固形食による胃排出能検査(GES)—胃の動きを調べる検査
概要
固形食による胃排出能検査(GES)は、食べた物が胃から腸へどれくらいの速さで送り出されているかを調べる検査です。検査用の固形の軽食を食べ、決められた時間ごとに胃のようすを撮影して、食べ物が胃にどれくらい残っているかを確認します。胃排出能(いはいのう)とは「胃から食べ物を送り出す力」のことです。この検査は、吐き気や胃もたれが続く人の原因を調べるために行われます。
重要な事実
- 検査では、放射性のごく微量の目印をつけた検査食(多くは固形)を食べ、数時間にわたって何回か撮影します。
- からだの外から撮影するだけで、痛みはありません。入院の必要はなく、ふつうは日帰りで終わります。
- 結果から「胃の動きが遅い(胃排出遅延)」かどうかがわかり、今後の治療の方針を決める手がかりになります。
胃もたれや吐き気が長く続く人に対して、比較的よく行われる検査です。特別な検査というより、原因を絞り込むための標準的な検査のひとつと考えられています。
胃の動きが遅くなっている(胃排出遅延・胃不全麻痺)かもしれないと言われた方が対象になります。糖尿病のある方、胃や食道の手術を受けたことがある方、はっきりした原因が見つからないまま吐き気や食後のもたれが続いている方などが含まれます。子どもや高齢者でも必要に応じて行われます。
症状
- 血を吐く、コーヒーのかすのようなものを吐く
- 黒くてタール状の便が出る
- 激しいおなかの痛みが続く
- 意識がもうろうとしている、ぐったりして反応が弱い
- 水分をまったく受けつけず、嘔吐がくり返される
- ⚠半日以上、嘔吐が続いている
- ⚠尿がほとんど出ない、口の渇きが強い、立ちくらみがする(脱水のサイン)
- ⚠食事がほとんどとれない状態が数日続いている
- ⚠急に体重が減っている
一般的な症状
- 食後になかなか胃が軽くならず、もたれが長く続く
- 少し食べただけでおなかがいっぱいに感じる(早期満腹感)
- 吐き気がする、ときに吐いてしまう
- おなかが張る、げっぷが増える
- 食欲が落ちる、体重が減る
- 胸やけや胃酸が上がってくる感じがする
子供の症状
- 食事の途中で「もういらない」とすぐに言う、食べる量が減る
- 繰り返し吐く、吐きそうで気持ち悪そうにする
- 体重が増えない、成長曲線から外れてくる
- 検査の説明は年齢に合わせて行い、保護者の方が一緒に付き添えます
高齢者の症状
- 高齢者では、吐き気やもたれといった自覚症状がはっきりしないことがあります
- 食欲低下や体重減少だけが目立つことがある
- 脱水や栄養不足が進みやすいので、早めの相談が大切です
原因
主な原因
- 糖尿病による神経の障害で、胃の動きが遅くなる
- 胃や食道の手術の影響で、胃の動きが変わってしまう
- 一部の薬の影響で胃の動きが抑えられることがある
- 神経や筋肉の病気、代謝や甲状腺の異常などが関係する場合がある
- はっきりした原因が見つからない場合も多い(特発性)
リスク要因
- 長期間の血糖値の高い状態が続いている糖尿病
- 胃や食道の手術を受けたことがある
- 神経に関わる病気がある(パーキンソン病など)
- 食生活の乱れ、極端なやせ、強いストレス
- 複数の薬を服用している
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 嘔吐が止まらず、水分がとれない
- 尿の量が著しく減っている、強い立ちくらみがある
- 血を吐いた、黒い便が出た
- おなかの激しい痛みがある
定期受診を予約すべき場合:
- 食後のもたれや吐き気が2〜3週間以上続いている
- 少ししか食べていないのにすぐ満腹になる感じが続く
- 説明のつかない体重減少がある
- 血糖値のコントロールが急に乱れてきた(糖尿病のある方)
診断
まず問診で、症状の続いている期間や食事のようす、服薬、これまでの病気をうかがいます。そのうえで、胃カメラ(内視鏡)や血液検査などで他の原因がないかを確認し、必要に応じて胃排出能検査を行います。検査では、ごく微量の目印をつけた固形の検査食を食べ、決められた時間に何回か撮影して、胃に残っている割合を調べます。
行われる可能性のある検査
- 問診と症状の確認(食事の量、吐き気の回数、体重の変化など)
- 血液検査(貧血、栄養状態、血糖、甲状腺の働きなど)
- 胃カメラ(内視鏡)で胃や食道の粘膜に異常がないか確認
- 固形食による胃排出能検査(GES)
- 必要に応じて腹部の画像検査や、胃の動きを調べる他の検査
診察で予想されること
検査の前日や当日は、食事や服薬についての指示が出ることがあります。当日は検査食を食べ、その後2〜4時間ほどの間に何度か撮影します。撮影のあいだは待合室で過ごせることが多く、痛みはありません。終わったら通常どおり帰宅できます。結果は数日から1〜2週間ほどで説明されるのが一般的です。妊娠中かもしれない方や、検査が不安な方は、事前に必ず担当者に伝えてください。
治療
検査の結果が「胃の動きが遅い」と示していても、治療は人によって異なります。症状の強さ、栄養状態、日常生活への影響をふまえ、食事の工夫と生活の調整を中心に、必要に応じて薬物治療を組み合わせます。担当医と栄養士が一緒に方針を考えることも多いです。
自宅でのセルフケア
- 1回の量を少なめにして、回数を分けて食べる
- よく噛んで、ゆっくり時間をかけて食べる
- 脂肪の多い食事や甘い飲み物、炭酸飲料は控えめにする
- 食後すぐに横にならず、上半身を起こして過ごす
- 水分は少しずつこまめにとる
- 食事の記録をつけて、症状との関係をみてみる
- 糖尿病のある方は、血糖値の管理を続ける
医療治療
治療は症状と検査結果に合わせて組み立てられます。胃の動きを助ける種類の薬や、吐き気をやわらげる薬が使われることがありますが、どの薬をどれくらい使うかは担当医が判断します。自己判断で市販薬を追加したり、処方された薬をやめたりせず、気になることは薬剤師や担当医に相談してください。栄養士による食事指導や、必要に応じて栄養補助の相談も行われます。
手術が検討される場合
手術が必要になることは多くありません。食事や薬での調整が難しい重症の場合に、専門医の判断で胃の動きを助ける別の治療法が検討されることがあります。担当医から詳しい説明を受け、納得したうえで決めていくことが大切です。
この病気と共に生きる
胃の動きがゆっくりになると、食事の量やタイミングに気を配る必要が出てきます。完璧を目指すより、自分に合った食べ方とペースを見つけていくことが大切です。食べられた日、つらかった日を記録しておくと、通院のときの相談に役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 決まった時間に無理のない量を食べる
- 食後は30分ほど座った姿勢か、軽く歩いて過ごす
- 十分な睡眠と休息をとる
- ストレスをためこまないよう、自分なりの息抜きをもつ
- 飲酒や喫煙は控えめにする
- 体調の変化をメモしておき、受診時に伝える
食事と運動
食事は、やわらかく消化のよいものを中心に、少量を何回かに分けてとるのが基本です。脂肪分の多い食事は胃に長くとどまりやすいので控えめにしましょう。食後の軽い散歩など、無理のない範囲の運動は胃の動きを助け、気分転換にもなります。激しい運動を始める前には、担当医に相談してください。
精神的健康と心の健康
食べることを楽しめない、外食を避けてしまう、人に理解されにくい——こうした経験は、気持ちの負担になりやすいものです。つらさを一人で抱えこまず、家族や友人、医療者に話してみてください。落ち込みや不安が続くときは、心のケアの専門家に相談することもできます。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに地域の相談窓口や医療機関に連絡してください。
予防
胃排出能検査は「調べるための検査」なので、検査そのものを予防するという考え方はありません。ただし、胃の動きが遅くなる背景には糖尿病などの生活習慣と関わる要因もあるため、血糖値の管理、規則的な食事、適度な運動は、症状の悪化を防ぐ助けになります。
検診プログラム
糖尿病のある方や胃の手術を受けたことがある方は、定期的な診察のときに、胃もたれや吐き気などの症状も忘れずに伝えてください。早期に相談することが、つらい症状を長引かせないことにつながります。
合併症
治療しない場合
- 水分や栄養がとれず、脱水や栄養不足になる
- 体重が減り、体力が落ちる
- 血糖値のコントロールが乱れやすくなる(糖尿病のある方)
- 食べ物が食道に戻り、胸やけやむせこみ(誤嚥)が起こる
- 食事が楽しめなくなり、気分の落ち込みにつながる
長期的な見通し
多くの方は、食事の工夫と適切な治療で症状がやわらぎ、ふだんどおりの生活に戻っていきます。検査で原因がわかることで、必要な対策を早く始められます。症状が長引きそうでも、あきらめずに担当医と一緒に調整を続けることが大切です。
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最終更新: 2026年11月3日
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