外斜位(がいしゃい)〜かくれている目の外向きのずれ〜
概要
外斜位(がいしゃい)は、両目の向きをそろえて物をひとつに見る力が弱まったときに、片方の目が外側へずれてしまう状態です。ふだんは両方の目で見ているため、ずれは表面に出ず、目を隠したり疲れたりしたときだけ現れます。このように、普段は隠れていて特定の条件でだけ出てくる目のずれを「潜伏性の斜視(かくれ斜視)」と呼びます。多くの人に見られる目の性質のひとつで、病気というより「目のクセ」に近いものです。ただし、目の疲れや頭痛、ときに物が二重に見えるなどの不調の原因になることがあります。
重要な事実
- 外斜位は「かくれている目のずれ」で、普段は両目の力で向きが保たれているため、見た目にはわかりません。
- 健康な人でも検査をすると見つかることが多い、よくある目の状態です。
- 症状が出るのは主に目の疲れ・頭痛・読書のしづらさなどで、多くは眼鏡や目のトレーニングで楽になります。
- 急に物が二重に見えるようになった場合は、別の病気が隠れていることがあるため、早めの受診が必要です。
とてもよくある状態です。眼科で目の向きを調べる検査(カバーテスト)を行うと、症状のない人でも外斜位が見つかることが少なくありません。症状が出て眼科を受診する人の数は限られています。
子どもから高齢者まで、どの年代にも見られます。近視・遠視・乱視のある人、長時間パソコンやスマートフォンを使う人、睡眠不足や疲れがたまっている人に症状が出やすい傾向があります。年齢とともにピントを合わせる力(調整力)が落ちると、症状が目立ちはじめることもあります。
症状
- 突然、物が二重に見えるようになり、同時にろれつが回らない・手足の動きにくさ・顔のまひがある(脳卒中の可能性があります。すぐに119番へ)
- 突然の激しい頭痛とともに、物が二重に見える
- 片方のまぶたが急に下がった、瞳孔の大きさが左右で大きく違う
- 突然、片方の目が見えなくなった、視野が欠けた
- ⚠急に物が二重に見えるようになった(痛みがなくても)
- ⚠目の痛みや赤みを伴って、見え方がおかしい
- ⚠頭をぶつけたあとから、物が二重に見える
- ⚠目の向きのずれが急に大きくなった、自分で戻らなくなった
- ⚠視力が急に落ちたと感じる
一般的な症状
- 長時間の読書やパソコン作業のあとに、目が重い・疲れる(眼精疲労)
- 目の奥の痛みや、眉のあたりの重い感じ
- 頭痛(特に夕方や、近くを見る作業のあと)
- 文字がぼやける、ピントが合いにくい、行を見失う
- 疲れているときだけ、物が少し二重に見える(すぐ元に戻る)
- 遠くを見たあと、近くにピントを合わせるまで時間がかかる
- まぶしく感じる、涙が出る、目がしょぼしょぼする
子供の症状
- 学校の黒板の文字を写すのに時間がかかる、書き間違えが多い
- 読書を嫌がる、長い文章を読むと疲れたと言う
- 集中が続かない、授業中ぼんやりするように見える
- 目を細める、顔を横に向ける、頭を傾けて見る
- 夕方になると機嫌が悪くなる、宿題の途中でやめてしまう
- 症状がまったくないことも多い(検査で初めて見つかることもあります)
高齢者の症状
- 加齢でピントを合わせる力が落ち、近くを見たあとの疲れが強くなる
- 老眼鏡や眼鏡の度数が合っていないと症状が出やすい
- ドライアイ(目の乾き)を伴うと、より疲れを感じやすい
- テレビや新聞を見る時間が長いと、夕方に頭痛や目の重さが出やすい
- 転倒や運転への不安につながる見えにくさがある場合は、早めの相談が大切です
原因
主な原因
- 生まれつきの目の向きのバランス(目の位置や、両目をそろえる力の個人差)
- 遠視や近視・乱視などの屈折異常(ピントを合わせるために目が余計に頑張る状態)
- 両目の像をひとつにまとめる力(融像力)が弱い、疲れやすい
- 長時間の近くの作業(スマートフォン、パソコン、読書)による目の酷使
- 睡眠不足・ストレス・体調不良で、目の調節のバランスが崩れる
- 加齢によるピント合わせの力の低下
- まれに、神経や全身の病気、頭部のけがが関係していることがある
リスク要因
- 近視・遠視・乱視がある、眼鏡の度数が合っていない
- 1日に長い時間、画面を近くで見る習慣がある
- 疲れや睡眠不足が続いている
- 強いストレスを抱えている
- 家族に目の向きのずれや斜視のある人がいる
- 頭部のけがの経験、甲状腺や神経の病気がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に物が二重に見えるようになった
- 目が急に外を向いたまま戻らない
- 目の痛み・赤み・まぶしさが強い
- 頭をぶつけたあとに見え方の異常が出た
- まぶたが下がる、瞳孔の大きさが左右で違うなど、目以外の症状も出ている
定期受診を予約すべき場合:
- 目の疲れや頭痛が数週間続き、休んでも改善しない
- 読書やパソコン作業のあとに、文字がぼやける・二重になることが増えた
- 子どもが読書や書き写しを極端に嫌がる、集中が続かない
- 夕方になると決まって目の症状が出る
- 眼鏡を作り直しても、見えにくさや疲れが変わらない
診断
眼科で目の向きと、両目をそろえる力を調べることで診断します。代表的なのは「カバーテスト」で、片方の目を手や遮眼子で隠し、隠したとき・外したときに目の位置がどう動くかを観察します。ふだんは隠れているずれが、目を隠すことで現れるため、外斜位かどうかがわかります。あわせて、ピント合わせの力や近くに寄り目ができるかを調べ、症状の原因がほかにもないかを確認します。
行われる可能性のある検査
- 視力検査(見え方の確認)
- 屈折検査(近視・遠視・乱視の度数を調べる。必要に応じて目薬で瞳孔を広げて行うことがあります)
- カバーテスト・交代カバーテスト(目のずれと、ずれの大きさを調べる)
- プリズムを使ったずれの角度の測定
- 近見点の測定(寄り目ができる一番近い距離を調べる)
- 眼球運動の検査(目を動かす筋肉の働きを確認)
- 眼底検査や神経学的な診察(急な症状や、ほかの病気が疑われるとき)
診察で予想されること
検査は痛みがなく、多くは10〜30分ほどで終わります。まぶしさを感じる検査や、まぶたを触られる検査もありますが、短時間です。瞳孔を広げる目薬を使った場合は、数時間まぶしく感じたり、近くが見えにくくなったりすることがあるため、その日は車の運転を避けると安心です。結果はその日のうちに説明されることが多く、必要であれば眼鏡やトレーニングの方針を相談できます。
治療
外斜位は、症状がなければ治療の必要がないことがほとんどです。目の疲れや頭痛、読みにくさなどの症状がある場合に、見え方を整えて目の負担を減らす治療を行います。中心になるのは、眼鏡でピント合わせの負担を軽くすること、そして目をそろえる力をトレーニングすることです。多くの人はこれで症状が楽になります。
自宅でのセルフケア
- 20分ごとに、約6メートル先を20秒ほど見て目を休める(20-20-20の目安)
- 画面と目の距離を40センチ以上とり、画面は目線より少し下に置く
- 部屋の照明と画面の明るさの差を小さくし、反射を減らす
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 目が疲れたら、意識してまばたきを増やし、目を乾かさない
- 眼鏡の度数が合っているかを定期的に確認する
- 長時間の作業のあとは、温かいタオルなどで目を休ませる
医療治療
治療の中心は、まず眼鏡で近視・遠視・乱視をきちんと合わせ、ピント合わせの負担を減らすことです。とくに子どもの遠視は、眼鏡の装用が症状の改善に大きく役立つことがあります。次に、寄り目(両目を内側に寄せる動き)を鍛えるトレーニングを行います。これは視能訓練と呼ばれ、専門の検査員や医師の指導のもとで、自宅でもできる簡単な練習を組み合わせて行います。症状に応じて、プリズムという特殊なレンズで目の負担を減らす眼鏡を使うこともあります。治療の内容や進め方は、症状の強さや生活スタイルに合わせて眼科の医師と相談して決めていきます。
手術が検討される場合
手術が必要になるのはまれです。眼鏡やトレーニングを続けても症状が強く残る場合、目のずれが大きい場合、日常生活や学習・仕事に支障が出ている場合などに、眼科の医師と相談して検討されます。多くの場合は保存的な方法で経過を見ていきます。
この病気と共に生きる
外斜位とは、うまく付き合っていけることがほとんどです。自分の目が疲れやすい条件(長時間の画面作業、睡眠不足、夕方の時間帯など)を知っておくと、上手に休みながら過ごせます。仕事や勉強の合間にこまめに目を休めることが、いちばんの味方です。症状が強い日が続くときは、無理をせず眼科で相談しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 作業の合間に短い休憩をこまめに入れる
- 画面を見る時間と、遠くを見る時間を意識して切り替える
- 睡眠時間を確保し、生活のリズムを整える
- 適度な運動やストレッチで、肩や首のこりをほぐす(肩こりは目の疲れと関係します)
- 目の乾きが気になるときは、部屋の加湿や、意識的なまばたきを心がける
- 定期的に眼科で見え方と眼鏡の度数を確認する
食事と運動
特定の食べ物で外斜位が治るということはありませんが、バランスのよい食事は目の健康を支えます。緑黄色野菜や魚、大豆製品などを取り入れた食事を心がけましょう。運動は、肩や首のこりをほぐし、血流をよくする意味で役立ちます。ウォーキングなど無理のない範囲で続けるとよいでしょう。喫煙は血流を悪くするため、目の健康のためにも控えることがすすめられます。
精神的健康と心の健康
目の疲れや頭痛が続くと、集中力が落ちたり、気分が沈んだりすることがあります。子どもでは「勉強が苦手」と誤解されたり、自信をなくしたりすることもあります。これは努力や性格の問題ではなく、見え方の負担によるものだと知っておくことが大切です。つらさが続くときは、ひとりで抱え込まず、眼科の医師や学校の先生、周りの人に話してください。気持ちの面でつらい状態が続く場合は、自治体の「こころの健康相談」などの相談窓口も利用できます。
予防
外斜位そのものを完全に防ぐことは難しいですが、症状が強く出るのを減らすことはできます。長時間の近くの作業を避けてこまめに目を休めること、睡眠と生活リズムを整えること、度数が合った眼鏡を使うことが大切です。子ども場合は、読みにくさや疲れやすさに早く気づいてあげることが、負担を軽くすることにつながります。
検診プログラム
決まった検診の制度はありませんが、日本では子どもの成長に合わせた視力検査が学校などで行われます。目の疲れや頭痛が続くとき、読みにくさがあるときは、症状が強くなる前に眼科で一度見てもらうと安心です。
合併症
治療しない場合
- 目の疲れや頭痛が続き、勉強や仕事の能率が落ちる
- 読書や画面作業がつらくなり、避けるようになる
- 疲れているときだけ出ていた目のずれが、だんだん戻りにくくなることがある
- まれに、常に目が外を向いた状態(外斜視)に移行することがある
- 子どもでは、読み書きへの苦手意識や自信の低下につながることがある
長期的な見通し
外斜位の多くは、命に関わる心配のない状態で、眼鏡や目のトレーニングによって症状が軽くなります。症状がない場合は、そのまま様子を見てよいことも多いものです。急な二重に見える症状など、気になる変化があるときだけは早めに受診し、それ以外は自分のペースで付き合っていけば大丈夫です。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.