脳槽シンチグラフィ(髄液の流れを調べる検査)
概要
脳槽シンチグラフィは、脳と脊髄(せきずい)を包んでいる「脳脊髄液(のうせきずいえき)」という透明な液体の流れや、もれがないかを画像で調べる検査です。背中から細い針を入れて、ごく微量の放射性の薬(トレーサー)を脳脊髄液の中に注入し、時間をおいて何回か写真を撮ります。薬は数時間から1〜2日かけて、髄液と一緒に体の中をゆっくり移動します。その動きを追いかけることで、髄液がどこで滞っているか、どこからもれているかが分かります。CTやMRIが「形」を見る検査なのに対し、この検査は「流れ」を見るのが得意です。
重要な事実
- 検査そのものは治療ではなく、「髄液の流れ」を調べるための検査です。
- 背中からの注射(腰椎穿刺・ようついせんし)と、時間をおいた数回の撮影を組み合わせて行います。
- 使う放射性の薬はごく微量で、体への影響は小さいとされています。検査後は水分を多めにとると排出が進みます。
特別な検査で、ふだんの健康診断などで行われることはありません。頭を打った後や手術の後に水のような鼻水が続くとき、あるいは高齢の方で歩きにくさ・尿もれ・物忘れが重なるときなど、必要な人にだけ行われます。
症状
- 突然の激しい頭痛、これまでに経験したことのない痛み
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応がおかしい
- けいれんが起きた
- 頭を打った後に、鼻や耳から水のような液や血が続けて出る
- 発熱と首の硬さ、吐き気が同時にある(髄膜炎が心配されるサイン)
- 呼吸が苦しい、ろれつが回らない、体の片側が動かしにくい
- このような症状があるときは、迷わず119番に電話して救急車を呼んでください。
- ⚠腰椎穿刺のあと、数日たっても起き上がるとひどい頭痛がする
- ⚠針を刺したところが赤く腫れて痛む、熱が出てきた
- ⚠足のしびれや、力が入りにくい感じが続く
- ⚠検査のあとに強いめまいや吐き気が続く
一般的な症状
- 頭を上げると頭が痛くなり、横になると楽になる(起立性頭痛)
- 水のように透明な鼻水が、片側から続けて出る(特に頭を下げたとき)
- 耳から水のような液が出る
- 歩き方が小刻みになる、足が前に出にくい
- 尿が出たいと感じる前に間に合わない(尿もれ)
- 物忘れが増えた、反応がゆっくりになった
- シャントを入れた後に、頭痛やだるさが続く
子供の症状
- 子どもではまれな検査です。じっとしているのが難しい場合は、眠った状態で行うことがあります。
- 検査の前に、当日の食事や付き添いについて担当の医師と相談しておきましょう。
- 頭部のけがのあとに、鼻水や機嫌の悪さが続くときは早めに相談してください。
高齢者の症状
- 高齢の方では、歩きにくさ・尿もれ・物忘れが同時に起こる正常圧水頭症を調べるために行われることがあります。
- 血液を固まりにくくする薬を使っている方は、腰椎穿刺の前に必ず医師に伝えてください。
- 検査のあとは転びやすくなることがあるため、付き添いや帰り道の準備をしておくと安心です。
原因
主な原因
- 髄液がもれる状態(髄液漏):頭部のけが、手術、腰椎穿刺のあとなどに起こります。
- 正常圧水頭症:髄液の吸収がうまくいかず、脳の中に少しずつたまる状態です。
- シャント(髄液を逃がす管)の詰まりや、働きの低下。
- 髄液の循環が全体的に悪くなっている状態。
リスク要因
- 頭部のけがや脳の手術を受けたことがある
- 腰椎穿刺や脊髄の手術を受けたことがある
- 血液を固まりにくくする薬を使っている(注射のあとの出血に注意が必要です)
- 肥満(特発性正常圧水頭症との関連が指摘されています)
- 高齢であること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 検査のあとに高熱が出た、または首が硬くて動かしにくい
- 腰椎穿刺のあと、起き上がるとひどい頭痛がして、横になっても改善しない、または悪化する
- 足のしびれや麻痺、力が入らない感じがある
- 頭部を打ったあと、鼻や耳から水のような液が続く
定期受診を予約すべき場合:
- 歩き方が変わった、尿もれや物忘れが増えたと感じたら、かかりつけ医に相談してください。
- 頭部のけがのあと、水のような鼻水が続くときは早めに相談してください。
- シャントを入れている方は、定期的なチェックを欠かさず受けましょう。
診断
まず問診と診察、頭部のCTやMRIなどで、ほかの病気がないかを確認します。そのうえで、髄液の流れやもれをくわしく知る必要があると判断されたときに、脳槽シンチグラフィが行われます。結果は担当の医師から、画像を見ながら説明があります。
行われる可能性のある検査
- 問診・診察(症状の出方、頭を上げ下げしたときの変化など)
- 頭部CT・MRI(脳の形や、水がたまっていないかを見る検査)
- 脳槽シンチグラフィ(この検査。髄液の流れやもれを調べます)
- 髄液の検査(腰椎穿刺で少し髄液をとって調べます)
- 鼻から出る液が髄液かどうかを確かめる検査
- 歩く様子の観察や、膀胱(ぼうこう)の働きの検査
診察で予想されること
検査はふつう外来で行われますが、撮影の回数が多い場合は1泊することもあります。流れは次のとおりです。①背中を横向きに丸めて寝て、腰のあたりに局所麻酔の注射をします。②細い針を脊髄の近くまで入れ、髄液を少しとってから、微量の放射性の薬を入れます。③しばらくベッドで休み、決まった時間(例:1〜3時間後、6時間後、24時間後など)に撮影台の上で写真を撮ります。撮影の合間は、歩いたり水分をとったりして過ごすこともあります。④すべての撮影が終わったら、結果を待ちます。注射のあとに、腰の軽い痛みや違和感が出ることがあります。
治療
脳槽シンチグラフィは検査であり、それ自体で病気が治るわけではありません。結果をもとに、どんな治療が必要かを医師と一緒に決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 検査前日から当日の注意事項(食事、薬、付き添いなど)は、必ず施設の指示に従いましょう。
- 検査後は、指示された時間だけ横になって安静にします。
- 水分をいつもより多めにとると、薬の排出を助けます。
- 腰椎穿刺のあとは、急に立ち上がらず、ゆっくり起き上がりましょう。
- 検査当日の車の運転や、危険を伴う作業は避けてください(施設の指示に従いましょう)。
- 頭痛が続くときは我慢せず、医療機関に連絡してください。
医療治療
結果によって治療の方向が変わります。髄液もれが見つかった場合は、まず安静にして横になる時間を増やし、水分をとることが勧められます。それでも止まらないときは、自分の血液を使って漏れている場所をふさぐ処置や、手術が検討されます。正常圧水頭症が疑われる場合は、髄液を逃がす管(シャント)を入れる手術が検討されます。シャントの不調が分かった場合は、調整や入れ替えが検討されます。どの治療も、年齢や体の状態、生活の希望をふまえて、担当の医師と相談して決めていきます。
手術が検討される場合
髄液もれが安静で止まらないとき、正常圧水頭症で歩きにくさが続くとき、シャントの詰まりや不具合があるときは、手術が検討されます。必要性や時期は、検査の結果と体の状態を合わせて判断されます。
この病気と共に生きる
検査のあとは、ふだんどおりの生活に戻れますが、その日は無理をせず、水分をとって早めに休みましょう。結果を待つ間は気になって落ち着かないこともあります。症状の変化をメモしておくと、診察のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 症状が出たときの状況(頭を下げた、立ち上がったなど)を記録しておく
- 水分をこまめにとる
- 転倒を防ぐ(夜間の照明、手すり、滑りにくい靴を用意する)
- 飲んでいる薬は、市販薬も含めて必ず医師に伝える
- 睡眠と休養をしっかりとる
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動(散歩など)を続けましょう。ただし、腰椎穿刺の直後は、指示があるまで激しい運動や重いものを持つことは避けてください。頭痛があるときは、運動よりも横になって休むことを優先しましょう。
精神的健康と心の健康
「脳の検査」と聞くと、強い不安を感じる方は少なくありません。結果が出るまでの数日は落ち着かないこともあります。不安が強い、眠れない、気分が落ち込む状態が続くときは、ひとりで抱え込まずに、医師や看護師、家族に話してください。必要に応じて心理的なサポートを受けられることも、遠慮なく伝えましょう。
予防
脳槽シンチグラフィは検査なので、それ自体を予防するという考え方はありません。ただし、この検査が必要になる背景の一部は、気をつけることで減らせます。転倒や頭部のけがを防ぐ、血圧や体重を管理する、気になる症状を早めに相談することが大切です。
検診プログラム
この検査は、症状のある方に行うもので、症状のない方のスクリーニングとして行うものではありません。気になる症状があるときは、かかりつけ医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 髄液もれが続くと、頭痛が長引いたり、細菌が入って髄膜炎を起こす危険が高まることがあります。
- 正常圧水頭症が進むと、歩きにくさが強くなり、転倒しやすくなることがあります。
- シャントの不調を放っておくと、頭痛や吐き気などの症状が続くことがあります。
- 原因が分からないままでは、必要な治療を始めるのが遅れてしまいます。
長期的な見通し
脳槽シンチグラフィで原因がはっきりすれば、それに合った治療を早く始められます。髄液もれの多くは安静で改善し、正常圧水頭症もシャントの手術で歩き方が良くなることがあります。検査を受けることで、次に何をすればよいかが見えてきます。心配なときは、担当の医師に何度でも確認してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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