腎盂鏡(ネフロスコピー)検査・手術について
概要
腎盂鏡(じんうきょう/ネフロスコピー)は、腎臓の内側を細いカメラでのぞいて調べたり、そのまま治療したりする処置です。背中側の皮膚から細い管を腎臓まで通し、腎臓の中の「尿がたまるところ(腎盂)」や石、できものを直接見ることができます。おなかを大きく切る開腹手術に比べて体への負担が少なく、入院期間も短くなる傾向があります。検査と治療を同時に行えるのが特徴です。
重要な事実
- 背中に数ミリ程度の小さな穴をあけ、細いカメラと器具を腎臓まで入れて行います。
- 主に、大きい腎臓結石を砕いて取り出したり、腎盂や尿管のできもの(腫瘍)の組織を一部取ったりするときに使われます。
- 多くの場合、全身麻酔で行い、所要時間はおおむね30分から2時間程度です。
結石の治療で広く行われる体外衝撃波結石破砕術(体の外から衝撃波を当てて石を砕く方法)に比べると、腎盂鏡はより専門的な処置です。すべての病院で行われているわけではなく、泌尿器科の専門施設で実施されます。決してめずらしい治療ではありませんが、必要かどうかは石の大きさや硬さ、位置、体の状態によって医師が判断します。
主な対象は、腎臓や尿管の上のほうに大きい結石がある方、体外衝撃波では砕きにくい硬い石がある方、尿の通り道が狭くなっている方、腎盂や尿管にできものが疑われる方です。年齢を問わず行われますが、高齢の方や心臓・腎臓・糖尿病などの持病がある方は、麻酔や術後の回復を考えて事前の準備が入念に行われます。
症状
- 腰や背中に激しい痛みがあり、冷汗、顔色が悪い、意識がぼんやりする
- 高い熱(目安として39度以上)と震えがあり、ぐったりしている(尿路感染から全身の感染症に進んだ可能性)
- 尿が全く出ない、おなかや背中が張って強い痛みがある
- 呼吸が苦しい、胸が痛い、脈が速くて動悸がする
- ⚠38度以上の発熱がある
- ⚠血尿が続く、または血のかたまりが出る
- ⚠痛みがどんどん強くなり、市販の痛み止めで楽にならない(薬の使用は医師・薬剤師に相談してください)
- ⚠嘔吐が続いて水分がとれない
一般的な症状
- 尿に血が混じる(血尿)
- 腰や背中、脇腹の片側が痛む(結石の発作では波のように強くなったり弱くなったりする)
- 尿の回数が増える、尿が出にくい、排尿時にしみる
- 発熱や寒気を伴う尿路感染の症状
- とくに症状がなく、健診の尿検査や画像検査で見つかることも多い
子供の症状
- 小児では腎盂鏡が必要になる場面は多くありません。
- 小児の結石では、痛みをうまく言葉で伝えられず、泣き続ける、元気がない、食欲がないといった形で現れることがあります。
- 小児の場合は、小児泌尿器科と麻酔科の体制が整った施設で相談することが大切です。
高齢者の症状
- 高齢の方は痛みを感じにくく、発熱やだるさだけで病気が進んでいることがあります。
- 心臓病・腎臓病・糖尿病などの持病や、血液を固まりにくくする薬を使っているかどうかを、事前に必ず医師に伝えてください。
- 術後の感染症やせん妄(一時的な意識の混乱)が起きやすく、回復に時間がかかることがあります。
原因
主な原因
- 腎臓や尿管の上のほうにできた大きい結石、硬い結石(体外衝撃波では砕きにくいもの)
- 尿の通り道(尿管)が狭くなっている状態
- 腎盂や尿管の内側にできた腫瘍が疑われる場合の検査・組織採取
- ほかの検査で原因がはっきりしない血尿の詳しい観察
リスク要因
- 結石を以前にも作ったことがある
- 水分をとる量が少ない、汗を多くかく環境にいる
- 肥満、高尿酸血症、糖尿病などの生活習慣病
- 尿路感染症をくり返している
- 家族に結石の人がいる
- 一部の代謝の病気や、長期の寝たきり状態
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱と腰の痛みが同時にある(尿路の感染が疑われます)
- 目で見てわかる血尿がある
- 尿が出にくい、尿が出ない
- 痛みが強く、日常生活がとれない
- 腎盂鏡のあとに発熱、悪寒、痛みの増悪、尿の量の減少がある
定期受診を予約すべき場合:
- 健診で尿潜血(尿に目に見えない血が混じっている状態)を指摘された
- 結石を言われたことがあり、定期的に経過を見たい
- 繰り返す腰の違和感や尿の異常がある
- 腎盂鏡のあとの経過観察の予約がある
診断
まず問診で、痛みの出方、血尿の有無、これまでの結石の経験、持病、飲んでいる薬(とくに血液を固まりにくくする薬)を確認します。次に尿検査・血液検査・画像検査を行い、腎盂鏡が必要かどうかを判断します。腎盂鏡そのものは、多くの場合、詳しい画像検査で「中を直接見たほうがよい」と判断されたときに行われ、診断と治療を兼ねます。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(血尿、感染の有無を調べる)
- 血液検査(腎臓のはたらき、炎症の程度、電解質などを調べる)
- 腹部超音波検査(腎臓の腫れや結石の影を見る)
- CT検査(結石の位置・大きさ・硬さの目安、尿の通り道の形を詳しく見る。造影剤を使うことがあります)
- レントゲン検査(尿路全体の形を見る)
- 必要に応じてMRI検査
- 腎盂鏡(全身麻酔下で、腎臓の内側を直接観察し、結石の治療や組織の一部採取を行う)
診察で予想されること
腎盂鏡は手術室で行います。全身麻酔で眠っている間に処置が進むため、処置中の痛みはありません。うつぶせ、または背中を上にした姿勢で細い管を入れ、石を砕いて取り出したり、できものの組織を少し取ったりします。終わったあとは尿の通りを保つための細い管(ステント)を一時的に留置することがあり、その場合は数日から数週間後に抜去します。処置後は血尿が数日続くことが多く、ふつうは少しずつ薄くなっていきます。入院期間や回復の早さには個人差があります。
治療
腎盂鏡は、それ自体が「調べる」と「治す」を兼ねた処置です。結石であれば砕いて取り出し、できものであれば組織の一部を取って詳しく調べ、尿の通り道が狭ければ広げる処置を行います。そのうえで、再発を防ぐための生活の工夫や定期的な経過観察を組み合わせていきます。
自宅でのセルフケア
- 処置のあとは、医師の指示に沿って水分をしっかりとる(持病で水分制限がある方は必ず相談してください)
- 痛み止めや抗菌薬は処方されたとおりに使い、自己判断で中止しない(薬の名前や量は必ず医師・薬剤師の指示に従ってください)
- 処置後しばらくは激しい運動や重い物を持つことを控え、入浴や性行為の再開時期は医師に確認する
- 尿の色、量、においを意識して観察し、血尿が濃くなる、かたまりが出る、尿が出にくいときは連絡する
- 発熱があるときは自己判断で様子を見ず、早めに医療機関に連絡する
医療治療
腎盂鏡で行う処置には、結石をレーザーなどで細かく砕いて取り出す方法、器具で直接把持して取り出す方法、狭くなった通り道を広げる方法、できものの組織を一部採取する方法などがあります。尿の通りを守るために細い管(ステント)を一時的に留置することがあり、違和感や頻尿が出ることもありますが、抜去すると多くは落ち着きます。感染予防のための抗菌薬や、痛みをやわらげる薬を使うことがあります。薬の種類や量は、腎臓のはたらきや持病、アレルギーを考慮して医師が決めます。
手術が検討される場合
腎盂鏡そのものが「手術にあたる処置」です。ただし、すべての方に必要というわけではありません。石が小さい場合や症状がない場合は、体外衝撃波で砕く方法や、尿管からカメラを入れる方法、場合によっては自然排出を待つ選択肢もあります。体への負担、入院期間、治療の確実さ、持病の状態をふまえて、医師と相談しながら決めていきます。
この病気と共に生きる
処置のあとは数日間、尿がピンク色がかったり、トイレが近くなったりすることがあります。多くは数日から1〜2週間で落ち着きますが、個人差があります。仕事や家事への復帰時期は、体の回復具合と医師の指示に合わせて少しずつ進めると安心です。気になる症状はメモしておき、診察のときに伝えると役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- こまめに水分をとる習慣をつける
- 塩分を控えめにし、バランスのよい食事を心がける
- 適度な運動を続け、体重を適正に保つ
- 尿をがまんしすぎない
- 禁煙を心がける(尿路の腫瘍が心配される場合とくに大切です)
- 処方された薬を勝手にやめない
食事と運動
結石の再発を防ぐには、1日にこまめな水分補給が基本です(目安として1.5〜2リットル程度といわれますが、心臓や腎臓に持病がある方は医師の指示が優先です)。塩分や、肉・魚などの動物性たんぱく質のとりすぎに気をつけ、野菜や果物を適度にとるとよいといわれています。サプリメントや健康食品は、結石に影響することがあるため、始める前に医師や薬剤師に相談してください。運動はウォーキングなど無理のない範囲から再開し、処置直後の激しい運動は避けましょう。
精神的健康と心の健康
「背中に管を入れる」と聞くと不安になる方は少なくありません。麻酔への心配、術後の痛み、再発への不安、仕事や家族への影響など、気持ちが揺れるのは自然なことです。不安を一人で抱えず、診察のときに率直に話してみてください。睡眠がとれない、気分が落ち込む状態が続く場合は、医療者に相談することが大切です。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や医療機関の相談員を頼ってください。
予防
腎盂鏡という処置そのものを予防することはできませんが、必要になるきっかけの多く(結石や尿路感染)は、日々の工夫である程度リスクを下げられます。再発をくり返す方は、原因を調べる検査を勧められることがあります。
検診プログラム
結石を経験したことがある方、血尿を指摘されたことがある方は、定期的な尿検査や画像検査を受けることが勧められます。健診の尿潜血を軽く考えず、かかりつけ医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 結石が大きくなり、尿の流れが滞って腎臓が腫れる(水腎症)
- 尿路の感染をくり返し、発熱や痛みが続く
- 長く放置することで腎臓のはたらきが低下することがある
- できものがあった場合、気づくのが遅れると治療の選択肢が限られることがある
長期的な見通し
腎盂鏡は、体への負担を抑えながら腎臓の中を直接確かめられる方法として、多くの方に役立ってきました。結石であれば処置のあとにすっきり改善する方が大半です。処置のあとに一時的な血尿や違和感が出ることはありますが、多くは時間とともに落ち着きます。持病のある方や高齢の方も、事前の準備と術後のケアを丁寧に行うことで、安全に進められることが多い治療です。気になることは遠慮なく医療者に相談しながら、一歩ずつ進めていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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