残尿(排尿後に膀胱に残る尿)について
概要
残尿(ざんにょう)とは、おしっこをしたあとに膀胱(ぼうこう=尿をためておく袋)の中に残ってしまう尿のことです。英語では「ポストボイド・レジデュアル(PVR)」と呼ばれます。健康な人でも少しは残ることがありますが、残る量が多いと、すっきりしない感じ、頻尿、尿路感染などを引き起こすことがあります。残尿の量は、超音波(エコー)やカテーテルという細い管を使って調べることができます。
重要な事実
- 残尿は「病気の名前」ではなく、体の状態を示す検査の結果です。原因は人によってさまざまです。
- 健康な人でも少量(数十mL程度)は残ることがあり、量だけでなく症状と合わせて判断します。
- 多いときは、尿路感染、膀胱結石、腎臓の負担などの原因になることがあります。
- 原因が見つかれば、生活の工夫や治療で改善できることが多くあります。
とてもよくある状態です。特に前立腺(ぜんりつせん)が大きくなる年齢の男性や、骨盤(こつばん)の手術を受けた方、神経の病気を持つ方に見られます。健康診断や診察の場面で見つかることも多いです。
年齢の高い男性(前立腺の影響)、出産を経験した女性、糖尿病や神経の病気(パーキンソン病、脊髄の病気など)のある方、骨盤内の手術を受けた方、長く便秘がちな方、膀胱の働きが弱くなった方などに多く見られます。子どもでは、おねしょや排尿のくせが関係することがあります。
症状
- おしっこがまったく出ず、下腹部が張って強く痛む(尿閉=にょうへい の可能性)
- 発熱と寒気があり、腰や背中が痛む(腎盂腎炎=じんうじんえん など重症の感染の可能性)
- 意識がもうろうとしている、顔色が悪くぐったりしている
- ⚠尿が出にくくなり、お腹の張りが強い
- ⚠血尿が出た、または血の塊が出て尿が出にくい
- ⚠排尿時の強い痛みと発熱がある
- ⚠急に尿がほとんど出なくなった
一般的な症状
- おしっこをしたあとも「すっきりしない」「まだ残っている感じがする」
- トイレの回数が多い(頻尿)、夜中に何度も起きる(夜間頻尿)
- 尿の勢いが弱い、途中で途切れる、出始めるまでに時間がかかる
- 少量ずつ何度もトイレに行く
- 尿意はあるのになかなか出ない
- ふとしたときに尿がもれる(あふれ出るようにもれることもあります)
- 膀胱炎(はいぼうえん)をくり返す
子供の症状
- おねしょが続く、夜のおもらしが急に増えた
- 尿の勢いが弱い、出るまでに時間がかかる
- トイレを嫌がる、排尿をがまんするくせがある
- 便秘がちで、排便と排尿の両方に困っている
- くり返す膀胱炎や、学校でトイレに行きづらそうにしている
高齢者の症状
- 夜間のトイレ回数が増え、睡眠や昼間の元気に影響する
- トイレに間に合わず尿がもれることが増える
- 便秘や脱水が重なりやすい
- 尿路感染をくり返し、発熱の原因になることがある
- トイレへの移動が負担になり、転倒のきっかけになることがある
原因
主な原因
- 前立腺が大きくなることによる尿の通り道の狭まり(男性に多い)
- 膀胱の筋肉がうまく縮めなくなる(膀胱の働きが弱くなる)
- 神経の病気や糖尿病による膀胱と脳の連絡の乱れ(神経因性膀胱=しんけいいんせいぼうこう)
- 尿道(にょうどう)が狭くなる、骨盤臓器脱(骨盤の中の臓器が下がってくる状態)
- 便秘による膀胱の圧迫
- 手術後や出産後の一時的な排尿の変化
- 一部の薬の影響で尿が出にくくなることがある
- トイレを長くがまんする習慣
リスク要因
- 年齢が高い
- 男性である(前立腺の影響)
- 糖尿病や神経の病気がある
- 骨盤内の手術や出産の経験がある
- 慢性的な便秘
- 長期間トイレをがまんする生活
- 寝たきりや車いすの生活でトイレが遠い
- 尿路感染をくり返している
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- おしっこがまったく出ず、お腹が張って痛い
- 発熱・寒気・腰の痛みがある
- 血尿が出た、または血の塊で尿が出にくい
- 急に排尿ができなくなった
定期受診を予約すべき場合:
- 排尿後のすっきりしない感じが続く
- トイレの回数が増えた、夜中に何度も起きる
- 尿の勢いが弱くなった、途切れる
- 膀胱炎をくり返している
- 健診や超音波検査で残尿を指摘された
診断
まず、いつもどんなふうにおしっこが出ているかをくわしく聞きます。そのうえで、排尿の前後で膀胱の中の尿の量を超音波(エコー)で調べる「残尿測定」を行います。痛みはほとんどなく、短時間で終わる検査です。必要に応じて尿検査や、排尿の記録(排尿日誌)も使います。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状、回数、使っている薬、これまでの病気の確認)
- 超音波(エコー)による残尿測定
- 尿検査(感染や血尿の有無を確認)
- 排尿日誌(何時にどれくらい出たかを数日記録)
- 尿の流れの検査(尿流量測定)
- 必要に応じて、膀胱や前立腺の詳しい検査、神経の働きの検査
診察で予想されること
検査は多くの場合、お腹の上からエコーを当てるだけで終わります。我慢する必要があるときは、トイレを少しがまんしてから検査を受けることがあります。結果の数字だけで決めつけず、症状と合わせて説明してもらいましょう。
治療
治療は「残尿が多い理由」によって変わります。症状が軽く生活に困っていなければ、様子を見ながら生活の工夫をすることもあります。原因となる病気がある場合は、それを治療することで残尿が減ることが多くあります。
自宅でのセルフケア
- 排尿日誌をつけて、自分のパターンを知る
- トイレは我慢しすぎず、時間をかけて最後まで出す
- 一度出したあと、少し待ってもう一度出す(二度排尿)
- 便秘を防ぐ(食物繊維、水分、適度な運動)
- コーヒーやお茶、アルコールの取りすぎに気をつける
- 冷えを避け、下半身を温める
- 排尿しやすい姿勢や環境を整える(足が床につく、力まない)
医療治療
原因に応じて、前立腺の状態に対する治療、膀胱の働きを助ける治療、神経因性膀胱の管理、薬の見直しなどが行われます。尿がうまく出せないときは、自分で細い管を使って尿を出す方法(清潔間欠導尿)を看護師や医師から教わることがあります。骨盤底筋体操や排尿の練習など、体の使い方の指導も役立ちます。どの方法が合うかは、症状と生活に合わせて医療者と相談して決めます。
手術が検討される場合
前立腺が大きい場合や骨盤臓器脱など、原因となる病気があるときは、手術が検討されることがあります。手術が必要かどうかは、症状の強さ、腎臓への影響、これまでの治療の効果などをふまえて、担当医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
残尿は、毎日のちょっとした工夫でぐっと楽になることがあります。トイレの回数や時間を決めすぎず、自分のペースを作ることが大切です。外出先のトイレの場所を事前に確認しておくと安心できます。
生活習慣のアドバイス
- 朝・昼・夜の排尿の記録を数日つけてみる
- 長時間の移動の前は、早めにトイレを済ませる
- 便秘をためない(毎日の排便を意識する)
- 水分は適度に。寝る直前の大量の水分は控えめに
- 禁煙と適度な運動で、全身の血流を保つ
- 薬を自己判断でやめず、気になる薬は医師や薬剤師に相談する
食事と運動
食事は、野菜・果物・食物繊維をしっかりとり、塩分と脂質は控えめにすると便秘予防に役立ちます。カフェイン(コーヒー・濃いお茶)やアルコールは、膀胱を刺激して尿意を強くすることがあるため、量と時間帯を工夫しましょう。運動は、ウォーキングや軽い体操、骨盤底筋体操がおすすめです。無理のない範囲で続けることが一番大切です。
精神的健康と心の健康
トイレのことが気になって外出を控えたり、夜眠れなかったりすると、気持ちが沈みがちになります。「年のせい」「仕方ない」と一人で抱え込まず、困りごとを言葉にして相談することが大切です。つらい気持ちが続くときは、かかりつけ医や地域の相談窓口に早めに話してみてください。気持ちが追い詰められたときは、ためらわず救急(119)や地域の相談先を頼ってください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、便秘を防ぐこと、水分を適度にとること、トイレを長く我慢しないこと、気になる症状を早めに相談することが役立ちます。糖尿病などの持病がある方は、その管理も膀胱の健康につながります。
検診プログラム
健診や人間ドックで尿検査や前立腺の検査を受けておくと、変化に早く気づけます。残尿を指摘されたら、症状がなくても一度医療機関で相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 尿路感染(膀胱炎や腎盂腎炎)をくり返す
- 膀胱結石ができる
- 尿が腎臓に逆流したり、腎臓の働きが低下したりする
- 尿がもれる(溢流性尿失禁)、トイレの回数が増える
- 膀胱が伸びきって働きが弱くなる
- 夜間のトイレ回数が増えて睡眠や生活の質が下がる
長期的な見通し
残尿は、原因がわかれば改善できることが多い状態です。生活の工夫や適切な治療で、症状が軽くなったり、快適に過ごせたりする方はたくさんいます。心配なときは一人で抱えず、早めに医療者に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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