血液量検査(けつえきりょうけんさ)― 体の中の血液の量を測る検査
概要
血液量検査は、体の中に血液がどのくらいあるかを調べる検査です。血液は「血漿(けっしょう=血液の水分部分)」と「赤血球(せっけっきゅう=酸素を運ぶ細胞)」などに分けられます。この検査では、血液全体の量、血漿の量、赤血球の量をそれぞれ測ります。健康な人の血液量は体重や体格によっておおよそ決まっていますが、病気によって増えたり減ったりすることがあります。通常の健康診断で行う血液検査(採血して血球の数や濃さを見る検査)では「血液の濃さ」は分かりますが、「血液の総量」は分かりません。血液量検査は、その総量を知りたいときに行う、少し特別な検査です。
重要な事実
- 血液の「濃さ(濃度)」と「量」は別のものです。濃く見えても量が少ないことも、薄く見えても量が多いこともあります。
- この検査は健康診断で routine に行われるものではなく、必要な人にだけ行われる専門的な検査です。
- 結果が出るまでに数日かかることが多く、結果をもとに原因を調べる検査が続くことがあります。
血液量検査は、一般的な血液検査に比べると行われ る機会は多くありません。主に大きな病院や、血液の病気を専門とする診療科で行われます。多くの人にとっては縁のない検査ですが、必要と判断されたときには、正確な判断のための大切な情報になります。
血液の濃さ(ヘマトクリットやヘモグロビンの値)が高いと言われた人、逆に貧血が続くが原因がはっきりしない人、脾臓(ひぞう=おなかの左側にある臓器)が大きいと言われた人などが対象になります。年代を問いませんが、加齢に伴って血液の病気が見つかる機会は増えるため、中高年以上で調べることが多くなります。
症状
- 意識がもうろうとしている、返事がおかしい
- 胸の激しい痛み、息ができない
- 突然、体の片側が動かない・しびれる、言葉が出ない、口角が下がる(脳卒中のサインの可能性)
- 大量の出血が続いている、止まらない
- これらの症状があるときは、ためらわずに 119 番へ連絡してください。
- ⚠強い息切れや動悸が続き、横になれない
- ⚠顔色が明らかに白く、ふらついて歩けない
- ⚠原因の分からないあざが急に増えた
- ⚠発熱とだるさが同時に続く
一般的な症状
- 強い疲れやすさ、だるさが続く
- 頭痛、めまい、立ちくらみ
- 顔や首、手のひらが赤く見える(血色がよいと感じる)
- お風呂上がりなどに体がかゆくなる
- 息切れ、動悸(どうき=心臓の鼓動を強く感じる)
- 耳鳴り、目の前がちらつく
- 皮膚のあざが増えた、出血が止まりにくい
子供の症状
- 顔色が青白い、または異常に赤い
- いつもより疲れやすく、遊びたがらない
- 体重が増えない、食欲がない
- 頭痛やめまいを訴える(言葉で伝えられる年齢の場合)
高齢者の症状
- 少し動いただけで息切れする
- 物忘れや集中力の低下のように見えるだるさ
- 足のむくみ、心臓の負担を感じる症状
- 脱水による血液の濃さの変化(夏場や水分が取れないとき)
原因
主な原因
- 血液の濃さ(ヘマトクリット・ヘモグロビン)が高いと言われ、本当に血液量が多いのか、脱水などで濃く見えているだけなのかを区別したいとき
- 貧血が続くが、通常の血液検査だけでは原因がはっきりしないとき
- 脾臓(ひぞう)が大きい、あるいは血液の病気が疑われるとき
- 手術や大きな治療の前に、体の状態をより正確に把握したいとき
- 出血が続いている、または出血した量を推測したいとき
リスク要因
- 喫煙(血液が濃くなりやすい)
- 高い山の地域に住んでいる(酸素が薄い環境)
- 水分不足・脱水になりやすい生活(夏場、発熱、下痢など)
- 慢性の肺の病気、睡眠時無呼吸(すいみんむこきゅう)
- 腎臓の病気(血液を作るホルモンに関わります)
- 血液の病気の家族歴がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛み、息ができない、意識がぼんやりする
- 片側の麻痺や言葉の出にくさがある
- 止まらない出血がある
- 急に顔色が悪くなり、立てないほどのふらつきがある
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断でヘモグロビンやヘマトクリットの値が高い・低いと言われた
- だるさ、息切れ、めまいが数週間以上続いている
- 顔色が赤い、または青白いと人によく言われる
- かゆみ(特にお風呂上がり)が続いている
- 血液の病気を心配する家族歴がある
診断
まず問診と診察、そして通常の血液検査(血算)で、赤血球や血漿の状態をおおよそ把握します。その上で「本当に血液量が多いのか少ないのか」を確かめたいときに、血液量検査が検討されます。検査の必要性や方法は、症状・これまでの検査結果・持っている病気などを踏まえて医師が判断します。
行われる可能性のある検査
- 血算(けいさん:赤血球・白血球・血小板の数と濃さを調べる一般的な血液検査)
- 網状赤血球(もうじょうせっけっきゅう)数の測定:新しい赤血球がどのくらい作られているかを見る
- 血液量測定:自分の赤血球にごく微量の目印(放射性同位元素など)をつけて体内に戻し、時間をおいて採血して量を計算する方法。色素を使って血漿の量を測る方法もあります
- エリスロポエチン(血液を作るよう指示するホルモン)の測定
- 腹部超音波検査:脾臓や肝臓の大きさを確認する
- 必要に応じて遺伝子検査や骨髄の検査
診察で予想されること
血液量検査は、多くの場合、検査室で行います。腕の血管から少量の血液を採り、体外で目印をつけてから、もう一度体に戻します。その後 10〜30 分ほどおいて再度採血し、目印の薄まり方から血液の量を計算します。検査全体で 1〜2 時間ほどかかることが多く、痛みは通常の採血とほとんど同じです。使われる目印の量はごくわずかで、健康への影響はほとんどないとされています。妊娠中や授乳中の方は事前に医師に伝えてください。結果は数日かかることがあります。
治療
血液量検査そのものは「調べる検査」なので、検査自体に治療はありません。結果をもとに、血液量が多いのか少ないのか、その原因は何かを医師が判断し、その原因に対する治療の方針を決めていきます。結果が「異常なし」であれば、心配のしすぎを減らすことにもつながります。
自宅でのセルフケア
- 検査の前後は、ふだんどおりの水分をとる(極端に飲まない・飲みすぎない)
- 症状(だるさ、息切れ、かゆみ、頭痛)をメモしておき、診察のときに伝える
- 喫煙している場合は、禁煙について医師や禁煙外来に相談する
- 処方されている薬がある場合は、自己判断で中止せず、検査前に医師・薬剤師に伝える
- 結果を一人で抱え込まず、次にどんな検査をするのかを診察で確認する
医療治療
治療は検査結果と原因によって変わります。血液量が本当に多い場合は、血液を少量ずつ抜いて量を調整する治療(瀉血=しゃけつ)や、血液を作る働きを抑える治療が検討されることがあります。血液量が少ない場合(貧血)は、原因に応じて食事の見直しや不足している栄養素の補充、出血源の治療などが行われます。脱水が原因で濃く見えているだけなら、水分を整えるだけで改善することもあります。具体的な方法は医師が個別に判断しますので、治療方針は必ず担当医に確認してください。
手術が検討される場合
血液量検査そのもののために手術が必要になることはありません。ただし、脾臓の病気や出血の原因など、結果から見つかった問題によっては、外科的な治療が検討される場合があります。
この病気と共に生きる
検査を受けたあとは、結果を待つ間に不安になりがちです。検査はあくまで「今の状態を知るための道具」であり、結果が出れば次にやるべきことが見えやすくなります。日常生活では、水分をこまめにとること、体調の変化を記録することを心がけると、診察のときの判断材料が増えます。
生活習慣のアドバイス
- こまめな水分補給(特に暑い季節、発熱や下痢のとき)
- 禁煙を検討する
- 適度な運動を無理のない範囲で続ける
- 睡眠を十分にとり、睡眠時無呼吸が疑われる場合は相談する
- 飲酒はほどほどにし、体調が悪い日は控える
食事と運動
特別な食事制限が必要になることは多くありません。貧血が関係する場合は、鉄分やたんぱく質、ビタミンを含むバランスのよい食事が役立ちます。運動は、だるさや息切れが強いときは無理をせず、体調がよい日に散歩など軽い運動から始めましょう。激しい運動の前後は水分をしっかりとってください。
精神的健康と心の健康
「血液の量が多い・少ない」と言われると、重い病気ではないかと不安になるのは自然なことです。検査結果を待つ間は特に落ち着かないものです。眠れない、食欲がない、不安が続くようなら、ひとりで抱えずに医師や看護師、身近な人に話してください。つらい気持ちが続くときは、地域の相談窓口や医療機関の相談室を利用することもできます。
予防
血液量検査は「病気を予防する」ものではなく、状態を正確に知るための検査です。ただし、血液の濃さが上がりやすい生活(脱水、喫煙、運動不足)を整えることで、血液に関わる体調の変化を予防できる部分はあります。気になる症状や健診の値がある場合は、早めに相談することが大切です。
検診プログラム
血液量検査そのものを健診として受ける必要は通常ありません。まずは自治体や職場の健康診断で行われる血液検査(血算)を受けることが基本です。そこで値の異常を指摘された場合に、必要に応じて詳しい検査が検討されます。
合併症
治療しない場合
- 本当は血液量が多いのに放置すると、血液がどろどろになり、血栓(けっせん=血のかたまり)ができやすくなることがあります
- 貧血を見逃すと、だるさや息切れが続き、心臓に負担がかかることがあります
- 脱水による見かけの濃さを放置すると、体調不良が繰り返されます
- 原因となる病気の発見が遅れることがあります
長期的な見通し
血液量検査は、正確な判断を助けるための頼れる道具です。結果が分かれば、必要のない心配を減らせることも多く、治療が必要な場合も早く始められます。多くの場合、原因に応じた対応で体調は落ち着いていきます。気になる症状があれば、早めに医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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