誘発電位検査(EP検査)ってどんな検査?
概要
誘発電位検査(ゆうはつでんいけんさ)は、目・耳・手足の皮膚などを軽く刺激したときに、脳や神経を伝わっていく「小さな電気の信号」を測る検査です。電気がきちんと伝わっているか、途中で弱くなっていないかを見ることで、脳から目・耳・手足までの神経の道すじに異常がないかを調べます。頭や皮膚に電極(でんきょく=小さな金属のシールのようなもの)を貼って記録するだけで、針を刺したり大きな機械に入ったりする検査ではありません。ほとんどの方にとって痛みはほとんどありません。
重要な事実
- 調べたい神経の道すじに合わせて種類を選びます。目の検査(視覚)、耳の検査(聴覚)、手足の感覚の検査(体性感覚)、脳から筋肉への指令の検査(運動)などがあります。
- 痛みはほとんどなく、ふつうは30分から1時間半ほどで終わります。終わったらそのまま帰れることが多い検査です。
- 結果はその日のうちに出ないことが多く、数日から1週間ほどかかることがあります。結果は担当医から説明を受けます。
特別な検査ではありますが、神経内科などでよく行われています。多発性硬化症(はんのうせいこうかしょう=神経の炎症が繰り返し起こる病気)が疑われるときや、原因のわからない視力・聴力の低下、しびれがあるときなどに使われます。
年齢を問わず受けられる検査です。赤ちゃんから高齢の方まで行われます。目のかすみ、聞こえにくさ、手足のしびれ、力が入りにくさ、めまいなどの原因を調べたいときに検討されます。
症状
- 突然、片方の目が見えなくなった、視野が半分欠けた
- 顔の片側がたるむ、腕や脚の片側に力が入らない
- ろれつが回らない、言葉が出てこない、人の言うことが理解できない
- 突然の激しい頭痛、けいれん、意識がぼんやりする
- ⚠数日のうちに視力や聴力がはっきり悪くなった
- ⚠しびれや力の入りにくさが急に広がってきた
- ⚠検査のあと、電極を貼った場所が強く赤く腫れてかゆい・痛い
一般的な症状
- 片方の目が見えにくい、視野が欠けた感じがする
- 聞こえにくい、耳鳴りが続く
- 手足のしびれ、感覚がにぶい、触られてもわかりにくい
- 力が入りにくい、歩きにくい、つまずきやすい
- めまい、ふらつき
- 顔の片側が動かしにくい、まぶたが下がる
子供の症状
- 聞こえの確認(聴覚の検査)として、新生児期や乳幼児期に行われることがあります
- じっとしていられない場合は、眠っている間や、医師の判断で軽く眠る薬を使って行うことがあります
- 泣いたり動いたりすると記録が乱れるため、検査前の授乳や睡眠の調整を看護師が案内します
- 言葉の遅れや発達の気がかりの原因を調べる手がかりになることがあります
高齢者の症状
- 加齢による聴力・視力の低下と、神経の病気による変化を区別するために行われます
- 白内障や耳あかなど、別の原因がないかを先に確認することがあります
- 持病の薬や検査当日の体調は、必ず医師に伝えてください
- 長時間同じ姿勢でいるのがつらい場合は、事前に相談しておくと安心です
原因
主な原因
- この検査は「病気の原因」ではなく、症状の原因を調べるために行います
- 視神経の炎症(視神経炎)が疑われるとき
- 多発性硬化症など、神経の炎症が起こる病気が疑われるとき
- 聴神経の腫瘍や、聞こえの神経の障害が疑われるとき
- 脊髄(せきずい=背骨の中を通る神経の束)や末梢神経の障害が疑われるとき
- 頭や脊髄のけがのあと、神経の伝わり方を確認したいとき
- 新生児の聞こえの再検査が必要なとき
リスク要因
- 原因のわからない視力・聴力の変化が続いている
- しびれや感覚の異常が繰り返す
- 神経の病気を指摘されたことがある、または家族にいる
- 糖尿病やビタミン不足など、神経に影響する病気がある
- 頭や首、背中にけがをしたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の視力低下、片側の麻痺、ろれつが回らない → ためらわず119番に電話してください
- 急に聞こえが悪くなった(突然の難聴は、早く受診するほど回復しやすいといわれます)
- しびれや力の入りにくさが、数日のうちに広がってきた
- 検査後に体調が急に悪くなった、息苦しい、意識がはっきりしない
定期受診を予約すべき場合:
- しびれや感覚の異常が続いている
- 聞こえにくさや耳鳴りが続いている
- 目のかすみが続く、視野が欠ける感じがする
- めまいやふらつきを繰り返す
- 医師に誘発電位検査をすすめられた、または結果の説明を受けたい
診断
診断は、問診(症状の出方や経過を聞くこと)と、神経の診察(反射・感覚・筋力の確認)から始まります。そのうえで、必要に応じて誘発電位検査やMRIなどの画像検査を組み合わせて、原因を絞り込んでいきます。誘発電位検査は、画像ではわかりにくい「神経の伝わり方の異常」を見つけるのに役立ちます。
行われる可能性のある検査
- 視覚誘発電位(VEP):市松模様の画面を見ているときの、脳の後ろ側の反応を記録します
- 聴性脳幹反応(ABR):ヘッドホンで音を聞いているときの、脳に伝わる反応を記録します
- 体性感覚誘発電位(SEP):手首や足首に弱い電気刺激を加え、脳まで伝わる様子を記録します
- 運動誘発電位(MEP):磁気で脳の表面を軽く刺激し、筋肉に届く指令の伝わり方を見ます(頭に軽くコツッとした感じがあります)
- 網膜電図(ERG):目の網膜(もうまく=光を感じる膜)の反応を調べます
- 必要に応じてMRIや血液検査などを組み合わせます
診察で予想されること
検査の前日は髪をよく洗い、整髪料・ヘアオイル・ジェルは使わないでください(電極が貼りにくくなります)。検査室は静かで少し暗いことが多く、椅子に座るか、ベッドに横になります。頭や皮膚に電極を貼り、刺激に反応する小さな信号をコンピューターで記録します。痛みはほとんどなく、途中で眠ってしまってもかまいません。終わったら電極をはがし、そのまま帰れます。眠る薬を使った場合は、当日の車の運転や危険を伴う作業は控えてください。
治療
誘発電位検査は、治療ではなく「調べる」ための検査です。検査を受けたこと自体で体に変化が起きるわけではありません。結果は、症状の原因を絞り込んだり、これからの治療や経過観察の方針を決めたりする材料になります。
自宅でのセルフケア
- 検査前日は髪をよく洗い、整髪料やヘアオイル、ジェルを使わない
- 検査当日は、首や頭のアクセサリーを外しておく
- コーヒー・お茶・エナジードリンクなどカフェインを含む飲み物は、検査の数時間前から控えるよう案内されることがあります
- いつも飲んでいる薬は、自己判断でやめずに、医師や薬剤師に相談する
- 検査中は力を抜いてリラックスする。まばたきを減らす必要があるときは、検査者が声をかけてくれます
- 眠る薬を使った日は、車の運転や危険な作業を避ける
- 結果を聞く前に、気になることや聞きたいことをメモしておく
医療治療
検査の結果に応じて、担当医が治療の方針を決めます。たとえば、神経の炎症が疑われる場合には炎症をしずめる治療、ビタミン不足が関係する場合にはその補正、耳や目の病気が見つかった場合にはそれぞれの専門科での治療などが検討されます。どの選択肢が合うかは人によって異なるため、必ず担当医と相談して決めてください。
手術が検討される場合
検査や画像検査で腫瘍や構造的な問題(例:聴神経の腫瘍、脊柱管の狭窄など)が見つかった場合には、手術が選択肢になることがあります。ただし多くは、まず詳しい検査で状態を確かめ、手術が必要かどうかは専門の医師とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
検査自体は短時間で終わり、ふだんの生活にすぐ戻れます。電極を貼った跡が少し赤くなることがありますが、多くの場合数時間から半日ほどで目立たなくなります。結果を待つ間は、症状が出た日時や状況をメモしておくと、診察のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 症状が出たときの時刻・場所・きっかけを簡単に記録する
- 睡眠をしっかりとり、無理な疲れをためない
- 禁煙を心がける(神経と血管の健康のため)
- 適度な運動と、バランスのよい食事を続ける
- 強いストレスが続くときは、早めに誰かに話す
食事と運動
特定の食べ物が検査結果を変えることはありません。検査の日は、ふだん通りの食事でかまいません(ただし、眠る薬を使う場合の飲食の指示には従ってください)。ふだんから、塩分や糖分をとりすぎない食事、無理のない範囲の散歩やストレッチが、神経と血管の健康を保つ助けになります。
精神的健康と心の健康
結果を待つ間は、誰でも不安になりやすいものです。眠れない、涙が出る、考えごとが止まらないといったときは、一人で抱え込まないでください。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいてきたときは、ためらわずに医療機関や地域の相談窓口(保健所・精神保健福祉センターなど)、または救急(119)に連絡してください。
予防
誘発電位検査そのものは、必要に応じて行う検査なので「予防する」という考え方は当てはまりません。ただし、この検査で見つかる病気の中には、血圧や血糖を整える、禁煙する、適正体重を保つといった生活習慣の見直しでリスクを下げられるものもあります。
検診プログラム
日本では、生まれたばかりの赤ちゃんを対象にした新生児聴覚スクリーニング検査が行われており、再検査として聴性脳幹反応(ABR)が使われることがあります。成人でも、気になる症状がある場合は早めの受診が大切です。
合併症
治療しない場合
- 検査を受けないこと自体が体を傷つけるわけではありません
- 原因がわからないままだと、必要な治療が始まるのが遅れることがあります
- 症状が続くことで、日常生活に不便や不安が長引くことがあります
- 見逃された病気があると、後になって治療が難しくなる場合があります
長期的な見通し
誘発電位検査は体への負担が少なく、多くの場合その日のうちに帰れる検査です。結果をもとに、必要な治療や経過観察を早めに始められます。結果が異常なしであれば安心につながりますし、異常が見つかっても、それは早く対応できるチャンスでもあります。多くの方にとって、原因をはっきりさせるための心強い一歩になる検査です。
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最終更新: 2026年11月3日
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