膵臓(すいぞう)の働きを調べる検査 ― 膵機能検査ってなに?
概要
膵臓(すいぞう)は、おなかの奥、胃の後ろにある細長い臓器です。ここでは大きく2つの仕事をしています。ひとつは「消化液(すい液)」を作って食べ物を分解し、栄養を吸収しやすくすること。もうひとつは、血糖を下げるホルモン(インスリン)を作ることです。膵機能検査(すいきのうけんさ)は、この膵臓がきちんと働いているかを調べる検査のまとまりです。血液検査で膵臓の酵素(アミラーゼやリパーゼなど)の量を見たり、便のなかの消化酵素を測ったり、画像で膵臓の形や管の様子を確認したりします。検査の名前だけを聞くと難しく感じますが、「膵臓が元気に働いているか、炎症や詰まりがないかを見るための検査」と考えるとわかりやすいです。
重要な事実
- 膵機能検査は、主に血液検査・尿検査・便検査と、超音波(エコー)やCT・MRIなどの画像検査を組み合わせて行います。
- 調べる目的は「膵臓の酵素が正しく出ているか」「消化や血糖の調整がうまくいっているか」「炎症や詰まりがないか」を知ることです。
- 検査の結果だけで病名が決まるわけではありません。症状や画像、これまでの経過とあわせて、医師が総合的に判断します。
とてもよく行われます。健康診断やかかりつけ医での血液検査に、膵臓の酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)が最初から含まれていることも多く、おなかの痛みや消化不良の相談のときに追加されることもあります。特別な検査ではなく、ふだんの診療の延長線上にある検査だと考えると安心です。
年齢を問わず必要になる検査ですが、次のような方でよく行われます。おなかの上のほう(みぞおち)が痛む方、油っぽい便や浮く便が続く方、原因不明の体重減少がある方、新しく糖尿病と言われた方、飲酒量が多い方、胆石(たんせき)を指摘された方、膵臓の病気の家族歴がある方などです。子どもでは、繰り返すおなかの痛みや体重が増えない様子から調べることもあります。
症状
- 突然の激しいみぞおち・上腹部の痛みで、体を丸めても楽にならない
- 激しい腹痛に、繰り返す嘔吐(げきつい)や発熱をともなう
- 腹痛があり、顔色が悪い、冷汗が出る、意識がぼんやりする、立てない
- 息苦しさ、胸の痛み、動悸をともなう強い腹部の痛み
- 高熱と黄疸が同時に出て、ぐったりしている
- ⚠吐き気や嘔吐が続いて水分がとれない
- ⚠白目や皮膚が黄色くなってきた、尿が濃い茶色になる、便が白っぽくなる
- ⚠数週間で意図しない体重減少がはっきりある
- ⚠油っぽい便が続き、食べても力が出ない
- ⚠おなかの痛みが何日も続く、または繰り返す
一般的な症状
- みぞおちから左上腹部にかけての痛み。背中に抜けるように感じることもあります。
- 食事のあと、とくに脂っこいものを食べたあとに悪化するおなかの痛み
- 油っぽくて、便器に浮くような便(脂肪便)、においが強い便
- 食欲がない、少し食べるとおなかが張る、吐き気がする
- 食べているのに体重が減っていく
- だるさ、疲れやすさ
- 黄疸(おうだん):白目や皮膚が黄色くなる、尿が濃い色になる、便が白っぽくなる
子供の症状
- 繰り返すおなかの痛み、とくにへその上やみぞおちのあたり
- 体重が増えない、身長の伸びがゆっくりになる
- 油っぽい便、便が多くて臭い、トイレの回数が増える
- 食欲はあるのにやせていく、元気がない
- おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)のあとにおなかの痛みが続く
高齢者の症状
- はっきりした痛みより、なんとなく食欲がない・元気が出ないといった形で現れることがあります
- 気づかないうちの体重減少
- 最近になって糖尿病と言われた、血糖のコントロールが急に悪くなった
- 黄疸や皮膚のかゆみ
- だるさ、歩くのがおっくうになるなど、加齢による変化と見分けにくい症状
原因
主な原因
- 急性膵炎(きゅうせいすいえん):膵臓が急に炎症を起こす状態。多くは胆石やアルコールが関係します。
- 慢性膵炎(まんせいすいえん):炎症を繰り返すうちに膵臓の働きが少しずつ落ちていく状態。
- 胆石や胆管の詰まり:膵液(すいえき)の通り道がふさがれることがあります。
- 膵臓や胆道の腫瘍(しゅよう):検査のきっかけになることがあります。
- アルコールの多飲、喫煙
- 血液中の脂肪(中性脂肪)がとても高い状態、カルシウムが高い状態
- 一部の薬の影響、ウイルス感染(おたふくかぜなど)、自己免疫の異常、遺伝的な体質
- 腹部の手術や内視鏡検査のあとに起こる一過性の炎症
リスク要因
- ふだんの飲酒量が多い、または短期間に大量に飲む
- 喫煙している
- 胆石を指摘されたことがある
- 中性脂肪が高い、または糖尿病がある
- 家族に膵臓の病気の人がいる
- 肥満、脂っこい食事の多い生活
- 膵臓に負担をかける可能性のある薬を長期に使っている(気になる場合は薬剤師や医師に確認を)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- みぞおちの強い痛みが続き、嘔吐や発熱をともなうときは、すぐに医療機関を受診してください。夜間・休日で判断に迷うときは救急の受信相談(#7119など地域の窓口)や119番を利用してください。
- 白目が黄色くなった、尿が濃い色になった、便が白っぽくなった
- 嘔吐が続いて水分がとれない、尿の量が減っている
- 急な体重減少、強いだるさで日常生活が難しい
定期受診を予約すべき場合:
- 油っぽい便や浮く便が続く
- 食後に決まってみぞおちが痛くなる、または背中が痛くなる
- 食欲が落ちて、少しずつ体重が減っている
- 最近糖尿病と言われた、または血糖の数値が急に悪くなった
- 健康診断で膵臓の酵素(アミラーゼ・リパーゼなど)の値が高いと言われた
- 家族に膵臓の病気の人がいて心配がある
診断
まず問診で、痛みの場所や続く時間、食事や飲酒との関係、便の様子、体重の変化などをうかがいます。そのうえで血液検査を行い、膵臓から出る消化酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)の量や、炎症の程度、肝臓・胆道の状態、血糖や栄養状態を確認します。必要に応じて便や尿の検査、腹部超音波(エコー)、CT、MRI、内視鏡を使った詳しい検査を行い、膵臓の形や膵液の通り道に問題がないかを見ていきます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:アミラーゼ(でんぷんを分解する消化酵素)、リパーゼ(脂肪を分解する酵素)、エラスターゼなどの量を測ります。炎症の目安になる数値や血糖、栄養の指標も一緒に調べることが多いです。
- 尿検査:尿のなかに出てくるアミラーゼの量を調べることがあります。
- 便の検査:便のなかのエラスターゼ(消化酵素のひとつ)を測り、膵臓の消化の働きがどれくらいあるかを推定します。脂肪が混ざっていないかも見ます。
- 腹部超音波(エコー):おなかの上から膵臓や胆のう、胆管の様子を観察します。痛みがなく、繰り返し行いやすい検査です。
- CT・MRI(MRCPを含む):膵臓の形、炎症の広がり、石や詰まり、腫れなどを詳しく見ます。
- 内視鏡的超音波検査(EUS):胃の中から超音波で膵臓を詳しく観察する検査です。必要に応じて行われます。
- 膵臓の働きを直接みる検査:膵液の出方を調べる特殊な検査や、呼気(はいき)を調べる検査が行われることがあります。専門施設で行われます。
- 病理検査・細胞診:腫瘍が疑われる場合に、ごく細い針で細胞を採って調べることがあります。
診察で予想されること
多くの検査は外来でその日に済みます。血液検査は数分で採血が終わり、結果は当日から数日でわかります。便の検査は、自宅で採取した便を提出する形が一般的です。超音波検査は服の上からおなかを当てるだけで痛みはありません。CT・MRIは機械の中に入る検査で、じっとしている必要があります。検査の前に食事を控える指示が出ることがあるので、事前の案内をよく確認してください。結果は複数の検査をあわせて説明されることが多く、その場で結論が出ないこともあります。
治療
治療は「検査で何が見つかったか」によって大きく変わります。膵臓に炎症があるときは、膵臓を休ませること、水分と栄養を保つこと、痛みをやわらげることが中心になります。消化の働きが落ちているときは、食事の工夫とあわせて消化を助ける治療が検討されます。血糖の調整が必要な場合は、糖尿病の治療と同じ考え方で血糖を整えていきます。原因(胆石、アルコール、脂質の異常など)があれば、それを取り除くことが再発を防ぐ近道になります。
自宅でのセルフケア
- 飲酒は控える、または医師と相談してやめる。膵臓の炎症を繰り返さないためにとても大切です。
- 禁煙する。禁煙外来など、地域の支援を利用すると続けやすくなります。
- 脂っこい食事を一度にたくさんとらず、少量をよく噛んで回数を分けて食べる。
- 水分をこまめにとる。アルコールや甘い飲み物は水分補給の代わりになりません。
- 体重と症状(痛み、便の様子、食欲)を簡単なメモに残し、受診時に見せる。
- 市販薬や健康食品を新しく使い始めるときは、薬剤師か医師に相談する。
- 決められた受診日を守り、自己判断で治療を中断しない。
医療治療
炎症があるときは、点滴で水分と栄養を補いながら膵臓を休ませ、痛みをやわらげる治療を行います。消化の働きが低下している場合は、消化を助ける種類の薬(医療用の消化酵素を補うもの)が使われることがあります。血糖が高い場合は、食事・運動の見直しとあわせて血糖を整える治療が行われます。脂質の異常や自己免疫の関与など、背景にある原因に応じた治療が選ばれることもあります。どの治療も、症状・検査の結果・生活背景をふまえて医師が判断します。具体的な薬の種類や量については、必ず処方した医師か薬剤師の説明を受けてください。
手術が検討される場合
手術や処置が検討されるのは、主に次のような場合です。胆石が原因で膵液や胆汁の通り道が詰まっているとき、膵液の流れを妨げる狭窄(きょうさく)や石があるとき、膵臓や胆道に腫瘍が疑われるとき、膵液がたまる袋(のう胞)や感染をともなうたまりがあるときです。手術が必要かどうかは、画像の結果と全身の状態をふまえて、担当医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
膵臓の調子を整える毎日は、特別なことより「続けられる小さな習慣」の積み重ねです。食事は一度にたくさん食べず、脂っこさを控えめにして、よく噛んでゆっくり。飲酒は控え、禁煙を心がけます。体調の波を記録しておくと、受診のときに医師へ伝えやすくなり、治療方針の相談もしやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 飲酒を控える・やめる。飲み会の場では、ノンアルコールの選択肢を用意しておく。
- 禁煙する。家族や職場の人にも協力を頼む。
- 食事は1日3回を基本に、量を分けて食べる。揚げ物や脂身の多い肉は回数を減らす。
- ストレスをためこまない。睡眠時間を確保し、無理な夜更かしを避ける。
- 適度な運動を習慣にする(散歩など、無理のない範囲で)。
- 健診や通院を継続し、数値の変化を一緒に見守る。
食事と運動
食事は、脂質を控えめにしながら、たんぱく質(魚、鶏ささみ、豆腐、卵など)と野菜をバランスよくとるのが基本です。一度にたくさん食べると膵臓に負担がかかりやすいので、少量を回数分けて食べるほうが楽なことがあります。主食は玄米や全粒粉など食物繊維のあるものを取り入れると便の調子が整いやすくなります。アルコールと甘い飲み物は控えめにし、水分は水やお茶でこまめにとりましょう。運動は、散歩や軽いストレッチなど「会話ができる程度」の強さを、無理のない範囲で続けるのがおすすめです。体重が減りすぎている時期は、運動より栄養を優先してください。食事や運動の内容は、状態によって適切なものが変わるため、管理栄養士やかかりつけ医に相談しながら調整すると安心です。
精神的健康と心の健康
「また痛くなったらどうしよう」「食べていいものがわからない」といった不安は、とても自然な気持ちです。痛みが続くと気分が落ち込みやすく、眠りが浅くなることもあります。不安や落ち込みが長く続くときは、がまんせずにかかりつけ医や地域の相談窓口、専門の相談機関に話してみてください。ひとりで抱えこまないことが、体の回復にもつながります。なお、気持ちが追い詰められて自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の緊急の相談窓口に連絡し、緊急時は119番を利用してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、生活習慣を整えることでリスクを下げられる部分はあります。とくに、飲酒を控えること、禁煙すること、脂っこい食事を控えて適正体重を保つこと、胆石を放置しないこと、健診を継続することが大切です。原因がはっきりしている場合は、その原因への対応が再発予防につながります。
ワクチン
特定の膵臓の病気を直接防ぐワクチンはありません。ただし、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)などの感染が膵炎のきっかけになることがあるため、定期接種や任意接種について、かかりつけ医に相談しておくとよいでしょう。
検診プログラム
膵臓だけを対象にした一般的な住民健診はありませんが、通常の血液検査に膵臓の酵素が含まれていることがあり、異常を早く見つけられることがあります。飲酒量が多い方、喫煙者、家族歴がある方、糖尿病がある方などは、かかりつけ医に相談のうえで定期的な検査を受けることがすすめられます。気になる症状がある場合は、健診を待たずに受診してください。
合併症
治療しない場合
- 栄養が十分に吸収できず、体重減少や疲れやすさが進むことがあります
- 血糖を下げるホルモンの出が悪くなり、糖尿病を発症・悪化することがあります
- 膵液がたまる袋(のう胞)ができたり、感染をともなうたまりができたりすることがあります
- 炎症を繰り返すことで膵臓の働きが少しずつ低下することがあります
- 強い炎症が全身に広がり、入院が必要な重い状態になることがあります
長期的な見通し
膵臓の検査で異常が見つかっても、多くは早めの対応で症状を落ち着かせることができます。飲酒を控える、禁煙する、食事を整えるといった取り組みは、たしかに再発を減らす助けになります。慢性の経過であっても、消化を助ける治療や血糖の管理、定期的な通院を続けることで、ふだんの生活を保ちながら過ごしている方はたくさんいます。検査の結果が気になるときは、ひとりで抱えこまず、かかりつけ医に何度でも質問してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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