薬剤負荷心筋血流シンチグラフィ検査(薬で心臓に負担をかけて調べる検査)
概要
薬剤負荷心筋血流シンチグラフィは、心臓の筋肉に血液がきちんと届いているかを調べる検査です。ふだんは「歩く・走る」といった運動で心臓に負担をかけますが、階段の上り下りがつらい人、ひざや腰が痛い人、息切れが強い人では運動が難しくなります。そこで、心臓の血管を広げたり心拍数を上げたりする薬を少量使い、運動したときと同じような状態を作ります。その前と後に、ごくわずかな放射性の目印(トレーサー)を注射して心臓の写真を撮り、血液の流れを比べます。痛みはほとんどなく、体の外から写真を撮るだけの検査です。
重要な事実
- 検査はふつう、安静時の撮影と負荷時の撮影の2回で、全体で1〜3時間ほどかかります。
- 運動が苦手な方やご高齢の方でも受けやすい検査です。薬の量は医師が体格や持病に合わせて調整します。
- 使う放射性の目印はごく微量で、数日かけて自然に体の外へ出ていきます。周りの人にうつる心配はありません。
- 結果はその日のうちに分かるとは限らず、画像を解析してから数日〜1週間ほどで説明を受けます。
胸の痛みや息切れの原因を調べる検査として、日本でも広く行われています。特に「運動したときにだけ胸が苦しくなる」といった狭心症(心臓の血管が狭くなる病気)が疑われるときに、よく選ばれます。
血圧が高い、血糖値が高い、コレステロールが高い、たばこを吸っている、家族に心臓病の人がいる、といった心臓病のリスクを持つ方や、ご高齢で運動負荷が難しい方、脚の血管の病気などで十分に歩けない方が対象になることが多いです。症状がなくても、手術前の心臓の状態確認のために行うこともあります。
症状
- 胸の強い痛みが20分以上続き、休んでもよくならない(心筋梗塞の疑い)
- 冷や汗、吐き気、息苦しさをともなう胸の痛み
- 意識が遠のく、気を失う、会話がかみ合わない
- 突然の強い息切れ、呼吸ができない感じ
- 脈がとても速い、または極端に遅い状態が続く
- ⚠歩いたときの胸の圧迫感が新しく出てきた、または回数が増えた
- ⚠安静にしていても胸の不快感が出るようになった
- ⚠動悸やめまいが繰り返す
- ⚠足のむくみや体重の急な増加がある
一般的な症状
- 歩いたり階段を上ったりすると胸が締めつけられる、重い感じがする(数分でおさまることが多い)
- いつもより息が切れる、坂道で息が上がる
- 胸やのど、あご、左肩、みぞおちのあたりの不快感
- 動悸(心臓の鼓動が速く、強く感じる)
- だるさや疲れやすさが続く
- 症状がまったくなく、健康診断の心電図の異常で見つかることもある
子供の症状
- 小児でこの検査を行うことはまれです。
- 子どもでは、生まれつきの心臓の病気が疑われる場合に別の検査が選ばれることが多く、小児科の専門医が判断します。
高齢者の症状
- ご高齢の方は、ひざや腰の痛み、体力の低下で運動負荷が難しいことが多く、この薬を使う検査が選ばれやすくなります。
- 持病の薬(特に喘息や息苦しさに使う薬、血圧の薬など)を一時的に調整する必要があることがあるため、事前に必ず医師・薬剤師に伝えてください。
- 検査の前後は脱水になりやすいので、指示の範囲で水分をとるようにしましょう。
原因
主な原因
- この検査は「病気の原因」を探すものではなく、心臓の血管が狭くなっていないか(心筋虚血)を調べるものです。
- 心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が、動脈硬化(血管の内側にコレステロールなどがたまること)で狭くなっている状態
- 過去に心筋梗塞があり、心臓の筋肉の一部が傷ついている状態
- 心臓のポンプの働きや、治療の効果を確かめたいとき
- 手術を受ける前に、心臓が手術に耐えられるかを確認したいとき
リスク要因
- 高血圧(血圧が高い状態が続くこと)
- 糖尿病(血糖値が高い状態が続くこと)
- 脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が多い状態)
- 喫煙(本人だけでなく、副流煙も含む)
- 肥満、特におなか周りに脂肪がつくタイプ
- 運動不足、塩分の多い食事、飲みすぎ
- 家族に心臓病の人がいる(遺伝的な体質)
- 年齢(加齢で血管が硬くなりやすい)
- 強いストレス、睡眠不足、睡眠時無呼吸症候群
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛みが強く、20分以上続いている
- 胸の苦しさに冷や汗や吐き気、息苦しさをともなう
- 安静にしていても胸の不快感が繰り返し出る
- 動悸が止まらない、ふらついて立っていられない
定期受診を予約すべき場合:
- 階段や坂道で胸が締めつけられる感じがあり、休むと数分で消える
- 以前より息切れしやすくなった、疲れやすい
- 健康診断で心電図の異常を指摘された
- 血圧・血糖・コレステロールを指摘されている、または喫煙がある
- 家族に心臓病や突然死の人がいる
診断
まず問診と診察、心電図、血液検査、心臓エコー(超音波で心臓を見る検査)などで全体像を確認します。そのうえで、運動負荷が難しい場合や、より詳しく血流を知りたい場合にこの検査が選ばれます。検査の流れは、おおむね次のとおりです。(1) 検査の説明と同意、(2) 安静時の撮影、(3) 腕の静脈に点滴の針を入れて負荷の薬を少しずつ投与、(4) 負荷時の撮影、(5) 2つの画像を比べて血流の差を評価。検査中は医師と看護師がそばで血圧や心電図をモニターし、安全を確認します。
行われる可能性のある検査
- 問診・診察(症状の出方、持病、服薬、アレルギー、喘息の有無の確認)
- 安静時心電図、胸部レントゲン
- 血液検査(貧血、腎臓の働き、心臓に負担がかかっていないかの指標など)
- 心臓エコー検査(心臓の形や動き、弁の状態を見る)
- 運動負荷心電図(歩ける方の場合)
- 薬剤負荷心筋血流シンチグラフィ(この記事の検査)
- 必要に応じて冠動脈CT検査やカテーテル検査
診察で予想されること
検査着に着替え、腕の静脈に細い点滴の針を入れます。撮影台の上に仰向けになり、10〜20分ほどじっとしていると写真が撮れます。負荷の薬が入ると、顔がほてる、頭がぼーっとする、胸が少し締まる、動悸がする、といった感覚が出ることがありますが、多くは数分で落ち着きます。気分が悪くなったら我慢せず、すぐに声をかけてください。検査後は少し休んでから帰宅できます。注意点として、検査の半日〜1日前からカフェイン(コーヒー、紅茶、緑茶、チョコレート、エナジードリンクなど)を控えるよう指示されることが多く、食事や持病の薬の扱いも指定されます。当日の指示に必ず従ってください。検査後の運転や激しい運動については、その場で医師・看護師に確認しましょう。
治療
この検査自体は「調べる」ためのもので、治療ではありません。結果をもとに、心臓の血管が狭くなっているかどうか、どの程度かを医師が判断し、生活習慣の見直しや薬による治療、必要なら血管を広げる処置など、次のステップを一緒に決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 検査前日は、指示された時間からカフェインを含む飲食物を控えましょう。
- 食事をとらないよう指示された場合は、水以外は口にしないようにしましょう。
- 持病の薬(喘息の吸入薬、血圧の薬、糖尿病の薬など)は自己判断で中止せず、必ず事前に医師・薬剤師に確認してください。
- 検査当日は、普段使いの薬のリスト(お薬手帳)と、健康診断の結果を持っていきましょう。
- 帰り道の運転や一人での帰宅について、事前に医師・看護師に確認しておきましょう。
- 検査後は指示に従って水分をとり、ふだんどおりの生活に戻して構いません。
医療治療
検査の結果に応じて、治療の内容は変わります。血管の狭まりが軽い場合は、まず生活習慣の見直し(減塩、禁煙、適度な運動、体重管理、睡眠とストレスケア)と、血圧・血糖・コレステロールを整える治療が中心になります。医師が必要と判断した場合は、血管を広げる薬、血液が固まりにくくなる薬、心臓の負担を減らす薬などが使われることがあります。どの薬を使うか、いつまで続けるかは、症状や持病、腎臓の働きなどを見ながら医師が決めます。薬の名前や量については、必ず処方した医師・薬剤師の説明を受けてください。
手術が検討される場合
血管の狭まりが強く、薬だけでは症状が抑えられない場合には、カテーテルという細い管で血管を広げる治療や、別の血管で血液の通り道を作る手術が検討されることがあります。ただし、すべての方に必要というわけではなく、狭まりの場所や程度、心臓の働き、年齢や全身の状態を合わせて総合的に判断されます。
この病気と共に生きる
検査を受けたあとは、結果の説明を落ち着いて聞き、分からないことは遠慮なく質問しましょう。症状の出方(いつ、どんなときに、どれくらい続くか)を簡単なメモに残しておくと、次の診察でとても役立ちます。薬を処方された場合は、自己判断でやめたり量を変えたりせず、飲み忘れがあったときの対応も事前に薬剤師に確認しておきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を目指しましょう。受動喫煙も避けましょう。
- 毎日、無理のない範囲で体を動かしましょう(早歩き、軽い筋トレ、ストレッチなど)。
- 睡眠を十分にとり、できるだけ決まった時間に寝起きしましょう。
- 塩分と脂っこい食事を控え、野菜・魚・大豆製品をとりましょう。
- お酒は量と回数を決めて、休肝日を作りましょう。
- 寒い時期や朝の冷え込み、急に重い物を持ち上げるときは心臓に負担がかかりやすいので、ゆっくり動きましょう。
- 体調の変化(体重、むくみ、息切れ、血圧)を記録しておくと診察に役立ちます。
食事と運動
食事は、塩分を控えめにし、野菜・海藻・きのこ・魚・大豆製品を多めに、加工食品や揚げ物は少なめにするとよいでしょう。運動は、主治医に相談したうえで、会話ができる程度の早歩きを1日20〜30分、週に数回から始めるのがおすすめです。痛みや強い息切れが出たら、すぐに休み、続く場合は医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
心臓の検査は、結果が出るまで不安が大きいものです。「大丈夫だろうか」と眠れなくなる方も少なくありません。不安は自然な気持ちで、弱さではありません。気持ちが落ち着かないときは、家族や友人、かかりつけ医、看護師に話してみましょう。つらい気持ちが2週間以上続く、眠れない、涙が止まらないといった場合は、地域の保健所や精神保健福祉センター、かかりつけの医療機関の相談窓口を利用してください。命に関わる緊急時は119番へ連絡してください。
予防
この検査そのものを防ぐという考え方はありませんが、検査が必要になる原因(心臓の血管の病気)は、生活習慣を整えることでリスクを下げられるとされています。血圧・血糖・コレステロールをよい状態に保つこと、禁煙、適度な運動、バランスのよい食事、十分な睡眠が基本です。
ワクチン
心臓の病気を持つ方には、インフルエンザなどのワクチンが勧められることがあります。接種の時期や可否は、体調や持病を踏まえてかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
日本では、特定健康診査(メタボ健診)などで血圧・血糖・脂質・腹囲を定期的に確認できます。健診結果で異常を指摘されたら、放置せずかかりつけ医に相談しましょう。動脈硬化が進む前に気づくことが、いちばんの予防になります。
合併症
治療しない場合
- 心臓の血管の狭まりに気づかないままにすると、狭心症の発作が強くなったり回数が増えたりすることがあります。
- 血管が完全に詰まると心筋梗塞(心臓の筋肉が傷つく状態)を起こす可能性があります。
- 心臓の働きが弱くなり、息切れやむくみが続く状態になることがあります。
- 不整脈(脈の乱れ)を合併することがあります。
長期的な見通し
この検査は、心臓の状態を早く正確につかむための頼りになる方法です。狭窄(血管の狭まり)が見つかっても、生活習慣の見直しや適切な治療で症状は大きく改善することが多く、多くの方がふだんどおりの生活を続けられています。結果を前向きに受け止め、医師と一緒に次の一歩を決めていくことが大切です。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.