同名半盲(どうめいはんもう)— 視野の半分が見えにくくなる状態
概要
同名半盲は、両方の目の視野(見える範囲)のうち、同じ側の半分が見えにくくなる、または見えなくなる状態です。たとえば右側の同名半盲では、右目も左目も、それぞれの視野の右半分が見えません。目そのものに問題があるのではなく、脳の中で視覚の情報が通る道すじ(視神経の先にある視索や視放線、脳の後ろ側にある後頭葉など)が傷つくことで起こります。視野の中心は見えていることが多く、本人が「見えない」と気づきにくいのも特徴です。
重要な事実
- 目ではなく、脳の視覚の通り道が傷ついて起こる症状です。
- 見えない側の物にぶつかる、読みにくい、といった生活の困りごととして現れます。
- 原因の治療と、残った視野を上手に使うリハビリや生活の工夫が中心になります。
めずらしい状態ではありません。特に脳卒中(脳梗塞や脳出血)のあとに起こることが多く、脳卒中を経験した人の一部に見られます。
年齢を問わず起こりますが、脳卒中が多い高齢者に多く見られます。子どもでは頭部のけがや脳の病気などが原因になることがあります。
症状
- 突然、視野の半分が見えなくなった(特に片側だけ)
- 視野の変化に、ろれつが回らない、顔や手足のまひ、力が入らない、ふらつきが伴う
- 突然の激しい頭痛、意識がもうろうとする、けいれんがある
- ものが二重に見える、言葉が出にくいなどの症状が突然出た
- ⚠頭を打ったあとに視野の異常が出た
- ⚠視野の欠けが数日かけて広がっているように感じる
- ⚠視野の異常と強い頭痛・吐き気が続いている
- ⚠視力の低下や目の痛みなど、新しい目の症状が加わった
一般的な症状
- 両目の同じ側半分が見えにくい、または見えない
- 見えない側の物や人にぶつかる、飲み物をこぼす、ドアの枠に肩をぶつける
- 読むときに文字の一部が欠ける、行を見失う、行を飛ばす
- 食事の皿の片側だけを残す、片側の化粧やひげそりがおろそかになる
- 見えないことに自分では気づきにくい(気づいても軽く考えてしまう)
- 人混みや慣れない場所で歩くのがこわい、不安になる
- 視線をこまめに動かして補おうとして、疲れやすい
子供の症状
- 教科書の行を飛ばす、板書を写すのに時間がかかる
- ボール遊びや体育で見えない側から来るものに反応しにくい
- 階段や段差でつまずく、物にぶつかる
- 目の疲れ、頭痛、読むことへの強い苦手意識
- 自分ではうまく説明できず、集中力がないように見えることがある
高齢者の症状
- 転倒やつまずきの危険が増える
- 運転への不安、駐車や車線変更での危険
- 薬の飲み忘れ、印刷物の読み間違い
- 外出や人づきあいが減りやすい
- 複数の病気の治療と同時に、視野の変化への対応が必要になる
原因
主な原因
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血)— 視覚の情報が通る後頭葉や視放線が傷つく
- 頭部のけが(外傷)
- 脳の手術や処置の影響
- 脳炎や脳膿瘍などの感染症・炎症
- 多発性硬化症などの神経の病気
- 片頭痛の前ぶれなど、一時的に起こるもの
リスク要因
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロールなどの異常)
- 心房細動などの不整脈
- 高齢であること
- 以前に脳卒中を経験したことがある
- 頭部のけがの経験、家族に脳卒中の人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然、視野の一部が見えなくなった、または視野が欠けてきた
- 頭を打ったあとに視野の異常や見えにくさが出た
- 視野の異常に、頭痛・吐き気・手足の動かしにくさが伴う
- 見え方の変化が急に進んでいる気がする
定期受診を予約すべき場合:
- 以前から視野の片側が見えにくく、生活で困っている
- 読むのが遅い、物にぶつかる、こぼすことが増えた
- 運転や仕事を続けてよいか相談したい
- 家族から「片側ばかり見ている」と指摘された
- リハビリや生活の工夫について相談したい
診断
まず問診と神経の診察で、いつから、どのように見えにくいのかを確認します。そのうえで視野検査を行い、片側の半分が見えていないかを調べます。目の病気ではないことを確かめるために目の検査も行い、脳の画像検査(MRIやCT)で原因となる脳の病変を探します。
行われる可能性のある検査
- 視野検査(画面の光が見えたらボタンを押す検査など)
- 視力検査、眼底検査(目の奥をのぞく検査)
- 眼球の動きや瞳孔の反応をみる神経の診察
- 頭部のMRI検査(必要に応じて造影剤を使用)
- 頭部のCT検査(急ぎの場合など)
- 血液検査(糖尿病や脂質、炎症など原因を探すため)
診察で予想されること
視野検査は痛みがなく、椅子に座って画面を見つめるだけの検査です。集中が必要で少し疲れることがあります。結果はその場でわかることもありますが、画像検査の結果を合わせて説明されることもあります。必要に応じて、視能訓練士(目のリハビリの専門家)やリハビリの担当者を紹介されます。
治療
視野の欠けそのものを元に戻す特効薬はありません。治療は、原因となった病気の治療と、残っている視野を上手に使えるようにするリハビリが中心になります。脳卒中が原因の場合は再発を防ぐための管理が大切です。
自宅でのセルフケア
- 見えない側を意識して、こまめに顔や視線を動かす練習をする
- 部屋の家具の配置を決めて、なるべく変えない
- よく使う物は見える側に置く、ラベルや色分けで目印をつける
- 照明を明るくし、床のコードや段差などつまずくものを片づける
- 読むときは指や定規で行を追う、文字を大きくする、音声の利用も検討する
- 外出時は白杖や音の手がかり、付き添いなど安全の工夫をする
- 疲れを感じたら早めに休み、無理をしすぎない
医療治療
原因に応じた治療が行われます。脳卒中であれば血圧や血糖、脂質の管理や再発予防のための治療、腫瘍や炎症であればそれぞれに応じた治療が検討されます。視野そのものに対しては、視線を動かして見落としを減らす訓練(走査訓練)、視野を補うための眼鏡の工夫、視能訓練士によるリハビリなどが行われます。研究段階の訓練もありますが、効果には個人差があり、主治医と相談しながら進めます。気分の落ち込みが強い場合には、こころの面からの支援も大切です。
手術が検討される場合
脳腫瘍や脳出血などが原因の場合は、手術が検討されることがあります。ただし、視野の欠けそのものを手術で治すものではありません。手術の適否は主治医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
生活の中では「見えない側がある」ことを前提に工夫することが役立ちます。視線を意識して動かす、物の置き場所を固定する、声をかけてもらうなど、まわりと協力しながら安全を確保しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- ストレスをためず、気分転換の時間をつくる
- 禁煙する
- 血圧を測る習慣をつけ、数値を記録しておく
- 運転については、必ず主治医と相談し、必要な届け出や手続きを確認する
- 定期的に受診し、視野や生活の困りごとの変化を伝える
食事と運動
塩分を控えめにしたバランスのよい食事は、脳卒中の再発予防に役立ちます。運動は、転倒に注意しながら、無理のない範囲で歩くことなどから始めましょう。見えない側があるため、初めは付き添いや安全な場所で行うと安心です。
精神的健康と心の健康
見えない側があることで、ぶつかる・こぼす・読めないといった経験が重なり、いらだち、不安、気分の落ち込み、人と会うことへの消極性が生じることがあります。これは特別なことではなく、よくある反応です。つらい気持ちが続くときは、一人で抱えずに、地域の保健所や医療機関、こころの相談窓口に相談してください。緊急の場合は119番に連絡してください。
予防
同名半盲の多くは脳卒中が原因のため、脳卒中を防ぐことが結果的にリスクを下げることにつながります。血圧・血糖・脂質の管理、禁煙、適度な運動、バランスのよい食事、心房細動などの不整脈の治療が役立ちます。頭部のけがを防ぐために、車ではシートベルト、自転車やスポーツではヘルメットを着用しましょう。
ワクチン
同名半盲に直接関係するワクチンはありません。ただし、感染症が脳の炎症の原因になることがあるため、かかりつけ医と相談のうえで推奨されるワクチンを検討してください。
検診プログラム
健康診断で血圧や血糖、脂質を定期的に確認しましょう。視野の異常や見えにくさを感じたら、早めに医療機関で視野検査を受けてください。
合併症
治療しない場合
- 転倒やけが、やけどなどの事故が増える
- 運転中の事故の危険が高まる
- 読書や仕事、家事がしにくくなる
- 外出や人づきあいが減り、孤立しやすくなる
- 気分の落ち込みや不安が強くなることがある
- 原因となった脳の病気が進行するおそれがある
長期的な見通し
同名半盲は、時間の経過とともに見える範囲が広がる人もいます。特に脳卒中による場合は、数週間から数か月かけて改善することがあります。完全に元に戻らない場合でも、リハビリと生活の工夫によって、安全にできることは確実に増えていきます。あせらず、主治医やリハビリの専門職と一緒に一歩ずつ進めていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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