高齢者の膝の痛み
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
膝の痛みは、高齢になるにつれて多くの人が経験する症状です。膝の関節(骨と骨のつなぎ目)に炎症(赤みや腫れ)や傷みが生じると、歩く、立ち上がる、階段を上るといった日常の動作がつらくなることがあります。多くは変形性膝関節症(へんけいせい しつかんせつしょう)という、関節の軟骨(骨のクッション)がすり減る病気が原因です。
重要な事実
- 60歳以上の約3人に1人が膝の痛みを経験すると言われています。
- 適切な治療や生活の工夫で、多くの場合痛みは軽くなります。
- 体重を減らすと膝への負担が減り、症状が改善することがあります。
はい、高齢者にとって非常に一般的な悩みです。厚生労働省の調査でも、膝の痛みは高齢者の運動機能の低下につながる主な原因の一つとされています。
主に50歳以降の女性に多く見られますが、男性でも起こります。肥満気味の人や、以前膝をケガしたことのある人、立ち仕事やスポーツで膝を酷使してきた人ほどリスクが高まります。
症状
- 膝をぶつけたり転んだりした後、膝が激しく腫れて足が動かせない
- 膝から下の足の色が青白くなったり、冷たく感じる
- 膝の痛みと一緒に、突然の息切れや胸の痛みがある(血栓の可能性)
- ⚠膝が急に赤くなり、ひどく腫れて熱を持っている(感染症の可能性)
- ⚠膝に強い痛みがあり、体重をかけられない(骨折や靭帯損傷の可能性)
- ⚠38度以上の発熱を伴う膝の痛み
一般的な症状
- 膝が痛む(特に歩き始めや立ち上がり、階段の上り下りで強い)
- 膝がこわばる(朝や長く座った後、動かしにくい)
- 膝が腫れる(熱っぽく感じることもある)
- 膝を曲げ伸ばしするときに「ゴリゴリ」「パキパキ」と音がする
- 膝の可動域(曲がる範囲)が狭くなる
子供の症状
- 10代の子どもでは成長痛やオスグッド・シュラッター病(膝の下の出っ張りが痛む)が原因で膝が痛むことがありますが、高齢者の膝の痛みとは原因が異なります。
高齢者の症状
- 痛みが慢性的(長く続く)になりやすい
- 安静にしていても痛むことがある(夜間痛)
- 歩行が不安定になり、転倒のリスクが高まる
- 膝が完全に伸びきらなくなったり、O脚(脚が外側に曲がる)が進行する
原因
主な原因
- 変形性膝関節症(軟骨がすり減る)が最も多い原因
- 加齢に伴う関節の老化
- 関節リウマチ(免疫の異常で関節に炎症が起こる)
- 痛風(尿酸の結晶が関節にたまる)
- 外傷(過去の骨折や靭帯損傷の後遺症)
- 半月板損傷(膝のクッション役の軟骨が傷む)
リスク要因
- 年齢が高い(特に50歳以上)
- 女性である(男性よりリスクが高い)
- 肥満(体重が重いほど膝への負担が大きい)
- 膝を使いすぎる仕事(農業、建設業など)
- スポーツでの膝の酷使やケガの既往
- 遺伝(家族に膝の痛みが多い人)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急・至急症状がある場合は、すぐに医療機関(整形外科)を受診してください。救急の場合(感染症や血栓が疑われる)は119番を呼んでください。
定期受診を予約すべき場合:
- 膝の痛みが1週間以上続く場合
- 市販の痛み止めを使っても改善しない場合
- 日常生活(歩行、階段、家事)に支障が出始めた場合
- 膝の形が変わってきた(O脚が目立つなど)場合
診断
医師はまずあなたの話を詳しく聞き、膝の状態を診察します。痛みの場所、膝の動き、腫れの有無を調べ、必要に応じて画像検査(レントゲンやMRI)を行います。
行われる可能性のある検査
- 問診(いつからどんな痛みか、生活への影響など)
- 身体診察(膝の曲げ伸ばし、押さえて痛い場所、膝の安定性の確認)
- レントゲン検査(骨のすり減りや骨棘(こつきょく:骨のトゲ)の有無を確認)
- MRI(軟骨や半月板、靭帯の状態を詳しく見る)
- 血液検査(炎症の程度やリウマチの可能性を調べる)
- 関節液検査(膝の水を抜いて感染症や結晶の有無を調べる)
診察で予想されること
整形外科を受診すると、まずは痛みの程度や膝の動きを確認します。必要に応じてレントゲンやMRIの予約を取り、結果に基づいて治療方針を決めます。診断がつくまでは不安かもしれませんが、医師としっかり相談することで適切な対策を始められます。
治療
膝の痛みの治療は、痛みを和らげ、膝の機能を保ち、日常生活の質を落とさないことを目指します。多くの場合、手術をしなくても、生活習慣の改善やリハビリで症状は改善します。治療は医師の指導のもとで行ってください。
自宅でのセルフケア
- 痛みがあるときは膝を休める(ただし、完全に動かさないと硬くなるので適度な安静が大切)
- 氷のうなどで冷やす(腫れや炎症がある場合)
- 膝に負担のかからない運動(水中ウォーキング、自転車こぎなど)を日常的に行う
- 体重を減らす(BMIが25以上の方は、5%の減量で膝への負担が大きく減る)
- 歩くときは歩幅を小さくし、ゆっくり歩く
- 正しい靴を履く(クッション性の高い靴がおすすめ)
- 杖や歩行器を使う(片方の膝が痛い場合は、痛くない方の手で杖を持つ)
医療治療
医師は痛みの程度に応じて、鎮痛薬(痛み止め)や炎症を抑える薬を処方することがあります。また、膝の関節にヒアルロン酸(関節の滑りをよくする成分)を注射する治療や、炎症を抑えるステロイド注射を行うこともあります。これらの治療は医師の判断で行われます。リハビリテーション(理学療法)も重要で、膝周りの筋肉を鍛えたり、ストレッチで可動域を広げたりします。
手術が検討される場合
保存治療(薬やリハビリなど手術以外の治療)をしっかり行っても痛みが強く、日常生活に大きな支障がある場合に手術が検討されます。代表的な手術に人工膝関節置換術(金属やプラスチックの人工関節に入れ替える手術)があります。手術の適応については整形外科の医師とよく相談してください。
この病気と共に生きる
膝の痛みと上手に付き合うためには、痛みを無理せず、できることから少しずつ動くことが大切です。毎日のちょっとした工夫で、痛みを減らし、活動的に過ごせます。
生活習慣のアドバイス
- 椅子やベッドの高さを調整する(低すぎると立ち上がりがつらい)
- 正座を避け、あぐらや横座りにする(または椅子に座る)
- 階段は手すりを使って、痛い方の足から先に下ろす
- 重いものを持ち上げるときは膝を曲げずに腰を落とす
- 毎日少しずつでも膝を動かす(関節が固まらないように)
- 転倒を防ぐために家の中の段差をなくし、滑りにくいマットを敷く
食事と運動
食事は、体重管理が最も重要です。バランスの良い食事を心がけ、特に野菜や魚をしっかり摂りましょう。カルシウムやビタミンDは骨の健康に役立ちますが、サプリメントは医師に相談してからにしてください。運動は、膝にやさしい水中運動やウォーキングを週に数回行うと良いでしょう。痛みがあるときは無理せず、リハビリの指導を受けることも検討してください。
精神的健康と心の健康
膝の痛みが続くと、「思うように動けない」「人に迷惑をかける」といった気持ちから、落ち込みや不安を感じることがあります。これは自然なことです。ひとりで抱え込まず、家族や友人、かかりつけ医に話してみてください。気分が沈む状態が続く場合は、心のケアの専門家に相談することも選択肢の一つです。もし自殺や危機を感じるような強い苦しみがあれば、すぐに119番か、各地の精神保健相談窓口に連絡してください。
予防
完全に防ぐことはできませんが、膝の痛みのリスクを減らすことは可能です。体重を適正に保つ、膝周りの筋肉を鍛える、正しい姿勢を心がける、膝に負担のかかる動作(正座や重い物の持ち上げ)を避けることが予防に役立ちます。また、転倒に気をつけることも大切です。
検診プログラム
膝の痛みを早期に見つける特別な検診は一般的ではありませんが、年に一度の健康診断や、かかりつけ医での相談の際に膝の状態をチェックしてもらうと良いでしょう。
合併症
治療しない場合
- 痛みが慢性化し、歩くことが難しくなる
- 膝の変形が進行し、O脚が強くなる
- 足の筋肉が衰え、転倒のリスクが高まる
- 外出が減り、社会的な孤立やうつ状態につながることがある
長期的な見通し
膝の痛みは、適切な治療と生活の工夫で、ほとんどの場合、痛みを軽くし、日常生活の動きを保つことができます。手術が必要な場合でも、リハビリをしっかり行えば、多くの人が痛みから解放され、活動的な生活に戻れます。決して諦めずに、医療や周囲のサポートを積極的に活用してください。
サポートを探す
地域の団体
- 地域包括支援センター · 日本(各市区町村にある高齢者総合相談窓口)
- 整形外科・リハビリテーション科 · 日本(かかりつけ医や地域の医療機関)
相談窓口
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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