チルトテーブル検査(起立負荷試験)
概要
チルトテーブル検査は、体を起こしたときに血圧や心拍数がどう変化するかを調べる検査です。専用の台(チルトテーブル)にあお向けに寝て、体を安全ベルトで固定し、台をゆっくりと起こしてほぼ立っている状態にします。その間、血圧と心拍数を続けて測ります。主に、気を失う(失神)や立ちくらみの原因を探るために行われます。検査はふつう、原因がはっきりしない失神や、繰り返す立ちくらみがあるときに検討されます。
重要な事実
- 体を寝かせた状態から起こして、血圧と心拍数の変化を観察する検査です。
- 検査時間はおおむね20〜45分程度で、途中で気分が悪くなればいつでも中止できます。
- 主に「失神(気を失うこと)」や「立ちくらみ」の原因を調べるために行います。
- 検査を受ける前に、水分や食事、飲んでいる薬について医師の指示を確認しておくことが大切です。
失神や立ちくらみは比較的よくある症状で、多くの人は一度は経験します。ただしチルトテーブル検査はどの病院でも行われているわけではなく、必要な人に絞って、心電図や問診などで原因がはっきりしない場合に専門の医療機関で行われます。珍しい検査ではありませんが、日常的に行われる一般的な検査でもありません。
繰り返し気を失う人、立ち上がったときのひどい立ちくらみが続く人、動悸やふらつきの原因がわからない人が対象になります。思春期の子どもや若い人にも多くみられますが、高齢者では転倒やけがにつながりやすいため、特に注意が必要です。
症状
- 気を失って意識が戻らない、または意識がはっきりしない状態が続く
- 胸の痛み、強い息苦しさ、冷や汗をともなう失神
- 失神のときにけいれんが起きた、または転倒して頭を強く打った
- 脈がとても速い・とても遅いと感じる状態が続く
- ろれつが回らない、体の片側が動かしにくいなど、脳の症状がみられる
- ⚠何度も繰り返し気を失う
- ⚠失神した前後の記憶がない、または周囲の人が様子のおかしさに気づいた
- ⚠立っていると毎回のように気分が悪くなる
- ⚠水分がとれない、食事がとれない、尿の量が減ったなどの脱水のサインがある
- ⚠心臓の病気を指摘されたことがある人に失神が起きた
一般的な症状
- 立ち上がったときや長時間立っているときのふらつき・立ちくらみ
- 目の前が暗くなる、耳が遠くなる、気が遠くなる感じ
- 一時的に気を失う(数秒〜数十秒で意識が戻ることが多い)
- 動悸(心臓の鼓動が速く、または強く感じる)
- 冷汗、吐き気、顔色が悪くなる
- 気を失う前にあくびが出る、あたたかく感じる、体がだるくなる
子供の症状
- 思春期前後のお子さんに立ちくらみや失神が起こることがあります
- 朝礼や長時間の立ちっぱなし、暑い場所、空腹時に起こりやすい
- 本人がうまく説明できないことが多く、顔色が悪い・ぐったりするなどの様子に気づくことが大切です
- 成長にともなって落ち着くことも多いですが、繰り返す場合は受診を検討してください
高齢者の症状
- 気を失った拍子に転倒して骨折や頭のけがをすることがあります
- 血圧の薬や利尿薬(水を出しやすくする薬)が関係していることがあります
- 脱水や食事量の減少、暑さが原因になることがあります
- 「なんとなくふらつく」という形で現れ、失神と気づかれないことがあります
原因
主な原因
- 血管迷走神経性失神(体の反射で血圧と脈が下がり、一時的に意識を失うもの)
- 起立性低血圧(立ち上がったときに血圧が下がりすぎる状態)
- 体位性頻脈症候群(POTS:立つと脈が速くなり、ふらつきや動悸が出る状態)
- 脱水や貧血、食事量の不足
- 血圧を下げる薬や利尿薬など、薬の影響
- 心臓の不整脈や弁の病気など、心臓そのものが原因の場合
- 長時間の立ちっぱなし、暑い環境、疲労や睡眠不足による一時的な血圧低下
リスク要因
- 水分や食事が不足しがち、暑い場所での作業や運動
- 長時間立ち続ける仕事や習慣
- 疲労、睡眠不足、強いストレス
- 血圧を下げる薬や利尿薬を服用している
- 妊娠中、または月経にともなう体調の変化
- 過去に失神や立ちくらみを繰り返したことがある
- 心臓の病気を指摘されたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けがや転倒をともなう失神があった
- 胸の痛みや息苦しさ、強い動悸をともなって気を失った
- 短い時間に何度も失神する
- 失神したときの様子を周囲の人が見ておらず、自分では記憶がない
定期受診を予約すべき場合:
- 立ちくらみやふらつきが繰り返し起こる
- 気が遠くなる感じがするが、倒れるほどではない
- 暑い場所や長時間の立ち仕事のあとに具合が悪くなる
- 家族や職場から「顔色が悪い」と言われることが増えた
診断
まず問診で、どんなときに、どんな前ぶれがあって、どれくらいの時間気を失っていたかなどを詳しく聞きます。そのうえで診察や心電図などを行い、必要と判断された場合にチルトテーブル検査が行われます。検査の結果と、それまでの検査を合わせて、医師が総合的に原因を考えます。
行われる可能性のある検査
- 問診(失神の起こり方、前ぶれ、持病、服用中の薬の確認)
- 診察と、寝た状態・座った状態・立った状態での血圧と脈の測定
- 心電図(心臓の電気の流れを調べる検査)
- 必要に応じて24時間心電図(ホルター心電図)や心エコー(心臓の超音波検査)
- 血液検査(貧血や脱水、甲状腺の働きなどを確認)
- チルトテーブル検査(台を起こして血圧と心拍数の変化を観察)
診察で予想されること
検査の数時間前から食事を控えるよう指示されることがあります。水分や薬については指示に従ってください。検査室ではあお向けに寝て、体を安全ベルトで固定します。台がゆっくりと起こされ、ほぼ立った状態で20〜45分ほど血圧と心拍数を測ります。気分が悪くなったら遠慮なく伝えてください。検査中に失神が起きることもありますが、安全に配慮して行われ、台はすぐに元に戻されます。原因によっては、体に負担をかけて反応を見るために薬を使うことがあります。終了後はしばらく休み、ふらつきが残っている間は一人で運転して帰らないようにしてください。
治療
治療は検査でわかった原因によって変わります。多くは命に関わるものではなく、生活の工夫と経過観察で改善します。心臓の病気が見つかった場合は、その治療が優先されます。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとり、必要に応じて食事の塩分について医師に相談する
- 立ち上がるときはゆっくりと、まず座ってから立ち上がる
- 長時間の立ちっぱなしを避け、ときどき足を動かしたり座ったりする
- 気分が悪くなりそうなときは、足を交差させたり太ももに力を入れたりして血流を保つ
- 暑い場所やむさくるしい場所、熱いお風呂をできるだけ避ける
- 夜は頭を少し高くして寝るとよい場合がある(医師に相談)
- 弾性ストッキング(着圧ソックス)が役立つことがある(医師・看護師に相談)
- 失神しそうなときの対処を家族や職場の人と共有しておく
医療治療
原因に応じて、血圧を調整する薬や心拍数を整える薬が使われることがあります。どの治療が適切かは、失神のタイプ、年齢、持病、服用中の薬によって変わるため、必ず医師の判断に従ってください。自己判断で薬を始めたり中止したりしないようにしましょう。
手術が検討される場合
心臓の不整脈や構造の問題が原因とわかった場合は、カテーテルによる治療やペースメーカーの植え込みなどが検討されることがあります。ただし、これはあくまで心臓に原因がある場合の話で、多くの失神では手術は必要ありません。
この病気と共に生きる
検査で原因がわかると、対処の仕方が具体的になり、不安が軽くなることが多いです。ふらつきやすい時間帯や状況を自分で把握しておき、無理をしない範囲で日常生活を続けましょう。
生活習慣のアドバイス
- 朝は急に起き上がらず、ベッドの中で少し体を動かしてから起きる
- 長時間の立ち仕事のあいだに、こまめに座る・足を動かす時間をつくる
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 飲酒は血圧を下げることがあるため、量とタイミングに注意する
- 入浴は長湯や熱すぎるお湯を避け、のぼせる前に上がる
- 失神したときの対応を家族に伝えておく
食事と運動
水分をこまめにとり、食事を抜かないことが基本です。塩分については、心臓や腎臓の病気がある人もいるため自己判断で増やさず、医師に相談してください。運動は体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。急に立ち上がる動作の多い運動より、水中運動や座位でできる運動が向いている場合もあります。
精神的健康と心の健康
「また倒れたらどうしよう」という不安から、外出や仕事を控えてしまうことがあります。これは自然な気持ちですが、長く続くと生活の幅が狭くなり、気分の落ち込みにもつながります。原因がわかれば対処法も見つかります。不安が強いときや、気持ちがつらい日が続くときは、一人で抱えずに医師や看護師、地域の相談窓口に話してください。気持ちの面でもサポートを受けられます。
予防
検査そのものを予防するという考え方はありませんが、失神や立ちくらみの再発は生活の工夫である程度減らせます。水分をとる、急に立ち上がらない、長時間立ち続けない、暑さを避けるといった基本が大切です。
検診プログラム
失神や立ちくらみが繰り返す場合は、早めにかかりつけ医に相談することが「見逃さないための第一歩」になります。特に心臓の病気を指摘されたことがある人は、症状が軽くても相談してください。
合併症
治療しない場合
- 失神による転倒で、骨折や頭のけがをする危険がある
- 車の運転中や階段の途中で倒れると、大きな事故につながる
- 繰り返すうちに外出を控えるようになり、生活の質が下がる
- 心臓が原因の失神を見逃してしまうと、危険な状態につながる可能性がある
- 不安や緊張が強くなり、仕事や学業に影響することがある
長期的な見通し
多くの失神や立ちくらみは命に関わるものではなく、原因がわかって生活を工夫することでずいぶん楽になります。チルトテーブル検査で原因が見つかれば、それに合った対処ができます。心臓が原因の場合は治療の必要がありますが、それも検査で見つけられることで適切な対応につながります。心配なことがあれば、遠慮なく医師に質問してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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