前立腺の超音波検査と針生検
概要
前立腺は、男性だけにある栗の実くらいの大きさの臓器で、膀胱(尿をためる袋)のすぐ下にあり、尿の通り道である尿道を取り囲んでいます。年を重ねると大きくなることがあります。超音波検査(エコー)は、超音波という音の波を使って前立腺の大きさ・形・内部の様子を画像で見る検査です。針生検(はりせいけん)は、超音波の画像で場所を確かめながら細い針を前立腺に刺し、組織をほんの少しだけ採取して、顕微鏡でがんなどの細胞がないかを調べる検査です。体の外からでは分からない変化を確かめるために行われます。
重要な事実
- 超音波検査は痛みがほとんどなく、10〜20分ほどで終わります。
- 針生検は日帰りで行われることが多く、局所麻酔(その部分だけを麻痺させる麻酔)を使う場合もあります。
- 生検のあとは数日間、尿や精液、便に血が混じることがありますが、多くは自然に治まります。
はい、よく行われます。PSA(ピーエスエー、前立腺から出るたんぱく質を測る血液検査)の値が高いときや、排尿の困りごとが続くとき、前立腺がんが疑われるときなどに、泌尿器科で行われる一般的な検査です。
症状
- 尿がまったく出ず、下腹部が張って激しく痛む(尿閉の可能性)
- 38℃以上の高熱と寒気、腰や会陰部(肛門と陰嚢の間)の強い痛みが急に出た
- 大量の血尿が続き、血の塊が出る、または気分が悪くなる・意識がぼんやりする
- 生検のあとに38℃以上の発熱や悪寒、止まらない出血がある
- ⚠排尿時の痛みや灼熱感が続く
- ⚠血尿が1週間以上続く、または濃くなる
- ⚠生検のあと、痛みが強くなる、腫れる、赤くなる
- ⚠尿が出しにくい、残尿感が強い状態が続く
一般的な症状
- 尿の出が弱い、途中で途切れる
- トイレが近い(頻尿)、夜中に何度も起きて尿に行く
- 尿が出始めるまでに時間がかかる、尿が残った感じがする
- 尿に血が混じる
- 骨盤や腰、背中に痛みがある
- 症状はまったくないが、健診のPSA検査で値が高いと指摘された
子供の症状
- 小児にはほとんど行いません。前立腺の病気は子どもでは非常にまれだからです。
- 子どもの排尿の困りごとは別の原因が多いため、小児科や泌尿器科に相談してください。
高齢者の症状
- 年を重ねると前立腺は大きくなりやすく、排尿の症状が出やすくなります。
- 前立腺がんのリスクも上がるため、検査を受ける機会が増えます。
- 血液を固まりにくくする薬などを持病で使っている場合は、検査の前に必ず医師・薬剤師に伝えてください。
原因
主な原因
- PSAの血液検査の値が高い
- 排尿の症状が続き、前立腺肥大症(前立腺が大きくなって尿の通り道を狭くする状態)が疑われる
- 直腸診(肛門から指を入れて前立腺の硬さを触る診察)で、硬い部分やしこりが触れる
- 前立腺炎(前立腺に炎症が起きる状態)の症状が続く
- 前立腺がんの治療後の経過観察が必要
リスク要因
- 50歳以上の年齢(リスクは年齢とともに上がります)
- 家族(父や兄弟)に前立腺がんの人がいる
- 肥満や喫煙などの生活習慣
- 長く続く排尿の困りごと
- PSA値が以前から高め、または上がり続けている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿がまったく出ない、下腹部が張って痛い
- 発熱と寒気、会陰部や腰の強い痛みがある
- 血尿が続き、血の塊が出る
- 生検のあとに高熱や止まらない出血がある
定期受診を予約すべき場合:
- 尿の出が弱い、頻尿、夜間頻尿などの症状が続いている
- 健診や人間ドックでPSA値が高いと指摘された
- 家族に前立腺がんの人がいて、自分も検査を考えたい
- 前立腺の治療中で、症状の変化が気になる
診断
まず問診と尿検査、PSAの血液検査、直腸診(肛門から指で前立腺の硬さや大きさを触る診察)を行います。そのうえで超音波検査で前立腺の様子を見て、必要があれば針生検で組織を採って顕微鏡で調べます。MRI(磁気共鳴画像)を使うこともあります。これらを組み合わせて、良性かどうか、炎症かどうかを判断します。
行われる可能性のある検査
- 問診(排尿の症状、これまでの病気、家族歴、飲んでいる薬の確認)
- 尿検査(感染や血尿の確認)
- PSA血液検査
- 直腸診(肛門から指で触れる診察)
- 前立腺の超音波検査(エコー)
- 前立腺針生検(超音波で場所を確かめながら組織を採取)
- 必要に応じてMRI検査や尿流量測定
診察で予想されること
生検は、検査着に着替えて横向きかうつ伏せになり、超音波の器械を直腸に入れて行う方法(経直腸法)か、会陰(肛門と陰嚢の間)から針を刺す方法で行われます。所要時間は10〜20分ほどで、圧迫感や軽い痛みを感じることがあります。局所麻酔を使うこともあります。終わったあとは少し休んで帰宅でき、結果は数日から2週間ほどで分かることが多いです。検査の前には、食事や飲んでいる薬についての指示が出ますので、必ず確認してください。
治療
超音波検査と針生検は「診断のための検査」であり、それ自体が病気を治す治療ではありません。結果をもとに、経過を見るのか、治療を始めるのかを医師と相談して決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 検査前に渡された指示(食事、飲んでいる薬の扱い、検査当日の過ごし方)を守る
- 検査後は水分を多めにとり、尿を我慢しすぎない
- 1〜2日は激しい運動、重いものを持つこと、自転車やバイクに乗ることを控える
- 性行為は医師の指示に従い、数日控える
- 尿・精液・便に血が混じっても、多くは数日から1週間ほどで薄くなります。落ち着いて様子を見てください
- 発熱、強い痛み、止まらない出血があれば、自己判断せず医療機関に連絡する
医療治療
結果によって方針が変わります。良性の前立腺肥大症であれば、生活の工夫や経過観察、必要に応じて薬による治療や手術が検討されます。前立腺炎であれば炎症を抑える治療が行われます。前立腺がんであれば、年齢や進行の程度、生活の状況をふまえて、監視療法(定期的に経過を見る方法)、手術、放射線などの選択肢が話し合われます。具体的な薬の種類や量は、必ず担当の医師が決めます。
手術が検討される場合
前立腺肥大症で尿の流れが大きく妨げられている場合や、尿閉を繰り返す場合、前立腺がんで手術が適していると判断された場合に、手術が検討されます。手術の必要性や方法は、検査結果と体の状態をふまえて医師と相談して決めます。
この病気と共に生きる
生検のあとは、多くは翌日から普段どおりの生活ができます。ただし数日は下半身に負担をかける行動を控えめにし、出血の様子を見てください。結果を待つ間は不安な気持ちになりやすいので、一人で抱え込まず、家族や医療者に話してみてください。
生活習慣のアドバイス
- 水分はこまめにとり、夕方以降のカフェインやアルコールは控えめにする(夜間頻尿の軽減に役立つことがあります)
- 便秘を防ぐ(いきむと排尿にも負担がかかります)
- 下半身を冷やさない、長時間同じ姿勢を続けない
- 検査後しばらくは自転車やバイク、重いものを持つ動作を控える
- 排尿の回数や量を簡単に記録すると、診察のときに役立ちます
食事と運動
バランスのよい食事、減塩、適度な運動、体重管理は、前立腺だけでなく体全体の健康に役立ちます。「これを食べれば前立腺の病気が防げる」と断言できる食品は限られているため、特別な食品に頼りすぎず、無理のない範囲で続けられる習慣を選びましょう。
精神的健康と心の健康
検査を受ける前や結果を待つ間は、誰でも不安になります。眠れない、気分が落ち込む、同じことを考え続けてしまうときは、がまんせずに医療者に伝えてください。自分を傷つけたい気持ちが浮かんだときは、すぐに医療機関や地域の緊急窓口に連絡してください。日本では119番で救急の対応が受けられます。
予防
超音波検査や生検は「受けるかどうか」を決めるもので、病気そのものを予防するものではありません。ただし、禁煙、体重管理、適度な運動、バランスのよい食事といった生活習慣は、前立腺を含む体の健康を保つ助けになります。気になる症状を早めに相談することも大切です。
検診プログラム
厚生労働省の指針では、前立腺がんのPSA検査は、自治体が実施する「対策型検診」としては推奨されておらず、希望する人が医療機関で受ける「任意型検診」と位置づけられています。検査には利益だけでなく、治療しなくてもよかった変化を見つけてしまう可能性などの不利益もあります。50歳以上(家族歴がある場合は40代から)の方は、かかりつけ医や泌尿器科で、メリットとデメリットを聞いたうえで受けるかどうかを相談してみてください。
合併症
治療しない場合
- 前立腺がんだった場合、検査を受けないままでは早期に見つける機会を逃し、治療の選択肢が狭まることがあります
- 前立腺肥大症による排尿の困りごとが進み、尿が出なくなる(尿閉)や、膀胱・腎臓への負担につながることがあります
- 前立腺炎が長引くと、痛みや発熱をくり返すことがあります
長期的な見通し
前立腺の病気は良性のものが多く、治療の選択肢も豊富にあります。超音波検査と針生検は体への負担が比較的小さく、合併症も多くは軽く一時的です。結果が分かれば、次に何をすればよいかがはっきりします。心配なことは一人で抱えず、担当の医師と一緒に一歩ずつ進めていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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