膵臓の炎症(膵炎)と発熱
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
膵臓は胃の後ろにある臓器で、食べ物を消化する酵素と血糖を調整するインスリンを作っています。何らかの原因で膵臓に炎症が起こり、腫れたり熱が出たりする状態を「膵炎」といいます。軽いものから命に関わる重症まであります。
重要な事実
- 膵臓は消化酵素とホルモンを作る大切な臓器です。
- 炎症が起きると、作られた酵素が膵臓自身を傷つけてしまうことがあります。
- 発熱は炎症のサインの一つであり、他の症状と一緒に現れることが多いです。
急性膵炎は日本では年間10万人あたり約30~40人が発症すると報告されています(厚生労働省の統計より)。比較的まれな病気ですが、重症化すると危険です。
成人、特に30~60歳の方に多く見られます。胆石がある方やお酒を多く飲む方、脂質異常症(高脂血症)の方に多い傾向があります。
症状
- 我慢できないほどの強い腹痛(脂汗が出るほど)
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応が悪い
- 呼吸が苦しい、胸が痛い
- 高熱(39℃以上)が続く
- ⚠38℃以上の発熱が1日以上続く
- ⚠吐き気や嘔吐がひどく、水分が取れない
- ⚠腹痛が徐々に強くなり、市販の痛み止めで治まらない
- ⚠尿の色が濃くなる、皮膚や目が黄色い(黄疸)
一般的な症状
- みぞおち(上腹部)の強い痛み(背中に広がることもある)
- 吐き気や嘔吐
- 発熱(38℃前後が多い)
- 腹部の張り(ガスがたまる感じ)
- 食欲不振
子供の症状
- 子どもでは腹痛や嘔吐に加えて不機嫌になることが多いです。
- 熱が出ることもありますが、症状がはっきりしない場合もあるため注意が必要です。
高齢者の症状
- 高齢者では痛みが鈍く、はっきりしないことがあります。
- 意識がもうろうとする、血圧が下がるなどの症状が出ることがあります。
- 発熱があっても体温が上がりにくいこともあるため、全身状態の変化に注意が必要です。
原因
主な原因
- 胆石が胆管をふさぐ(最も多い原因)
- 大量の飲酒(特に短期間の多量飲酒)
- 血液中の脂肪(中性脂肪)が非常に高い(高脂血症)
- 特定の薬の副作用
- ウイルスや細菌の感染
- けがや手術の影響
- 原因がはっきりしないこともある(特発性)
リスク要因
- 胆石を持っている
- お酒を毎日たくさん飲む(特に男性)
- 肥満(BMIが高い)
- 喫煙習慣がある
- 家族に膵炎の方がいる
- 血液中の脂肪やカルシウムが高い
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい腹痛で動けない場合
- 意識がおかしい、息苦しい場合
- 高熱(39℃以上)が続く場合
定期受診を予約すべき場合:
- みぞおちの痛みが何日も続く場合
- 吐き気や食欲不振が続く場合
- 胆石と言われたことがある方で、腹痛や発熱がある場合
- 飲酒後に腹痛がよく起こる場合
診断
医師が問診と身体診察を行ったあと、血液検査や画像検査で膵臓の炎症の程度を調べます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(膵臓の酵素であるアミラーゼやリパーゼの値を調べる)
- 腹部超音波(エコー)検査
- CT(コンピューター断層撮影)スキャン
- MRI(磁気共鳴画像)検査
- 必要に応じて内視鏡を使った検査も行うことがあります(ERCP)
診察で予想されること
検査自体は痛みを伴わないものがほとんどです。結果が出るまでは安静が必要なことが多いため、入院して経過を見る場合もあります。
治療
治療の基本は炎症を抑え、膵臓を休ませることです。軽症の場合は数日で改善しますが、重症の場合は集中治療が必要です。
自宅でのセルフケア
- 強い痛みがあるときは安静にする
- 食事を一時的に控え、膵臓を休ませる(絶食)
- 水分補給は医師の指示に従い、点滴で行うことが多い
- 症状が落ち着いたら、医師の指導のもとで少しずつ食事を再開する
医療治療
入院して点滴(栄養や水分の補給)を行い、痛み止めや吐き気止めの薬を使います。炎症が強い場合は抗生物質が使われることもあります。重症の場合は集中治療室(ICU)で管理することもあります。具体的な薬の名前や量は医師が状態に合わせて決めます。
手術が検討される場合
胆石が原因の場合は、胆嚢を摘出する手術や内視鏡で胆管の石を取り除く処置が必要になることがあります。また、膵臓に膿のたまった袋(膿瘍)や壊死した部分ができた場合は、手術で取り除くことがあります。
この病気と共に生きる
急性期を乗り越えたあとは、徐々に通常の生活に戻ります。しかし、再発を防ぐために食事や飲酒に注意が必要です。定期的に通院して状態を確認しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁酒(アルコールは完全に避けることが望ましい)
- 禁煙(喫煙は再発リスクを高める)
- 脂っこい食事や一度にたくさん食べることを避ける
- ストレスをためないようにする
- 体重を適正に保つ
食事と運動
食事は低脂肪で消化の良いものを選びましょう(例:脂肪分の少ない魚、豆腐、野菜スープ)。一度にたくさん食べず、少量を何回かに分けて摂るのが良いです。運動は症状が落ち着いてから、医師の許可を得て軽いウォーキングなどから始めましょう。
精神的健康と心の健康
慢性的な痛みや食事制限、再発の不安から気分が落ち込んだり、イライラしたりすることがあります。一人で抱え込まず、医師や家族に相談してください。
予防
すべての膵炎を予防することはできませんが、リスクを減らすことは可能です。適度な飲酒(できれば禁酒)、バランスの良い食事、禁煙、定期的な健康診断で胆石や高脂血症を早期に見つけることが大切です。
検診プログラム
特に膵炎のための定期的なスクリーニング(検診)はありませんが、リスクが高い方(胆石がある、飲酒量が多いなど)は医師に相談し、必要に応じて検査を受けることをおすすめします。
合併症
治療しない場合
- 膵臓の組織が壊死する(壊死性膵炎)
- 感染症(膿瘍や敗血症)
- 呼吸不全や腎不全などの多臓器不全
- 慢性膵炎(繰り返す炎症で膵臓の機能が低下する)
- 糖尿病(インスリンを作る細胞が傷つくため)
長期的な見通し
急性膵炎は軽症であれば適切な治療で数日で改善します。重症でも集中治療で救命できる可能性が高くなっています。慢性膵炎になると完全には治りませんが、生活習慣を改善し医師の指導を受けることで進行を遅らせ、症状をコントロールできます。希望を持って治療に取り組みましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月30日
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