水素呼気テスト(呼気水素試験)でわかること
概要
水素呼気テストは、息に含まれる「水素」というガスの量を測る検査です。私たちが食べた糖分の一部は、小腸で十分に吸収されないと、大腸まで届いて腸内の細菌によって分解されます。このとき水素が発生し、それが血液に入って肺から息として出てきます。検査では、決まった糖分(乳糖やラクツロースなど)を飲んでから、一定の時間ごとに息を袋に吹き込み、水素の量がどう変化するかを調べます。痛みのない、体にやさしい検査です。
重要な事実
- 息を吹き込むだけの、痛みのない検査です。所要時間はふつう2〜3時間ほどで、その間は安静に過ごします。
- 乳糖(牛乳の糖分)や果糖がうまく消化・吸収できているか、小腸で細菌が増えすぎていないか、といったことを推測する手がかりになります。
- 検査の結果だけで診断が決まるわけではなく、症状や食事の内容、これまでの病歴とあわせて総合的に判断されます。
水素呼気テストは、おなかの張りやガス、下痢などの原因を調べるときによく行われる、一般的な検査です。特別な設備が必要ですが、入院の必要はなく、外来で受けられることがほとんどです。
牛乳を飲むとおなかが張る、ガスがよく出る、ゆるい便が続く、といった症状のある人が対象になることが多い検査です。子どもの乳糖不耐症(牛乳の糖分をうまく消化できない体質)が疑われるときに行われることもあります。年齢を問わず受けられますが、小さな子どもでは検査の準備や協力が必要になります。
症状
- 激しく続くおなかの痛みで、体を丸めても楽にならない
- 血が混じった便が出た、または黒くてタールのような便が出た
- 何度も嘔吐して水分がとれず、口の渇きや尿の減少がある
- 意識がもうろうとしている、顔色が悪くぐったりしている
- 発熱とおなかの激痛が同時にある
- ⚠原因のわからない体重減少がある
- ⚠発熱をともなう下痢や腹痛が続く
- ⚠症状が数週間以上続き、日常生活に支障が出ている
- ⚠脱水の気配がある(強い口の渇き、尿が少ない、立ちくらみ)
一般的な症状
- おなかが張った感じがする(腹部膨満感)
- おならがよく出る、量が多い
- 牛乳や乳製品をとったあとに、おなかがゴロゴロする・下痢をする
- 食後の腹痛やけいれんのような痛み
- ゆるい便や下痢が続く、または便秘と下痢をくり返す
- 果物や甘いもの(果糖)をとったあとのおなかの不快感
子供の症状
- 牛乳を飲んだあとに下痢をしたり、おなかを痛がったりする
- おなかの張りや、機嫌が悪くなることをくり返す
- 成長に必要な栄養がとれず、体重の増えがゆっくりになることがある
- 検査では、長時間じっとしていることが難しく、保護者の付き添いや準備の工夫が必要になることがある
高齢者の症状
- おなかの症状を「年のせい」「胃腸が弱ったせい」と考えて、受診が遅れることがある
- 別の病気(消化管の病気や糖尿病など)が隠れていることもあるため、症状が新しく出てきたときは早めの相談が大切
- 持病の薬や食事の制限がある場合は、検査の前に主治医・薬剤師に相談する
原因
主な原因
- 乳糖不耐症:牛乳などに含まれる乳糖を分解する力が弱く、腸で発酵してガスが増える状態
- 果糖吸収不良:果物や甘味に含まれる果糖が小腸でうまく吸収されず、大腸で発酵する状態
- 小腸内細菌異常増殖(SIBO):本来は細菌が少ない小腸で細菌が増えすぎ、食べたものが早い段階で発酵してしまう状態
- 糖の吸収不良:手術後や腸の病気のあとで、糖分の吸収が低下している状態
- 過敏性腸症候群など、検査ではっきりした異常が見つかりにくいおなかの不調
リスク要因
- もともと乳製品を消化する力が弱い、または加齢とともに弱くなってきた
- 胃や腸の手術を受けたことがある
- 糖尿病や消化管の病気がある
- 抗生物質をよく使う、または長く使ったことがある
- 食事の量や内容が大きく変わった、旅行や生活リズムの変化が続いている
- 強いストレスや睡眠不足が続いている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい腹痛、血便、くり返す嘔吐、高熱があるときは、ためらわずに救急外来へ
- 体重が意図せず減り続けている
- 下痢や腹痛のため水分がとれず、ふらつく
定期受診を予約すべき場合:
- 牛乳や特定の食べ物をとると、毎回おなかが張る・下痢をする
- おならやおなかの張りが数週間以上続き、生活が不快に感じる
- 市販の整腸剤や食事の工夫で改善しない
- 家族に乳糖不耐症や消化器の病気の人がいる
診断
まず問診で、症状の出方、食べ物との関係、これまでの病気や薬の使用を確認します。そのうえで水素呼気テストを行い、結果と症状をあわせて総合的に判断します。必要に応じて、他の病気がないかを確認するための検査が追加されることもあります。
行われる可能性のある検査
- 水素呼気テスト:糖分を飲む前と後に息を吹き込み、水素の濃度変化を測る
- 乳糖呼気テスト:乳糖を飲んで、消化・吸収の状態をみる
- ラクツロース呼気テスト:小腸で細菌が増えていないかをみる
- メタン濃度の測定:水素とあわせて測ることで、便秘型の症状の手がかりになることがある
- 血液検査や便検査:炎症や貧血、他の病気がないかを確認する
- 必要に応じて内視鏡検査など:症状や結果によっては、他の原因を調べるために行う
診察で予想されること
検査の前日から、食事や飲み物の制限(食物繊維の多い食品や乳製品を控えるなど)をお願いされることがあります。当日は一定時間の絶食、喫煙や激しい運動を控えるなどの決まりがあります。検査では、まず息を袋に吹き込み、そのあと糖分を含む液体を飲みます。その後は30分ごとなど決まった間隔で息を吹き込み、2〜3時間ほど安静に過ごします。検査中に軽くおなかが張ることはありますが、多くの場合はそのまま続けられます。結果の説明は、当日または後日、医師から受けられます。準備の具体的な内容は施設によって異なるため、事前の説明をよく確認してください。
治療
水素呼気テストは「診断のための検査」であり、それ自体が治療ではありません。結果に応じて、食事の調整や生活の見直しを中心にした対応が行われます。症状の強さや原因によって方針は変わるため、結果を踏まえて医師と一緒に決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 症状が出た食べ物・飲み物と量、時間を記録して、傾向を把握する
- 乳製品で調子を崩しやすい場合は、無理にやめずに、少量ずつ試したり乳糖を分解した食品を選んだりする
- よく噛んでゆっくり食べ、一度にたくさんとらない
- 炭酸飲料やガスを生みやすい食品、大量の甘い飲み物を控えめにする
- 適度な水分と軽い運動で、腸の動きを保つ
- ストレスと睡眠のリズムを整える
医療治療
検査の結果と症状に応じて、食事の内容やとり方の見直しが中心になります。場合によっては、腸内環境に働きかける対応や、症状をやわらげるための治療が検討されることがあります。治療の内容は医師が判断しますので、自己判断で薬を買い求めたり、服用中の薬をやめたりせず、必ず医師や薬剤師に相談してください。栄養の偏りを防ぐため、自己流の食事制限を長く続けることも避けましょう。
手術が検討される場合
水素呼気テストの結果だけで手術が必要になることは通常ありません。ただし、別の病気が見つかった場合などは、その病気に応じた対応が検討されます。
この病気と共に生きる
自分の体がどんな食べ物で調子を崩しやすいかを知ることが、日々の暮らしを楽にする近道です。食べ物日記をつけ、症状が軽い日と重い日を比べてみましょう。食事を大きく制限しすぎると栄養が偏ることがあるので、無理のない範囲で調整することが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 食事はゆっくり、よく噛んで、腹八分目を心がける
- 食物繊維は急に増やさず、少しずつ取り入れる
- 水分をこまめにとる
- 適度な運動(散歩など)で腸の働きを助ける
- 睡眠時間を確保し、生活のリズムを整える
- 外食時は、量や組み合わせを工夫して試す
食事と運動
乳製品や果物、甘いものとの付き合い方は人によって違います。症状が軽い量を少しずつ試して、自分に合う量を見つけましょう。食事制限で気をつけることが多いと感じたら、管理栄養士に相談するのも助けになります。運動は激しすぎない範囲で、歩く・軽いストレッチなどを日常に取り入れると、腸の動きが整いやすくなります。
精神的健康と心の健康
おなかの不調が続くと、「また症状が出たらどうしよう」という不安や、食事の誘いを断る負い目を感じることがあります。こうした気持ちは自然なものです。症状と気持ちは互いに影響し合うため、一人で抱え込まずに、家族や友人、医療者に話してみてください。つらさが強いときや、気分の落ち込みが続くときは、医療機関やお住まいの相談窓口に相談してください。緊急に支えが必要な場合は、地域の救急・相談窓口を利用しましょう。
予防
乳糖を消化する力の弱さなど体質による部分は、予防することはできません。ただし、症状が出る食べ物や量を把握して工夫することで、おなかの不快感を減らすことは十分に可能です。
検診プログラム
特定の症状がない人が全員受ける検査ではありません。牛乳でおなかをこわす、ガスや張りが続くなどの症状があるときに、医師の判断で検査が検討されます。気になる症状があれば早めに相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 症状が続くことで、食事の量や種類が偏り、栄養が不足することがある
- 乳製品を避けすぎて、カルシウムが不足しやすくなる
- 社会生活や食事の楽しみに制限を感じ、気持ちが落ち込みやすくなる
- 別の消化器の病気が隠れている場合、発見が遅れることがある
長期的な見通し
水素呼気テストでわかるのは、体の糖分の扱い方の傾向です。多くは食事や生活の工夫で症状をやわらげることができ、日常に大きな支障なく過ごせる方がほとんどです。結果を前向きな手がかりとして、自分に合った付き合い方を見つけていきましょう。気になる症状が続くときは、医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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