子どもの造影注腸検査(ぞうえいちゅうにょうけんさ)
概要
造影注腸検査は、おしり(肛門)から細い管を入れて、X線に映る「造影剤」という液体を大腸の中に流し込み、大腸の形や様子をX線写真で調べる検査です。バリウムという白い液体を使うこともあれば、水に近いサラサラした造影剤を使うこともあります。子どもでは、腸重積(ちょうじゅうせき=腸の一部が別の腸の中に入り込んでしまう状態)という病気を、手術をせずに元に戻す処置として行われることもあります。検査はふつう、小児科や小児外科、放射線科のスタッフが協力して行います。
重要な事実
- 肛門から造影剤を入れて、大腸の形をX線で見る検査です。所要時間はおおむね15〜30分程度です。
- 腸重積の疑いがあるときは、調べるだけでなく「元に戻す処置」としても行われます。
- 検査の前に、お腹の中の便をきれいにしておくことが大切です。
- 子どもが動かないように、軽い鎮静(ねむらせる薬)を使うことがあります。
- 検査が終わったあとは、造影剤を体外に出すために排便をうながします。
小児では特別に珍しい検査ではありません。とくに乳幼児の腸重積が疑われるときや、便秘が長く続くとき、血便があるときなどに、比較的よく行われます。検査の必要性や方法は、子どもの状態に合わせて医師が判断します。
主に新生児から思春期までの子どもが対象で、とくに乳幼児で行われることが多くなっています。大人でも同じような検査が行われることはありますが、目的や進め方は年齢によって異なります。
症状
- 激しい腹痛で泣き止まず、何度も痛がる発作をくり返す(腸重積の可能性)
- いちごゼリーのような血便が出て、ぐったりしている
- お腹が硬く張っていて、触ると痛がる
- 顔色が悪く、呼びかけへの反応が弱い、意識がぼんやりしている
- 何度も嘔吐して水分がとれず、おしっこが極端に少ない
- ⚠血便が少量でも続いている
- ⚠嘔吐が半日以上続いている
- ⚠お腹の張りが強くなってきた
- ⚠発熱とお腹の症状が同時にある
- ⚠元気がなく、いつもと様子がちがう
一般的な症状
- この検査は「症状そのもの」ではなく、症状の原因を調べるために行われます。
- 長く続く便秘、または便がなかなか出ない
- お腹が張っている、お腹が硬く感じる
- 便に血が混じる(血便)
- 吐き気や嘔吐をくり返す
- 体重が増えにくい、食欲がない
- 原因がはっきりしない不機嫌やぐずり
子供の症状
- 腸重積(ちょうじゅうせき)では、突然激しく泣き、手足を縮めるように痛がる発作が数分おきにくり返すことがあります。
- いちごゼリーのような赤い血便が出ることがあります。
- 嘔吐をともなうことが多く、ぐったりして元気がなくなることもあります。
- 赤ちゃんでは、ミルクの飲みが悪い、泣き方がいつもと違うといった変化が見られることがあります。
- ヒルシュスプルング病(生まれつき腸の神経が一部欠けている病気)が疑われる場合、生まれてすぐから便が出にくいことがあります。
高齢者の症状
- この検査は主に子どものためのものですが、大人でも大腸の形を調べる目的で同様の検査が行われることがあります。
- 大人の場合は、便通の変化、血便、腹痛などの精査のために行われます。
- 高齢の方が受ける場合は、持病や飲んでいる薬について、事前に医師・薬剤師に相談してください。
原因
主な原因
- 長く続く便秘の原因を調べるため(ヒルシュスプルング病など生まれつきの病気かどうかの確認を含みます)
- 腸重積が疑われるときの診断と、手術をせずに元に戻す処置
- 血便やポリープなど、大腸の内側の異常を調べるため
- 生まれつきの腸の形の異常(回転異常など)を確認するため
- お腹の手術のあとに、腸のつながり具合を確認するため
リスク要因
- 脱水ぎみである(造影剤を出す力が弱くなることがあります)
- 腸に炎症や穿孔(せんこう=穴があくこと)がある可能性がある
- 造影剤に対してアレルギーがある、または過去に体調が悪くなったことがある
- 鎮静(ねむらせる薬)を使う場合の体調面の心配がある
- 心臓や腎臓に持病がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 検査のあとに発熱した、お腹を強く痛がる、血便が増えた
- 検査のあとに嘔吐が止まらず、水分がとれない
- お腹が硬く張ってきた、元気がなくぐったりしている
- 造影剤がなかなか出てこない、排便がまったくないまま半日以上たっている
定期受診を予約すべき場合:
- 便秘が長く続いている、排便の回数が極端に少ない
- お腹の張りや、体重が増えにくい状態が続いている
- 少量の血便がときどき見られる
- 検査の結果について、あらためて詳しく説明を聞きたい
診断
まず問診と診察で、便の様子、痛がり方、嘔吐の有無、成長の様子などを確認します。そのうえで腹部のX線検査や超音波検査を行い、必要と判断された場合に造影注腸検査へ進みます。検査では、肛門から入れた細い管を通して造影剤を少しずつ流し、X線で大腸の形や、どこで腸が詰まっているか、腸重積が戻るかどうかなどを観察します。
行われる可能性のある検査
- 問診・診察(症状の経過、排便の様子、成長の記録の確認)
- 腹部単純X線検査(レントゲン)
- 腹部超音波(エコー)検査
- 造影注腸検査(本記事のテーマとなる検査)
- 血液検査(炎症や脱水の有無を調べます)
- 直腸生検(腸の組織をとても小さく採って調べる検査。ヒルシュスプルング病が疑われる場合など)
- 肛門直腸内圧検査(肛門の筋肉の働きを調べる検査)
診察で予想されること
検査の前日や当日に、腸の中の便をきれいにする処置を行うことがあります。一定の時間、食べ物を控えるよう指示されることもあります。検査室では、子どもが動かないように軽く鎮静をかけることがあります。おむつを外し、体位を整えて、肛門から細い管を入れます。造影剤が入るときに、お腹が張る感じや、少し温かく感じることがあります。所要時間は15〜30分程度で、その間に何枚かX線写真を撮ります。終わったあとは、造影剤を体の外に出すために、トイレやおむつでしっかり排便できるまで様子を見ます。水分をとるように促されることもあります。
治療
造影注腸検査は、それ自体が「治療」になることもある検査です。腸重積であれば、造影剤や空気の圧力で腸を押し広げることで、手術をせずに元に戻せることが少なくありません。また、便秘の原因が生まれつきの腸の病気であれば、その結果に合わせた治療方針を立てていきます。治療の内容は、検査でわかった状態によって大きく変わります。
自宅でのセルフケア
- 検査のあとは、医師の指示に従って水分をしっかりとる
- 排便があったかどうかを、おむつやトイレで確認する
- おむつのかぶれを防ぐため、こまめに替えてやさしく拭く
- 検査当日は激しい遊びを控え、安静気味に過ごす
- 便秘がある場合は、日々の排便の記録をつけておくと診察に役立つ
医療治療
検査の結果に応じて、便を出しやすくするための処置や、肛門から浣腸を行うケア、食事の内容の調整などが行われます。腸の動きを助ける目的で医師が適切と判断したお薬が使われることもありますが、薬の種類や量は子ども一人ひとりの状態に合わせて医師が決めます。自分で判断して薬を飲ませたり、量を変えたりはしないでください。脱水がある場合は点滴で水分を補うことがあり、必要に応じて入院して経過を見ることもあります。
手術が検討される場合
ヒルシュスプルング病と診断された場合や、腸重積が造影注腸で戻らない場合、腸に穴があいた可能性がある場合などは、手術が必要になることがあります。手術の必要性や時期は、小児外科の医師とよく相談して決めていきます。
この病気と共に生きる
検査をきっかけに、毎日の排便の様子に関心を持つことはとても大切です。便の回数や硬さ、痛がり方などを簡単にメモしておくと、次回の診察で医師に伝えやすくなります。検査の当日は少し疲れることが多いので、ゆったり過ごさせてあげてください。
生活習慣のアドバイス
- 排便の記録をつけて、変化に気づけるようにする
- トイレをがまんしない習慣を、無理のない範囲で育てる
- 朝食をしっかりとるなど、生活のリズムを整える
- 体調の変化(発熱、腹痛、血便、元気のなさ)に気を配る
- 受診や検査の予定は、家族で共有しておく
食事と運動
食事では、水分をこまめにとること、野菜や果物、豆類など食物繊維を無理なく取り入れることが役立ちます。年齢に合った範囲で、外遊びや散歩など体を動かす時間をつくると、お腹の調子を整えやすくなります。アレルギーや食事制限がある場合は、必ず医師や管理栄養士に相談してください。
精神的健康と心の健康
検査や処置は、子どもにとっても家族にとっても不安が大きい出来事です。子どもは検査のあとにぐずったり、夜泣きをしたりすることがありますが、多くは時間とともにおさまっていきます。家族も「心配で当然」と受け止め、ひとりで抱え込まないようにしてください。気持ちのつらさが続くときは、小児科の医師や看護師、自治体の相談窓口に話してみましょう。つらい気持ちが強いときは、身近な人や医療機関に相談することが大切です。
予防
造影注腸検査そのものを「予防する」という考え方はあまりなじみませんが、便秘を早めに相談してケアすること、子どもの腹痛や血便を見逃さずに受診することは、状態が重くなるのを防ぐ助けになります。日ごろから排便の様子を気にかけておくことが大切です。
検診プログラム
この検査は、症状や診察の結果から必要性が判断されて行われます。症状がなくても定期的に受ける決まった「検診」ではありません。気になる症状があれば、早めにかかりつけの小児科医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 便秘の原因がわからないままだと、お腹の張りや痛みが続き、食事や成長に影響することがあります
- 腸重積が戻らないまま時間がたつと、腸の血流が悪くなり、手術が必要になることがあります
- 腸の詰まり(腸閉塞)を起こす可能性があります
- 血便やポリープなどの異常が見逃されることがあります
長期的な見通し
造影注腸検査は、子どもの状態を知るための大切な一歩です。多くの場合、検査で原因がはっきりし、それに合わせたケアや治療を進めることで、症状は落ち着いていきます。検査自体に伴う合併症はまれですが、腸に穴があくなどの可能性がまったくないわけではないため、医師は状態を見ながら慎重に進めます。気になることがあれば、いつでも医療スタッフに相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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