長く続く膵臓の炎症(慢性膵炎)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
慢性膵炎(まんせいすいえん)は、膵臓(すいぞう)に長期間炎症が続く病気です。膵臓は食べ物の消化や血糖の調整に重要なはたらきをしています。炎症が続くと、膵臓の細胞が傷つき、正常なはたらきができなくなります。
重要な事実
- 慢性膵炎は、膵臓の炎症が長期間(数か月から数年)続く病気です。
- 炎症が繰り返されることで、膵臓の組織が徐々に破壊されます。
- 治療せずに放置すると、糖尿病や栄養吸収障害などの合併症を引き起こす可能性があります。
急性膵炎(突然の炎症)に比べると頻度は低いですが、特に飲酒習慣のある中高年男性にみられることが多い病気です。
主に40~60歳の男性に多いですが、女性や若い世代でも発症することがあります。特に、長期間にわたって大量のアルコールを飲む人や、喫煙習慣がある人にリスクが高まります。
症状
- 突然の激しい腹痛や背中の痛み
- 吐き気や嘔吐が続き、水分もとれない
- 発熱や悪寒(おかん)がある
- 意識がもうろうとする
- ⚠腹痛が数日続く、または徐々に強くなる
- ⚠皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
- ⚠嘔吐や下痢が続いて脱水症状が疑われる
一般的な症状
- みぞおちや左上腹部の痛み(食事後や飲酒後に悪化することがある)
- 吐き気や嘔吐(おうと)
- 体重減少(食欲が落ちたり、栄養をうまく吸収できなくなるため)
- 脂っぽい便(脂肪を消化できないため、便が油っぽくなり、トイレに浮く)
子供の症状
- 腹痛や腹部の不快感
- 成長の遅れや体重増加不良
- 脂っぽい便や下痢
高齢者の症状
- 痛みがはっきりしないことがある(鈍い痛みや不快感のみ)
- 下痢や脂っぽい便などの消化器症状が目立つ
- 意図しない体重減少
原因
主な原因
- 長期間にわたる大量のアルコール摂取(最も多い原因)
- 胆石(たんせき)による膵管のつまり
- 遺伝的要因(家族性慢性膵炎)
- 自己免疫性膵炎(体の免疫が膵臓を攻撃する)
- 原因がはっきりしない特発性慢性膵炎
リスク要因
- 飲酒習慣(特に1日あたりの摂取量が多い)
- タバコを吸う習慣
- 家族に慢性膵炎や膵臓がんの人がいる
- 高脂血症(血液中の脂肪が多い)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい腹痛や背中の痛みが続く
- 皮膚や白目が黄色くなる
- 吐き気や嘔吐で水分がとれない
定期受診を予約すべき場合:
- みぞおちの痛みが慢性的にある
- 下痢や脂っぽい便が続く
- 特に理由なく体重が減っている
診断
医師は問診(症状や生活習慣の聞き取り)と血液検査、画像検査を行って診断します。膵臓の機能を調べる検査も行われることがあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:膵臓から出る酵素(アミラーゼ、リパーゼ)の値や血糖値を調べる
- 腹部超音波(エコー)検査:膵臓の形や石灰化(石のように固まること)を調べる
- CT検査やMRI検査:膵臓の詳細な画像を確認する
- 内視鏡的逆行性膵管造影(ERCP):内視鏡を使って膵管の状態を調べる
- 便検査:便の中の脂肪量を測り、消化吸収の状態を評価する
診察で予想されること
診断には複数の検査が行われることが一般的です。痛みや負担の少ない検査から始まり、必要に応じて詳しい検査が行われます。医師は症状や生活習慣について詳しく尋ねることがありますので、正直に答えてください。
治療
慢性膵炎の治療は、症状の管理と膵臓の機能を維持することが中心です。原因となる生活習慣(飲酒や喫煙)を改善し、痛みや消化不良を和らげることが目標になります。
自宅でのセルフケア
- アルコールを完全に控える
- 禁煙する
- 脂肪分の少ない食事を心がけ、1回の量を少なくして回数を増やす
- 規則正しい生活と十分な休息をとる
- 痛みがあるときは無理をせず安静にする
医療治療
医師は症状に応じて、消化を助ける薬(膵酵素補充薬)、痛みを和らげる薬(鎮痛薬)、血糖値をコントロールする薬(糖尿病治療薬)などを処方することがあります。また、ビタミン不足を補うために栄養剤が使われることもあります。治療は症状や進行度に合わせて個別に計画されます。
手術が検討される場合
薬や生活改善で痛みが取れない場合や、膵管が狭くなったり石ができた場合には、内視鏡や手術で膵管のつまりを取り除くことがあります。また、膵臓に膿がたまる(膿瘍)など重い合併症がある場合は、手術が必要になることもあります。
この病気と共に生きる
慢性膵炎の方は、症状を悪化させないために日常生活での工夫が大切です。痛みや消化不良と上手く付き合いながら、無理のない範囲で活動しましょう。
生活習慣のアドバイス
- アルコールは完全にやめる
- 禁煙を続ける
- ストレスをためないようにする(趣味やリラックス法を見つける)
- 定期的に医療機関を受診し、状態をチェックする
食事と運動
食事は低脂肪で栄養バランスの良いものを心がけ、1日5~6回に分けて少量ずつ食べると消化に負担がかかりにくいです。適度な運動(ウォーキングなど)は体力維持に役立ちますが、激しい運動は避けてください。
精神的健康と心の健康
慢性的な痛みや食事制限があると、気分が落ち込んだりイライラしたりすることがあります。もし精神的に辛いと感じたら、一人で抱え込まずに医師や看護師、カウンセラーに相談してください。
予防
完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすことは可能です。特にアルコールの過剰摂取を避け、喫煙をしないことが最も効果的な予防法です。健康的な食事と適度な運動も重要です。
ワクチン
慢性膵炎を直接予防するワクチンはありませんが、インフルエンザや肺炎などの感染症予防のためにワクチン接種を検討してもよいでしょう(主治医と相談してください)。
合併症
治療しない場合
- 糖尿病(膵臓のインスリン分泌が低下するため)
- 栄養失調や体重減少(消化吸収が悪くなるため)
- 膵臓がんのリスク上昇(慢性膵炎と関連があるといわれています)
- 膵臓のう胞(液体がたまった袋)や膿瘍(うみ)ができる
長期的な見通し
慢性膵炎は完治が難しい病気ですが、適切な治療と生活習慣の改善により、症状をコントロールし、合併症を防ぎながら長く良い状態を保つことができます。定期的な医療機関の受診と自己管理が大切です。希望を持って治療に取り組みましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月30日
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