骨盤内診察(内診)~婦人科の診察をわかりやすく~
概要
骨盤内診察(こつばんないしんさつ)は、ふつう「内診(ないしん)」と呼ばれる、女性の体の大切な部分を直接診てもらう診察です。医師が手や専用の器具を使って、外陰部(体の外側の部分)、腟(ちつ:体の内側の通り道)、子宮頸部(しきゅうけいぶ:子宮の入り口)、子宮、卵巣(らんそう)の状態を確かめます。多くは3つの段階で進みます。①外側を目で見る、②腟鏡(ちつきょう:腟をやさしく広げて中の様子を見るための器具)を入れて観察する、③医師が指を入れてお腹の上からもう一方の手で押さえ、子宮や卵巣の大きさ・硬さ・痛みの有無を確かめる、という流れです。全体で数分程度のことが多く、検査というより「触って確かめる診察」です。恥ずかしい気持ちや不安があって当然です。医師や看護師に遠慮なく伝えてよく、いつでも中断を申し出ることができます。
重要な事実
- 内診は「病気を探すための診察」で、所要時間は数分のことがほとんどです。
- 腟鏡を使うときは、冷たさや圧迫感を感じることがありますが、通常は強い痛みはありません。
- 緊張すると力が入って余計に不快になりやすいので、深呼吸して力を抜くと楽になります。
- 女性の医師や付き添いの人(パートナー、家族、友人など)を希望できる場合が多いので、予約時や診察前に伝えてみましょう。
- 痛みや不安が強いときは、その場で「痛い」「やめたい」と言って大丈夫です。
はい、とてもよく行われる診察です。月経の悩み、おりものの変化、下腹部の痛み、不正出血(月経以外の出血)などの相談のとき、妊娠の確認や避妊の相談のとき、そして症状がなくても婦人科の定期検診の一部として行われます。女性なら一度は受ける機会のある、ごく普通の診察だと考えてよいでしょう。
主に、子宮や卵巣など女性の体の器官を持つ方(思春期以降の女性、閉経後の方を含む)が対象になります。症状があるときは年齢にかかわらず行われます。妊娠中や産後の方、更年期の悩みがある方も受けることがあります。小児や思春期の場合は、必要に応じて保護者が同席し、無理のない範囲で行われます。
症状
- 大量の性器出血が止まらず、顔色が悪い・冷や汗・意識がぼんやりする(ショックのサイン)
- 下腹部の激痛で動けない、立てない
- 急な激しい腹痛に加えて、ふらつきや失神(気を失うこと)があった
- 妊娠の可能性がある方で、強い腹痛と出血が同時に起きた
- ⚠発熱を伴う下腹部の痛みや、においのあるおりものが急に増えた
- ⚠出血が数日続く、または量が増えてきた
- ⚠妊娠の可能性がある方で、出血や腹痛がある
- ⚠強い吐き気を伴う下腹部痛
一般的な症状
- 月経以外の出血(不正出血)がある、月経の量が多い、長く続く
- おりものの量・色・においがいつもと違う、かゆみや違和感がある
- 下腹部や骨盤のあたりに痛みや重い感じがある
- 月経痛が強い、性交時の痛みがある
- 生理周期が乱れている、月経が来ない
- 妊娠の確認や避妊について相談したい
- 症状はないが、婦人科の定期検診を受けたい
- 妊娠中・産後の経過を確認したい
子供の症状
- 外陰部(体の外側の部分)のかゆみ、赤み、痛み
- おりもののような分泌物が増えた、下着が汚れる
- お腹のしこりや腫れを指摘された
- 思春期で月経の悩みや体の変化について相談したい
- 小児の場合は、保護者が同席し、医師が説明しながら無理のない範囲で行います。
高齢者の症状
- 閉経後に出血があった(少量でも受診の目安になります)
- 腟の乾燥、かゆみ、ヒリヒリした痛み
- 排尿のトラブル(頻尿、尿もれ)や骨盤の重い感じ
- 下着が汚れる、おりものが増えた
- 杖や付き添いの有無など、体勢がつらいときは事前に伝えると配慮してもらえます。
原因
主な原因
- 内診は「原因を調べるための診察」なので、原因そのものではありません。内診が必要になる理由には次のようなものがあります。
- 月経の悩み、不正出血、おりものの変化、下腹部痛などの症状の原因を調べるため
- 子宮や卵巣の大きさ・形・硬さに異常がないか確かめるため
- 子宮頸がん検診(細胞をこすり取って調べる検査)の一部として
- 妊娠の確認、妊娠中の経過の確認
- 避妊や性感染症についての相談、必要な検査
リスク要因
- 婦人科の病気のリスクを高める要因には、次のようなものがあります。
- 家族歴(母や姉妹に婦人科の病気がある)
- 喫煙(子宮頸がんなどのリスクを上げるとされています)
- 性感染症にかかったことがある、またはその可能性がある
- 免疫の力が低下する状態・治療を受けている
- 月経不順や肥満など、ホルモンに関わる要因
- 妊娠・出産の回数、閉経の時期などの体の経過
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 大量の出血が続く、または出血に冷や汗・ふらつきを伴う(その場合は119番へ)
- 下腹部の激しい痛みで動けない
- 発熱と下腹部痛、においのあるおりものが同時にある
- 妊娠の可能性がある中での出血や腹痛
- 閉経後の出血
定期受診を予約すべき場合:
- 月経痛が強い、月経の量や周期がいつもと違う
- おりものの色・量・においが気になる、かゆみがある
- 下腹部に重い感じや軽い痛みが続いている
- 性交時の痛みがある
- 妊娠を考えている、避妊について相談したい
- 自治体の婦人科検診の案内が届いた(日本では子宮頸がん検診が20歳以上を対象に案内されることが多いです)
- 以前に内診でつらい思いをしたが、そろそろ受けたい
診断
内診そのものが「診断のための診察」です。医師は問診(症状や月経の様子、これまでの病気などを聞くこと)のあと、カーテンや布で体を覆い、体位を整えてから診察を進めます。外側を目で見て、腟鏡をやさしく入れて腟と子宮頸部の様子を観察し、必要なら細胞をこすり取ります(子宮頸がん検診)。その後、医師が指を入れてお腹の上から手で押さえ、子宮や卵巣の状態を確かめます。必要に応じて、肛門(おしり)側から指で確かめることがあります。結果によっては超音波検査(お腹の上や腟の中から機械をあてて写真を撮る検査)などが続けて行われます。
行われる可能性のある検査
- 内診(触って確かめる診察)
- 腟鏡診(腟を広げて中の様子を観察する)
- 子宮頸がん検診(細胞診:細胞をこすり取って調べる)
- 超音波検査(お腹の上から、または腟の中から機械をあてて観察する)
- おりものの検査(感染症が疑われるとき)
- 必要に応じて組織の一部を採る検査(生検)や血液検査
診察で予想されること
診察台に上がり、足を支え台にのせて横になります。体は布で覆われ、医師以外の人が勝手に見ることはありません。腟鏡を入れるときに、冷たい感じや圧迫感、少しの違和感があることがあります。力を抜いてゆっくり息を吐くと楽になります。所要時間は数分程度です。診察中はいつでも質問でき、「痛い」「少し待って」と伝えて大丈夫です。終わったあとに少量の出血や、軽い不快感が残ることがありますが、多くはすぐに落ち着きます。
治療
内診は治療ではなく「状態を知るための診察」です。見つかった内容によって、その後の対応が決まります。異常が見つからなければ、症状に合わせた生活の工夫や、次に受診する時期の相談になります。異常が見つかった場合は、その病気に応じた治療や、さらに詳しい検査が提案されます。まずは結果の説明をよく聞き、わからないことは遠慮なく質問しましょう。
自宅でのセルフケア
- 診察の前にトイレを済ませておくと楽です(尿検査がある場合は指示に従ってください)。
- 生理中でも相談できます。「生理中だが受診してよいか」を予約時に確認しましょう。
- 緊張したら、ゆっくり鼻から吸って口から長く吐く深呼吸をしてみてください。
- 診察前に「不安が強い」「女性の医師を希望」「付き添いと一緒に入りたい」と伝えておく。
- 聞きたいことをメモにしておくと、緊張しても聞き忘れません。
- 診察後は無理をせず、その日はゆっくり休む時間を作りましょう。
医療治療
治療が必要と判断された場合は、原因に応じた方法が選ばれます。たとえば、感染症が見つかればその治療、ホルモンのバランスに関わる悩みなら生活調整や相談、貧血があれば食事や体調のケア、といった具合です。具体的な治療方針は、検査結果とあなたの体調・希望をふまえて医師と一緒に決めていきます。薬の名前や量、使い方については、必ず医師や薬剤師の説明を受けてください。
手術が検討される場合
手術が必要になるのは、見つかった病気の種類や大きさ、症状の強さによって判断されます。多くはありませんが、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ:子宮にできる良性のこぶ)や卵巣の腫れ、内膜症などで手術が選ばれることがあります。手術が提案された場合は、なぜ必要か、ほかに選択肢はないか、体への影響はどうかを納得いくまで質問してから決めましょう。
この病気と共に生きる
内診を受けたあとは、少量の出血や軽い不快感が数時間〜1日ほど残ることがあります。多くは自然に落ち着きます。出血が続く、痛みが強くなる、発熱があるときは早めに医療機関に相談してください。診察は「自分の体を知る機会」です。結果をメモに残し、次にいつ検診を受けるかを手帳やカレンダーに書いておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 症状や体調の変化を簡単なメモに残しておくと、次の診察で伝えやすくなります。
- 婦人科検診の案内が届いたら、忙しくても予約を入れてしまうのがおすすめです。
- タバコは婦人科の病気のリスクに関わるとされているため、禁煙を検討してみましょう。
- パートナーがいる場合は、検診や体の変化について話しておくと、気持ちが楽になります。
- つらい経験がある方は、無理のないペースで。1回で全部できなくても大丈夫です。
食事と運動
特別な食事制限は必要ありません。ふだんどおりの食事で構いませんが、貧血が気になる方は鉄分を含む食品(赤身の肉、魚、大豆製品、緑黄色野菜など)を意識するとよいでしょう。適度な運動は血行をよくし、月経痛や気分の落ち込みの緩和に役立つことがあります。ストレッチやウォーキングなど、続けられる軽い運動から始めてみてください。
精神的健康と心の健康
内診に対して「恥ずかしい」「怖い」「体を見られるのがつらい」と感じる方はとても多いです。過去につらい経験がある方にとっては、さらに大きな不安になることもあります。そうした気持ちは弱さではなく、自然な反応です。どうしてもつらいときは、無理をせず、信頼できる人や医療者に気持ちを話してみてください。気分の落ち込みや不安が続くときは、医療機関や地域の相談窓口に相談することが大切です。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ひとりで抱えず、すぐに医療機関や地域の相談窓口、または119番に助けを求めてください。
予防
内診そのものは「防ぐもの」ではありませんが、内診を含む定期的な婦人科検診を受けることで、病気を早い段階で見つけやすくなります。また、禁煙、性感染症の予防(コンドームの使用など)、体調の変化に気づいて早めに相談することが、婦人科の病気の予防につながります。
ワクチン
子宮頸がん(HPV)ワクチンは、子宮頸がんの原因となるウイルスへの感染を防ぐワクチンです。日本では公的な接種の対象となる年代が定められており、自治体から案内が届くことがあります。接種を希望する場合や迷う場合は、かかりつけ医や自治体の窓口に相談してください。ワクチンを受けても検診は必要です。
検診プログラム
日本では、子宮頸がん検診が20歳以上の方に2年に1回程度案内されることが多く、厚生労働省も受診を勧めています。対象年齢や間隔は自治体によって異なるため、お住まいの自治体の案内や、かかりつけ医に確認してください。症状がなくても検診を受けることが、早期発見につながります。
合併症
治療しない場合
- 内診を避け続けることで、症状の原因がわからないまま時間が過ぎてしまうことがあります。
- 病気があっても見つかるのが遅れ、治療の選択肢が限られる可能性があります。
- 不安や恐怖をひとりで抱え続けることで、心の負担が大きくなることがあります。
- 症状を我慢しているうちに、貧血や痛みなどで日常生活がつらくなることがあります。
長期的な見通し
内診は、あなたの体を守るための大切な一歩です。多くの場合、異常は見つからず、症状に合わせた工夫や経過観察で済みます。もし何か見つかっても、早く見つかればそれだけ対応の選択肢が広がります。不安が強い方は、少しずつ慣れていく形で構いません。ひとりで頑張らず、医療者や周りの人を頼りながら進めていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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