耳の痛み(耳痛)
概要
耳が痛いと感じる状態を「耳痛(じつう)」と呼びます。耳の穴の入り口から鼓膜までの部分、その奥の中耳、あるいは耳のまわりに痛みが出ます。多くは耳の炎症が原因ですが、のど・あご・歯のトラブルや気圧の変化が「耳の痛み」として感じられることもあります。痛みの場所や一緒に出る症状で、原因の見当がつきやすくなります。
重要な事実
- 子どもの耳の痛みでいちばん多いのは中耳炎(鼓膜の奥が炎症を起こす状態)です。
- 多くは数日から数週間で自然に、または治療で良くなります。
- 痛みの場所、発熱、耳だれ、聞こえにくさなどの組み合わせが、原因を考える手がかりになります。
とてもよくある症状です。特に子どもでは、病院を受診するきっかけの上位に入ります。大人でも、かぜをひいたあとや水泳のあとなどに起こることがあります。
生後6か月から3歳くらいまでの子どもが最も多く経験しますが、年齢を問わず起こります。アレルギー性鼻炎がある方、たばこの煙にさらされている方、集団保育に通う子どもは起こりやすいとされています。
症状
- 顔の片側が動かない、ろれつが回らない、歩けないなど、脳卒中の疑いがある症状が耳の痛みと同時に起きた
- 首が硬くて曲げられない、高い熱、意識がもうろうとする(髄膜炎の疑い)
- 耳の後ろが大きく腫れて、耳が横に突き出ている(乳様突起炎=耳の後ろの骨の感染の疑い)
- 息が苦しい、顔や首が腫れる、飲み込みにくい
- ⚠激しい痛みで眠れない、痛み止めを使っても楽にならない
- ⚠38℃以上の発熱が続く
- ⚠耳だれが出ている
- ⚠急に聞こえにくくなった
- ⚠耳の後ろが赤く腫れている、触ると痛い
- ⚠糖尿病や、免疫が下がる治療を受けている方で耳の感染が疑われる
一般的な症状
- 耳の奥がずきずき痛む、押すと痛い
- 耳がふさがった感じ、聞こえにくい
- 耳だれ(耳から液体や膿が出る)
- 発熱、頭痛、だるさ
- 耳のまわりを触ると痛い、寝ると痛みが強くなる
- 耳鳴りやめまい(まれ)
子供の症状
- 耳をよく触る、引っ張る
- 不機嫌で泣き止まない、夜中に何度も目を覚ます
- 母乳やミルクを飲むときに泣く(吸う動作で耳が痛むため)
- 発熱、食欲の低下
- 呼びかけへの反応が悪い、テレビの音を大きくしたがる(聞こえにくさのサイン)
- 耳だれが出ている
高齢者の症状
- 痛みよりも「聞こえにくい」「耳がこもる」として気づくことがある
- 耳のかゆみ、耳だれ、耳垢のつまり
- 耳の周りに水ぶくれと強い痛みが出る帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、高齢の方に多い病気です
- 糖尿病がある方は、耳の感染が重症化しやすいので注意が必要です
原因
主な原因
- 中耳炎:かぜなどのあとに、鼓膜の奥に液体がたまって炎症を起こす
- 外耳炎:耳そうじや水泳などで耳の入り口が傷つき、細菌やカビが増える
- かぜやのどの炎症で、耳と鼻をつなぐ管(耳管)が詰まる
- 耳垢がたまって耳の穴をふさぐ
- あごの関節や歯の痛みが、耳の痛みとして感じられる(関連痛)
- 飛行機や登山など気圧の変化
- 耳をぶつけた、異物が入ったなどの外傷
リスク要因
- 6歳未満、とくに集団保育に通う子ども
- かぜをひいている、アレルギー性鼻炎がある
- たばこの煙を吸う環境にいる(受動喫煙)
- 赤ちゃんを寝かせたまま哺乳瓶でミルクを飲ませている
- 綿棒で耳そうじをしすぎる、補聴器を長時間使う
- 水泳をする、耳の中が湿ったままになりやすい
- 糖尿病や、免疫が下がる状態・治療
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい痛み、高い熱、耳だれがある
- 子どもがぐったりしている、水分がとれない、おしっこが少ない
- 耳の後ろが腫れている
- 聞こえにくさが急に始まった
- 糖尿病や免疫が下がる治療を受けている方で、耳の痛みや腫れがある
定期受診を予約すべき場合:
- 軽い痛みが数日続いている
- 聞こえにくさや耳のふさがった感じが続く
- 耳鳴りが続く
- 耳の痛みを繰り返している
- 耳垢つまりが気になる、耳がかゆい
診断
問診と耳の診察が中心です。医師が耳鏡(じきょう)という器具で耳の穴と鼓膜をのぞき、赤み・腫れ・液体のたまり・鼓膜に穴が開いていないかを確認します。必要に応じて、聞こえの検査や鼓膜の動きを調べる検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 耳鏡検査(耳の穴と鼓膜をのぞく)
- ティンパノメトリー(鼓膜の動きやすさを調べ、奥に液体がたまっていないかを見る)
- 聴力検査
- 耳だれがある場合の細菌・カビの検査
- 重症の場合の血液検査や画像検査
診察で予想されること
診察は数分で終わることが多く、痛みはほとんどありません。子どもの場合は動かないように抱っこで押さえることがあります。検査の結果によっては、数日から数週間後に再診を勧められることがあります。
治療
耳の痛みの治療は原因によって変わります。多くは痛みをやわらげながら体の自然な回復を待つ方針で、細菌による感染が強く疑われる場合には医師が抗菌薬を検討します。自分で判断して薬を使わず、医師や薬剤師の指示に従ってください。
自宅でのセルフケア
- 痛む耳を下にして横になると楽になることがあります(乳幼児は窒息や体位に注意し、必ず大人が見守ってください)
- 温かいタオルで耳のまわりを温めると和らぐことがあります
- 水分をとって、しっかり休む
- 耳に綿棒や異物を入れない
- 飛行機や気圧の変化のときは、あくびや飲み込みで耳抜きをする
- たばこの煙を避ける
医療治療
医師は原因に応じて、痛みをやわらげる薬、炎症をしずめる薬、細菌感染が疑われる場合の抗菌薬などを検討します。中耳に液体がたまっている場合は、経過を見ながら再評価します。アレルギー性鼻炎がある場合は、その治療も合わせて行うことで再発を減らせることがあります。具体的な薬の名前や量はここでは示しません。医師・薬剤師にご相談ください。
手術が検討される場合
鼓膜を少し切って中の液体を出す処置や、鼓膜に小さなチューブを入れる処置が行われることがあります。これは、中耳炎を繰り返す場合や聞こえにくさが長く続く場合など、限られた状況で検討されます。多くは日帰りで行える処置です。
この病気と共に生きる
耳の痛みは多くの場合、数日から数週間で落ち着きます。痛みが強い間は無理をせず休みましょう。聞こえにくさがあるときは、正面からゆっくり話しかける、テレビの音量を上げすぎない、大事な話は静かな場所でするなどの工夫が役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 手洗いやうがいでかぜを予防する
- たばこの煙を避ける
- 耳そうじは綿棒を奥まで入れず、入り口をやさしく拭く程度にする
- 水泳のあとは耳の水分をタオルで拭き取る
- アレルギー性鼻炎をきちんとコントロールする
- 子どもの聞こえが気になるときは、健診の機会を利用する
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスのよい食事、十分な水分、しっかりした睡眠が回復を助けます。痛みや発熱があるときは無理な運動を避け、体調が戻ってから少しずつ再開しましょう。
精神的健康と心の健康
痛みが続くと眠れず、イライラしたり不安になったりすることがあります。子どもの看病は、保護者の方の疲れや心配につながりやすいものです。つらいときは一人で抱え込まず、家族やかかりつけ医、地域の相談窓口に話してみてください。気持ちの落ち込みや不安が強い状態が続く場合は、医療機関に相談してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、かぜやアレルギーをコントロールし、たばこの煙を避け、耳を傷つけないようにすることでリスクを下げられます。
ワクチン
肺炎球菌やインフルエンザなどのワクチンは、中耳炎のリスクを下げる可能性があると報告されています。接種の時期や対象は自治体の案内やかかりつけ医にご相談ください。任意接種のものは費用がかかることがあります。
検診プログラム
耳の痛みそのものを早期に見つける検査はありませんが、子どもの聞こえのチェックや乳幼児健診は自治体で行われています。聞こえが気になるときは気軽に相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 鼓膜が破れて耳だれが出る(多くは自然にふさがります)
- 中耳に液体が長く残り、聞こえにくさが続く
- 耳の後ろの骨に感染が広がる乳様突起炎(まれ)
- 慢性の中耳炎になる
- 髄膜炎など重い合併症(非常にまれ)
長期的な見通し
ほとんどの耳の痛みは、適切なセルフケアと必要な治療で数日から数週間で良くなります。聞こえにくさが残った場合も、多くは時間とともに改善します。気になる症状があれば早めに相談することが、安心につながります。
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最終更新: 2026年11月3日
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