因
- 全身性エリテマトーデス(SLE)など、免疫の仕組みが自分自身を攻撃してしまう病気
- 皮膚筋炎など、筋肉や皮膚に炎症が起きる病気
- ロザシア(酒さ)や脂漏性皮膚炎など、よくある皮膚の病気
- 日光(紫外線)による皮膚の反応、いわゆる光線過敏症
- 薬の副作用として出る発疹
- ウイルスなどの感染症に伴う発疹
リスク要因
- 若い女性(ホルモンの影響が関係すると言われる)
- 家族に自己免疫の病気の人がいる
- 日光に長時間当たる生活をしている
- ある種の薬を服用している
- 強いストレスや疲労が続いている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発疹が急に広がる、水ぶくれや強い痛みがある
- 高い熱、関節の腫れ、強いだるさが同時にある
- 尿の色や量の変化、むくみなど、皮膚以外の気になる症状がある
- 日差しに当たったあと、症状がどんどん悪くなる
定期受診を予約すべき場合:
- 顔の赤みが数週間たっても良くならない
- 赤みが広がってきた、繰り返している
- 日光に当たると決まって悪くなる
- 市販のスキンケアでは変化がない
- 家族に免疫の病気の人がいて心配がある
診断
まずは問診と診察が中心です。いつから出たか、日光との関係、かゆみや痛みの有無、発熱や関節痛などの全身の症状、飲んでいる薬、家族歴などをうかがいます。そのうえで、必要に応じて検査を組み合わせて、背景に別の病気がないかを丁寧に見ていきます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症の程度や、免疫に関わる抗体などを調べます)
- 尿検査(腎臓への影響がないかを見ます)
- 皮膚の一部を採取して調べる検査(皮膚生検)を行うことがある
- 日光に対する反応を確認する検査を行うことがある
- 必要に応じて、他の臓器の状態を調べる画像検査
診察で予想されること
診察は数回に分けて行われることがあります。一度の診察で結論が出ないこともありますが、それは慎重に判断しているためです。検査結果を待つ間は不安かもしれません。気になることはメモしておき、診察のときに遠慮なく質問してください。
治療
治療は「原因によって変わる」のが基本です。皮膚だけの問題であれば、紫外線対策とスキンケアが中心になります。背景に免疫の病気などが見つかった場合は、その病気に合わせた治療を医師が組み立てます。自己判断で市販薬を長く使うより、まず相談することをおすすめします。
自宅でのセルフケア
- 日焼け止めを毎日使う(屋外ではこまめに塗り直す)
- 帽子、日傘、長袖などで日光をさえぎる
- 日中の強い日差しの時間帯を避ける
- 刺激の少ないスキンケアを選び、ぬるま湯でやさしく洗う
- 新しい化粧品や薬を使った日はメモを残す
- 睡眠と休息をしっかりとり、疲れをためない
医療治療
原因に応じて、外用薬や内服薬が使われることがあります。また、紫外線対策の指導や、症状に合わせたスキンケアの提案も行われます。薬の種類や量は、症状の強さや体の状態によって医師が判断します。飲み药や塗り薬について気になることがあれば、医師や薬剤師に相談してください。皮膚の症状が強い場合や、全身の症状がある場合は、皮膚科やリウマチ科などの専門医に紹介されることがあります。
手術が検討される場合
蝶形紅斑そのものに対して手術が必要になることは、通常ありません。
この病気と共に生きる
赤みが気になる日は、鏡を見るたびに不安になるかもしれません。そういうときは「今日は少し赤いな」と客観的に記録する程度にして、赤みそのものを見つめすぎないようにしましょう。紫外線対策を習慣にすると、症状が落ち着きやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 日焼け止めをポーチや玄関に置いて、忘れない工夫をする
- 日傘や帽子を普段の持ち物にする
- 紫外線の強い季節や時間帯を意識して予定を立てる
- 睡眠を十分にとり、生活のリズムを整える
- 喫煙している場合は、禁煙について相談する
- 症状と日々の出来事を簡単なメモに残す(診察の役に立ちます)
食事と運動
特別な食事制限が必要と言われているわけではありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動を続けることが、体調を整える助けになります。屋外で運動するときは、日焼け止めと帽子を忘れずに。強い日差しの時間帯を避けて、朝や夕方に行うのもひとつの方法です。
精神的健康と心の健康
顔の症状は人から見えやすく、「どう思われているだろう」と気になって、気持ちが落ち込みやすくなることがあります。それは自然な反応です。ひとりで抱え込まず、信頼できる人に話してみてください。つらい気持ちが続くときは、医療機関や相談窓口を頼ってください。日本では、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間・通話無料)などの相談窓口があります。命に関わるほど追い詰められていると感じたら、迷わず119番や医療機関に連絡してください。
予防
蝶形紅斑そのものを完全に防ぐことはむずかしいですが、紫外線対策を徹底することで、悪化や再発を減らせる可能性があります。また、気になる症状を早めに相談することが、背景の病気の早期発見につながります。
検診プログラム
背景に免疫の病気が疑われる場合は、医師の判断で定期的な血液検査や尿検査が行われることがあります。健診の結果とあわせて、主治医に相談してみてください。
合併症
治療しない場合
- 日光による悪化が繰り返され、赤みや色素沈着が残ることがある
- 背景にある免疫の病気が気づかれずに進み、腎臓・心臓・肺・神経などに影響が出ることがある
- 発熱や関節痛など全身の症状が強くなることがある
- 見た目の変化が長引き、気持ちの面で負担になることがある
長期的な見通し
多くは、紫外線対策と適切な診療で落ち着きます。背景に病気が見つかった場合も、早く見つけて治療を始めることで、日常生活を保ちながら過ごせている方が大勢います。心配なことがあれば、ひとりで決めずに医師に相談しながら進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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