腰椎穿刺(ようついせんし)・脊椎穿刺(せきついせんし)ってどんな検査?
概要
腰椎穿刺(ようついせんし)は、背中の下のほう(腰のあたり)から細い針を入れて、脳と脊髄(せきずい=背骨の中を通る神経の太い束)を包んでいる「脳脊髄液(のうせきずいえき)」という透明な液体を、ほんの少しだけ採る検査です。「脊椎穿刺(せきついせんし)」や英語で「スパイナルタップ」と呼ばれることもあります。この液体を調べると、髄膜炎(ずいまくえん=脳と脊髄を包む膜の炎症)や、くも膜下出血(くもまくかしゅっけつ=脳の表面の血管が切れて出血する病気)、神経の免疫の病気などがないかを確かめられます。採る量は小さじ1〜2杯ほどで、この液体は体の中で毎日新しく作られ続けているため、採っても体に大きな影響はありません。診断のためだけでなく、治療のための薬を入れる目的で行われることもあります。
重要な事実
- 腰の骨のすき間から細い針を入れて、脳脊髄液を少量採って調べる検査です。処置そのものにかかる時間はふつう10〜20分ほどです。
- 針を刺す前に局所麻酔(きょくしょますい=その部分だけをしびれさせる麻酔)を使うので、痛みは軽くすみます。処置中は横向きに丸まるか、座って前かがみの姿勢になります。
- 終わったあとはしばらく横になって休みます。数日ほど頭痛が起きることがありますが、多くは自然に治まります。
珍しい検査ではありません。病院では日常的に行われている基本的な検査のひとつで、髄膜炎が疑われるときや神経の病気を調べるときなど、必要な場面で行われます。
症状
- 高い熱と首の硬さがあり、意識がもうろうとしている、または呼びかけへの反応が弱い(ためらわず119番に電話してください)
- けいれんが続く、または意識を失った(119番)
- 今までに経験したことのない、突然のはげしい頭痛(119番)
- ろれつが回らない、手足に力が入らない、まっすぐ歩けない(119番)
- 息が苦しい、唇や顔色が青白い(119番)
- 皮膚に紫色の点状のあざが広がっている(119番)
- ⚠発熱とはげしい頭痛が続く
- ⚠光がとてもまぶしい、首が痛くて動かせない
- ⚠腰椎穿刺のあとに発熱が出た、針を刺した部分が赤く腫れたり膿(うみ)が出たりしている
- ⚠処置のあと、脚のしびれや力の入りにくさがある、尿が出にくい
- ⚠立ち上がると強くなる頭痛が1週間以上続く
一般的な症状
- この検査が行われるきっかけになることが多い症状:38℃以上の発熱、はげしい頭痛、首が硬くて前にかがめない、吐き気や嘔吐、光がまぶしく感じる
- 処置中に感じること:腰に少し圧迫される感じや、チクッとする痛み。多くは数秒から数十秒で終わります。
- 処置のあとに起きること:針を刺した部分の軽い痛みやだるさ、腰を曲げにくい感じ
- 穿刺後頭痛(せんしごずつう):立ち上がると強くなり、横になると軽くなる頭痛。数日で治まることが多いです。
子供の症状
- 赤ちゃんや小さな子どもでは、症状がはっきり出ないことがあります
- ぐったりしている、元気がない、飲み(哺乳)が悪い、泣き方が弱い
- ひきつけ(けいれん)や体のこわばり
- 大泉門(だいせんもん=頭のてっぺんのやわらかい部分)がふくらんでいる
- 処置は小児科医が子どもの体の大きさに合わせた方法で行い、必要に応じて痛みをやわらげる工夫をします
高齢者の症状
- 高齢の方では、発熱や首の硬さが目立たないことがあります
- なんとなく元気がない、食欲がない、ぼんやりしている、話がかみ合わないといった変化もサインになります
- 血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合は、必ず事前に医師に伝えてください
- 腰の骨の变形(へんけい)や手術の経験があると、針を入れる位置が分かりにくくなることがあります
原因
主な原因
- この検査は「原因を調べるための検査」なので、原因というより「なぜ行うか(目的)」で整理すると分かりやすいです
- 髄膜炎や脳炎など、脳と脊髄を包む膜の感染症が疑われるとき
- くも膜下出血が疑われるものの、CT検査だけでは判断しにくいとき
- 多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)やギラン・バレー症候群など、神経の免疫の病気が疑われるとき
- がんが脳脊髄液の中に広がっていないかを確かめたいとき
- 脳脊髄液の圧を測りたいとき、または治療のための薬を直接この液体の中に入れたいとき
リスク要因
- 血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を飲んでいる、または最近飲んだ
- 出血しやすい体質、血小板が少ないと言われたことがある
- 脳の圧が高くなっている疑いがある(頭蓋内圧亢進=頭の中の圧が高い状態)
- 背中に感染や傷、やけどがある
- 脊椎の手術を受けたことがある、背骨が变形している
- 肥満などで骨の位置が触れにくい
- 処置のあと十分に横にならず、早く動き出した(穿刺後頭痛のリスクが上がります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 高熱・はげしい頭痛・首の硬さが同時にある
- 意識がぼんやりする、会話がかみ合わない
- 腰椎穿刺のあとに38℃以上の発熱が出た
- 針を刺した部分が赤く腫れて痛みが強くなる、膿が出る
- 脚のしびれ、力が入らない、歩きにくい、尿が出にくい
- 処置のあとの頭痛が強くて起き上がれない、1週間以上続く
定期受診を予約すべき場合:
- 処置のあと腰に痛みや違和感が続く
- 頭痛は軽いが、数日たってもすっきりしない
- 検査結果の説明を受けていない、または内容をもう一度確認したい
- 処置のあとの過ごし方(仕事・運動・入浴など)について確認したい
診断
腰椎穿刺は、診断のための検査のひとつです。まず問診と診察(症状の経過、首の硬さ、意識の状態などを確認)を行い、必要に応じて画像検査や血液検査をします。そのうえで「この液体を調べる必要がある」と医師が判断したときに腰椎穿刺が行われます。腰椎穿刺の前にCTやMRIで脳の状態を確認することが多く、頭の中の圧が高い場合には検査を中止したり方法を変えたりします。
行われる可能性のある検査
- 問診・診察(症状の経過、首の硬さ、意識の状態、飲んでいる薬の確認)
- 頭部CT検査・MRI検査(脳の腫れや出血、圧が高くないかを確認)
- 血液検査(炎症の値、血小板の数、出血しやすさの確認など)
- 腰椎穿刺による髄液検査:細胞の数、たんぱく質、糖の値、細菌やウイルスの有無(培養検査やPCR検査)、圧の測定
- 必要に応じて、神経の電気的な働きを調べる検査や目の検査など
診察で予想されること
多くはベッドの上で横向きに丸まっていただくか、座って前かがみになっていただき、腰の部分を消毒して局所麻酔をします。針を入れて液体を少量採り、必要なら圧を測ります。処置は10〜20分ほどで、その間は看護師がそばで支えます。終わったあとは1〜数時間ほど横になって休みます。細胞の数などは比較的早く結果が出ますが、細菌を育てる培養検査は数日かかることがあります。
治療
腰椎穿刺は主に「調べる」ための検査で、それ自体が病気を治す治療ではありません。結果に応じて、その後の治療の方針が決まります。ただし、治療のための薬をこの液体の中に直接入れる目的で行われることもあります。結果が出るまでの間も、症状に応じた対応が行われます。
自宅でのセルフケア
- 処置のあとは、医師や看護師の指示に従ってしばらく横になって休む
- 水分をしっかりとる(コーヒーやお茶などカフェインの多い飲み物は控えめにするとよいといわれます)
- 頭痛があるときは横になって休む。立ち上がると悪化するタイプの頭痛は安静で軽くなることが多いです
- 処置の当日は激しい運動、重いものを持つこと、長時間の入浴やサウナは控える
- 針を刺した部分は清潔に保ち、こすったりかいたりしない
- 車の運転や危険を伴う作業は、気分がしっかり戻ってからにする
- 気になる症状があれば、自己判断でがまんせず医療機関に連絡する
医療治療
腰椎穿刺の結果に応じて、治療の方針が決まります。感染症が見つかれば原因に合わせた治療が、免疫の病気が見つかれば免疫の働きを調整する治療が、それぞれ医師の判断で行われます。治療の内容や期間は、病気の種類や体の状態によって大きく異なるため、担当の医師から詳しい説明を受け、分からないことは質問してください。処置後の頭痛が強い場合には、安静や水分、必要に応じた医療的な対応が検討されます。
手術が検討される場合
腰椎穿刺そのものは手術ではありません。ただし、背骨の变形などで通常の方法では位置が分かりにくい場合に、画像で位置を確認しながら行うことがあります。また、検査で見つかった病気によっては、あらためて手術を含む治療が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
腰椎穿刺を受けたあとは、ふつう数日で日常の生活に戻れます。当日から翌日は無理をせず、頭痛やだるさがあれば横になって休みましょう。仕事や学校に戻るタイミングは、体調を見ながら、必要なら医師に相談して決めると安心です。
生活習慣のアドバイス
- 処置のあと1〜2日は、十分な睡眠と水分を心がける
- 頭痛が残っている間は、急に立ち上がらず、ゆっくり動く
- 飲んでいる薬(特に血液を固まりにくくする薬)は、自己判断で中止せず必ず医師に相談する
- 処置の部位を清潔に保ち、入浴は医師の指示に従う
- 発熱や腰の腫れなど、気になる変化があれば早めに医療機関に相談する
食事と運動
特別な食事制限は必要ありません。バランスのよい食事と水分をとり、処置の当日は激しい運動を控えます。頭痛やだるさが治まってきたら、散歩など軽い活動から少しずつ再開してかまいません。運動を本格的に再開する時期は、症状の経過を見て医師に確認すると安心です。
精神的健康と心の健康
「背中に針を刺す」と聞くと、こわい、不安だと感じるのは自然なことです。検査の必要性や流れ、痛みの程度について事前に説明を受けると、気持ちが落ち着きやすくなります。結果を待つ間は落ち着かないこともあるかもしれません。眠れないほど不安が強いときや、気持ちが晴れない日が続くときは、がまんせず医療者や身近な人に話してください。つらさが強い場合には、地域の相談窓口や医療機関の相談室を利用することもできます。
予防
腰椎穿刺そのものは「必要なときに受ける検査」なので、防ぐという性質のものではありません。ただし、合併症を減らすための工夫はあります。事前にCTやMRIで脳の状態を確認すること、飲んでいる薬(特に血液を固まりにくくする薬)を医師に正確に伝えること、処置後に指示どおり安静にすることが大切です。
ワクチン
この検査が必要になる原因のひとつである細菌性髄膜炎には、ワクチンで予防できるものがあります。日本ではHibワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンが定期接種の対象になっています。年齢や体の状態によって受けられるワクチンは異なるため、かかりつけ医や自治体の案内で確認してください。
検診プログラム
腰椎穿刺にあたる「スクリーニング検査」はありません。症状があるときや、医師が必要と判断したときに行われる検査です。
合併症
治療しない場合
- 検査を受けないことで、髄膜炎やくも膜下出血などの原因が分からず、治療が遅れる可能性があります
- 腰椎穿刺自体の合併症としては、穿刺後頭痛(立ち上がると強くなり、横になると軽くなる頭痛)が最もよくみられます
- 針を刺した部分の痛みや、まれに内出血、感染
- まれに、脳の圧が高い状態で行われた場合に危険な合併症が起きることがあるため、事前の画像確認が大切です
- 脚のしびれや排尿のトラブルなど、神経に関わる症状が起きることはごくまれです
長期的な見通し
腰椎穿刺は長い歴史のある、確立された検査です。多くの方は大きな問題なく終えられ、処置後の頭痛も数日で自然に治まります。検査で原因が分かれば、それに合った治療を早く始められます。気になる症状や不安があれば、早めに医療者に伝えることが、安心につながります。
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最終更新: 2026年11月3日
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