肛門直腸内圧検査ってどんな検査?
概要
肛門直腸内圧検査(こうもんちょくちょうないあつけんさ)は、肛門と直腸(ちょくちょう=大腸のいちばん出口に近い部分)の働きを調べる検査です。肛門の筋肉がどれくらいきちんと締まっているか、便が入ってきたときに腸がちゃんと反応しているか、排便のときに筋肉がうまくゆるむか、といったことを数値で確かめます。細くてやわらかい管(カテーテル)を肛門から少量だけ入れ、その先の小さな風船やセンサーで圧力や感覚を測ります。治療ではなく「今の状態を知るための検査」です。
重要な事実
- 肛門と直腸の筋肉の働きや感覚を、数値で客観的に調べる検査です。
- 検査時間はふつう15〜30分ほどで、日帰りで行えます。
- 便失禁(べんしっきん=便が意思と関係なく漏れてしまうこと)や慢性の便秘、排便困難の原因を探すのに役立ちます。
- 結果をもとに、骨盤底筋(こつばんていきん=肛門や尿道を支える筋肉)の訓練や生活の工夫など、その人に合った方法を選んでいきます。
特別めずらしい検査ではなく、消化器内科や肛門科、小児外科などで必要に応じて行われています。便失禁や便秘で悩む人が受けることの多い、標準的な検査のひとつです。
便が漏れてしまう、便秘が長く続く、いきんでも便が出にくい、便やおならの感覚がわかりにくい、といった悩みがある人に行われます。小児では、生まれた直後から便秘が続く場合などに調べることがあります。高齢者では、筋肉や感覚の変化により便失禁が起きやすくなることがあります。
症状
- 大量の血便が出て止まらない、または便器が真っ赤になるほどの出血がある
- 意識がもうろうとしている、顔色が青白く汗が止まらない
- おなかが板のように硬く、激しい痛みで動けない
- 高熱と激しい腹痛が同時にあり、ぐったりしている
- ⚠数日間便が出ず、腹痛・おう吐・おなかの張りが強い
- ⚠便失禁が急に始まり、自分ではコントロールできない
- ⚠発熱をともなう肛門まわりの強い痛みや腫れ
- ⚠便に血が混じる状態が続き、量が増えてきた
一般的な症状
- 便が意思と関係なく漏れてしまう(便失禁)
- 長く続く便秘、または便秘と下痢をくり返す
- 強くいきんでも便が出にくい、出すのに時間がかかる
- 便意(べんい=便が来たという感覚)がわかりにくい
- おならが止められない、漏れてしまう
- 排便のあとに、まだ出ていないような残った感じが続く
- トイレで長時間かかる、手でおなかや肛門のあたりを押さないと出ない
子供の症状
- 生まれて48時間以内に胎便(たいべん=最初の黒っぽい便)が出ない
- 赤ちゃんのころから便秘が続き、おなかが張る
- 成長に合わせて便の回数が増えない、体重が増えにくい
- トイレトレーニングの時期になっても便の感覚がつかみにくい
- 便が漏れて下着が汚れることが続く
高齢者の症状
- 以前より便が漏れやすくなった
- トイレに間に合わないことが増えた
- 便意を感じにくくなった
- 便秘と下痢をくり返し、おなかの張りが続く
- 排尿や歩行の変化と一緒に、肛門まわりの悩みが出てきた
原因
主な原因
- 肛門の筋肉(括約筋=かつやくきん)や骨盤底筋の力が弱くなっている
- 排便のときに肛門の筋肉がゆるまず、うまく力が抜けない(排便協調不全)
- 直腸の感覚が鈍くなり、便が来たことがわかりにくい
- 直腸や肛門の手術、出産、けがなどで筋肉や神経が影響を受けた
- 神経の病気や、長く続く便秘による腸の変化
- 生まれつき神経の一部が欠けている病気(ヒルシュスプルング病)が疑われる場合
リスク要因
- 出産(特に難産や鉗子・吸引分娩の経験)
- 加齢による筋力や神経の変化
- 長く続く便秘、硬い便、強いいきみの習慣
- 糖尿病や神経に関わる病気の既往
- 肛門・直腸の手術や放射線治療の経験
- 長時間すわる生活、運動不足、水分や食物繊維の不足
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 大量の出血、激しい腹痛、高熱があるときは、すぐに救急外来を受診してください
- 便失禁が急に始まった、排尿にも変化が出たという場合は、早めに医療機関へ
- 数日排便がなく、おう吐や強い張りがあるとき
定期受診を予約すべき場合:
- 便が漏れることが時々ある、便秘が長く続く、いきんでも出にくい、といった悩みが数週間以上続くときは、消化器内科や肛門科、かかりつけ医に相談してください
- 検査は恥ずかしいと感じるかもしれませんが、よくある悩みです。話しにくいときは「おなかとトイレのことで相談したい」と伝えるだけで大丈夫です
診断
まず問診で、排便の回数や便の硬さ、漏れてしまう状況、生活習慣などをくわしくうかがいます。そのうえで肛門まわりを診察し、必要に応じて肛門直腸内圧検査を行います。検査では、細い管を肛門から入れ、安静時の締まり具合、力を入れたときの締まり具合、直腸に空気や水を入れたときの感覚、排便のときに筋肉がゆるむかどうかなどを調べます。結果はその場で説明を受け、今後の方針を一緒に考えます。
行われる可能性のある検査
- 問診(排便の記録や生活習慣の聞き取り)
- 肛門まわりの診察(直腸診)
- 肛門直腸内圧検査(本題の検査)
- バルーン追い出し試験(小さな風船を排便するように出す検査)
- 直腸の感覚・柔らかさをみる検査
- 必要に応じて大腸内視鏡検査や画像検査、超音波検査
診察で予想されること
検査の前には、腸の中をきれいにするため、浣腸(かんちょう)や軽い下剤を使うことがあります。検査着に着替え、横向きに寝た姿勢で行います。細くてやわらかい管を使うため、痛みは軽いことがほとんどですが、違和感や軽い張りを感じることはあります。検査中は「息を吸って、おなかに力を入れてみてください」「排便するようにいきんでみてください」など、声をかけてもらいながら進みます。15〜30分ほどで終わり、終わったあとはふつうに過ごせます。恥ずかしさを感じるかもしれませんが、スタッフは慣れています。カーテンやタオルで配慮してもらえることも多いので、不安なことは事前に伝えてください。
治療
肛門直腸内圧検査はあくまで「調べる検査」で、それ自体が治療になるわけではありません。結果からわかった原因に合わせて、生活の工夫、筋力の訓練、必要に応じて薬や手術などを組み合わせていきます。多くの場合、まずは体に負担の少ない方法から始めます。
自宅でのセルフケア
- 毎日決まった時間にトイレに行き、排便のリズムをつくる
- いきみすぎず、ゆったりとした姿勢で排便する(足台を使うと楽なこともあります)
- 食物繊維と水分を十分にとり、便の硬さを整える
- 骨盤底筋体操(肛門をぎゅっと締めてゆるめる運動)を毎日続ける
- 漏れてしまう不安があるときは、あらかじめ準備をしておくと安心です
- 排便の記録をつけると、受診のときに役立ちます
医療治療
原因に応じて、いくつかの方法を組み合わせます。排便のときに肛門の筋肉をうまくゆるめられない場合には、バイオフィードバック療法(機械の画面を見ながら、力の入れ方・抜き方を練習する方法)が役立ちます。便の硬さを整える薬や、腸の動きを助ける薬が使われることもあります。肛門の筋肉の弱さが原因の場合は、骨盤底筋の訓練や、必要に応じて専門的な治療が検討されます。どの方法が合うかは人によって違うため、医師や看護師、理学療法士と相談しながら進めていきます。
手術が検討される場合
生活の工夫や訓練などの治療を続けても症状が強く、日常生活に大きく影響する場合には、手術が検討されることがあります。たとえば、肛門の筋肉の損傷がはっきりしている場合や、直腸脱(直腸が肛門から出てくる状態)がある場合などです。手術がいつも必要というわけではなく、多くはまず保存的な方法から始めます。手術の適応や方法は、専門の医療機関でよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
便やトイレのことが気になると、外出や人づきあいを控えたくなることがあります。ただ、工夫次第で過ごしやすくなることは多くあります。トイレの場所を確認してから出かける、着替えを用意しておく、食事の時間を整えるなど、小さな準備が安心につながります。
生活習慣のアドバイス
- 朝の排便の時間を決めて、生活のリズムを整える
- 長時間すわり続けるときは、ときどき立って体を動かす
- トイレを我慢しすぎない
- ストレスや睡眠不足は腸の動きに影響することがあるので、休む時間を意識してつくる
- 体重管理と適度な運動を続ける
食事と運動
食物繊維(野菜、きのこ、海藻、豆類、全粒穀物など)と水分を毎日しっかりとりましょう。便が硬すぎても軟らかすぎても排便はうまくいきません。適度なウォーキングや、骨盤底筋を意識した体操は、肛門まわりの筋肉を保つ助けになります。一度にたくさん変えるのではなく、できそうなことから少しずつ続けるのがコツです。
精神的健康と心の健康
排便や失禁の悩みは、人に話しにくく、一人で抱え込みやすいものです。恥ずかしさや不安から気分が落ち込んだり、外出がおっくうになったりすることがあります。これは珍しいことではありません。つらい気持ちが続くときは、医療者に話してみてください。必要に応じて心のケアの相談先を紹介してもらえます。気持ちが非常に追い詰められているときは、地域の相談窓口や、かかりつけ医に早めに連絡してください。緊急の場合は119番に電話してください。
予防
この検査自体を予防するという考え方はありません。ただし、便失禁や慢性便秘といった、検査が必要になる背景の悩みは、生活の工夫である程度やわらげられることがあります。
検診プログラム
便秘や便失禁が続くときは、年齢にかかわらず早めに相談することが大切です。また、日本では大腸がん検診(便潜血検査)が公的な健診として行われています。便の異常が続く場合は、検診の結果とあわせて医療機関に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 便失禁が続くことで、外出や人づきあいが減り、生活の範囲が狭くなることがある
- 便秘が悪化し、おなかの張りや痛み、食欲低下につながることがある
- 肛門まわりの皮膚が荒れ、かぶれや痛みが起きることがある
- 排便の悩みが長引き、気分の落ち込みや不安が強くなることがある
- まれに、便がたまりすぎて腸が詰まる状態になることがある
長期的な見通し
肛門直腸内圧検査で状態をきちんと知ることは、より良い方向へ進む第一歩です。原因によっては、訓練や生活の工夫で症状が大きく改善する人も多くいます。すぐに変化が出なくても、あせらず続けることが大切です。気になることは、遠慮なく医療者に相談しながら、自分に合った方法を一緒に見つけていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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