ワダテスト(脳の言葉・記憶の働きを調べる検査)
概要
ワダテストは、てんかんの手術を受けるかどうかを考えるときに、脳のどちら側が「言葉」と「記憶」の働きを主に担当しているかを調べる検査です。首の血管(内頸動脈)に細い管を入れ、脳の片側だけに、数分間だけ働きを休ませる薬を流します。その間に、絵を見せたり言葉を言ってもらったりして、残った側の脳がどこまで言葉と記憶を支えられるかを確認します。薬の効果は数分で消え、検査のあとは元の状態に戻ります。検査そのものが治療になるわけではなく、手術の計画を立てるための「情報集め」の検査です。
重要な事実
- 脳の左右どちらが言葉を担当しているか、記憶をどれくらい保てるかを調べる検査です。
- 入院して行うことが多く、検査そのものは数十分から1時間ほどで終わります。
- 検査の結果は、手術で脳の一部を取ったあとに言葉や記憶の障害が起きるリスクを減らすために使われます。
とても多くの人が受ける検査ではありません。てんかんの手術を検討している人の一部が受ける、専門的な検査です。てんかんの治療を受けている人の全員が必要になるわけではありません。
薬を試しても発作が抑えにくく、手術を考えているてんかんの人(成人も子どもも含みます)が対象になります。検査は主に、てんかんの専門医と脳外科医、放射線科の医師が協力して行います。
症状
- けいれんが5分以上続いている、または短い発作を何度も繰り返している
- 発作のあと意識が戻らず、呼びかけに反応しない
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い、唇が青白い
- 検査のあと、急に腕や脚が動かない、言葉が出ない、顔がゆがむ(脳卒中の可能性がある症状)
- 首やのどの腫れで息がしにくい、声が出ない
- ⚠検査のあと、首の付け根の腫れや強い痛み、内出血が広がっている
- ⚠発作がいつもと違う形で起きた、回数が増えた
- ⚠発作のあとに片側の手足の動きにくさが長く残る
- ⚠発熱や、針を入れた部分の赤み・膿のようなもの
- ⚠強い頭痛や吐き気が続く
一般的な症状
- この検査を考えるきっかけは「症状」ではなく、薬で発作が抑えにくい状態が続いていることです。
- 発作の前に言葉が出にくい、胸がむかむかするなど、決まった感覚が現れることがある
- 発作のあとに一時的に言葉が出にくくなったり、もの忘れのように感じたりすることがある
- 脳の検査(MRIや脳波など)で、発作のもとになっていそうな場所が見つかっている
子供の症状
- 子どもの場合は、発作そのものに加えて、言葉の発達の遅れや学校での学習の困りごとが手がかりになることがあります。
- 検査の説明は年齢に合わせて行い、怖がらせないように少しずつ伝えます。
- 子どもはじっとしているのが難しいことがあるため、検査の進め方は施設ごとに工夫されています。
高齢者の症状
- 高齢の方は、血管の状態や持病(高血圧や糖尿病など)をあらかじめ確認してから検査を行います。
- 検査後の安静や水分のとり方について、看護師からていねいな説明があります。
- 物忘れが心配な場合は、検査の前に脳の働きを調べるテストを合わせて行うことがあります。
原因
主な原因
- ワダテストは「病気の原因」を調べる検査ではありません。手術の前に、脳の働きの左右差を知るために行われます。
- もとになる状態は、主に「焦点性てんかん(脳の一部から発作が始まるタイプ)」で、薬で発作が抑えにくい場合です。
- MRIや脳波などの検査で発作のもとが推定できていて、手術が治療の選択肢になる人が対象になります。
リスク要因
- 検査自体のリスクとして、針を入れた部分の内出血や腫れ、血管が細くなる(けいれん)ことがあります。
- 薬の影響で一時的に言葉が出にくくなったり、手足が動かしにくくなったりすることがありますが、多くは数分から数時間で戻ります。
- 血管が細い、持病がある、薬にアレルギーがある場合は、事前に医師に伝えてください。
- 妊娠中、または妊娠の可能性がある場合は必ず伝えてください。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 検査のあとに、腕や脚のまひ、言葉の出にくさ、顔のゆがみが急に現れた
- 首の腫れで息がしにくい、声が出ない
- けいれんが止まらない、繰り返す、意識が戻らない(この場合は救急車を呼んでください)
- 針を入れた部分から出血が続く、大きく腫れてきた
- 発熱、強い頭痛、何度も吐く
定期受診を予約すべき場合:
- 検査の意味や流れをもう一度聞きたいとき
- 手術を受けるかどうかで迷っているとき
- 家での発作の記録のつけ方を知りたいとき
- 仕事や学校、運転についての不安を相談したいとき
診断
ワダテストは「診断」のための検査ではなく、手術前の評価の一部です。てんかんの診断や、発作のもとがどこかを調べる検査は別に行われ、そのうえで「手術をした場合に言葉や記憶への影響がどれくらいありそうか」を確かめるためにワダテストが行われます。最近は、まずMRIを使った脳の働きの検査などで代用できないかを検討し、必要な人だけがワダテストを受ける流れが広がっています。
行われる可能性のある検査
- 脳のMRI検査(脳の形や、発作のもとになりそうな場所を見る)
- 脳波検査(脳の電気の働きを見る)
- 長時間ビデオ脳波モニタリング(発作の様子と脳波を同時に記録する)
- 神経心理検査(言葉や記憶、注意力などを紙と鉛筆や会話で調べる)
- MRIを使った脳の働きの検査(言葉を担当する側を推定する)
- ワダテスト本体(首の血管から薬を入れ、言葉と記憶の課題を行う)
診察で予想されること
多くの場合、入院して行います。検査の前は、決められた時間から食事を控えるよう指示されます。首の付け根の皮膚を清潔にして麻酔の注射をしたあと、細い管を血管に入れます。薬が入ると数分間、脳の片側が休んだ状態になり、その間に「これは何の絵ですか」「さっきの絵を覚えていますか」といった課題を行います。薬の効果が消えると元に戻り、しばらく安静にしてから、必要に応じて反対側でも同じ検査を行います。所要時間や安静の長さは施設によって異なるため、事前の説明をよく確認してください。
治療
ワダテストは検査であり、それ自体が治療ではありません。ここでいう「治療」は、もとになっているてんかんの治療のことです。てんかんの治療は、薬による治療が中心になります。薬で発作が十分に抑えられない場合に、手術や、脳を刺激する機器を使う治療、食事の工夫などが検討されます。どの方法が合うかは、発作のタイプや生活状況によって変わります。
自宅でのセルフケア
- 検査の前日からの食事制限や、飲み薬をどうするかは、必ず主治医の指示に従ってください(自己判断で薬をやめない)。
- 検査当日は付き添いの人と一緒に来院し、検査後は自分で運転せずに帰宅できるように準備しておきましょう。
- 検査後は指示された時間、安静にし、水分をとって過ごします。
- 発作の記録(日時、どんな様子だったか、何分続いたか)を家族と一緒につけておくと、治療の相談に役立ちます。
- 睡眠不足や飲酒、強いストレスは発作のきっかけになりやすいので、生活のリズムを整えましょう。
医療治療
てんかんの治療は、まず抗てんかん薬と呼ばれる飲み薬で発作を抑えることから始まります。薬の種類や量は、発作のタイプや年齢、副作用の出方を見ながら医師が調整します。薬で十分に抑えられない場合には、手術、脳を刺激する機器を使う治療、ケトン食と呼ばれる食事療法などが検討されます。具体的な薬の名前や量は、ここではお伝えできません。主治医や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
手術は、発作のもとが脳の限られた範囲にあり、そこを取ることでの影響が許容できると判断された場合に検討されます。ワダテストの結果は、言葉や記憶への影響を予測するために使われます。手術をしない場合でも、検査の結果は今後の治療の選び方に役立ちます。
この病気と共に生きる
てんかんは、多くの人が付き合いながら生活している病気です。発作のきっかけや前ぶれを自分で知っておくと、安心して過ごしやすくなります。仕事や学校、運転については、発作のコントロール状況によって注意が必要です。日本では、発作を起こすおそれがある場合の運転について法律上の決まりがあるため、必ず主治医に相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 毎日ほぼ同じ時間に寝て、十分な睡眠をとる
- 飲酒は発作のきっかけになりやすいため、主治医と相談する
- 入浴は長湯を避け、ひとりのときは湯気で意識がもうろうとする状態に注意する
- 高所での作業や、水泳・入浴などで一人になるときは、誰かに見ていてもらうなどの工夫をする
- 発作の記録をつけ、診察のときに見せられるようにしておく
食事と運動
特別な食事制限が必要なのは、食事療法を選んだ場合など限られたケースです。ふだんは、主食・野菜・たんぱく質をバランスよくとり、水分をこまめにとることを心がけましょう。運動は体調に合わせて無理のない範囲で続けて構いません。水泳や登山など、発作が起きたときに危険が大きい運動は、誰かと一緒に行うなどの工夫をしましょう。
精神的健康と心の健康
検査や手術のことを考えると、不安や緊張が続くことがあります。落ち込む日があっても不思議ではありません。つらい気持ちが続くとき、眠れない日が続くとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ひとりで抱えずに主治医や身近な人に話してください。日本では、よりそいホットライン(0120-279-338)などの相談窓口があります。緊急の場合は119番に連絡してください。
予防
ワダテストは手術前の評価のために行う検査なので、受けるかどうかを「予防」するという考え方は当てはまりません。もとになるてんかんについては、頭部のけがを防ぐ(ヘルメットの着用、シートベルト)、脳の感染症を防ぐ、妊娠中の健康管理を大切にする、といったことが発症リスクを下げる可能性があります。すべてが防げるわけではないことも知っておいてください。
検診プログラム
ワダテストは、手術を検討する人に対して行われる評価の一部で、一般向けのスクリーニング検査ではありません。発作が続く場合は、まずかかりつけ医か脳神経内科・脳神経外科・小児科(てんかん専門外来)に相談してください。
合併症
治療しない場合
- ワダテストを受けないこと自体が体に害を及ぼすわけではありません。
- ただし、手術の前に言葉や記憶の担当側がわからないと、手術後の影響を予測しにくくなり、治療の選択肢がせばまる可能性があります。
- 検査に伴うリスクとして、針を入れた部分の内出血や腫れ、血管が細くなることがあります。
- ごくまれに、脳の血流が悪くなる(脳梗塞)などの重い合併症が起きることがあります。
- 薬の影響で一時的に言葉が出にくくなることがありますが、多くは短時間で戻ります。
長期的な見通し
ワダテストは、手術を安全に進めるための大切な情報をくれる検査です。検査のリスクは決してゼロではありませんが、多くは一時的なもので、検査前後の説明と観察によって安全に配慮されています。結果をもとに、本人と家族、医療チームが一緒に納得できる治療の道を選んでいくことができます。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.