食欲の変化について
概要
食欲(食べたいという気持ち)は、脳、ホルモン、胃や腸、そして心の状態が一緒にはたらいて決まります。食欲の変化とは、いつもより食べたくなくなる、逆に食べる量が増えて止まらなくなる、好きだった食べ物がおいしく感じない、といった状態が続くことをいいます。かぜや疲れ、強いストレスで数日間変わるのはよくあることで、多くは体調が戻れば自然に元どおりになります。ただし、体重が減り続ける、2週間以上続く、気分の落ち込みをともなうといったときは、体や心の病気が隠れていることがあります。その場合は早めに医師に相談してください。
重要な事実
- 食欲は、体と心の状態を映すサインです。変化が続くときは、体からのメッセージだと考えてください。
- 数日で戻る一時的な変化はよくあります。長く続く場合や体重が減っていく場合に、受診を考えましょう。
- 原因はストレス、感染症、薬の影響、ホルモンの変化、歯のトラブル、気分の落ち込みなど、さまざまです。
とてもよくある症状です。病院を受診する人の多くが、何らかの食欲の変化を経験しています。決して珍しいことではありません。
こどもから高齢者まで、誰にでも起こります。とくに高齢者、慢性の病気があって薬を飲んでいる人、ストレスの多い人、妊娠中の人、10代の若者に多くみられます。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い
- けいれんが起きた
- 呼吸が苦しい、顔色が青白い
- 水も飲めず、ぐったりしている(重い脱水のサイン)
- 吐血(血を吐く)、または黒い便(血が混じった便)がある
- 激しいおなかの痛みが続いて動けない
- ⚠1〜2日以上、食べることも水を飲むこともできない
- ⚠嘔吐や下痢が繰り返し、おしっこがほとんど出ない
- ⚠高い熱が続く、強いのどの痛みで飲み込めない
- ⚠短期間で体重が大きく減った
- ⚠急に食べられなくなり、ふらついて立てない
一般的な症状
- 食べたい気持ちがわかない、食事の準備や食事そのものがおっくうになる
- 少し食べただけで、すぐにおなかがいっぱいになる(早期満腹感といいます)
- 体重が減る、または増える
- 味やにおいの感じ方が変わり、食べ物がおいしくない
- 吐き気、おなかの張り、便秘や下痢
- 食後になんだか気分が悪くなる、胸やけがする
- 逆に、食べる量が増えて止まらない、甘いものが欲しくなる
- 疲れやすい、元気が出ない、集中できない
子供の症状
- 自分で「食欲がない」と言えないことが多いので、様子で気づいてあげてください。
- 機嫌が悪い、泣き方が弱い、ぐったりして遊ばない
- おしっこの量が減る、口の中が乾いている(脱水のサイン)
- 体重が増えない、服がゆるくなる
- 乳幼児では、授乳の回数や量が減る、飲み方が弱くなる
- 食べ物を口に入れても吐き出す、飲み込みにくそうにする
高齢者の症状
- 高齢者はのどの渇きや空腹感を感じにくくなります。気づかないうちに食事量が減っていることがあります。
- 少しずつ痩せる、食事の量が減る、食べ物の好みが変わる
- だ液が減って飲み込みにくい、義歯(入れ歯)が合わない
- 一人で食べるのがさびしい、食事を作るのがおっくうになる
- 体重減少と筋力低下が進むと、フレイル(心身が弱った状態)につながることがあります。早めに相談してください。
原因
主な原因
- かぜや胃腸炎などの感染症、発熱
- 強いストレス、不安、気分の落ち込み(うつ状態)
- 薬の副作用(飲み始めてから変わったときは、薬剤師や医師に相談してください)
- ホルモンの病気(甲状腺の働きの変化など)や糖尿病
- 貧血やビタミン不足などの栄養の問題
- 歯や入れ歯、口内炎、飲み込みの問題
- 胃や腸の病気(胃炎、便秘、胃酸の逆流など)
- におい・味の感じ方の変化(感染症のあとなどに起こることがあります)
- 妊娠、加齢、飲酒・喫煙
- 認知症、孤独、経済的な不安といった暮らしの背景
リスク要因
- 65歳以上である
- 慢性の病気があり、複数の薬を飲んでいる
- 歯や飲み込みに不安がある
- ひとり暮らしで、人との交流が少ない
- 強いストレスや悲しみを抱えている
- 妊娠中、思春期、食事制限のあるダイエット中
- 喫煙や飲酒の習慣がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 水も飲めない、繰り返す嘔吐、強い痛み、高い熱がある
- 意識がぼんやりする、ぐったりしている
- 吐血や黒い便がある
- 数週間で体重が大きく減った
- こどもがぐったりして、おしっこがほとんど出ない
定期受診を予約すべき場合:
- 食欲の変化が2週間以上続く
- 体重が少しずつ減り続けている、服がゆるくなった
- 食事が楽しくない、食べることに不安や罪悪感がある
- 薬を飲み始めてから食欲が変わった
- 気分の落ち込み、眠れない、何にも興味がわかない状態が続く
- 家族や周りの人に「痩せたね」と気づかれた
診断
診察ではまず、いつから、どんなふうに変わったのか、体重の変化、食事の内容、飲んでいる薬、睡眠、気分、暮らしの様子をくわしく聞きます。体の診察と体重測定を行い、必要に応じて検査をします。原因はひとつとは限らず、体と心の両方が関係していることも多いので、話しやすいことをそのまま伝えてください。
行われる可能性のある検査
- 体重・身長・BMIの測定(BMIは体格の目安になる数字です)
- 血液検査(貧血、ホルモン、血糖、栄養状態などを調べます)
- 必要に応じて便検査、レントゲン、胃カメラや大腸カメラ
- 飲み込みの検査(嚥下検査といいます)
- 気分や睡眠についての問診(こころの状態を確認します)
診察で予想されること
検査は痛みの少ないものが多く、外来で行えます。結果が出るまで数日かかることもあります。はっきりとした原因が見つからないこともありますが、その場合も食事の工夫や生活の調整で良くなることがあります。わからないことは遠慮なく質問してください。
治療
治療は「原因に合わせて」変わります。体の病気があれば、それを治すことが一番の近道です。原因が見つからないときや、ストレスや気分が関係しているときは、食事のとり方や生活のリズムの工夫、こころのケアを組み合わせます。目標は「たくさん食べること」ではなく、必要な栄養と水分を保ちながら、食べることを楽しめる状態に戻すことです。
自宅でのセルフケア
- 一度にたくさんではなく、少量を何回かに分けて食べる
- 食べられそうな時間や、好きなものを無理なく選ぶ
- 水分をこまめにとる(のどが渇く前に飲むのがコツです)
- 香りや見た目、温かい・冷たいなどの工夫で食欲を刺激する
- 誰かと一緒に食べる、食べながら話す
- 食事前の間食や甘い飲み物で、おなかを満たしすぎない
- 食事と体重を簡単に記録して、変化を把握する
- 睡眠と休養をしっかりとる
医療治療
原因に応じて、感染症やホルモンの病気、貧血などの治療を行います。吐き気や痛みなどつらい症状をやわらげる薬を、医師が検討することもあります。気分の落ち込みが関係している場合は、話を聞いてもらう心理的な治療や、必要に応じた治療が行われます。管理栄養士による食事の相談や、栄養を補う飲み物を使うこともあります。薬の名前や量については、医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
多くの場合、手術は必要ありません。ただし胃や腸の病気、詰まり、腫瘍などが原因のときは、外科的な治療が検討されることがあります。担当医から目的とほかの方法についてよく説明してもらい、納得して決めましょう。
この病気と共に生きる
食欲は毎日少しずつ揺れるものです。「今日はこれだけ食べられた」と数えるようにすると、気持ちが楽になります。食べられない日があっても、翌日にとり戻せば心配いりません。家族や周りには「食べられない」ことを隠さず伝えて、協力してもらいましょう。
生活習慣のアドバイス
- 起きる・食べる・眠る時間を、できるだけ一定にする
- 軽い散歩など、無理のない範囲で体を動かす
- 歯のケアと定期的な歯科受診を心がける
- 飲酒・喫煙は食欲や味覚に影響します。減らすことを検討する
- 服薬の変更は自己判断せず、医師や薬剤師に相談する
- ひとりの食事が続くときは、集まりや配食のサービスも活用する
食事と運動
食事は「量」より「回数」と「水分」を意識してください。たんぱく質(肉・魚・卵・豆腐・乳製品など)と野菜を、少しずつでもとれると体をつくる助けになります。食欲がないときは、スープやおかゆ、果物、ヨーグルトなど食べやすいものから始めましょう。食後の軽い散歩は消化を助け、次の食事のリズムをつくります。激しい運動は必要ありません。
精神的健康と心の健康
食べられないこと自体が不安や焦りを生み、それがさらに食欲を下げることがあります。食事の量と自分の価値を結びつけないでください。気分の落ち込み、眠れない、何も楽しめない状態が2週間以上続くときは、こころの相談も大切な治療のひとつです。つらい気持ちを一人で抱えず、かかりつけ医や地域の相談窓口に話してください。もし自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに救急(119)や医療機関、相談窓口に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、生活のリズムを整える、ストレスをためこまない、歯の健康を保つ、定期的に体重を測る、気になる症状を早めに相談する、といったことで悪化を防げる場合があります。薬の影響が疑われるときも、自己判断で中止せず医師・薬剤師に相談してください。
ワクチン
感染症による食欲低下の一部は、ワクチンで予防できるものもあります。対象や時期については、かかりつけ医やお住まいの自治体の案内を確認してください。
検診プログラム
職場の健康診断や自治体の特定健康診査、がん検診は、体重減少や栄養状態の変化に気づく機会になります。受診の予定があるときは、食欲や体重の変化もあわせて伝えてください。
合併症
治療しない場合
- 栄養不足と体重減少、筋肉量の低下(フレイル)
- 脱水、体の電解質(ミネラルのバランス)の乱れ
- 免疫力が下がり、感染症にかかりやすくなる
- ビタミン・ミネラル不足による貧血や骨の弱り
- 傷の治りが遅くなる、疲れやすくなる
- 気分の落ち込みが悪化する
- こどもの場合は、成長や発達に影響することがある
長期的な見通し
食欲の変化は、多くは一時的なもので、原因がわかれば改善します。たとえ病気が背景にあったとしても、早めに相談することで、食事や生活を整えながら前向きに過ごせます。焦らず、自分のペースで一歩ずつ進みましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.